このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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このリコリスのパンツにスティールを!
この平和な異世界におさらばを!Byカズマ


「『スティール』ッッ!!」

「パ、パンツ返してぇぇええ!!」

「「「ヒャッハーー!!」」」

 

 

これはとある事件がきっかけで不幸にも死んでしまった俺が異世界転生し、何やかんやあって魔王を討伐し、それを祝した宴会がアクセルの街で開かれた時のこと。

俺は一度死んで……いや何回も死んだ気がするがそんなことはおいておいて、アクアの蘇生魔法によって息を吹き返した勇者カズマが主役のはずだったはずだった。

……そう、はずだったのだ。

 

 

「かーじゅましゃん、めぐみんから高級シュワシュワ、ドラゴン殺しをもらってきたわ~! しょーがなく寒そーに縮こまってたかじゅましゃんにあげるから元気らしあさいってぇ!」

「何だ? 一人ぼっちしてるのを笑いに来たと思ったらアクアらしくもなくシュワシュワくれるなんて……偽物じゃないよな?」

「罰当たりよぉ! どこからどー見ても麗しいみじゅの女神しゃまでしょ! ほら生き返ったんらから崇めなしゃい!」

「うん、そーだな」

 

 

こんなぐでんぐでんに酔っぱらって自己顕示欲激しいヤツは、俺が転生特典として堕天させてやった酒と芸をこよなく愛し、不幸と借金に愛されたトラブルメーカーな駄女神、アクアしかいない。

さすがアクシズ教の御神体であらせられる酒カミ様だ。

 

 

「せぇっかくこの女神アクアさま直々に生きとし生けるものに祝いの花鳥風月を舞ってるんらからぁもっとシュワシュワ飲んれ楽しみなしゃいな! ……まあクリスのパンツをスティールして女性冒険者から物投げられてギルドから追い出されたのはいいツマミになったってわらしが笑ってあげるからクピ、クピ、ぶはぁ」

「ありがとう……何て言うと思ったか! 結局笑いに来やがっただけの駄女神酒臭っ!?」

 

 

顔を真っ赤にして俺にもたれ掛かってくる見た目美しい女性。

これだけ聞けば雰囲気あるのに涎垂らしながら泥酔しているアクアという前提が加わっただけで色気もクソもない。

というか俺がギルドの前で一人寂しく寒空のなか体育座りしてた小一時間、ずっと呑みまくってやがったな!?

こちとら寒くて酔いから覚めて凍えてたってのに。

そんな凍えた体を暖める差し入れの酒に感動してたのに。

その俺用に差し出した酒も自分の胃のなかに流し込んでいる駄女神……マジで女神チェンジを希望する。

 

……いや、確かに勝利の美酒に酔ってテンションあがってダストに促されるままにクリスにスティールをかましたのとその後反抗してきた奴らのパンツをスティールしようとしたのは悪かったと思う。

けど流石に今回の主役にこの仕打ちはあんまりだぁ!

きっとギルドの中ではめぐみんが今回の活躍を中ニチックに豪語して持て囃され悦に入って、王都ではお城でダクネスがアイリスのところで貴族の連中どもにモテモテで満更でもなく顔を赤らめているに違いない!

クソォ、あいつら見てくれはいいからイケメンに言い寄られてチヤホヤされているに違いない、うらやましすぎるしモヤモヤする。

 

 

「もぅれ、みんなれきあがっちってるからみんなも笑って許してくれるれしょってめぐみゅんがカズマのこと迎えに行ってきたらって……。ついれに吐いてきてくらさいって言ってたけろ意味わかんなかったから一緒にもろりましょう?」

「……そうだな、戻ろうか。にしても呂律ヤバいけど大丈夫か? ほら、肩貸してやるから捕まれよ」

「もぉ! かじゅまもわらしを酔っぱらいみたいにしてぇ、まらまらへっちゃらなんらから!」

「はいはい」

 

 

酔っぱらいの戯言を聞き流しつつ仲間の暖かさを感じ、嬉しいやら何やら……

アクアからお酒を取り上げギルドの扉を開けると……

 

 

「おろろろろろ……」

 

 

隣にはギルドの床に汚ねぇ虹の花鳥風月をぶちまけるアクアが。

結構ガッツリ目に俺の服に貰った吐瀉物とギルドのみんなからの冷ややかな目を見て、俺は現実逃避するために深呼吸し、ドラゴンスレイとか言う高級シュワシュワを口に付けた。

 

アクアと間接キスしたとか甘酸っぱいことを一切、全く、微塵も考えずに飲んだそれは、喉ごしスッキリで変な癖もなく一生飲み続けても大丈夫そうな

 

水だった。

 

 

 

「くそったれぇぇええ!!」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「ぐび、ぐび、ぐび、ぷはぁ……ううぅ、ウィズ聞いてくれよぉ! みんな俺のことを指差してこう言うんだ、クズマ帰れ、カスマ迷惑かけんな、ロリマもういっぺん死んでこいって!」

「それはそれは、何回聞いても酷い話ですね。それはそれとしてそろそろお酒は飲み過ぎなんじゃ……。ほらよく言うしゃないですか、お酒は飲んでも呑まれるなって」

「いいや、まだまだ! 悲しき定めを背負った俺は酒飲まずにはいられないっ!」

「そ、そうですか。……あの、そろそろ夜も深まってきましたし、アクア様がいるせいでピリピリしますしそろそろ……」

 

 

あの後、ピュリフィケーションを唱えられないほどぐっすり眠りやがったゲロ神様に代わって掃除したのに、ギルドから再び追い出された俺。

悲しみに暮れ、汚された服からジャージに着替え、その辺の店で安酒買って何とか頼りになるウィズのところでアクアを寝かせ、飲み直し。

ウィズがそろそろ飲みすぎだって心配してくれて優しい。

優しさと酒の暖かさがしじみ汁以上に身体中に染み渡るがまだまだ俺は酔ってない!

呂律もしっかりしてるし、意識もしてしっかりしてるし、ウィズの優しさもわかってる。

 

 

「ヒック……もうこんな世界嫌いだ! 何が魔王だ! 何が勇者だ! 本当ならまともな美少女たちとイチャイチャハーレム生活、そんな異世界ライフを満喫する予定だったのにぃ! こんなことになるんなら日本に帰っておけばよかったわ! ぐび、ぐび、ぐび、ぷはぁ……ううぅ、それでなぁウィズ聞いてくれよぉ! みんな俺のことを指差」

「ほえぇ!? じゅっ、11回目!? か、カズマさん、そろそろギルドに戻りませんか? アクア様とかめぐみんさんがきっと探してますよ!」

「ええー、嫌だよぉ、だって帰ったってギルドの女性冒険者にまたいじめるんだ……」

「ほ、ほら、男性冒険者の方もいらっしゃいますし……」

「アイツらは面白がって女性冒険者に同調しやがるんだ、ううぅ、薄情な奴らだよ! アイツらがスティールしろって催促したくせによぉ! ぐび、ぐび、ぐび、ぷはぁ……ううぅ、それで! みんな俺のことを指差」

「ああっ! ループから抜け出せません!? こ、こうなればとっておきの奥の手です! カズマさん! こちらの魔道具を使ってみてください! きっと気にいりますよ!」

「いやいいよ、どうせウィズのおすすめ商品は粗悪品ばっかだし」

「ひ、ひどい! せっかく異世界に行ける商品なのに!」

「……今何て?」

 

 

俺の耳に間違えがなければ日本に行けると聞こえたんだが。

 

 

「い、いいや騙されないぞ! 前にも同じの神器であったよな? 今回も記憶がすっぽ抜けたり金が勝手に消えたりするんだろ!」

「ふっふっふっ、馬鹿にしないでください? 奥の手と言ったじゃないですか。今回は前回の上位版を遺跡から発見したんですよ、そんな欠陥ないに決まってるじゃないですか!」

 

 

……実に怪しい。

あのウィズがそんな素晴らしい魔道具を探し当てるなんて……そう、普段の俺だったらこう思って使用するのを思い止まったのだろう。

でも今日の俺はちょっぴりのお酒と大きな悲しみのせいで正常な判断が出来なかったんだと思う。

 

 

「今回もニホンという世界らしいですがどうやらパラレルワールドら……」

 

 

日本にデメリットなしに行けると知った俺は説明を聞くことなく、ボタンを押した。

 

 

「ああっ! 設定しないで使っちゃったんですか!?」

「おお、すげぇ、体スケスケでウィズみたいだ!」

「わ、私はアクア様のせいで、ってそうじゃなくて! 初期設定では1年間滞在なのでその間戻って来れないんですよ!」

「大丈夫だいじょーぶ! 何かあったら家族もいるしそれを当てにするからさ」

「そ、そうではなくて……!」

 

 

ウィズが何か言いかけるのを聞きながら楽しみだなぁと悲しみを忘れるためにこの素晴らしい世界から日本へ旅に出かけることになった。

 

さらば異世界!! こんにちは故郷!!

高校生としての日常、かわいい女子たちに囲まれて過ごす生活が、今始まる……!

 

 

 

……なんてことなかったよ、こんちくしょーッ!!

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