呪術世界の結界術師   作:ペンギンくん

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説明回なので多少は話の作りが窮屈になってますがご容赦を。昨日もプロローグの部分を出してます。


01.前提

 

 なお、すぐにバレた。

 呆れたような表情を浮かべた五条が迎えてくれた。身に纏った結界で遮ったはずだが、それでも六眼は見抜けたらしい。と言うか特級呪物の特異な呪力よりも、総監部の老人たちの呪力に五条は気づいたとのこと。

 そう言えば五条先生は何度も顔を合わせる機会があったんだよな、と今更ながら思い出し迂闊だったと思わず頭を掻く。

 

「何を勝手にやっているのさ」

「やれるうちにやっているだけですよ」

 

 みんなが集まっている講堂に二人で向かいながら、玻座真の独断行動について話している。

 

「先生ってチャランポランに見えて倫理観が割としっかりしているんですよね。教えた人が良かったのか」

「……いや、悪いやつだったよ」

「まぁそれはともかく。確かにこのタイミングで総監部の老人たちは殺すのはあちらと同じことをしているように見えますが、やっていることは向こうの方がマズいですし。てかもう背中から刺されたくないし」

 

 自己保身や自身の利益のために国を売り、人類を売っているのだ。

 かつて虎杖に話したような事件や争いに乗じて権力の掠奪だとか、もはやそのレベルの話ではない。

 我が身が可愛くて生き残りたくて、ならまだわかる。

 だがそれで五条の封印に関して妨害するお触れを出している時点で、本当に自分たちのことしか考えてないとわかる。呪詛師すれすれだ。

 

「とは言え、だ。さすがに教師としては一言ぐらい言わせてもらうよ」

「わかってますよ。ただこれは金次にも言いましたが、今後のことも考えると俺がやるべきことだと考え、実行したまでですよ」

 

 その言葉に一瞬五条は肩眉を歪ませるが、すぐに理解したらしく再び呆れたような表情をする。

 

「義務ってやつ? そこまで行くと頑固と言うかなんと言うか」

「どちらにせよ誰がやるか別になるだけで、結局のところ抹殺するしかないんですが」

 

 反省していない……と言うよりも強情な姿に五条の方が折れた。

 付き合いとしては日下部と同じくらいであり、彼と言う存在をよく理解していたからだ。

 玻座真としても五条は教師として生徒の、そして大人として若人の青春を守ろうとしてくれているのはわかっている。

 

「…………」

 

 だが……玻座真としては二度目の人生なのであまり若いと言う感覚はない。とは言え前世も高校生の頃に死んでいるため合計年齢が五条より上だとしても、大人と言う感覚を持つことが出来ていない。

 時間をどれだけ重ねても高校を卒業してからの経験を一秒たりとも持っていないのだから、どうやっても自身が大人と言う感覚を培えていないのは当然なのだが。

 1から10までステージがあるゲームで、どれだけ1から5のステージをやっていても「何度もやっているからそのゲームは達者だ」なんて言えるわけがない。6から10を経験していない以上、そのゲームを本当の意味でクリアしただなんて言えない。

 親になったことがない者が親を名乗れないように。大人になったことがない者が大人と名乗れない。大人になったことがない玻座真では、大人と同じ目線になれない。

 

 客観的に見て玻座真の考えは、まだ年端も行かない少年による早すぎる覚悟にも見えなくもない……と言うことを彼は理解出来ていなかった。

 

 だからと言って何かが変わるわけではない。

 すれ違いや勘違いなんて普通のことだし、これからもきっと誰かからは玻座真の考えを悲壮であるが断固とした意志によるものだと思い違う者が出てくるだろう。

 玻座真からしたらそこまで重いものじゃないとしても、傍目から見たら重く感じる。

 物理的な視野は広いのに、精神的な視野が狭い。

 そう言う人間であることを、残念ながら乙骨しか知らない。

 

「それで、伏黒の体を乗っ取った宿儺と対峙したんですよね? 乗っ取ったばかりだったからか真希曰く呪力操作にムラっけがあったようですが」

 

 ここで何を言っても意味無いだろうなーと思い、玻座真が話を変えた。

 変えたには変えたが、ここは聞いておかないといけない部分なのでちゃんと聞くことにする。

 

「深く戦ったわけじゃないから詳しくはわからないけど、少なくとも僕はそんな感じはしなかったかな。もう慣れたのか、何らかの縛りで制御しているのか不明だけど」

「ってことは内側から何かしてもらうパターンは厳しそうっすね」

 

 漫画的熱い展開は無さそうだ、と少しだけ残念に思う。

 

「一応聞いておくけど、受肉型の器になった人の魂も押し潰される形になっているだけで、ちゃんと残っているんだよね?」

「万……伏黒のお姉さんの体に入ったやつに関してはなんとか。二人分の魂は観測出来ました」

 

 出来なければ万の魂だけを封印すると言うことは出来ない。

 とは言え、と玻座真は懸念を口にする。

 

「生きてはいるが、精神的に死んでいる可能性は捨てきれません。虎杖のやつが特例なだけで、大抵の人は上から押される形となりそのまま沈黙死って形ですね」

「恵はどう思う?」

「意識的か無意識か不明ですが初手で抵抗出来ていた以上、呪術師であればある程度は抵抗出来るのかと。某特級呪霊の術式を食らった七海さんが即死しなかったのと同じように、生存本能が呪力でなんとか魂を守ろうとするのかと。……問題点は、その相手が宿儺と言う部分ですが」

「15本分の魂……あるいは19本分の魂ね」

「ただ伏黒は他の受肉型たちと違い羂索の無為転変による調整の手が入ってません。そこは有利な点かと」

 

 宿儺がどれだけ伏黒に目を付けていたとしても、彼は虎杖の中にずっといたのだ。残念ながら羂索のように何らかの調整や準備を出来ていたわけではない。

 いくつもの有利不利があるため複雑になっているが、少なくとも宿儺が絶対的に優勢と言うわけではないだろう。

 

「ま、結局のところ一度倒さないと話にならないってことだね」

「そっすね。早い話どれだけこっちで伏黒の救出に関して話しても宿儺を何とかしない限り、まさしく絵に描いた餅ですし」

 

 作戦会議をしている部屋の前に辿り着き、話を終える。

 五条の無下限呪術は特殊性の高い術式であるが、残念ながら魂に関しての干渉能力は拡張術式含めて厳しいものとなっている。そのため彼が出来ることと言えば、その腕っぷしで伏黒に巣食う宿儺を倒す以外無いのだ。

 それがわかっているので長々と話すつもりもなく、区切りが良い場所で話を終わらせた。

 

「ではまた」

「うん。じゃ、またね」

 

 そこで五条と別れ、玻座真は扉に手を掛ける。

 

「…………」

 

 はっきし言えば、この会議は五条が死んだ後についての話をしている場所だ。

 五条自体がそこまで気にしなくても話し合っている人たちの方が、そのことを気にしてしまう。

 デリカシーの無さが目立つ五条であるが、さすがにその辺りの察して離れてくれているのだ。

 

「――遅れました。どこまで話が進んでいますか?」

 

 そして、玻座真も五条が宿儺に殺されてしまった後の会議に参加する。

 

   ◆◆◆

 

 

 公民館の講堂に高専の面々は集まっていた。

 舞台の場所に日下部は座っており、その横に三輪が立っている。

 

「…………」

 

 見知らぬ少女。見知らぬ青年。小さくなったパンダ。雰囲気が変わった真希。

 変な恰好をしていると聞いた芸人の覚醒型術師らしき人物は見当たらない。

 他にも何人かはいないが、宿儺側の戦いに参加する人間はこっちに集まっているのだろうと当たりを付ける。

 

「なんか、二重の意味でサッパリしたな。加茂」

「お前は相変わらずだな。玻座真」

 

 渋谷で別れて以来、彼とは言葉を交わしていないどころか情報すら耳にしていなかったが、あのどことなく旧い時代の貴人を想わせる髪が短くなっていた。

 対して特に切羽詰まってない場面ではマイペースな態度に加茂は玻座真にこいつは変わらないな、と感じる。

 東西の違いはあるが同じ三年生である。そのためある程度は交流がある。

 そして玻座真と言う存在は呪術界では注目の的であったため、加茂も彼についてはもっと前から知っていた。あの伏黒恵と同じ幼少期から五条の傍にいて、何より天元に目を掛けられていたのだ。

 そのため玻座真の人となりは割と知られており……そして前線に出てこないため最近まで彼の実力は不透明となっていた。

 秤ほど破天荒ではないが、それはそれとして自分の世界と言うものを確立している人物だと言うのが加茂の玻座真評だった。

 成長していないと言うべきか、それとも昔から完成していたと言うべきか。

 少なくとも加茂からすれば玻座真は特段心配する必要のない人物であったため、今後の呪術界も任せられると考えていた。

 

「んで、どこまで話は進んだ? 詳しくは後でまた聞くけど」

「羂索は高羽と言う術師に隙を作ってもらい、乙骨が止めを刺すことになった」

「ついでに言うとそれは五条が死んだのが確定した時だな。そしてそこの鹿紫雲が宿儺と先に戦うって話になってる」

「さらにだが、私は降りることにした」

「ふーん?」

 

 加茂と日下部の言葉を聞き、疑問を含むような言い方だが同時に納得するような反応を玻座真は見せる。

 それから適当な席に座り、話の続きを聞く。

 

「それで、日車の裁判の術式による『死刑』の対象に宿儺を入れる方法を俺が提案したところで終わったっす」

「三審ね。良いと思うが」

「……思うが?」

「いや、三回まで術式を発動出来るって考えると宿儺・伏黒の術式を没収してから最後に呪力も奪えるんじゃないかって。宿儺なら罪の軽さ重さ問わず確定で有罪にはなるだろうし。……まぁ欲張りだな。あの宿儺が三回も術を食らってくれるとは思えないし」

 

 日車の言葉に玻座真は自分が思ったことを素直に口にするが、さすがに理論値の話だ。

 裁判に特段詳しくないので、本当に都合よく三審まで行けるかも不明だ。

 

「日車が当てられるよう術の練習をするとか?」

「んー……一ヶ月も時間があるなら確かに鍛錬はしたくなるが、今回はちょっとマズいかもな」

「と言うと?」

「例が呪霊と虎杖、それと倒した泳者以外無いようだから材料が少ないが……これ没収期間って罪の重さ……ってか刑によって変わる可能性あるんじゃないか? 呪力の没収自体はパチンコ屋に入った方らしいし。大量殺人の方で没収されていたら、また違ったんじゃないか?」

「…………」

 

 口元に手を当てながら、日車は考える。

 玻座真の言う通り日車は死滅回游中の戦闘は呪霊と二十人ほどの泳者、そして虎杖だ。

 呪霊は祓ってしまったし、泳者に関しても倒して放置が多かった。そのためどこまで(・・・・)自分の術式による没収が続いていたのか、彼自身も把握していない。

 

「はっきし言えば俺らも呪詛師を殺したりしている。それを対象に没収されて、一ヶ月の戦いに参加出来なくなるとか困るしな。……検証がしたい術式だが、強いゆえに検証するのが難しいな」

「そっかー」

 

 呪術師は秩序側の人間であるが、全く罪を犯さないと言う聖人君子の存在ではない。

 これが平時ならともかく時間制限があるのだからどんな罪状を引き当てるか分からない以上、下手なことはしない方が良い。

 

「あの、僕からも一つ良いですか?」

 

 手を小さく挙げながら乙骨が議論に加わる。

 

「不義遊戯を僕が使えるようになったとして、処刑人の剣で不意打ちをつけると思いますか? 不義遊戯について先輩は詳しいので、今のうちに聞いておこうかと」

「うん? んー」

 

 一瞬乙骨の言葉に含みを感じたがスルーして考える。

 

「正直言ってそっちもお勧めはしないな。どれだけ事前に決めていてもいきなり場所、と言うか視界が変わることに人は対応出来ない。体幹と反応速度、もしくは空間認識能力が高くないと場面転換に対応出来ない。むしろ大きな隙になる」

「…………」

「退避に使うならまだしも、接近として使うのならば……ここの面子だと虎杖・乙骨・真希・秤・日下部さんぐらいしか無理だろうな。普通にカウンター食らって終わりだ」

「先輩は?」

「俺は体術がな……。んで、日車さん。その辺りに自信は?」

「残念ながら俺も無いな。君の言う通り処刑人の剣を手にしたとしても、そのまま反撃されて終わりだろう」

 

 不義遊戯は強力な術式であるが、あくまでその本質はサポート。

 どれだけその術の恩恵を上手く扱えるか、と言う話になる。その振れ幅は不義遊戯は特に大きく、非常に扱いが難しい。

 特に乙骨が不義遊戯を使えるようになったとしても東堂ほど慣れていないため、下手なフェイントを晒してしまう可能性も高い。そうなると相手に自分の位置を教えてカウンターを許してしまうテレフォンパンチになりかねない。

 

「ぶっちゃけ不義遊戯に関しては最初から合わせられた虎杖(オマエ)ヤバイ(おかしい)

「おかしいって……」

「まぁ良いや。とりあえず俺は不義遊戯との連携は否定派。狗巻の言霊による行動制限の方がまだワンチャンあると思うが……そこはどうなんだ?」

「おかか」

「さすがに弱らせないと効いてくれないどころか反動でやべぇってよ」

 

 狗巻のおにぎり言語を横に座っているパンダが通訳する。

 彼の特殊言語を知らない者たちは怪訝な表情を浮かべるが、特に質問したりして話を遮ったりはしない。

 

「他に話すことは?」

「二つある。一つはこの後に入れ替え修行があり、そっちにはお前もコーチ側として関わってもらう。次に、とりあえずお前は後半まで戦いは待機って話だな」

「……後者はわかりますが、前者は?」

「憂憂の瞬間移動の術式を利用した魂の入れ替えによる鍛錬だ。詳しい話はまた話すが、お前には他の人間の基礎結界術を高めてもらいたい」

「……? 虎杖の体を宿儺が使ってたやつみたいな感じですか?」

 

 魂の入れ替えによる鍛錬と聞き、さすがに具体的なイメージが湧かない。

 過去に交流戦の時に反転術式の経験値でそれっぽいことを虎杖と話したことがあるが、もしやそれだろうかと口にしてみるが……日下部は頷く。

 

「よく分かったな。要は入れ替えて呪力操作による反転術式や結界術を体に覚えてもらうってことだ」

「…………」

「玻座真?」

「あぁ、いや。入れ替え修行の方は分かりました。ただとりあえず鍛錬に関してはまた後で」

 

 変な話の締め方をしたことに日下部は疑問を覚えるが、玻座真は本当に後回しにするらしく別の話を始める。

 

「てか、今更だが何も言わず話し合いに参加しているが……身内だけじゃないんだよな」

「ん?」

「俺は玻座真護良。こいつらの先輩で、そこの加茂と同学年の呪術高専の生徒だ。結界術の生得術式を持っていて、さっきまで死滅回游の全体結界を解体する術を編んでいたところだ。何か俺個人にこの場で聞きたいことがあるなら聞くが」

 

 その言葉に一同はあぁ、と呟く。

 事前にそう言う人間がいることは聞いていたのでこの部屋に入った時、特段何も言わなかったが……確かに何も説明なく会話を始めたのですれ違いが発生してもおかしくなかった。

 そして玻座真の言葉を聞き後ろの壁際に立っていた青年が声を掛ける。

 

「結界使い、お前に聞きたいことがある」

 

 鹿紫雲一、江戸時代の猛者。

 

「お前は宿儺の領域を凌駕出来る自信があるか? あるならお前を中心に戦った方が早いだろ。総力戦なんだろ?」

 

 彼は宿儺と戦うことを高専組と約束している。戦闘に関して結構口出しをしており、自分が宿儺と戦う時についても事前に決まりを作っていた。

 それはそれとして総力戦なんだから全員で行けよ、とは思うので素直に突く。

 

「さては君、全部一人だけで戦ってきたタイプだろ。自分側が単騎で向こうが複数はあっても、こっちが複数ってパターンが無かったやつ」

「無かったな」

「んじゃ説明するけど……ちょっと長くなるけど」

 

   ◆◆◆

 

「大勢の人間による戦いって要するに遠距離からの攻撃か、もしくは1VS1の連続だ。歴史漫画とかでも見かけるだろうが弓兵隊が並んで矢を斉射する場面も見るだろうし、それが終わると武士たちが刀や槍を持ちながら接敵するシーンも見たことがあるだろ」

「でもそれは複数対複数の話だろ」

 

 受肉型であるが器の記憶を読み込むことが出来ることから、歴史漫画と言われても鹿紫雲は何のことを言っているのか理解出来た。

 

「んじゃこれを対戦相手が一人だけになるとすると、どうなる?」

「それを聞いているんだろうが」

「……要するに自分以外が邪魔になる形だな」

「まぁ、そうだな」

「そうなるとどれだけの人間が集まっても入れ替わり入れ替わりの1VS1が行われるだけになる。特殊なヒット&アウェイだな。不良漫画とかで見たことあるだろうけど正面からの攻撃からの、次は背後の仲間による攻撃……って言う感じだな。囲んで叩くってやつだが、これには大きな問題がある」

 

 宿儺が強過ぎる、と言う話だ。

 

「戦う相手が自分たちと対等あるいは戦えるぐらいの強さならともかく、超抜的な強さを持つ宿儺が相手となると囲んで叩く、ってことが出来なくなる。速いし突破能力はあるし、むしろこっちが無理やり相手にとって都合の良い戦地に投げ飛ばされてもおかしくない。最悪仲間を盾にされるかもしれない。五条先生が先鋒を務めるが、ぶっちゃけ五条先生の攻撃に巻き込まれてしまう、どころの話じゃなくなる。さすがにあの人も仲間を盾にされて攻撃を躊躇わないってことはないしな」

「俺は躊躇わないが」

「オメーは確かに仲間じゃないから、そりゃ躊躇わないだろうが」

 

 鹿紫雲の発言に隣に立っている秤がツッコミを入れる。

 

「君風に言えば、自分の目の前に誰かがいたら攻撃の手を躊躇わなくても視界的な意味合いで障害に感じるだろ」

「あぁ、それはわかる。確かに壁になると邪魔だな。なるほど確かに他のやつがいると面倒ってのもわかる。だが話を聞く限り、お前だったらそう言うことにはならいらしいが。つーか領域はどうなんだよ」

「領域勝負なら一度やり合った時に勝ってるよ」

 

 玻座真の言葉に質問した鹿紫雲は感嘆の表情を小さく浮かべ、天使は器である来栖華の中で驚いていた。

 

「宿儺の領域は普通の仕様とは違い、外殻が存在しない代物だ」

「外殻がない? そんなことありえるのか?」

「空気そのものを台にしている感じですね。外殻がないので頑張れば逃走が可能ですが、その分だけ範囲は広いですし必中効果は生きていますし、何より領域の押し合いになりません。それにより敵の領域の外側から必中効果が乗った攻撃を結界に浴びせられる形ですね。領域内の必中効果は相殺するんですが」

「……領域の押し合いは発生しないって言うが、じゃあどうやってお前は勝ったんだよ」

「俺の結界は空間支配術によるものなので。要は空間の上書きなので、そもそも領域勝負すら実際にはしてないんすよね」

「オメーの方がもっとありえねぇことしてんのかよ」

 

 生得術式を持たぬため領域を使えぬが優れた簡易領域を使える日下部は結界術の造詣が深いと言える。そんな彼からして見れば宿儺の外殻のない領域はありえぬ神業であったが、それ以上に玻座真の方が理解の出来ないことをしていてドン引きする。

 

「とりあえず外殻がない領域の原理は把握しているので、後で見せます」

「そう言えば恐山結界で使ってましたね」

「…………」

 

 鹿紫雲は何か言いたげにしていたが、口に出さず閉じる。

 結局、足手纏いにならなさそうな玻座真が五条と共に戦地に行く、と言う選択肢を取らない理由を全部教えてもらっていない。

 完全な味方ではない鹿紫雲を警戒しているだとか、潜伏している敵に聞かれないようにしているだとか、そう言うようには感じなかった。

 特に領域の話を聞く限り、玻座真がいれば宿儺の領域を封殺出来るように聞こえる。むしろ彼がいないとマズいのではないか、と思えるレベルだ。

 

(聞いたよりも本人のスペックは低いのか?)

 

 他の人間が口を挟まない以上、玻座真の言葉には納得しているのだろう。

 回避能力が高いと聞いたが持続性が低いのかもしれない。確か近接能力も低いと聞いた。

 そうなると序盤は役に立っても早々に使い物にならなくなってしまうのかもしれない。

 後で聞いてみるか、と考えとりあえず今は横に置くことにした。

 

「とりあえず大体のことは話したが……他に何かしゃべりたいことあるか?」

「じゃあ私から」

 

 日下部が話を締める前に一人の女性――冥冥が軽く手を挙げる。

 

「君のことだから察しているだろうけど、今後羂索は我々の近くに結界を施した監視用の呪霊を配置するはずだ。それに対抗する術を君は用意するだろう」

「ま、そっすね」

「出来れば私のカラスは通れるようしておいてくれ。忙しい君に更なる手間を掛けさせるが」

「……了解です」

 

 玻座真も羂索も高位の結界使いである。

 こちらが宿儺たちの居場所を捜索出来る余力が無い上、向こうは手数を最大限利用した監視網を作るはず。

 故に結界使い同士による隠蔽と対抗が発生する。こうなるとドラマなどで見られるホワイトハッカーとクラッカーの攻防に近い光景になるだろう。

 死滅回游の結界に関しての対抗術の作成。さらには鍛錬と羂索の対監視用結界の構築。

 そこに一手間加えて欲しいと言うのだから、忙しいなんてレベルではなくなる。

 とは言え全体の方針は決まった。この場での話し合いは終わり、

 一旦解散となり、一部の者たちがまた別の場所で集まることとなる。

 しばしの休憩。玻座真としてもありがたいので立ち上がろうとしたところで、

 

「お前はこっち」

 

 日下部に呼ばれた。

 まだ色々と話すようだ。

 




何故1VS1にこだわるのか。
要約すると「射線に入るなって言ったよね?(玻座真は範囲攻撃型」「地の利を得たぞ(なお宿儺による腕力移動」「近くにいたお前が悪い(ガードベント」の可能性が宿儺の性質上高いので、その辺の管理は絶対に必要と言う話。まぁそもそも宿儺が領域と言う範囲攻撃が出来なくなった場合、各個撃破の体勢に移るからどちらにせよ1VS1から逃れられないと言う。だったらそれを前提に編成を組もう、と言う結論にはなる。
とは言え宿儺は完全受肉すると腕四本になるから二人で絶対に当たる必要出てくるんですが。

裏話をすると、玻座真の空間支配術は五条の無下限よりも上なのは何度か触れてますが、そのせいで干渉しあって邪魔し合う可能性あるんですよね。

【玻座真の決戦までのスケジュール】
・死滅回游の結界対抗策の続き
・入れ替わり鍛錬の参加(なお結界術の関係で参加出来る場合、出来るだけ参加する必要がある
・羂索の監視用呪霊対策の作成
・???との鍛錬
・???との交渉

ちなみに乙骨の五条肉体使用のお話も入る模様。マジで忙しい。
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