呪術世界の結界術師   作:ペンギンくん

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プロローグなので短め。次話も明日同じ時間に出ます。


【人外魔境新宿決戦】
00.間隙


 

「そうか。五条先生が復活したか」

『裏門から出てこなくてびっくりしたけどな』

 

 秤から五条復活の報告を聞きながら呪霊を結界で祓う。

 玻座真も五条復活の場に立ち会いたかったが宿儺が伏黒の肉体に受肉して行動し始めた以上、早急に各地の結界(コロニー)を巡って解析しなくてはならなかった。

 羂索も宿儺と行動し始めると考えると今まで以上に襲撃の危険性が高まったと言えるが、あの横暴の化身とも言える宿儺をあっさりとコントロール出来るとは思えないので迎え入れて少しの間は動きが鈍ると考えたのだ。

 そこに五条復活も重なり、羂索はまともに動けなくなるだろう。

 そう想定して各地を巡り続け、解析し終えた。

 今は憂憂を冥冥の元に帰して一人で行動していたところ、電話が来て対応していたところだ。

 

「天使の術は聞いたはずじゃ術式の破却だろ? 門を開けるんじゃなくて」

『あー……なるほど。そう言うことか』

「術式を壊された結果、正常に表側の門が開いたんだろうな」

 

 後に聞いた話だが、五条が封印されていた獄門彊は日本海溝の奥底に置かれていたとのこと。

 天元を支配した羂索は裏門のことを聞いていたはず。

 夏油の記憶を引き継いでいる以上、『天逆鉾』と『黒縄』の存在は知っていただろう。何より天使を平安時代から現代に連れてきたのは彼自身である。

 玻座真の開錠を待つよりも先に壊せるなら壊した方が早いだろう、と高専組が動くと推測して人が生きられぬ場所に置いてきたのだろう。

 裏門なんてまさしく裏技に上手く対処したと言えるが、問題なく五条が復活出来ている以上……相手が悪かったとしか言いようがないだろう。

 

「ま、これで羂索と宿儺の動きは鈍るだろうな。……もっとも二人の配下は逆に動きが加速するだろうが」

『裏梅とか言う術師と、久本ってやつか』

「あぁ」

 

 呪術連に報告を入れたのだが、やはり久本は姿を消したと言う。

 北海道から本州に行くための道は呪術連の人間が監視しているらしいが、どこまで塞げるかと言うと微妙なところだ。術式や実力の問題もあるが、何よりどこも人手不足なのだからカバーしきれるとは思っていない。

 

『さすがにそっち二人の動向まで五条さんがなんとかする、って言うのは無理だしな』

「指集めをするだろうなぁ。虎杖の中にいた時は非協力的だったらしいが独立した以上、自分の指の位置を感知して積極的に探すはずだ」

『つーかさ』

 

 そしてあちらの陣営の人間は実力者ばかりであり、例え強力な呪霊に取り込まれていても難なく奪えるだろう。むしろ地面の底とかに埋まっている方が発見するのに苦労するかもしれない。

 適当なことを考えていると秤が話を変えてきた。

 

『いい加減教えろよ。なんで乙骨無視して俺の方に掛け直しているんだよ』

 

 そう、少し前に玻座真の元に乙骨から電話が掛かってきたのだ。……だがそれを着信拒否して秤の方に玻座真から電話を掛け直したのだ。

 乙骨と秤は近くにいたらしく複雑な表情をしながら電話をしているとのこと。

 

「念のためな? 念のため。念のためだよ、念のため」

『念のため念のためうっせーわ。何が念のためなんだよ』

 

 後輩の前ではしっかり者を演じているが、秤は付き合いが長いため玻座真がオタク丸出しな面倒臭い性格をしているのを知っている。

 何だったらいつも不愛想なのも漫画やアニメを夜遅くまで見ていて、翌日寝ないで学校に行って真面目に授業を受け続けた結果、寝ないように頑張っている仏頂面で表情筋が固定化されてしまったと言う馬鹿野郎な理由であることも知っている。

 

「出来るだけ可能性を削っておこうって思ってな」

『はよ全部言え』

「乙骨は虎杖殺害の縛りを総監部に結ばされたからな」

『……あぁ、なるほどな』

 

 そして、何をしているかも察することが出来た。

 

『良いのか?』

「五条先生だって今までしてきて無かったんだ。実際、混乱に乗じてやる……なんてこと、やっていることは御相手と同じだからな。それこそ同じ穴のムジナって言われてもしゃーない」

 

 ただ、と続ける。

 

「天元様って言う蓋がいなくなった以上、自由にさせちゃいけないやつらばかりだからな。後顧の憂いを断つってな」

『まだ判断が早いだろ』

「早くないさ。むしろ今じゃなきゃ駄目だ」

 

 玻座真のその強い言葉に秤は溜息を吐く。

 ここで言い合っても仕方ないか、と秤の方が折れる。

 

『覚悟はしているのか?』

「してたさ。昔から」

『んじゃ言ってもしゃーねぇな。ただお前の隠し事には協力しねぇぞ』

「俺も積極的に言いふらすつもりはないが、そこまで必死になって隠すつもりはないさ」

 

 そして一言二言話して、電話を切る。

 

「長くなったかな、悪い悪い。いや悪くねーわ。お前らの方が悪い奴らだし」

『…………!!』

 

 大き目な結界の中に五人の老人が入っている。

 両腕両足には穴が開き、四人はぐったりとしている。

 襲撃を受けて気を失っている者もいえば、抵抗する気力も失せて横になっている者もいる。

 その中でもまだ元気な者もおり、結界を叩きながら何かを怒鳴っている。痛みよりも怒りの方が勝っている様子だ

 結界を操作して音が通るようにする。

 

『貴様!! 何をしているのかわかっているのか!!!』

「あ、駄目そう」

『出せ! 早くここから出せ!!』

 

 騒ぐ老人……彼らこそが呪術総監部の人間である。

 護衛の術師や契約していた呪霊、そして天元の手が掛かっていない結界で彼らは自分たちを守っていたが……どれも玻座真を止めることは出来ず、侵入を許した。

 自分たちの感情と利権を優先して他者を食いものにしてきた怪物たち。無論、ある程度は呪術師たちの保護に通じる仕事はしてきたが……それは昔の話であり現代を生きる呪術師たちからすれば腐り過ぎた老害だ。

 先程から羂索のことを吐かないか尋問していたのだが、結局何も言わずじまいだ。

 そんな呪術界のトップたちに、玻座真は憮然とした表情のまま言葉を投げる。

 

「縛りに引っかからない範囲で良いから、なんかしゃべれよ」

『図に乗るな、天元の予備ごときが。貴様なんぞが……』

「言っとくけど、五条先生は復活した。そして羂索は最強の術師に殺されないよう身動きを止めたよ」

『なっ……馬鹿な……』

 

 そう、玻座真が総監部に来たのは五条の復活を彼らが耳にするよりも先に逃がさないようにするためだ。

 五条が復活すれば羂索であっても止められないとさすがの総監部の人間たちでも理解しているはずだ。そうなれば彼らは羂索側に逃げる可能性が高まる。

 ゆえに、玻座真が動いた。

 

「あんたらに駒としての価値があまり高いように見えないが、あんたらにしか使えないモノとかも多く存在するだろう。子飼いの術師や呪具はもちろんだが、高専にある建物の抜け道とか」

 

 何より日本政府と取り決めなどの話し合いをしていたのは彼らなのだ。長い間、ずっと呪術界トップの席をケツで磨いていただけの発言力はある。その分だけ術師としての腕は結界を脱出出来ぬほど落ちているが。

 彼らの一言で日本政府とまで敵対するのはさすがにゴメンなので、さっさと遮断する。

 

『ま、待て! 話を……!!』

「ほい」

 

 脇に置いていた物を拾い、それを結界の中に投げた。

 それはちょうど結界の真ん中に落ちた。

 箱型のソレ。

 それを見た老人たちは目を見開き、悲鳴を上げながらその洒落た柄の箱から逃げようとする。

 

『こ、これは……っ!?』

「あんたらが子飼いに持たせた特級呪物。内容に少し手を加えて返してやるよ」

 

 特級呪物、コトリバコ。

 ネット怪談(ロア)で広まった呪物兵器。

 作成の材料に人間を使い、生贄にした子供の死体の一部を箱に入れる。

 そうすることによって呪いたい相手がいる家の女性や子供を内側から殺していくと言う物。

 実際のところ、現物は見つかっていないため呪術界では作り話と判断された。だが愚か者と言うのはどの時代にもおり、そのネットロアを基に『コトリバコ』を作ってしまった呪詛師がいたのだ。

 元の話と同じで、一定範囲内にいる女性や子供を内側から腐らせる呪いを撒き散らす特級呪物。

 それを総監部たちは子飼いの兵に持たせ、高専組を壊滅させようと企んでいたのだ。現在の高専メンバーの大体が高校生であり、逆に大人の男の方が少ないと言える。

 虎杖・乙骨・真希・狗巻・秤・綺羅羅・硝子・加茂・三輪・西宮・歌姫・話に聞く天使。冥冥や憂憂も巻き込まれるはずだ。まだ宿儺復活のことを知らなければ伏黒も面子に入れられていただろう。そんな彼らが集まっている場所にこの特級呪物を投げ込もうとした

 それを玻座真が奪い、封印箱としての機能を弄った。

 ……逆に年を食った男ばかりを呪い殺す内容に。

 

『ふ、ふざけ――』

「じゃあ、さようなら」

 

 結界の機能で音を遮断し、玻座真は会話を終わらせる。

 もう話すことはない。もう言葉を交わす理由もない。

 今は戦争中であり……敵側に下った獅子身中の虫を排除した。

 それで自身のここでの仕事は終わったと判断し、立ち去った。

 

   ◆◆◆

 

「よっと」

 

 扉から出ていくのではなく、波動による壁抜けを使い玻座真は直下していく。

 床を、地面を通り抜けていき、そして途中で結界を展開して蹴って進行方向を変える。

 そして目的の場所に辿り着き、着地する。

 

「……ほんと、荒らされたなぁ」

 

 薨星宮。

 天元の空性結界が解けており、多くの建物と中心部にある大樹のようなものが露わになっていた。それらも瓦礫の山の一部となっており、この場所で起こった戦いの凄惨さを物語っている。

 

「…………」

 

 訪れた回数なんて片手で数えられる程度だ。

 天元ともそこまで仇討ちを考えるほどの仲ではない。

 それでもこの光景を見て……本当に天元がいなくなったのだと直視させられる。

 

「出来る限り、終わらせないと」

 

 時間が無い。

 本当に……時間が無いのだ。

 だからやれることを今のうちにやる。先程の総監部の処分も、今のうちにやらなければいけないと考えたから動いたのだ。

 誰かの思惑だとか、倫理観だとか、汚れ仕事だからとか。そう言う意味で玻座真が動いたのではない。

 

 次期『天元』の席に座る前に、干渉出来なくなる前に呪術界の掃除をしておく必要がある……と言うだけの話なのだ。

 

 




不定期更新で再開。ぼちぼち書いてます。
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