呪術世界の結界術師 作:ペンギンくん
(う~ん、術が失敗したってよりも打ち消されたかな。これは)
軽薄そうにヘラヘラと笑いながらも、冷静に状況を分析する。
『人間』が『人間』への恐怖を基に生まれた呪霊、真人。
その呪いの術式は対人特攻とも言えるものであり、人間に触れればその存在の魂を勝手に改竄し、肉体を好きな形に変貌させられると言うものである。
その術式によって真人は自身へのダメージも無効化出来る。
真人にダメージを与えられるのは現在、そもそも呪術を中和出来る機能を持つ領域を使える者か宿儺、それとその宿儺を宿して魂と言うものを認知出来ている虎杖だけである。
ただでさえダメージを与えられる者が少ないが、それ以上に真人の術式『無為転変』を防げる者はさらに減る。
『本来の自身の手で触れる必要がある』と言う条件があるが、逆に言えばその条件をクリア出来れば触れられた人間はほぼ確実に死亡する。
それを領域以外で完全に防げているのは上記に出てきた存在……自身が座り込んでいる位置にまで干渉されることを嫌っている宿儺と、虎杖だけである。
(でも、今の感触は宿儺に迎撃された時とは違う気がするんだよなー)
ではどうすれば一撃必殺の術式を回避出来るのか。
それはそもそも手で触られないようにする、と言う条件自体を潰すこと。
真人は例え現代最強の術師である五条悟さえも触れられたら殺せる自信があるが、触れられたらである。残念ながら彼の接触負荷の無下限呪術により術式の発動条件を満たせなかった。
だがそれとは別に……つい最近、発動したはずの無為転変を打ち消されたことを思い出す。
「簡易領域、だっけ? 結界術の使い手だもんな~」
少し前に京都校に所属している傀儡操術の使い手であるメカ丸こと与幸吉と言う呪術師と戦闘した。
彼は特殊な道具を使うことによって簡易領域を発動して、本来ならダメージを負わない真人にも攻撃出来ていた。
(アイツの時は簡易領域で俺の【自閉円頓裹】の効果を無効化してたけど……あれって確か夏油曰く必中効果の方を打ち消すことによって、一緒に乗っている術式効果も中和しているんだっけ。じゃあどうやって魂を守ったんだって話なんだが……まぁ少なくともあのメカ野郎よりもコイツの方が結界術が洗練されているんだろうし、どうにかして守ったんだろう)
とは言え、完全に守り切れているわけじゃなさそうだが。
玻座真の様子を見て、小さく口の中でそう呟く。
一応ダメージは入っているらしく、初手の七三術師との攻防を思い出す消耗具合だ。
「…………」
その玻座真は汗を流しながら小さく呼吸をして構える。
両手に何らかの特殊な呪力が纏い、駆ける。
「さて、どうする? 結界術師」
「…………」
先程まで領域を使っていて術式が焼き切れているためか、接触禁止の存在である真人に接近戦を仕掛ける。
その様子に真人はほくそ笑む。
(動きは悪くなさそうだけど……その程度だな。馬鹿みたいに動ける虎杖どころか、あの七三術師以下って感じだ。もっとも近づいてくる以上、無策ってわけじゃないんだろうが)
様子見のためにあえて肉体を変化させて攻撃をせず、そのままで受け身を取る。
玻座真の拳を腕で防ぎ、感触を確かめる。
(やっぱり痛みは発生している……この纏っているやつだな。ん~……これ、なんか見覚えがあるような……あーそうだ)
「領域展延……ってやつだっけ?」
「やっぱ知っているのか」
苦渋の表情を浮かべる玻座真は連続で打撃を放つが、様子見が終わった真人に難なく防がれる。
(夏油が漏瑚と花御に教えてたやつか。これ使っている間は術式丸っきり使えなくなるって聞いたけど……領域の術式焼き切れ中でもコイツは
領域展延。
領域展開の派生技であり、領域の器となる結界だけを纏い、相手の呪術を水として吸収・中和を行える技術。その性質上、結界の中を空っぽにしなくてはいけないため使用中は生得術式を発動することは出来ない。
(ま、生得術式と併用が出来ないってことの方が重視されているんだろ。使わない、じゃなくて使えない状態でも展延は使用可能っと)
玻座真に対応しながら脳裏で分析する。
そして、理解する。
(――つまり、展延に頼っているってことはまだコイツが得意としている攻撃用の結界や領域は使えないってことだろ)
ペロリ、と舌なめずりをする。
「お前、近接戦あんま得意じゃないだろ」
そう言いながら無為転変で自身の肉体を変形させる。
腕にはいくつもの棘を生やし、胴体からは何本もの槍を突出させる。
槍に対して玻座真は姿勢を低くして躱し、腕に生えた棘は横に回転して回避する。
「虎杖のやつだったらそんな回避しないで逆に殴り返してくるんだけど……アイツ呼ばないの?」
「うるせぇよ」
真人としては煽りつつ虎杖来ないかなーと言う気持ちで話しているのだが、玻座真としては苦い気持ちになるしかない。
真人は知らないようだが今、ポケットに宿儺が表に出ていた虎杖を封印した球が入っている。
封印を解除して虎杖と共に真人と戦えば生得術式は回復し、この場で祓えるかもしれない。
問題は……宿儺がまだ表に出ているかどうかだ。
封印されているからもう良いやって感じに宿儺は戻っているかもしれないが……警戒は解けない。
そして、どこか虎杖に執着している節が見える目の前の呪霊に球の存在がバレてもいけない。
「…………」
玻座真の選択肢に残念ながら逃げると言うものは無い。
それは戦意から湧き出る心情ゆえではなく、単に目の前の呪霊から逃げられるとは思ってないからだ。
一級術師七海建人の報告によれば肉体の変更は自由度が高く、動物の足などにも変形出来たと言う。
呪力強化で走ったとしても追いつかれる可能性の方が高い。
何よりこれ以上、気絶している伏黒から距離を離したくない。
そう考える玻座真に対し、真人の方も様々なことを考えていた。
(夏油との話を思い返す限り、本来なら俺との相性は悪い相手のはず。となると数分単位の短期決戦だな。領域……はむしろ駄目だな。必中必殺のスゴ技だがコイツは例外だ。コイツほどの結界使いなら簡易領域だけで耐えられるんじゃないか?)
生得術式は焼き切れているようだが、既存の結界術は当然のように使えている。
既存の結界術や反転術式は呪力操作の一環らしく、例外として使えるらしい。
(観察は終わった。今のコイツはちょっと特殊な能力を持つ……人間たち基準の、準一級って辺りか? 感覚的に三、四回ほど魂に干渉すれば中和されても殺せそうだけど……わざわざ頑張って無為転変で殺す必要はないな)
「――おぇ!!」
口を手で押さえ、何かを吐き出す。
真人の突然の奇行に玻座真は一瞬足が止まり……すぐに後ろに跳んだ。
「改造人間……っ!」
「アハぁ、正解ィ!!」
小さな細い棒みたいなものが何本も真人の中にあり、それを放ってくる。
真人の手から離れると不細工な二足歩行の化け物になり玻座真に駆けよってくる。
いち、に……じゅう、と瞬時に数えて腰を下げ、両手を左の腰横に寄せる。
――『簡易領域』
玻座真の足元に円状の光が出現する。
その円に改造人間が入った瞬間、玻座真に蹴り飛ばされる。
殴打と蹴撃を襲ってくる改造人間たちに与え、最後には改造人間を宙に浮くレベルで蹴り飛ばしている。
「ん~」
唐突にキレが上がった動きを見て真人は鼻で笑う。
あの円状のフィールドが出現し、そこに足を踏み入れた改造人間たちが瞬間的な動きによる攻撃を食らってる。
(侵入者を全自動迎撃する簡易領域か。
改造人間だけじゃ駄目か、と思い真人も加わる。
大きく膨らんだ改造人間の陰になるように位置を調整しながら右手を槍にし、放つ。
簡易領域に入った真人も迎撃の対象に入ったが、近くにいた改造人間が横入りして玻座真の攻撃を阻害する。
その様子を見て真人は横入りしてきた改造人間を左手で触れ、無為転変で右の槍に重ねるよう形を変える。
敵の攻撃からの防御、自身の攻撃の邪魔にならないよう改造し、さらに重ねることによって攻撃力増加。それらを一瞬で行い、真人は万全な状態で攻撃を行う。
「ちっ」
カウンターの失敗から瞬時に防御に切り替え右腕を玻座真は構えるが……ぐにゃり、と真人の槍は曲がる。
自身の肉体の形状変化に関しては自由自在であるため、形に関わらずその剛柔も自由である。
玻座真の腕を避けてその脇腹に突き刺す。
一般的には致命傷と言える場所に突き刺された玻座真は苦悶の表情を浮かべるが、
「ほうら。もっと痛くしてやるよ」
槍化した改造人間に仕込んでおいた仕掛けが発動する。
突き刺さった状態で解けるように広がっていき、体積が膨張する。
それを見た玻座真は無理にでも離れようとするが間に合わず、
「バーン!!」
脇腹がぶっ飛ぶ。
腹部の右側がほとんど消し飛んでしまい衝撃で左側に倒れそうになりが、
「ふん、ぐぅぅうう!!!」
踏ん張って無理やり真人の顔面を殴った。
顔面を殴打されて真人も下がったが、余裕の表情は変わらない。
(やっぱ展延だとダメージは入るか。だけど……虎杖よりかは全然痛くないな)
息を荒くしながらも改造人間の追撃を捌き、後ろに倒れるように下がっていく玻座真の様子を見つめる。
致命傷だったはずの傷は治っていき、なんとか持ち直している。
それを見て真人は頷く。
「反転術式は使えるけどアウトプットは出来ない……と」
事件発生前に呪霊側の協力者である呪詛師、夏油傑。
彼と話した内容を頭に浮かべる。
◆◆◆
とある場所にて、一人と三体の呪霊が机を囲んでいた。
額に縫い目がある呪詛師、夏油傑。
人間の負の鏡面として生まれた呪霊、真人。
頭部が山のような形になっている単眼の大地の呪霊、漏瑚。
森への畏怖から生まれた、目の部分から枝を生やした呪霊、花御。
そこにいる人間と呪霊たちは『UNO』と呼ばれるカードゲームをしている。
「夏油~そー言えばさ、五条悟以外にさっさと殺した方が良い奴いんの?」
「さっさと、か。優先順位と言う意味では、個人的には玻座真護良って言う高専の術師を抹消したいかな」
戦闘のために人間の文化を学ぶ一環のためのゲーム。
色々なゲームをしつつ大事なことを話すことが多い。彼らはやることが多いため、出来るだけ時間を有意義に使わなくてはいけないのだ。
「ハザマ……そいつはどう言うやつなのだ。強いのか?」
「高専側の面子としては確かに上澄みだけど、特級に肩を並べられるほどじゃないかな。忙しくて前線に出る機会が少ないみたいだから奥底までは把握出来てないけど……強いと言うよりも上手いと言う類じゃないかな」
「上手い、ね」
夏油の発言に漏瑚が質問したが、返答内容から自分が求めるようなものではなかったのですぐに興味を失ったようだが、最初の質問者である真人は関心を抱いた。
「器用ってことだよね? どんな術式持ってるの」
「彼の生得術式は結界だよ」
「結界? それって“帳”だとか領域とかの?」
どんな奇天烈な術式が出てくるかと思ったら、むしろ聞き慣れたもので拍子抜けする。
「そうだね。そう言う基本的な結界術に、彼の場合さらに細かく結界を展開出来るようだ」
「うーん……強いの? 結界が得意ってことは領域は使えそうだけど」
「さっきも言ったけどちゃんと上澄みだよ。ただどちらかと言うと戦闘能力よりも面倒臭く思っているのは、私の計画に対しての脅威としての面だ」
ポイ、と手札を場に捨てるように投げながら話を進める。
「今回……と言うよりも今後も行われる私の計画は大体が結界が関わってくる。渋谷でのことしかり、五条悟封印しかり」
「……獄門彊か」
「そ。あれも結界の呪具だからね。さすがに遠隔で封印を解除されるとは思わないけど、奪われたら瞬時に解読されて解放される可能性があるからね」
漏瑚の鋭い発言に夏油は頷く。
「基本的には現場に来ることは無いだろうけど、五条悟が封印されたと聞いたらさすがに来るだろう」
【蟶ウ繧帝剄繧阪☆莠亥ョ壹↑繧薙〒縺吶h縺ュ?*1】
「さすがに高専側も“帳”を放置しないだろうし……何より向こうには天元がいるからね。“帳”の中で何が起こっているかわかるから連絡出来ないようにしていても耳に入るだろう」
玻座真ほどの結界使いなら“帳”が張られていても侵入は容易いだろう、と評価をする。
「と言うか、渋谷後にも何かするんの?」
「大きな結界に人間や呪霊を閉じ込めて殺し合いをさせるつもりだよ」
「へぇー! 面白そうじゃん!!」
「ただ殺し合いを強制させるためのルールが結界に付与されているからね。……私の推測が正しければ、半年もあれば玻座真護良の実力なら安全に解体されてしまうだろう」
「なるほどねぇ。楽しそうなゲームだけど、そいつならゲーム盤自体を壊せちゃうってことか」
殺し合いを強制させるゲーム……《死滅回游》。
その本質を語ることはなく、真人の興味を引くような表面上の内容だけを教える。
どうせ《死滅回游》までにはここにいる連中とは関係が終わっているだろうし。
【縺昴l縺ァ縲√◎縺ョ繝上じ繝槭→險?縺?ココ髢薙?縺ゥ縺?@縺セ縺呻シ溘??謐懊@縺ヲ谿コ縺励↓蜷代°縺」縺滓婿縺瑚憶縺?s縺ァ縺励g縺?°*2】
「数少ない戦闘報告書を見る限り、結界で自分を守りながら、別の結界で相手を囲んで圧縮・消滅させるって言う戦法を取るっぽいから……結界の防御力を突破できる火力が必要だね」
「ん~……なんか、五条悟みたいな戦い方? てかもしかして俺、相性悪い?」
それって触れないってことだよね、とひらひらと自分の手を見せながら言う真人に夏油は頷く。
「そうだね。無為転変で触れることが必須な真人とは相性悪いかな。ついでに言うと複数の敵も大きな結界で囲んで倒すって言う技が出来るっぽいから陀艮も厳しいかな。花御は……相性は別にって感じだけどお互い硬くて泥仕合になりそうだね」
「改造人間を大量に放っても駄目そう、と。となると、漏瑚?」
「うん、戦うとしたら漏瑚が妥当だろうね。火力もそうだし、領域も展開する気配を感じたら逃げられるだけの速度はあるだろうし」
「……領域の押し合いはやはり厳しいか?」
ポイ、と真人が放ったプラス四のドロー4と言うカードに対し、夏油もドロー4を投げて受け流す。
カードを八枚引くことになった漏瑚は渋い顔をしながらも質問をする。
「厳しいどころじゃないかも。五条悟も結界の押し合いだと負けるんじゃないかな。……私も駄目かも」
「なら、やはり儂が対応するのか?」
「いや、さっきも言った通り絶対に来るとは限らないからあまり一つのことに拘泥したくないんだよね。見つけたら戦うぐらいで……っと。そうだ」
危ない危ない、と言いながらとある情報を口にする。
「彼、反転術式のアウトプットが出来る可能性あるから気を付けてね」
「一番大切な話ではないか!!」
「なんか曖昧な言い方だね。どう言うこと?」
反転術式のアウトプット。
生成した正エネルギーを外部に与えることによって治療が出来るが、それ以外にもマイナスエネルギーである呪術の中和や呪霊を祓うことに使える希少技。
特に呪霊は等級に係わらず特攻になるため、漏瑚が叫ぶように重要なことである。
だがそれ以上に真人は夏油の変な言い方に首を傾げた。
「報告書によると結界に反転術式を付与して壊れた建造物とかを修復しているらしいんだよね」
「俺ら呪霊だから反転術式は絶対に使えないからわからないんだけど、反転術式ってそこまで出来るの? 生物の治療は出来ること知っているけど」
「初めて聞くケースだね。無機物を修復する呪術は見聞きしたことあるけど、少なくとも反転術式を使っていることは間違いないっぽいよ」
「術式反転?」
「かもね。ただ結界を術式反転したらどうして修復術式になるのか不明瞭だけど。はい、UNO」
残り二枚のうち、スキップのカードを出してリーチ宣言をする。
次の手番で残りのカードを出せたら勝利、と言うところで読み合いが始まるが漏瑚は跳ばされ、花御は普通のカードしか出せずに終わる。
「……なぁ、夏油。そいつって虎杖と仲が良かったりする?」
「宿儺が縛りを結ぶための人質かい? 微妙かなぁ。多忙らしいし上級生ってこともあってそこまでむしろ会う機会が少ないんじゃないかな。まぁ、それもあって多分宿儺の地雷対象から外れるだろうけど」
「ふーん」
計画に支障を生み出すが、捜すのは苦労するし簡単には倒せないし、と言う自分たちに対して鬱陶しさが限り無い存在。
だがその存在を聞いて真人は何故か笑みを浮かべていることに夏油は気づく。
「真人、何か企んでいるね?」
「いや~? そんなことないさ。……あ、黄色」
苦笑にも似た笑みを浮かべる夏油に対し、真人も腹の中を隠そうともしない笑みを浮かべながら、場にドロー4を出した。
◆◆◆
(虎杖捜すために地上に来てみたけど、見つかってラッキー。分裂して捜そうと思ったけど……結界使いと戦うことを考えてやっぱそのまんまで来て正解だったな)
夏油が調べた限り、リストの中には玻座真の名前が無かった。
だが後から来る可能性が高い以上、やはり地上にいる方が遭遇率が上がる。
高専の方向を考えればどの位置から来るかも検討が付くため見つけるのは容易かった。
何かと戦闘しているのは外から見てわかったため、割れていた地面に潜って一息つくのを待っていた。
(相性最悪でも、五条悟みたくずっと不可侵の呪術を展開しているわけじゃない限りどこかで隙が出来るはず。そう思って見張る予定だったけど……初っ端から領域使ってくれたおかげで戦えている)
里桜高校とメカ丸戦で領域を使った後の感覚から展開後は、生得術式が焼き切れて術の発動が困難になることは理解している。
脳の構造によるのかそれとも複雑な術式ゆえか五条悟は術式の回復が遅かった気がする。逆に真人は早い傾向があり、それが自身の強みだと理解している。
だからこそ高校では逃走が出来たし、メカ丸の時は死んだふりによる騙し討ちが出来た。
冷静に努めようとしてもどこか焦っている様子を見せるからには玻座真も特段術式の回復が早いわけではないはずだ。
(だがこっちも時間がない。一、二で小突いて三でトドメを刺す)
一で体の形を変えて広範囲攻撃、二で広げた先から改造人間を追加で放出、三で近づいてトドメ。
頭の中で勝ち筋を組み立て、まだ残っている改造人間を
玻座真はその改造人間を倒し尽くすが、その改造人間で視界が遮られた一瞬のうちに真人は追加の改造人間を手の中に隠す。
「……っ!」
「うん?」
最後の改造人間が倒される瞬間、その手が何かを弾いた。
玻座真のポケットから小さな水晶玉のようなものが落ち、カツンカツンと転がっていく。
呪具か何かか? と一瞬真人の視線がそちらに行くが――
「――黒姫! 追え!!」
今までの雰囲気を壊すかのような叫びに、真人は視線を玻座真に戻す。
その彼の傍から突如漆黒の鯉が出現し、空中をスイスイと泳いで水晶を追う。
式神か契約した呪霊か。呪具含めて今までどうして使わなかったんだろうと再び怪訝な表情で水晶に目をやり、それが真人が潜っていた地面の割れ目に入っていく。
地下に行っちゃったなーと他人事のように考えながら視線を戻し、さぁ形を変えようと呪力を体に巡らせようとしたところで……玻座真の方が先に呪力を空間に巡らせた。
「“帳”」
「……? って、はぁ?」
玻座真がいつもの片手印を構えた瞬間、術式が回復したかと真人は構えた。
だが回復したわけではないが、想定外の展開に真人は驚愕する。
『帳』。
真人も何度か見たことがあるし、この渋谷にも張られていた広範囲結界である。
基本的には一般人の目から呪術師と呪霊の交戦を隠蔽するために使われているものであるが、真人たちは専ら相手の逃走を遮断するためにこの結界を使っている。
その黒い結界がいま、自分たちを覆っている。
直径3m、高さ2mに届かない……檻。
「
「得意な
展延を纏った手をポキポキと骨を鳴らしながら玻座真は先の様子から一転、落ち着きながら構えた。
元々渋谷編を書いて、主人公は羂索から身を隠すことも含め天元様の予備機として戦地から引っ込んで、あとは原作通りの展開……の予定だったけど、原作の方で羂索が対処可能と判明してしまったので割と主人公が死滅回遊にも参加出来そうと構成練っているところなんですよね。
この作品自体は実のところ新宿魔境の中盤ぐらいから考えるだけ考えてはいた作品でして。
何が言いたいかと言うと、このまま短編カテゴリーで良いのだろうか、と言う。