転生者が好き勝手生きようとするけど曇らされる話   作:じゃがありこ

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第1話

転生者諸君、暇なので安価します

 

1:イッチだぞ

ワイ、現代の日本に転生。中学二年生になるまでファンタジーとの遭遇なし。

たぶん、安全な世界なので暇つぶしに安価を取ります。

バイトしている(表向きは知り合いのカフェでお手伝い)に来る優等生ちゃんがいるんだけど、無性にそのいい子ちゃん面を剥がしたくなる。優等生ちゃんが動揺することを言いたい。何て言う?>>20

 

2:名無しの転生者諸君

は?ゾンビものに転生したワイ、イッチをブッコロしたいんだが

 

3:名無しの転生者諸君

安心しろ、クトゥルフに転生したワイが付いてる

 

4:名無しの転生者諸君

呪術廻戦で平安に転生した俺もいるぞ

 

5:名無しの転生者諸君

イッチの情報が少ないから無理

 

6:名無しの転生者諸君

イッチ詳細をよこせ

 

7:イッチだぞ

15歳、男。部活は、演劇部。

転生特典は触れている相手の感情を読むこと。五分間視認できた他人の技能をトレースする。以上、二つ。二つ目はよく使う。プロのピアニストの動画を見て、無双してる。

優等生ちゃんのスペック。可愛い。顔はね。紫色の髪をポニーテールで纏めている美少女だな。お嬢様学校に通ってる。年が近いから時折話すんだけど、マジで本性が見えない。趣味は作曲?音楽に興味があるっぽい。英会話が得意らしい。後、親が厳しい奴特有の匂いがする。一回、何も言わず殴ってみたい

 

8:名無しの転生者諸君

イッチ、中二なのか。やっぱり、中二病になるのか?

 

9:名無しの転生者諸君

イッチの性癖じゃん。殴ってみたいは草

 

10:名無しの転生者諸君

カフェに来る中学生と仲良くなるのすごいな

 

11:名無しの転生者諸君

中学生ってバイトできたっけ?

 

12:イッチだぞ

年齢誤魔化してる

 

13:名無しの転生者諸君

中二だから中二っぽいせりふにしようぜ

 

14:名無しの転生者諸君

俺の右腕がうずく

 

15:名無しの転生者諸君

お前、今幸せか?

 

16:名無しの転生者諸君

お前、誰なんだ?

 

17:名無しの転生者諸君

俺といいことしない?

 

18:名無しの転生者諸君

彼氏いる?

19:名無しの転生者諸君

友達紹介して?

 

20:名無しの転生者諸君

俺演劇部何だけどさ、演技してるとどれが自分かわからなくなってくるんだよね(どや顔)

 

21:名無しの転生者諸君

お前も転生者なんだろ、仲良くしようぜ

 

22:名無しの転生者諸君

 

23:名無しの転生者諸君

絶妙に痛いな

 

24:名無しの転生者諸君

痛いな

 

25:名無しの転生者諸君

黒歴史だな

 

 

 

 

朝比奈まふゆは、友人に連れられてカフェに来ることが多かった。今回もそうだ。勉強を教えてくださいと懇願され、同級生に連れてこられたカフェ。落ち着いた雰囲気かつ中高生にも優しい値段設定と時折聴こえるピアノの生音。店長の知り合いらしい少年が、時折置かれているピアノを弾いているのだ。店長の趣味で置いているピアノらしい。

 

静かなフォルテシモから音が始まり、軽やかに不協和と音が躍り出す。音と音が衝突する間から熱狂が泡となって溢れ出し、鼓膜を叩いてくる。

 

ピアノ一つでここまで表現力を見せる人間は素人ではない。もはやプロ並みだ。このカフェにはこの音を聞きにくるリピーターが後を絶たないのだそうだ。

 

まふゆもきっかけこそ友人だが、カフェで行う勉強会に協力しているのはこのピアノを聞くことに意義を無意識に感じているからである。

 

特にまふゆが帰宅する間際に演奏するとある曲が耳から離れなかった。それが何故なのか、まふゆにはわからない。

 

まふゆが物思いに耽っていると、いつの間にか少年が目の前にやってきていた。

 

「今日はお友達とじゃないのか?」

 

無機質な目で彼を眺めていたまふゆだったが、急ぎ優等生の仮面で対応した。

 

「急用が入ったらしくて、帰ってしまって。私だけここに来たんです」

 

「………話が変わるんだけどさ。俺、演劇部なんだけど、何かを演じているとどれが本当の自分かわからなくなる時があるんだよね。演技の没入と時間が延びるとマジで自分がわからなくなる」

 

彼は唐突に物憂げな表情で、まふゆに語りだした。

 

「………そうなんですね」

 

まふゆは、自分の返答が適当になったのを感じた。頭で模範解答を生成できなかった。

 

まふゆはコーヒーの残りを飲もうとしたが、カップが空になっていることに気づき、ソーサーに戻した。カップはソーサーに当たって、予想もしなかった大きな乾いた音を立てた。

 

「完全に自分がわからなくなった時、どうやって自分の探せばいいのか。本当の自分を受け入れてくれる人間はいるのか。自分と他人が観測する自分の境界がブレる時に繋ぎ止めてくれる奴がいると良いけどな」

 

少年はまふゆのカップに追加のコーヒーを注いだ。

 

「完全に自分がわからなくなったらどうすればいいの?」

 

ゾッとするほど低く熱のない声で吐露したまふゆの闇が、少年の鼓膜を犯して弾けたように彼は顔を上げた。

 

「今日はもう帰りますね」

 

そこにはいつも通りの優等生が笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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