ひとしきり吐いたあと、俺は疲弊しきった身体に鞭打って俺生誕の地に帰ってきた。
この精神状態であんなグロテスクな場所長居できるか!!
…にしてもあの味は酷かった。美味しくなかったとしても「あんま美味しくないなー」レベルの美味しくなさに収まると思ってたんだが。
もうね。エグ味と強烈な酸味しか感じなかったよね。お肉特有の旨みや脂の甘みなぞ欠片もなかった。
....それにしても、今の状態は非常に宜しくない。
生まれたばかりにも関わらず動き回り、嘔吐もしたんだ。体力が相当削れているだろう。というか今疲弊しまくっている。
とりあえずなんか口にしないとマズい。身体がそう訴えている。
そこで俺は目の前のキノコに注目した。
強力な麻痺毒を内包した
普通の生物なら食った途端にもう飯どころではない状態になってしまうだろうが、生憎俺はギルオス。生まれながらにして耐性がついててムシャムシャ食べれる....と思う。
とりあえず様子見も兼ねて少しだけ齧りとって食べてみる。
....
.......
口に含んで少ししたが、特に異常はない。俺の予想どうり大丈夫なのだろう。
当面はこれを食べていけば飢えを凌げる。マヒダケ
....しかし問題がある。
これ、あんまり美味しくない。
食感はモサモサして、味はエグ味が強く、香りはなんとも言えないケミカルな雰囲気がする。薄〜いキノコの味に大量の薬をぶち込んだような感覚を覚えた。
....それでも流石にさっき食べた死肉よかマシだし、全然我慢できるのだが、つい数時間前まで俺はちゃんと調理された飯を食べてた人間だったんだ。出来ればこいつも調理して美味しく頂きたい。
じゃあどうやって調理するのか。生のマヒダケをつまみながら考えてみる。
この環境で手軽にできる調理法といったらやはり加熱調理だろう。
俺のゲームの知識が正しければ、ここ瘴気の谷には瘴気対策用の種火石がその辺にゴロゴロしてるはずだ。それを火にして、キノコを炙るか....
....いや少し待てよ。ゲーム内でギルオスは火を見ると脱兎の如く逃げ出していた。火が苦手だったのだろう。
そして今俺はギルオスだ。そんな俺も火が苦手になっているのではないか?もしそうだとしたら調理出来んぞ?
....とりあえず種火石探すか....。そうしないと何も始まらない。
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探し始めてから見つかるのは早かった。
今までゲームをしてる中で種火石をまじまじと眺める事なんて無かったもので、ちゃんと識別できるのか不安だったが杞憂であった。
いかにも「自分、衝撃加えたら燃えだしますよ!!」的な質感してた。テッカテカやで!!
....という訳で俺の今後の食生活を賭けた実験をしてみようと思う。頼んだぞマジで。
手始めにこいつの質感を信じ、地面に落として着火を試みた。
ガッ
....付かない。産まれたばかりの力が非力だったのか、なにかコツがいるのか。挫けずにトライしよう。
....
.......
ボッ!
....しばらくやっても付かなくて、半ば八つ当たり気味に咥えてぶん投げたら火がついた。どうやら落下程度の衝撃では着火には足りなかっただけらしい。
....なんか火がついてから少し景色が澄んでいる気がする。ここには瘴気が入ってきてないと思っていたが流石にちょっとはあったのか。何も活動に影響がなかったのは俺がギルオスだからか。
肝心の火についての恐怖心だが……何も感じない。
ぶん投げた着弾点に近づいてじっと眺めたが、暖かくて気持ちいいとしか思わなかった。そこは人間準拠らしい。
これで俺は正式にクッキングギルオスになれるという訳だ。
待っていろマヒダケ。待っていろ多分マシになってるであろう味。
何がとは言いませんが、僕はきのこ派です。