このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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第5話です


この当たらないゴム弾で狙撃を!Byカズマ

「はい、と言うわけで楽しい楽しいお仕事ですよ~! 今から説明するから皆の衆集合~!」

「いやだああああ~~ッッ!! 俺は行かない参加しない!」

 

 

今は夜、店じまいした店内で俺は喚き散らかしていた。

だってしょうがないだろ!?

依頼をチラ見したが、今回の仕事は何にも楽しくもなければすんなり終わるようなものでもない、命の危険がある依頼なんてやりたくないし死にたくない!

 

 

「わがまま言わないの! 明日の松下さんの護衛依頼引き受けちゃったんだから、それに東京観光できるんだよ! テンションあげていこー!」

「あがんねぇよ!? お前とたきなだけだろ東京観光は! 俺は仲間外れでミズキさんと一緒だぞ! 誰が悲しくて裏方仕事やんなきゃいけないの!? 明日俺は店番して一儲けしておくからさ……」

「うぉい!? 私とはいやだってかぁ~!?」

「嫌だよ! あ、いや、ミズキさんと一緒が嫌ってことじゃなくて、裏方が! 酒飲んでないときのミズキさんって割と常識的だから今はまあまあ好きですよ?」

「おおぅっ? も、もしかしてぇそれって私に告白してんの? まぁったく、嬉しいこと言ってくれちゃってぇ! でぇも、私のストライクは年上の筋肉美男子だからその告白は受け入れられないわ、未成年だしもうちょっと大人になっt……」

 

 

……言っとくが大半は酔っ払ってるからウザいって思ってることの方が多いかんな?

告白もしてないのに勝手にフラれた俺のなんとも言えない気持ち、どうしてくれんの?

それとこの依頼ってミズキさんが持ってきたんだよな、金払いがいいってことで。

いや、そんな「めっちゃ悪いやつに目を付けられて、命狙われてるから助けてくださいお願いします」って言いつつ「あ、ついでに東京観光したいんでサポートよろしく!」って感じの怪しすぎる仕事引き受けんなよ!?

そんなこと思ってると何処かツボにはったのかクルミが笑いを堪えようとしながら。

 

 

「プププっ、カズマってば酔っ払いにフラれてやんの」

「ふ、フラれてなんかねぇし! そもそもウザ絡みする酔っ払いと付き合いたくねぇよ!」

「酔っ払いじゃあねぇよガキどもぉ! 無類の酒好きなことは認めても、そもそも昨日の晩から酒飲んでねぇから!」

「……ってことは素面で依頼受けたの!? こんな危なそうな依頼に俺を巻き込むなよ!?」

「はいソコっ! 今は私が話してる途中っ! 黙って耳を傾けたまえ! えっと、それでしおりの通り、まず、私とたきなで松下さんのボゥディガードしながら下町風情残る浅草観光! 浅草寺に五重塔をガイドしまぁす! んで次は七夕祭りやってるからそこで射的して……」

 

 

楽観的バカ千束、金払いがいいからやる気満々のミズキ以上のテンションで一番ノリノリで明日の予定たてて準備してんなよ!?

何旅のしおり作ってウキウキで観光楽しもうとしてんの? ガイドするって言いつつお前が一番楽しむつもりだろ、うらやましッ!?

……じゃなくて危険な仕事だってわかってんのか!?

 

 

「……ってな感じで1日を満喫したいと思ってまぁす! 何か質問ある~?」

「はい」

「はいーどーぞミスターサトゥー!」

「カズマです。当日寝ないでフラフラな場合は休んでいいですか」

「あー、楽しみとか緊張で寝れないんだね!」

 

 

違います。

わざと寝坊して遅刻すれば参加しないで済むかなとか、体調不良って体で任務に支障が出るから休めると思って。

 

 

「でもだいじょーぶ!」

「何が?」

「そんなときは先生に迎えに行ってもらうから安心して!」

「何も安心できない!?」

「さぁーて! 明日の観光、しっかり成功させましょー!」

「もはや護衛じゃない!?」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

そんなことがあったのも昨日の晩。

こうなったら行きたくないし居留守使ってやり過ごすしかないと思って惰眠を貪ってると、インターホンの音が。

 

せ、宣言通り来やがった!?

だが、居留守を決め込んでる俺と我慢比べしてるうちに依頼、もとい観光の時間はどんどんなくなってくぜ!

さあ、とっとと帰りやがれ、というか呼び鈴連打すんなようっせえわッ!

 

なんて布団からをかぶってガクブルしてるとインターホンの音がやんだ。

よ、よかったー、諦めて帰ってくれたんだな……と思った瞬間ドアの鍵が開く音が。

 

うん? 鍵が開く音?

俺、合鍵なんて誰にも渡してなんかないし……ってまさかピッキング!?

そこまでして入ってくるか普通!?

くそっ、こ、ここまでこの俺が追い詰められたのは初めてだ!

だが、追い詰められたネズミを嘗めてかかった猫のように、俺のことも嘗めてかかったら痛い目見るぜ!

おらっ、かかってこいやああぁぁッッ!!

 

と、布団から飛び起き、チェーンロックのおかげで完全に開いてはいないドアの前へ飛び出し、臨時戦闘体勢をとると、そこにいたのは虎杖さん。

あ、千束やミカ店長じゃないし勘違いだったか……なんて思ってチェーンを外すと「対応が遅いッ! ミカが呼んでるさっさと支度しろ」とビンタが。

 

だが、虎杖さん、あんたのビンタはすでに一度食らっている……つまり慣れたから避ける事なんて簡単なんだよ!

 

 

「ってことがあって遅れました」

「ずいぶん腫れてる顔ねぇ……? 本当はビンタ避けられなかったんじゃないのぉ?」

「いや、避けたのは本当ですよ? ただ二回連続で往復ビンタしてくるのは予想外だっただけで……」

 

 

ちなみに、虎杖さんの後方には脅し要員として銃を構えたリリベルが待機してて、もし選択をミスったらその瞬間ドアごと撃ち抜く気なんだと恐怖で震え上がったのは黙っておく。

 

 

「あっそぉ? まあアンタにはか弱い私が襲われたときに囮になってもらう義務があるからそれまでの間は眠ってていいわよ? 運転してるから」

「ちょっと待て! いろいろ突っ込みどころが満載なんだが!?」

 

 

まず、か弱いって俺の方じゃ?

そもそも戦闘訓練一ヶ月しかしてないひよっこなんだが?

そもそも敵が出てくるの確定してるのにそんな非戦闘員を現場担当にするなよ!?

せめて助っ人でも呼んでください!

 

 

「とにもかくにも、私よりアンタの方が戦闘面ではいいでしょ、筋肉あるし」

「お、おい!? くすぐったいからその優しく筋肉を撫でるのはやめろ!? あ、激しくしたらいいって訳でもないからな!」

「ざーんねん……まあ、そうゆーことでよろしくぅー。この麗しきレディーを守ってちょ・う・だ・い♡」

「色仕掛けなんてしても俺はなびかないが、紳士としてそう言われてしまってはやるしかないって言うわけないだろ!? そもそも丸腰で敵と対峙しろって本当にただの時間稼ぎじゃないですかやだー!?」

 

 

殺されるっ!?

や、やめろ……俺のために考え直してくれ!

戦闘中に俺は仲間に見捨てられて死にかけて、命からがら生き残っても俺の存在は目障りで刺客を差し向けられ、元仲間に復讐を果たすと誓って、不思議な才能に目覚めてザマァする系の主人公に俺はなりたくない!

そんなことを思って頭を抱えているとミズキさんが。

 

 

「そこは大丈夫よ~? おっさんが拳銃を持たせてくれたから、あ、そこのカバンねぇ~」

「……拳銃持ったことないんですが?」

「ちなみに殺傷用と非殺傷用の銃弾があるけどどっちほしい?」

「ちょっと話聞いてください!? 無理なもんは無理ですって! どうしてそんな無茶ぶりさせるのこの人!」

「嘘おっしゃい、こっそり射撃練習場使って『ふっ、どの銃も詰まらない……この天才ガンナーサトウカズマにかかれば性能なんて変わんないぜ……!』ってイキってるのクルミから見せてもらって扱いがうまいのは知ってんだから観念しなさいな」

「な、何でそんなところ把握してるのあのロリ!?」

 

 

もしかしてストーカーなの!?

いやハッカーだったわ……プライバシーも何もないなホント。

この仕事が終わったら手加減なしに折檻してやる!

 

 

「壁に耳あり障子に目ありよぉ。何か最近のアイツの趣味、アンタに対抗するとかなんとかでそうゆー監視カメラからの動画集めしてんのよ。気づいてたかしらぁ? あ、他にも聞いた話あるけど聞きたい?」

「結構です、すんません……頑張らせていただきますのでそのこと記憶から消去して忘れてください、でないと恥ずか死ぬ……」

「そーそお、その調子で肩張らずがんばんなさ~い」

 

 

中二病の発作をゲラゲラと笑わずに手をヒラヒラさせるミズキさんへの好感度が少しあがった。

今まで酔っ払いのイメージしかなかったから見直したぜ!

……あっ、それとは別で、クルミには動画を全て消させた後、誠心誠意謝罪の正座をさせて足がしびれたところを思いっきり突いてやることに決めた。

 

 

『こちらミカ。聞こえてるか?』

「おっすおっさん、聞こえてるわよ~」

『お前らの出番が来た。ジンという暗殺者が千束たちをつけている。静かな仕事ぶりからサイレントジンとも呼ばれているベテランの殺し屋だ。しっかり警戒して当たれよ』

「はぁ……了解」

『初陣にしては落ち着いているな。ミズキのおかげか?』

「まあそんな感じっす。とりあえず足止めだけするんで後はそっちでどうにかしてくださいね? 俺、命を大事にを信条にしてるし、人殺す度胸もないんで」

『そこは俺が死んでも護衛を優先しろ!くらいのことは言うのが普通じゃないのか? それを言わないあたり流石ヘタレなだけあるな』

「クルミ、お前は後で殺す!」

『!?』

 

 

もちろん冗談だ。

ただし、死ぬほどつらい目に遭わせてやる!

お前の積もりに積もった塵はもはやエベレストを超えて宇宙まで到達してる!

ここまで我慢した俺も大概だが、これ以上の悪行、許してはおけん!

さっきの痺れた足をツンツンする刑とお前がトイレに入ろうとしてるときに俺が先に入っていつまでも立て籠もってやる!

これでもまだ軽めの仕置きだ、思う存分罪を清算してやるッ!

 

 

「アンタ、結構えげつないこと考えてる顔して……一体どんだけ鬱憤晴らすんだか」

『お、おいミズキ? 冗談だよな? いつもボクに対して甘々なカズマがそんな極悪人面してないよな!?』

「アフレコしてみるぅ? 『ぐえっへっへ! このカズマを甘く見てた罰だぁ! 今度顔を合わせたらオマエのところの機械全部ぶっ壊してやる~!』みたいな」

『ご、ゴメンって! ちょっとからかいすぎた! だからそんなことしたらヒドいんだからな!? 今度何か一つお願いを聞くから勘弁してk』プツン

 

 

……俺、そんな凶悪そうな顔してたか?

そう思いながらも「ミズキさんナイス!」と親指を立てて示し合わせた。

何でもするって言質は取ったし、今はこの仕事の方に意識を切り替えないとな!

 

そう、今の俺は生存本能に支配された獣!

プロの暗殺者だからって簡単にやられると思うなよ!

 

……そこ! 普段は性欲に支配されてるとか言うな!

俺はダクネスと違って割と普通だから! 何故か無意識でスティールすると女性冒険者の下着を盗っちゃうけどそれは事故だから!

 

まあ、そんな精神的に研ぎ澄まされた感覚のまま、俺はサイレント・ジンとか言う中二病が喜びそうな名前のやつのところに移動を開始した。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

俺がもらった弾は千束のと同じ非殺傷のゴム弾。

聞いたところによると当たると死ぬほど痛くて、有効射程は精々10メートルあるかどうか。

しかも命中精度が銃弾の形状や重さ的に空気抵抗などの影響をもろに受けやすいため、千束は敵の1メートル以内まで近づいてから発砲するという意味わかんないことをしないと全く当たらないらしい。

 

だが、俺は女神直々に幸運値がチートだって言われるくらいだ。

そして幸運値が高いほど命中しやすくなるン狙撃ッスキルも取得済み!

本来はアーチャーの弓スキルなんだが、この前射撃練習場でスキルを試した結果普通の銃弾だったが百発百中!

ってことはきっとゴム弾でも1メートルとは言わずともある程度近づけばいけるはず!

加えて俺の筋力値が低かろうとも一定のダメージを加えられる銃は相性ばっちし!

 

それに俺には潜伏スキルという隠れる場所があれば姿を悟られないようにできるスキルがある!

だから俺はサイレント・ジンの進行方向を予測して潜伏スキルで隠れる。

 

そしていよいよヤツがお出ましだ!

いいぞいいぞ! そのまま射程に入れ!

そしてサイレント・ジンが射程に入った瞬間、俺は……

 

 

ン『狙撃』ッッ!!

 

 

 

……フッ

決まったな!

俺の百発百中の必勝戦法の前に破れたり!

 

 

ってうん?

あれ、なかなか倒れないな? もしかして立ったまま気絶したのか?

ま、まさかな! 俺の銃弾は当たったはず! きっと幻覚d

きゃああああ!?!? 動いたああああああ!?!?

 

 

え、何でなんで!?

 

 

『おい、聞いてないのか!? 千束の銃弾は何回か当てないと気絶しないぞ! 痛みで悶絶させるくらい打ち込まないと!』

クルミ(解説役)!? なにそれ聞いてない!?」

『それと悪いお知らせだ、サイレントの服、多分防弾性だ』

「ええっ!? じゃあ俺はどうすればってあっぶな!? おいサイレント・ジン! 今話の最中だぞ! こっちに向かって……ヒィ!? また撃った!? そりゃそうだわ! 隙だらけの敵を撃たない暗殺者がどこにいるんだって話だわ!」

『……もし死んでも骨は拾っといてやる。じゃ』

「誰が死ぬかあああって切られた!?」

 

 

くそっ!

これじゃあマジで足止めだけするモブにだぞ!

ここで倒しても問題ないなくらい言いたかったのにやっぱ無理いいい!?!?

 

潜伏スキルは相手から自分の認識を逸らして物影に隠れなきゃ発動しても意味ない、狙撃スキルで近距離連発しないと駄目って無茶言うな!

銃弾を避けながら接近するのがどんだけ怖いかわかってんの!?

回避スキルってたまに発動しなから突っ込んでラグとか出て撃たれちゃうの怖いんだって!

 

……って本当にいつまで鬼ごっこしてればいいの!?

もしかしてサイレント・ジンって無限に弾丸生成する能力でも持ってる!?

クソッ……腹をくくって近づくしかないのか……!

 

もうこうなったらやけくそだああああッッ!!

相手のマガジンが切れた瞬間を狙って……

 

 

「やってやんぞコラアアアアッッ!!」

 

 

大声を発して相手を一瞬硬直させた隙、俺は思いっきり接近!

相手が銃弾をぶち込んできても俺は俺の幸運を信じて突き進むだけだ!

 

 

「よし射程範囲だ!!『狙撃』ッッ!!『狙撃』ッッ!!『狙撃』ッッ!!『狙撃』ッッ!! ラストだン『狙撃』ッッ!!」

 




わずかにかっこいい感じのカズマさんを書いてみた
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