呪術世界の結界術師   作:ペンギンくん

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06.人外魔境新宿決戦 -肆-

 

 宿儺の最大限に強化された『解』である『次元を断つ斬撃』。

 現在のところこの攻撃を防ぐ手段は無く、前提として五条でも喰らえば死ぬだろうと言う威力……ではなく効果を持っている。

 空間を切り裂きながら突き進む性質である以上、その斬撃はモノを切り裂くのではなく“飲み込む”性質を持っている。

 つまり物理ダメージではなく破壊効果ダメージの方で攻撃を喰らった瞬間に死亡してしまう。

 斬撃のサイズもそれなりに大きいため、見えないと言う性質も含めて回避し辛い必殺技となっている。

 そんな攻撃を五条は回避した……訳ではなかった。

 

(ま、めっちゃ警戒してたしな。発動速度を高める代わりに他者に向けて放たない、みたいな縛りを即興で付けてたんだろ)

 

 宿儺は真上に向けて『次元を断つ解』を放ち、領域勝負を無理やり終わらせた。

 強化された斬撃を警戒していた五条に撃つよりも、縛りによる強化の材料に使った方が良いと宿儺は考えたのだ。

 

(さっきから思ってたけど宿儺はこう言う縛りの使い方が上手いな。使わない部分を切って縛りの損切りとして扱う感じ)

 

 高専側で縛りを多用するのは玻座真であるが、彼と宿儺の共通点は生得術式がシンプルな内容である、と言うところだ。

 シンプルな内容であるほど火力が低いものが多かったりする。それを何とかするため二人のように縛りを使用して火力・出力を上げる方法はよく見られる。

 シンプルだからこそ手を付けやすい、形を変えられやすい。

 複雑な術式に縛りで手を加えようとすると、後々雁字搦めになるパターンが多いため簡単なもの以外は適用しない方が良い。五条の無下限なんかはソレの極みである。

 

(結果的に領域内での戦いは僕の方が有利だったけど、無理やり終了させられた。そして今後も空間切断の『解』で領域勝負を中断させてくるはず)

 

 本来であれば領域による戦いは宿儺が優勢だったはずだが、様々な要因が重なり戦況は五条に傾いていた。

 そして【無量空処】は一撃でもまともに喰らえば宿儺と言えど敗北する。

 故にわざわざ領域勝負に付き合わず終わらせて、次の展開に移すことにした。

 

(――宿儺は今、コストカットや規模の縮小化をさせた空間切断の『解』を開発しているはずだ。下手に時間を掛けると僕が不利になるな)

 

 負けるではなく不利になる、と言う評価である辺りはその自信が覗える。

 だがそれでも明確な時間制限が出来たのは厄介とは感じていた

 

(領域勝負→強化『解』で中断→術式の回復を待つ。この状態でも宿儺の術式の改良は進む以上、術式が使えなくなる方がマズいか?)

 

 ダメージ量を考えるなら術式を維持したままの方が稼げる。だが時間制限を考えるなら領域による脳への一撃に賭けると言う方法もある。

 一長一短。

 さてどちらで戦おうか、と少しだけ悩む。

 基本的に五条は戦闘において悩むと言うことに時間を掛けない。

 新宿のような『どう戦えば被害を出さないように出来るか』みたいな悩みならともかく、シンプルに相手の倒し方を模索することは学生時代以来だ。

 そのことに笑みを薄く浮かべながら駆ける。

 術式が使えない今、体術と呪力強化が中心となる。

 確かにそれは五条の方が優勢であったが、残念ながら致命傷を与えられなかった。結局のところ致命傷を与えるには呪術による攻撃が必須と言う訳だ。

 

 隙を作り、致命傷を与える。

 

 戦い……ではなく殺し合いの基本とも言える部分。

 いつもであれば『殺し合い』ではなく『殺す/殺した』になってしまう最強の術師だったが、今だけは疎かにしていたものを再確認することにする。

 教師が今更教科書を真面目に読み直すような事態にどこかおかしく思いながら宿儺に接近し、勢いよく蹴りを放つ。

 それを宿儺は難なく回避するが、五条はそれを予測していたように地面を強く蹴り、破片を宿儺に飛ばす。

 

「ハッ!」

 

 足癖の悪さを鼻で笑いながら飛んでくる瓦礫を振り払い、今度は宿儺が接近する。

 五条と宿儺の腕がぶつかり、鍔迫り合いのように押し合いを始める。

 力は拮抗しており、どちらもその場から動かない。

 そのことに……宿儺は笑みを浮かべる。

 

「どうした? 貴様は今、俺の上を行けているのは体術だけだと認識していたが」

「マジ? 力比べでちょっと拮抗しただけで喜んでいるの?」

「嘲笑う、と言う意味では笑みを浮かべているな」

 

 『解』、と言う呟きと共に刃が放たれる。

 顔面に向かう不可視の斬撃を五条は首を少し逸らすだけで回避する。

 そこで観戦の者たちは五条の反応速度……ではなく、宿儺の術式が回復していること。そして無下限呪術が発動していないことに意識が向く。

 

 ――五条の術式はまだ回復していないのか?

 ――いや、わざと術式を使わず宿儺の不意を突こうとしているのかもしれない。

 

 観戦の者たちが話す中、宿儺も同じようなことを考えていた。

 先程の瓦礫にも呪力が纏っていた。少しでも威力を上げるための小細工だろうが、その時点で宿儺の術式は回復していた。だからこそ、彼はあの瓦礫の攻撃が気になっていた。

 

 これはどっちだ(・・・・)、と。

 

 正史において二人は何度も領域展開を行い、その都度焼き切れと回復を繰り返していた。だがこの世界での二人は領域展開をしたのは一度だけ。

 宿儺が認識している限りでは五条が彼の前で領域を見せたのは火山頭の呪霊である漏瑚に対しての時だけだ。その時も特級呪霊たちはすぐに撤退しているため、戦闘は中断されたことにより五条の術式の回復タイミングを把握出来ていない。

 大体領域展開によって焼き切れた術式が回復するのは五分に届かないレベルの時間だ。ただし個人差もあり、戦闘中においてはそのちょっとした時間すらも致命傷になることがある。

 極論、回復の早い方が次の領域展開を行えるのだから、1秒の時間差でさえも戦闘の優劣を作ってしまいかねない。

 

 基本的に宿儺と領域勝負をした者は死んでおり、逆に死んでいない玻座真は宿儺が負けてしまったためその後(・・・)を把握していない。さらには領域が使える上に宿儺と敵対していない術師である羂索は……残念ながら脳が異常(アレ)なので検証材料としてはあまり期待出来ない。

 要するに戦闘経験が豊富である最強の術師である宿儺は、逆にその強さのせいで術式の回復速度についての比較値と言うものを持っていないのだ。

 そのためあの瓦礫の攻撃は宿儺を油断させるためのものかどうか、と言うものを考えていたわけだが……。

 

(ま、もう回復していると考えた方が楽だな)

 

 五条の術式が回復しているかどうかを深く考えてもしょうがないと思考時間を捨て、警戒だけに留める。

 『捌』を仕掛けようと五条に向けて手を伸ばそうとするが。

 

「…………――!!」

 

 少しだけ、自身の動きが鈍いことに気づく。

 宿儺が察したことを五条は理解し、笑みを浮かべる。

 舌打ちと共にすぐさま後退しようとするが、先程とは逆に宿儺は五条に腕を掴まれる。

 腕を払おうとするが接着してしまったかのように手が離れず、そのまま引き寄せられる。

 

「お前の技だ。――――術式順転『蒼』」

 

 『集束』の力が宿った拳を鳩尾に勢いよく喰らう。

 一級上位や特級でも喰らえば嘔吐させるほどの特徴とダメージを誇る攻撃であるが、宿儺は耐える。だが問題はそこだけではない。

 お前の技、という言葉。

 

「ちっ――がぁ!!」

 

 宿儺を中心に周囲の瓦礫が集まり始める。

 壊れたコンクリートやガラスの破片が強く引っ張られ、宿儺に突き刺さろうとする。逃げようとしても宿儺の体自体が引力の中心となっているため、どこへ行こうとしても勝手に付いてきてしまう。

 まるで磁石にくっ付く大量の砂鉄。ダメージは無いが宿儺の動きを鈍らせる枷として膨らんでいく。

 

(なら――)

 

 呪力操作を術式ではなく結界術に切り替える。

 無下限防御の対策に習得した領域展延。結局五条が『解』を誘うために防御を解いていたため使う機会を失っていたが、これが『蒼』によって引き起こされている現象である以上、術式を中和する展延を効くはずだ。

 これなら術式反転を行われ『赫』による攻撃が発生してもダメージを減少出来る。

 

「……何?」

 

 体を覆うように展延を発動するが、出力が異様に低い。全くと言って良いほど五条の術式を中和出来ていない。

 何故、と思考が回りそうになったところで……原因と思われるものをすぐに見つける。

 それは五条の足下。彼を中心に円状の呪力が展開されている。

 

「簡易領域……!?」

「そっちにも結界術が得意なやつがいるけど、こっちにはそれ以上の結界術使いがいるんでね」

 

 作戦の展開上、使う機会があるかはともかく宿儺が領域展延を習得してくるのは想定されていた。五条と宿儺のレベルになると領域展延の効果は小細工に等しいものであるが、それへの対策が出来るのであればしておこうと言う話になった。

 

『対策? 展延以上の呪術を練り上げるとか……あ、いや。例えば領域展延に対して展延をぶつけると言う感じですか?』

『それはまるっきり意味無いな。展延を使う以上、術式を使えなくなる。展延対策に展延を使うってことは、単に術式使えない術師が二人生まれるだけだし』

『あ、そうか』

『使わない人間からすればその部分が抜け落ちやすいから仕方ないが……』

『……もしかして、簡易領域を使うの?』

『簡易領域……確かに領域の結界を中和出来ますが。え、本当に出来るんですか?』

『展延の使い手が少ないのもあって検証の事例が無いに等しいから参考になりそうな資料が存在していないが、そもそも簡易領域は結界術を中和するためのものだ。日下部さんは敵の術式を中和したりして自身が有利になるような戦い方をしているが……』

『今言った通り本質は結界の中和、ってことですか』

『そ。むしろこっちの方が正しい使い方だ。ま、領域と簡易の抵抗と同じで展延の方が濃いから最終的には押し負けるんだが』

 

 宿儺の領域展延を中心に五条の簡易領域が削られていく。だがその勢いは弱い。

 玻座真が言ったように展延の方が簡易領域よりも結界術として濃いため格として負けることは無いが、残念ながら宿儺が望んでいる状況にはならない。

 五条の無下限を突破出来るほどの出力を維持出来ず、領域展延の特性により自身は術式を使えない。こうなると後半のデメリットの方が上回ってしまう。

 

「ちっ」

 

 展延を止めて自身に引っ付く物に対して『捌』を使い塵にする。

 それでも新たに周囲の瓦礫がくっ付いて来ようとするが、宿儺に触れようと瞬間に細切れになる。それを見て五条は目つきを鋭くする。

 

(僕の無下限による防御みたく自身の周囲に展開している? さすがに元からある術式じゃないし効率悪そうだけど……ちょっとマズいかな)

 

 拡張術式と呼べるような代物ではないだろうが、それっぽいことを披露しているのは分かる。

 無下限による防御の自動発動は別に五条だけしか使えないと言う訳ではなく、術式ではないが日下部も自身の簡易領域に全自動で反撃するプログラムを組み込んでいる。他にも『落花の情』と言う呪力による自動迎撃技術も存在している。

 自動発動は難易度が高い上に呪力消費が多くなる技術であるが、宿儺であれば条件はクリア出来るだろう。

 

 もっとも、五条が気にした部分はそこではないが。

 

 

「術式反転『赫』」 

 

 

 手で銃の構えを作り、球状に押し固められた『拡散』の力が宿儺に接触する。

 すでに喰らった一撃。どの程度の威力か宿儺は把握しているが……状況が違う。

 

『解』

『捌――蜘蛛の糸』

 

 『赫』に向けて斬撃を放ち、さらには足下の地面に『捌』による斬撃を走らせ、今度は宿儺自らの手によって瓦礫を作り、浮かす。

 今の宿儺には『蒼』の呪力が纏っている以上、『赫』を喰らうのは危険だ。

 普通であれば『茈』のような緻密な構成の術式は手元で練り上げてようやく発動出来る高等呪術。だが五条には六眼があるため、宿儺に纏わせた『蒼』が現在どれだけ消耗しているかも把握出来ている。

 簡易版の『茈』。

 正規の『茈』よりも範囲も破壊力も弱いだろうが、それでも直撃すれば大ダメージを喰らうことは目に見えている。

 故に『赫』の接触を拒むよう先んじて炸裂させるよう斬撃を飛ばし、さらには障害物を生み出す。

 二つの妨害を用意するが――

 

「――っ!?」

 

 何故か……『赫』を喰らった。

 そして何が起きたのか確認するよりも先に『蒼』と『赫』は混ざり、小規模な『茈』が発動する。

 仮想の質量が宿儺の体に重なるよう発生し、爆発する。

 呪詞も掌印も無く、重ね合わせるのに時間を掛けていない。そのためスタートを切った時の『茈』とは威力も範囲も違う。

 だが一度目の『茈』は数キロの距離があったことからそれだけ威力が減少してしまっていた。それに対し超小規模と言えど直撃した分、むしろ一度目の『茈』よりも大きいダメージを負ってしまった……。

 

 重傷を負った宿儺は口に溜まった血を吐き捨て、その場を離れた。

 

 

   ◆◆◆

 

「今の……『蒼』による圧縮だよな?」

「そうですよ」

 

 日下部の確認するような呟きを玻座真が拾う。

 胸から脇腹、そして片腕を巻き込んで大きな風穴を開けた宿儺の姿を見て僅かに高揚しつつも、状況を高専の面々は彼らの話に耳を傾ける。

 

「前提として、五条先生の『蒼』による移動は進む(・・)ことしか出来ない。それも自身が進むことしか出来ない、と言う限定的な仕様だ」

「……ん? だが前に俺と棘は百鬼夜行の時に前線から高専に飛ばしてもらったことがあるが」

「しゃけ」

「その時は呪印で場所指定と安全性の確保をちゃんとしてたんだろ。指定先が高専だったのもあって安全なルートを改めて検索する必要もないし」

「先輩! 質問!!」

「呪印は魔法陣みたいなやつで掌印や呪詞と同じように術をブーストさせるもので、安全ルートとか云々は『蒼』による圧縮移動に他の人間が巻き込まれないようにする必要性があるってことだ。用途は変わってしまうが、新幹線と一般人がぶつからないようにするための路線みたいなものだ」

 

 虎杖の質問の内容を瞬時に察しすぐさま説明をして、話を戻す。

 

「『蒼』による移動は目的地までの空間を圧縮することによって成り立たせている高速移動だ。その移動路に何かがあれば、無下限による防御を持っている五条先生自体はともかく高速移動してきた先生にぶつかればひとたまりもない。そんな事故が起きないよう五条先生は移動路をちゃんと設定しているわけだが……今言った通り、無下限防御があることが前提の移動方法だ」

「…………」

「五条先生は出張とかで遠出する時、普通の人と同じように電車とかを使って移動する。これはさっき言った通り『蒼』による移動は接触事故の危険性もある。何度も行ったことがある場所ならともかく、あまり知らない場所に対し絶対に安全な通り道を設定することは出来ないからな」

「だが、宿儺の動きを見る限り……五条悟は動いてないように見えたが」

 

 安全な通り道を設定しながら移動する。

 玻座真の発言を聞く限り、確かに五条がその都度設定をしなくては『蒼』による移動を許されないのだろう。

 しかし映る画面を見る限り……五条は動いておらず、宿儺の方が場所を移していた。

 五条の『蒼』による引き寄せで無理やり宿儺は動かされたのだと他の者たちは思っていたが、日下部は()()()()()()()と気づき呟いたのだ。

 会話に便乗して、今まで宿儺の動きを観察していた天使も加わる。

 

「その話が本当であれば、五条悟は防御以上の無敵性を誇るようになる。一瞬だけだが宿()()()()()()()()()()()()()()()ように見えた。その時は見間違えかと思ったが……無理やり移動させられて、宿儺自身が先に放った自分の術式を喰らったと言うことだろうか」

「多分そうっすね」

「ってことは悟ちゃんに向けて攻撃すると、自分が撃った攻撃を自分で受けちゃうってこと? 確かにそれって無敵じゃん!!」

「……いや、そう簡単な話じゃないだろ」

 

 綺羅羅の大袈裟とも言える反応に対し渋い顔をしながら日下部が指摘する。

 

「最初から五条があの技を使えたなら使ってただろ。それにさっきの玻座真(コイツ)の説明からするに、自分が真っ直ぐ進む『蒼』を相手を呼び寄せる内容に変えられているのもおかしな話だ。……何より無下限の内である以上、あの空間切断の『解』は結局どうにもならねぇ」

「あ……そっか」

「ぶっちゃけますけど、あの呼び寄せの『蒼』は俺が使って見せた技ですね」

 

 反転術式で回復しつつ新たなる『蒼』の対策を考えているであろう宿儺を見ながら、玻座真は話しを続ける。

 

「入れ替え修行中に俺が五条先生の体を使ってた時に編み出した技ですね。ちなみにさっき先生が見せた宿儺に『蒼』を付与する技は、宿儺が炎の術式を使った時に見せたやつです」

「似たようなのを確か七海の奴が使えたな」

「……もしかして今まで五条のやつは『蒼』による呼び寄せを使わなかったんじゃなくて、使えなかったのか?」

 

 さらっと家入が呟いたことを一旦スルーし、日下部は質問する。

 

「そもそもあの技は俺の空間把握能力ありきで発動した使い方なんすよね。……少し話を戻しますが、五条先生は自分を飛ばす圧縮移動しか使えないんだが……要するに目的地に対しての認識能力が低いんだ」

「低い……」

「言っとくけど低いと言っても、別に極端に低い訳じゃない。能力値的な意味合いでは普通の人と同じぐらいだ。……とは言え、空間操作の術式使いとしては低いと言える」

「結局低いのか」

「低いよ。本当だったら空間系は使えば使うほど空間把握能力が高まるはずなんだ。空間を歪める以上、自然と距離感覚とかも肌で分かるようになっていくんだが……」

「……もしかして、先生には六眼があるからですか?」

「多分だけどな」

 

 自分も空間使いの一人である憂憂は首を傾げているが、内容が実戦向きではないため残念ながら共感し辛い感覚だろう。

 それはともかく、何故五条の空間感覚が高くならないのかと言う話に対して乙骨が見当を付ける。五条は虎杖・乙骨・玻座真と入れ替え修行をしたわけだが、玻座真の次に乙骨が彼との入れ替えをした回数が多かったため気づくことが出来た。

 

「そう言えば六眼って見え方が普通じゃないんだよな。どうなってるんだ?」

「えーっと、なんか視界はぼやけているんだけど輪郭は見えてて……」

「サーモグラフィーみたいな感じ、だったよね」

「話し戻すぞー。それともう一気に説明するわ」

 

 真希の言葉に虎杖と乙骨が入れ替わった時のことを思い出しながら説明する。

 そして何度も脱線して話が終わりに辿り着かないことから、いい加減玻座真は口を挟むなと言うことを伝えながら話す。

 

「五条先生の無下限は自身を中心とした空間密度を操る術式であり、俺の結界術とは違って座標に働きかける術式じゃない。X座標にいる自分がY座標に行くことは問題がないが、Y座標にいる存在をX座標にいる自分の場所に移動させるのはさっき言った空間把握能力……つまりいつも自分が使っていない感覚能力を利用しないと発動出来ない『蒼』だから、はっきし言ってそう何度も使えるモノかと言われると微妙だと思ってる。

例えばX座標からY座標に五条先生が動くならともかく、五条先生が『蒼』だけで手元の石を移動させるとなると難易度が変わると思ってくれ。自分が向かって殴るのとパチンコ……あーえっと、スリングショットで玉を敵に向けて飛ばすのとはまた感覚が違うってことだ」

「コッチ見んな」

「確かに先生が『蒼』を利用して遠くから攻撃する、みたいなことしないもんな」

「自分で殴った方が早いってのはあるだろうがな」

「――では、五条悟は使えるかどうか分からない技をあの場面で使ったと言うことか?」

 

 静かに、そして少しの緊張感を滲ませながら確認するように天使は問う。

 即ちそれは、五条は一か八かに賭けて戦わなくてはいけないほど追い詰められているのか。

 言外にそのことを含ませながら質問するが、玻座真の方はそこまで重く考えていない様子だ。

 

「どうだかね。俺の説明は五条先生が今まで使ってこなかったまでの内容で、もしかしたらアレで感覚を掴んで使えるようになったかもしれない。んで何で使ったかと言うと……ぶっちゃけ今なら使えるかも! ぐらいの感覚で使ったかもしれないし」

「そんな適当な人なんですか」

「適当だよ適当。それにまだ五条先生は――」

「話の途中で申し訳ないけど」

 

 天使に続いて会話に加わった来栖に対し五条と言う人間について話そうとしたところで、冥冥が無理やり話を中断させる。

 その言葉に全員が彼女の方を見て、

 

「向こうももう少しで始まるみたいだよ。宿()()()()()()()()が」

 

 表情を険しくした。

 

 




前回の話の感想にて、「空間に傷痕が残るなら地球自体も動いているからどこかに行ってしまうのでは?」と言う疑問を頂きまして。
そこの返信にて長々と書こうとしましたが「いや、返信で書くようなことじゃないよな」と正気に戻り、こちらで補足も兼ねて書くことに。あくまでこの世界観の~って感じのものですので、ぶっちゃけ流して良いです。理論とかではなく妄想なので。


空間と言うのは写真の連続、と言う感じでイメージです。この辺は某ハルヒを読んでいると分かりやすい気もしますが、とりあえずそのまま説明します。

日車「結局空間ってやつはどういうものなんだ? お前の主観で良い」

玻座真「えーっと……つまり、一枚の写真が空間であり、それを繋ぎ合わせたのが世界と言うもの。例えば写真Aに虎杖・脹相、写真Bには日下部さん・三輪、写真Cには秤・綺羅羅……って感じで、それが何枚も存在しているんだ。んで、その写真に傷を付けると世界の方が異常事態と認識してその傷を修復を始める……と言う感じだ。傷が付くって言い方のせいで説明が勘違いしてしまうだろうが、この空間って言うのは物理的なものと概念的なものがある。宇宙空間とかの場所(スペース)と、次元的な意味合いの空間の二つがある。
写真Aの空間には虎杖と脹相がいた訳だが、例えばトイレとかでそこを去ったとする。で、ここから空間の話だが……これ以降、二人がいた場所を『虎杖と脹相がいる場所』と言う名前となり、二人が去った場合は『虎杖と脹相がいた場所』と言う名前の場所になる。……そう、二人の名前が付くんだ。つまり空間って言うのは『虎杖+脹相+椅子+場所+空間』じゃなくて、『空間(虎杖+脹相+椅子+場所)』と言うことだ。場所だけじゃなくて他の存在もセットで初めて“空間”の定義が完結するわけだ。空間切断の傷痕ってのは今の説明だと『空間(虎杖+脹相+椅子+【傷痕】+場所)=写真A』→『空間(虎杖と脹相がいた場所+【傷痕】)=写真A』って感じになる。

……こんがらがってきたか? 要するにこの瞬間に巨大隕石が墜落してきて地球の位置が無理やり動いてしまった場合でも、それに合わせて一緒に傷痕も動く。『虎杖と脹相がいた場所』と言う部分に依存しているからだ。竜宮城ってあるだろ? 浦島太郎が亀に乗って行く場所。例えば竜宮城が地上にあり、魚や乙姫も関係が無い単なる豪華な建物だった場合、そこを竜宮城と認識出来るかどうか。周囲のモノと合わせて初めて“空間”なんだ。

空間を操る術師って言うのはつまり、この写真の中の光景を勝手に変えられるってことだ。
……少し今までの説明と変わるが、五条先生の無下限呪術。先生が写っている左側を写真Aa、敵が写っている右側をAbとする。先生側からは勝手にAa-AbをAabにくっ付けて自分の有利な状況で攻撃する。そして相手が攻撃してきたときはAaaaaaaaaaaaaaaaaa×無限-Abって感じにして無限の距離を作る。
先生に攻撃が届かないって言うのは、つまり相手側はBackspeceで消去を連打しているのに先生側も小文字のaを連打しているから大文字のAに届かないって感じだ。領域の必中効果が通用するのは、つまりこの小文字のaを無視してそのまま大文字のAに攻撃をぶつけるってことだ。

ちなみに俺の基本的な結界術は場所的な空間操作寄りで物理的、無下限と宿儺の強化斬撃は次元的な空間干渉だな。意外なことに呪霊が使う結界術は後者寄りだったりする。
異界や異空間ってのは写真の裏側の白地の部分を利用して作られる場所で、そのこともあり表側の光景と同じようなオブジェクトが広がっているわけだ。んで、神隠しって言うのは自然発生した空間の穴に落ちて異界に行ってしまい、さらにその穴が世界が自動修復してしまうから帰れなくなってしまう現象だ。こっちが呪霊の結界術寄りって評価の理由だ。土地に縛られる人外の方がそこの空間ってやつを理解したり感じしやすいのかもな。

要約すると、空間ってのは場所だけじゃなく他のモノとセットになって初めて“定義”されるものだ。分かりづらかったら空間=その場の光景、ぐらいの感覚で考えてくれればいい」


物理的や科学的なものが場所的な空間、概念や文章的なものが定義の空間って感じに捉えてもらえればありがたいです。
とりあえず長い、長過ぎる。本編で五条VS宿儺の戦いの中でツラツラと語る内容でもないので前話ではバッサリと切ってます。二次元や三次元、四次元とかについても完全に省いてますし。ワープとかSF方面の話にまで伸ばすと長いなんてもんじゃないので、書く予定は無いです。
読む方もそうだけど、書く方も大変な内容。これを本編で書くとなると他のキャラとの会話も含めて構成する必要があるので、そっちに時間取られて筆が止まると言う。
例えば「天元様の空間シャッフル、あれはつまり支配下の空間であれば入れ替えられる……空間を入れ替えるって言うとイメージが難しいかもしれないが、つまり写真Aと写真Bの位置をぺたりと貼り変えるって感じだ」と言う風に絶対脱線しますし。
ちなみに、まだ空間についての話は本編でも別の内容ですがします。なんだこれ……。

とりあえず〆ます。宿儺の指死守戦はまだ描写後です。
次回もよろしくお願いします。
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