俺は寮に帰ろうとして……頭がおかしい爆発アフロ野郎と遭遇してしまった。
……別に遭遇しようとして遭遇したわけじゃない。
ただ、駅前の方がなんだか野次馬だらけで混雑してたから、何かしらの危険があると思って避けた結果なだけだ。
目の前のこの人は敵感知スキルに反応はない。
……が、見ただけでわかる、ヤバいやつやん!
その緑アフロ……名前わかんないからぶろっこりーさんと呼ぶことにするが、ぶろっこりーさんの額からは結構な量赤い血がダラダラ流れていて、何かの実験で失敗したのか頭が超絶アフロで、凶悪な目つきをしていた。
「……って頭から出血してる!? た、助けるべきか!? いやいやそれともヤクザみたいな見た目してるやつに恩を売っても変なことに巻き込まれそうだし見なかったことにしておくか!? でも放置したら死んじゃうかもしれないし……一先ず『ヒール』ッ!! 『ヒール』ッ!!」
「ん……何だァ……?」
「あ、だ、大丈夫ですか!?」
「ガッ!? 耳元で大声出すな、るせェッ!?」
思った以上に主人公感あるいい声で心臓が高鳴る。
目と目が合う瞬間好きだと気づいた……
じゃなくてぶろっこりーさんの敵意、警戒心マックスな鋭い眼差しが俺を射貫く。
……視線で殺せそうな圧を感じてちょっとちびったかもしれない。
いや、きっと俺の膀胱括約筋くんが駄目でも尿道括約筋さんが第二のダムとして止めてくれてるはずだ!
「ひ、ひぃい!? す、すみませんでした!?」
「って何だァ? 頭が軽い……? ってああ゛ん……? テメェ、誰だァ? 見せもんじゃねェぞ!」
「すみませんでした。一応助けたの俺だけど傷ついたんで帰ります……」
「何だァ……もしかして手当てしてくれたのかァ?」
「す、すっすすすみません素人が勝手なことして! 今すぐ救急車を……」
「そんなもんいんねェよ。まァ落ち着いて話聞けよ? 俺ァ耐久力にゃ自信がある。傷にツバでも付けときゃ治んだろ」
「いやいや、その傷はどう見たって重傷というか命に関わる具合ですよね!? やっぱすぐに救急車を……」
あくまでヒールは初級の回復魔法だ。
頭から大量出血したヤツに対してどれだけ効いてるのかわからないし、その場しのぎの可能性だってある。
念には念をってやつだ。
そんなことを思って携帯を取りだし、110に電話をかけようとしたその時。
「呼んだらぶっ殺すからんな? それと顔を見られたからにゃ、逃げても殺す」
「り、理不尽!? というか銃で脅すなよ警察呼ぶぞ!? そもそも助けようと悩んでこんな恩を仇で返されることってあるか!? ってそのフクロウの……」
ぶろっこりーさんの胸を見ると見覚えのあるフクロウのペンダントが。
そう言えば吉松さん、「類い希なる才能を頭が狂っていようと、犯罪者であっても、非人道的な才であろうと素晴らしい神からの贈り物を支援する」って言ってたけどマジでヤバいやつの支援してんなよ!?
こいつには何かしらの才能があるってことになるが一体何を……?
「お、コイツのこと知ってんのかァ?」
「ま、まあ一応は……。貰った直後に発信器ついてると思って投げ捨てると勝手に戻ってくる呪いのアイテムですよね? あの、めっちゃ大ケガしてるけど、一体どんな才能で支援されたんだ? ケガと関係あんのか?」
「なんだその呪いみたいな機能、俺ァ知らねェぞ……」
「……聞かなかったことにしてくれ」
「……まあいい。そんで才能がなんだったかだっけかァ? 自慢じゃねェが生まれつき俺は耳がよくてな……支援として目ェ悪かったから治してもらったんだが……」
「そ、そうなんですね! ってどうして大けがしたのか理由がわからないんだが!?」
「……そう言えばさっき、もらったとか言ってたな? もしかして、テメェもあのイカレ組織から支援受けたアランチルドレンかァ?」
ヒィ!?
テメェもってナニ!? なんか急に眼光が鋭くなったんですけどッ!?
どうしてそんな怖い感じで俺のこと見るんだ、ただ俺はアラン機関のペンダントの話題を……って、ま、まさかこいつの地雷ってアラン機関だったのか!?
「べ、別に支援されたくて受けたわけじゃ……。ただ生き延びる手段がそれしかなかっただけであんな怪しい組織の支援を受けたかったわけじゃないんです!」
「誰もそんなこたァ聞いてねェンだが……。しっかし、テメェもそうなのかぁ?」
「そうなのかって何が!? もう俺はアラン何て知りませんし普通の平和を願ってる一般男子高校生なので失礼しましt」
「ああ゛……まさかオメェ……!」
「ひぃぃいい!? ご、ごめんなさい、何だかわかんないけど謝りますんで見逃してください! 見逃してくれ……」
ない? そうですよねーわかってましたはい。
だが、まだ俺は諦めちゃあない!
ギラついた目がさらに見開かれて……何とかして逃げ出さないと俺の命の保証がないからな、もうこうなったら逃げるっきゃない!
これ以上変なことに巻き込まれて平穏を崩されないよう会話の勢いに任せてヤベェやつから背を向けて勢いよく脱兎のごとくダッシュしようとして……
「待てやテメェ……なァに逃げようとしてんだァ?」
「べ、べっべべべべ別に逃げようとしてませんて、何言ってるんですかそんなわけないでしょう!? あははは……」
肩に手を回され、回り込まれた。
またしても、俺は逃げれてなかった。
くそっ!
どうしてこうもアラン関係の人らは肩に手を置いて逃走スキルと潜伏スキルを無効化してくるんだ卑怯だ!
何なの? もしかしてアランって現代の魔王なの? 逃げようとすると回り込んで絶対逃がしてくれない魔王なの!? それが世界各地にランダムに何十体もいるの無理ゲーすぎんだろ、運営バランス調整しやがれ!
こ、こうなったら最終手段だ!
油断を誘うための土下座謝罪してからのクリエイトアース&ウィンドブレスの目くらましコンボをお見舞いしてやるっ!
そして警官のとこに行って刑務所に匿ってもらうしかない!
かかってこいやああああああッッ!!
と、完璧なスライディング土下座をお見舞いしようとした瞬間。
「オメェもアラン機関ぶっ壊したいと思ってたのか!」
「ごめんなs今なんて?」
……確かに怪しいとは言ったけど、別にぶっ壊したいまで言ってない。
なんかあらぬ誤解を受けている気がする……が保身のためにあえて何も言わないでおこう。
「思えば俺とオメェは似てるとこばっかだよなァ?」
「そんなことないと思う」
「アランチルドレン、アラン機関を嫌って、極めつきに平和が大好きときた。……もしかしてオメェも不法滞在かァ?」
「そ、そっそんなこと……」
「あるんだろォ? まァ、別にテメェを取って食おうっつってる訳じゃねェ。さっき普通の平和を願ってるっつったろォ?」
「言ってないです」
「言ったろうが……まあいい、言いたかったのはテメェと俺ァ同志だっつうこった」
「……ど、同志!?」
俺、「普通の平和を願ってる」って言っただけでヤバそうな爆裂ぶろっこりー頭に同志認定されたんだが!?
こんなナツキ何ちゃらより眼光が鋭いペテルギウス・ロマネコ○ティ声のやつと志を一緒にしたくねぇよ!
……いやまてよ?
もしかしてだが、「普通の平和を願ってる」って部分に反応したってことは……この人は顔に似合わず平和を願うラブ&ピースな温厚主義者なのか?
いや、不法入国してる時点でおかしいけども。
「俺ァ真島っつうんだが……そうだな、言わば革命家、みてェなもんだ。」
「世界平和願ってる割にバリバリの過激派だった!?」
「テメェの名は?」
「……タナカd」
「嘘だろ、目ェ泳いでるぞ?」
「……カズマです」
「カズマか……それは本当っぽいが、今度は嘘つくなよォ? 俺は短気なんだ」
「……ワカリマシタマジマサン」
「そんで、話の続きだが、今の崩れた世界のバランスの秩序を取り戻さなくっちゃいけねェ……そのために俺ァ命を賭けて戦争激しい外国から日本まで……この日本の悪しき風習を終わらせに来た」
「み、緑髪のシャ○クス!?」
ラブ&ピ-スじゃなくてワン&ピースだった件。
どこぞの海賊の「この戦争を……終わらせに来た!!!」みたいなこと言って、その職業は革命家……
あ、頭バグリそう……
というかこの日本、今んところ平和なんじゃないのか?
確かに銃刀法とか緩いし、暴力沙汰なんて昨日あったばっかだけど異世界に比べれば……
大して変わんなかったわ。
まあ、魔王がいて、常に戦争状態だった向こうと比べればちょっとくらいましな気もするが……
「なァ……俺の仲間にならねえかァ?」
「えーっとど、どうしよっかなぁ? 一応俺は働いてるし体力ないし力になるどころか足引っ張っちゃう気がするんだけどなぁ……ってことでこの話はなかったことに……。あの……なかったことにって言ってるんですが? 肩から手を離してくれませんかね? そろそろ眠いし変なことに関わりたくない……って話聞いてるか? あの、離してくだ、はな、離せっ、離せよコラッ!」
「落ち着けって。別に戦闘は向き不向きがあるんだ、端っからモヤシみたいなテメェにはやらせる気はなかった……が、思った以上に力あんじゃねェか。ソッチ方面でも期待できそォだなァ?」
あ、アカン!
本気で抵抗したせいでどんどんおかしな方向に行ってるぞ!?
そもそも吉松さんからもらった呪いのアイテムは俺が銃弾を回避スキルで避けきったから貰ったのであって俺自身にはそんな戦闘に関する才能はないんだ!
戦闘になったら真っ先にダクネスを盾にして、俺はずっと後ろの方から狙撃するだけだったし、アクアに筋力強化魔法のパワードを重ねが消してもらわないと射程距離が全然出ないほどだし、大体、めぐみんが爆裂魔法で大物は全部持って行ったせいで影が薄すぎて活躍した感じが全く感じられない……ううっ……思い出したら涙が。
「む、無理です!? 俺を戦闘方面で期待されても力不足だわ!?仕事しろって言われても俺は影に潜伏して時を見計らって脱走する……そんな俺を使ったら絶対失敗するんだからなッ!」
「腐ってもアランチルドレンだろォ? そんなに戦闘で役に立たないって言うんだったら一体何の役に立つんだテメェ」
「……料理とかマジックとか? というか仲間にならないから離せ! 早くしないと死ぬから!」
「何だァ心配してくれてんのかァ? ……初対面の野郎に泣いてくれるとは、オメェさん相当甘ちゃんだなァ?」
明日も朝早くからバイトにいって日銭を稼がないと死んじゃうんで、俺が。
クソっ……どうにかして逃げたいのにいい案が浮かばねぇ……!
それもこれもヒール唱えたせいだ、数分前の俺を殴りたい!
救急車呼ぶ前にヒールかけた分とどんな事情があったとしても怪しいやつを助けようとした分、それから逃げようとした判断が遅いッっていう三回分ビンタの刑をお見舞いしてやりたい!
そんな感じで万策尽きた俺は涙を流していると。
「お、お迎えが着たみたいだなァ? ……そろそろ良い子はおねんねの時間だ。この辺で勧誘は仕舞いだ。が、俺ァ仲間にすんの諦めちゃねェかんな?」
「そ、それってどういうっ!?」
そう思って声を上げた瞬間、ビルの壁をと登り何処かに行ってしまった。
……最近の身体能力馬鹿たちは壁を登って屋根を走るのがブームらしい。
何だったんだあのイカレ野郎は……と思っていると後ろから見知った声が。
「おっ、カズマじゃん! ちょうどカズマに差し入れ持って行こうって話してたとこでバッタリビックリ~!」
「千束!? それにたきなも……ど、どうしてこんなとこに……!? それにそのフクロウ……」
「あ、コレ? いいでしょー! たきなにかわいいって言ってもらったの~! 似合うだろぉ?」
「お、おう……そうだな……」
「ナニナニぃ~? その反応、もしかして私の魔性の魅力に虜になっちゃったぁ?」
「そんなことないですよ」
「たきな!? 何故に裏切った!?」
類い希なる才能を頭が狂っていようと、犯罪者であっても、非人道的な才であろうと素晴らしい神からの贈り物を支援する……か。
本当は才能じゃなくてヤバいやつの支援してるだけなんじゃないだかろうか。
「それで、お前らはなんでこんなとこに? それに差し入れって?」
「水族館を出てからついでに頑張っている人にご褒美として食べ物を買ってリコリコに行くところでした。今日は勉強になる一日でした」
「いやいや、いろいろな服買ってスイーツ食べて水族館行っただけだろ、何も勉強してないじゃろがい!」
耳がいい真島が逃げたのって……もしかしてこいつらが近くを通ってくれたおかげか?
こいつらのおかげで九死に一生を得たのか!?
ありがとう千束様たきな様! そしてありがとう俺の幸運値!
「何その祈りのポーズ? 差し入れに感動してるならもっと敬ってもいいんだよ後輩君?」
「ありがとうございます! 後でアイスクリームを誠心誠意作らせていただきます!」
「や、やけに素直だな……!? もしかしてそんなに極貧生活してんの?」
「そういうわけじゃないんだがとにかく感謝してる!」
街中だけど五体投地したい気分だわ。
それはそれとして差し入れはしっかりおいしくいただきます!
「ところでカズマは一人でここで何をしてたんですか?」
「作業が終わったから帰ろうとして、爆裂緑頭に絡まれてたところ」
「リコリコの作業が終わったことしかわからないのですが!?」
「えっと、つまり変なやつに絡まれてたんだ。俺の魔法でボコしてやったぜ!」
「パンツ剥ぎ取ったあげく金銭を要求するのは過剰防衛ですよ? いくらお金に困ってるからといって流石に……」
「そんなことしてないわ! というか許してくれたんだよな? 本当は根に持ってるんじゃないだろうな!?」
「冗談です」
割と近くでニヤリと「アランチルドレンが二人か……面白ェやつらだなァ?」と恐ろしい聴覚で盗み聞きしているやつがいるとは思いもせず、俺たちは帰路についたのだった。
幸運値高い……のか?
カズマはベビーフェイス