呪術世界の結界術師   作:ペンギンくん

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『天元様は何かを隠している』
『みんな大丈夫だろうか』
『先生と予測していた通り、六眼を対策した上での呪具による封印か』
『予測した通りだった。なのに封印されたってことは……想定外のことが発生したのか』
『封印――俺なら解除出来るか?』


1.最悪と結界術師 後編

――『解』。

 宿儺が片手を銃のような形に変え、玻座真に指先を向ける。

 瞬間、玻座真は横に動いて宿儺から放たれた何か……不可視の斬撃を回避する。

 

「…………」

 

 ジロ、と目だけを動かして玻座真の姿を追う。

 続けて一回、二回と不可視の斬撃を宿儺は放つ……が、それも玻座真は回避する。

 その姿にさすがに宿儺は片眉を上げる。

 

(先程の魔虚羅と同じように斬撃が見えてる……? いや、やつの術式は結界だ。魔虚羅とはまた違う要因によって把握しているのだろう)

 

 攻撃を続けながら横目に周囲を覆っている結界を見る。

 

(理由があるとしたらコレだろう。結界内の情報を事細かく把握出来ているのか?)

 

 詳細は不明だがある程度当たりを付ける。

 結界内の空間の揺らぎなどから斬撃の発生場所・方向・大きさなどを把握している。

 不可視と言う強みを、この相手は対処出来ている。

 

「ま、そのぐらいなら特に何も思わないが」

 

 避けつつも玻座真は結界を生み出し、大きなものを出してぶつける、細いものを出して刺そうとしてくる。

 それを避けつつも宿儺も大量の斬撃を飛ばす。

 

「…………。――っ」

 

 先に攻撃への対応が崩れたのが、玻座真の方だ。

 見間違いかと思ったが空間の揺らぎが先程よりもはっきりしているような……と一瞬思うと同時に、斬撃が加速した。

 

「縛りか」

 

 呻くように玻座真は呟く。

 今では薄青色の結界として認知されているが、玻座真の本来の結界は透明なものだ。不可視と言う点は宿儺の斬撃と共通しており、やっていることは同じで不可視と言うメリットを捨てることによって斬撃を縛りによって強化したのだ。

 ギリギリ肩を裂かれる程度で何とかなったが、速度が上がった斬撃をこのまま自身の身体能力で回避し続けるのは難しいと考え、手を変える必要がある。

 

「――『結』!!」

「おっと?」

 

 いつも以上に大振りで結界を展開する。指定先は宿儺の足元……周辺全体。

 下から上へと飛び出すように巨大な結界が出現し、勢いよく宿儺の体は空中へ射出される。

 地上を走るよりも空中で回避する方が難易度は高くなり、それだけでも宿儺側の対応に遅れが生まれるが。

 

「んな!?」

 

 遅れが生まれたのは一瞬だけ。空中を蹴って宿儺は移動を始め、陸上を走っている時と同じ反応速度で攻撃を再開する。

 空中を蹴って移動するなんて芸当、漫画では見かけたがこちらの世界に転生してからはどれだけ強い術師でも見かけたことがなく、思わず目を見開く。

 斬撃が飛んできたので足元に結界を出現させ、自身も空中に上がる。

 空中を蹴って移動する宿儺に対し、玻座真は結界を展開してそれを足場に使う。

 

(当然のように空中戦をしている……。そりゃ地上よりも自由は利いていないが、こちらが優勢に傾くほどじゃないな)

 

 1から0.9になった程度では相手が劣勢になったとは胸を張って言えない。

 相手の動きを妨害するために攻撃用ではなく障害用に結界を細かく張っているが、邪魔に思うどころか途中からは玻座真同様に足場にし始める始末だ。

 それ見て相手の意表を突くために足場にされ始めた結界をタイミングを見て消すが、玻座真の心理を看破しているかのように宿儺は結界を蹴るタイミングにフェイントを入れ始める。

 

(くそ、駄目だ。向こうの対応能力の高さもあるが戦闘経験に差があり過ぎる)

 

 今までギリギリの戦いをしてきたことがないことが仇となっている。

 後方で引きこもっているか、高性能な戦闘能力から圧倒してしまうか。

 自身の結界術の強みによって大体には優勢になれる自信があるが、相性が悪い相手にはとことん勝率が下がってしまうことも理解していた。

 領域の仕様上、強敵封殺(ジャイアントキリング)は得意だが相性によっては下剋上(ジャイアントキリング)されやすい性質なのが弱点である。

 

(いま虎杖の中に宿儺の指がいくつ入ってるのかわからないが、まだ完全じゃないはず。それでもここまで不利なのはきついな)

 

 斬撃よりも身体能力の方が厄介過ぎる。

 呪術師になってから素早い相手を結界で囲えるように予測展開などの訓練はしてきたが、自身の知覚を超える相手はさすがに限界が来る。

 宿儺の呪力による身体強化以前に、虎杖の身体能力が高すぎる。

 見え辛かったり視覚外の小さな結界などは進路妨害として当てたりすることは出来るが、虎杖の体を覆うような結界となるとさすがに逃げられる。

 それももう少し時間を掛けたら、知覚外の結界すら対応し始めるだろう。

 

「…………」

 

 宿儺の方も玻座真の思惑に乗りながら、小さな結界に斬撃を当てて破壊する。

 それらの結界は自身の動きを阻害するほどのものではなかったが、それでも斬撃を当てている。

 アスレチックで遊んでいるかのように縦横無尽の動きを空中で繰り広げているが、宿儺自身は冷静に壊した結界や玻座真の様子を観察している。

 

(見え辛いが薄っすらと体を覆うような、膜のような結界を纏っているな。それで躱し切れなかった『解』を弾いている。……貫通攻撃以外はあまり攻め気が見られないのは小僧の意識が浮上するのを待っているのだろうが)

 

 交流戦の時に見た結界の圧縮。

 最初の腕を止めた時の結界、あれを圧縮すれば肘を落とせたはず。

 反転術式を使えるとは言え、宿儺の性格を考えるならあえて治さないと言う選択を取る可能性がある以上、出来るだけ重傷を負わせたくないのだろう。

 

(膠着状態になるのは向こうの思惑。領域を使ってこないのがその証拠だ)

 

 領域について宿儺は最上位の使い手と自負しているが、さすがに目の前の結界術師と競い合いに勝てるかと言われると懸念がある。

 向こうもそのことを理解しているはずだが使ってこないと言うことは、呪力消費や術式が焼き切れてしまうことを考えて、無理に倒すよりも時間切れを狙っているのだろう。

 何よりすでに一度、周囲の結界によって御廚子の斬撃が防がれているのだ。領域で倒そうとするのであれば、術式に手を加える必要がある。

 

(だからと言って再びアレ(・・)を使うのも芸がない)

 

 すでに二度、炎の矢で呪霊と魔虚羅を撃ち倒しているのだ。

 同じことばかりしているのも面白みがないと一辺倒なのをやめて、

 

(――こうするか)

 

 この場に限り、縛りを加える。すなわち斬撃の術式である『解』と『捌』だけに使用術式を限定する。

 縛りによって効力を増加させた上で、宿儺は今までのことから結界の硬度の計算を終え、

 

「『解』」

 

 とりあえず(・・・・・)二十の刃を玻座真に飛ばす。

 さらに速度が上がり、数も増えた斬撃によって大きく移動することによる回避の選択肢を奪う。

 表情を歪めながらも玻座真は足場となる結界を変化させ、大きく移動しようとするが、

 

「ここだ」

「は……?」

 

 いま出来るだけの最速の刃を放つ。

 先に飛んだ二重の刃を追い越してその斬撃は進出し……綺麗に足場となる結界を切り裂いた。

 足場を失ったことを理解した玻座真は咄嗟に自身の体自体を囲う結界を展開して落ちないようにするが、それも破かれる。

 

「…………っ」

 

 二段構え。

 一の最速の刃と、後追いの超速の刃。

 二枚目の斬撃によって展開された結界を切り裂かれ、さらには体を膜のように覆っていた結界まで切られる。

 速度重視であったためか咄嗟に庇った腕を少し切る程度で済んだが、先に放たれた二重の斬撃が襲い掛かってくる。

 先程も感じた戦闘経験の差を痛感する。

 縛りによってわかりやすくなった二重の斬撃を目くらましに使い、二の刃を隠し飛ばしてきた。

 縛りをデメリットとして終わらせずに有効活用するのは高位の術師としては当たり前のことだが、宿儺はどうにもアドリブが上手い。

 そのようなことを考えながら……もう後のことを考えるのを、やめた。

 

 

「――『絶界』――」

 

 

 瞬間、空気が冷たくなったように宿儺は感じた。

 今いる渋谷では淀みのような空気が漂っていた。

 呪霊や非術師、改造人間たちが最期に放出する呪力。血や汚物などが霧化したもの。

 それらが一気に払われたような、浄化されたような感覚。

 だが、浄化と言うには全てを無に帰したような異様な冷たさが、宿儺の肌を刺す。

 

「…………絶界、と言ったか」

 

 球状の黒い結界が玻座真を覆っている。

 あれが展開された瞬間、宿儺の斬撃は消滅した。

 そう……防御ではなく消滅だ。

 

(質が一気に変わったな。触れたものを消滅させる結界か。……内容は違うがやっていることは五条悟同様、コイツも不可侵か)

 

 どこかで突破方法を手にしなくては、と頭の片隅で考えつつ黒い結界を見据える。

 

(攻撃してくるのをやめた……不可侵に自信があるのだろう。それとも併用は出来ないのか?)

 

 足場にしていた結界も消しており、地上に降りている。

 宿儺もそれに合わせて地面に降りながら結界を観察する。

 

(地面は削れてない……最低限の選別は出来るのか? まぁ、出来なくては光や酸素を取り込めないしな。それにしても……興味深い)

 

 戦いの場であることに間違いはないが、膠着状態なのもあって宿儺はそのまま思考に耽る。

 

(本質は全く違うが消滅の術式は過去に見たことがある。だがここまで異質なのは初めて見る。……いや、これは術式の構成自体が異質なのか?)

 

 宿儺の脳は呪いの王として生きてきた知識・経験・観察力が目の前の結界術を暴こうとする。

 

(発動を渋ってた理由は? 呪力の消費量は確かに今までの結界よりも多いが、そこまで燃費が悪いほどではないように見える。手札を晒したくなかったと言う理由以外であれば何らかの縛りがあるのだろうが……)

 

 呪力総量を踏まえると燃費が悪いわけではなさそうなのに、発動を渋る。

 呪力……燃費………………名前……と考え、ふと思いつき、

 

「はっ、なるほどな」

「…………」

 

 凶悪な笑みを浮かべる宿儺に怪訝な、そして警戒を滲ませた表情を玻座真は浮かべる。

 

「呪力と言うものは負の感情から生み出すものだが……その術はさらに限定しているな」

「…………」

「拒み、絶つ。すなわち拒絶。つまり拒絶感と言う感情だけを基に生み出した呪力によって構成されている。どうだ?」

「……なんでわかるんだよ」

 

 推測と言うには妄想にも近い内容だったが、それでも宿儺は答え合わせとして問いかけた。

 それに対して理解不能と言うように玻座真は呻く。

 反対に宿儺は難問を解いた子供のように笑う。

 

(他の者も使える内容かは不明だが、奇天烈な発想の縛りだ。呪力の消費量などに関する縛りは定番であるが、さらにその手前となる感情を限定する縛りとは。渋るわけだ)

 

 実際にはもっと複雑な縛りの内容になっているだろう。

 例えば噴出されやすい負の感情と言えば怒りや悲しみが多い。特に怒りは戦地にて敵を目の前にして発出されやすい感情であり、こちらを縛りの内容にした方がもっとやり易いはずだ。

 そうじゃなくては拒絶感なんてものを縛りの内容に採用しないだろう。

 

(拒絶感なのは結界が関わっているか? 何にせよこちらの攻撃が届かず時間切れになるのは面白くないな)

 

 もっと時間があれば。面白そうな玩具を前にして、宿儺は口惜しくそう思った。

 ゆえに……最後に(はしゃ)ぐことにする。

 

「――領域展開」

「……っ!? 領域展開!!」

 

 閻魔天の掌印を組み、唱える。

 その様子に玻座真は驚愕と疑念が混ざった表情を浮かべるが、対抗して不動明王の掌印を組む。

 宿儺の力量であれば領域勝負はあまり良い手ではないことがわかるはず。そう玻座真は考えていただけに、この状況に不安を滲ませるが、すぐに何かに気づいたように苦虫を嚙み潰したような表情をする。

 だがそれを押し殺し、呪力を滾らせる。

 

 

「【伏魔御廚子】」

「【封身淵祇】……!」

 

 二人の術師を中心に、世界が塗り替えられた。

 

   ◆◆◆

 

 両面宿儺の【伏魔御廚子】は、結界を使わずに生得領域を具現化させることが出来る。

 領域と言うのは結界と言うコップの中に呪術と言う名の水を満たすものだ。

 コップの中にいる者たちは満たされた呪術の中にいる故に必中……いや、すでに当たっている状態であるし、そのコップを用意しなければ水と言う名の呪術は何にも受け止められずに拡散する。

 そのため結界を用いずに領域を具現化させられる宿儺のそれは神業であり――

 

「ケヒッ! ククク!! はははははっ!! なるほど、そうなるか!!」

 

 最高位の結界術師、玻座真護良はその神業を台無しにする。

 本来なら宿儺の領域は外殻となる結界がないため押し合いにならず、相手の領域の結界内で必中効果だけが相殺されるが、結界外の必中は相殺されない。

 そのため逃亡阻止の効果が強い領域の結界は、内部からの攻撃には強いが外部からの攻撃に弱く、宿儺の斬撃によって外から結界を壊される。

 これがよく見られるパターンであり……玻座真の領域は凌駕した。

 玻座真の結界である以上、内外両方とも硬いだろうとは考えていたが、次元が違った。

 押し合いが発生しないはずの領域同士の衝突は……宿儺の領域が押し潰されて消滅した。

 

 ここは、玻座真が展開した真っ白い空間の領域。

 

 【伏魔御廚子】と玻座真の領域が展開し合い、縁の部分が接触するのと同時に玻座真の結界が宿儺の領域を、まるでローラーで轢き潰すかのように消していった。

 さしずめ、宿儺の神業によって空中に描かれた絵を、玻座真が激流で洗い流して「ここ、俺の場所ね」と横から支配権を主張してきたようなもの。

 

「押し合い……ではなく、空間の上書きか」

 

 横暴かつ理不尽な領域。

 自身の領域を押し潰され、術式が焼き切れ、それでも宿儺は面白いものが見れたと上機嫌に笑う。

 領域の内容を見る限り強力な攻撃用の術式が付与されているようには見えない。最初から玻座真は領域勝負に自身が勝つことを理解した上での対応に見える。

 

「小僧の体をこれ以上傷つけたくないがゆえだろうが……さて、ここからどうする?」

「こうする」

 

 結界を展開する時の、いつもの掌印。片手の人差し指と中指だけを立てる形。

 何か変わったように見えないが……そう思ったところで、気づく。

 白地の世界なのでわかりづらかったが、ゆっくりと結界が狭まっている。

 

「古くから強力な魔物は封印するのが定番だろ。……虎杖の意識が回復するまで、お前を封じる」

「ほぅ、なるほど。やはり面白いな……お前は」

 

 どんどん狭まっていく結界を宿儺は眺めてから、視線を玻座真に戻す。

 

「先程の絶界を付与した領域や、他にもまだ手札があるだろう。次に会う時があればそれらも使え」

「……もうお前とは顔を合わせたくねぇよ」

 

 そう言いながら徐々に後退していき、最終的には迫る結界を素通りして玻座真の姿は消えた。

 領域とはそもそも術者が中にいることが前提の術式である。結界を素通り出来ていることも、術者がいなくなっても領域を維持していることも異常である。

 結界術をここまで極めるとこのような芸当も出来るのかと感心する。

 

「さて、思惑は阻止されたが……それなりに面白いものは見せてもらった。俺も精進しようではないか」

 

 凶笑を浮かべながら、閉じていく結界を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結界が小さくなっていき、最終的には手の平に収まるぐらいの大きさの球状になった。

 それを持ちながら長い溜息を吐き、少し瞑目してから、

 

「…………あぁあああ! クソッ!!」

 

 強く自身の髪を握りながら、思わず叫ぶ。

 玻座真は一級術師の肩書きを得るほどには能力が高く、自身が上澄み側の存在であることも自覚していた。

 だがそこに特段プライドはなく、勝ち負けに対しても被害の度合いによっては気にすることはない。

 周囲への被害が少ないのであれば、その戦いで負けても後で勝てば良い、ぐらいの感覚で戦う。何故なら玻座真にとって戦闘とは手段の一つでしかないからだ。

 ドライとまでは言わないがそこまで強い熱を持っていないことは理解している。

 それでも……今回のは堪えた。

 

「クソ。実力差はわかってたが……あぁ、ウザイ……」

 

 ずっと面白がってた。

 宿儺にとって玻座真とは敵ではなく遊び相手でしかなかった。

 あの炎の矢はもちろんのこと、玻座真が不得意としている近接戦闘すらも宿儺は封じていた。虎杖の意識が浮上しかけていたことを含めても、鋭い動きは抑えられていた。

 さしずめ外国へ旅行に行って、もうそろそろ帰る時間だから最後に思いっきり楽しむか……ぐらいの感覚のはずだ。

 既存の結界術とは違う様相から新しい玩具を与えられた子供のように楽しんでいた。

 面白いとは思っても……強いとは思われていなかったはずだ。

 そのことを最後の領域展開で理解した。

 相手の性格を考えればこうなることぐらいはわかっていたが、それでも悔しさを感じてしまう。

 力量差から、それを侮辱だと考えるほどの資格が無いことも理解している。だからただただ歯噛みするしかない。

 

「……少しゆっくりと行くか」

 

 五条先生を封印した下手人の捜索と、重傷者が出てないかの探知。

 宿儺が怪物と戦っている最中に封じてきた金髪ポニテの呪詛師と、近くで眠っている伏黒の回収。

 やることが山積みである以上、ここで立ち止まっているわけにはいかない。

 だが広域探知用の結界を使うためには汎用の結界術では厳しいため、術式の回復を待つしかない。

 先んじて行える伏黒の回収をしに行くかと、重い足を動かすことにする。

 

「…………」

 

 いま、自分が不自然な動きをしたのを感じた。

 戦闘時間は長くなかったしそこまで大きく動いていなかったが、移動までの時間と宿儺からのプレッシャーで自身が感じている以上の疲労が体に蓄積されているだろうか。

 そんな考えが一瞬で過り――すぐに戦闘態勢に移る。

 

 

「無為、転変」

 

 

 不自然な動きは、背中を誰かに触られたから。

 そして、何もしなければ魂を障られる。

 魂を触って、体を障る対人呪術。

 

「く、ググぅうウ!!」

 

 無理やり脳から体に命令を下し、前進して距離を取る。

 さらに伸ばしてこようとする敵の腕を弾き、なんとか逃げる。

 本当だったらもっと距離を取りたかったが、異常なダメージが身を軋ませ、足を止める。

 振り返ると頭に思い浮かべていた“敵”がいた。

 

「ツギハギ……っ!」

「やっほー、初めまして! 俺、真人って言うんだけど……アンタが腕の良い結界使いなんだよね?」

 

 くすんだ銀色のような、長髪。

 青年ほどの背丈なのに幼く見せる、無邪気とも言えるほどの純粋な瞳。

 だがそれらなんかよりも目立つのは……体中に走っている、不細工な縫い目。

 適当なぬいぐるみを継ぎ接ぎしたような見た目の特級呪霊、真人がそこに立っていた。

 




ここだけの話、本当は渋谷編書き終わるまで投稿するつもりなかったけど、ミスって出し始めてしまったんですよね。なので溜め込み終わっての無いので、一週間後と二週間後の投稿以降は不定期。
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