このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続きです。


この不毛な戦いに決着を!Byカズマ

「はぁ……はぁ……や、やったか!?」

 

 

あ、あっぶな……当たらなくてよかったあ!

プロの暗殺者相手に突っ込むってマジ俺馬鹿!

我ながら何で危険な賭したんだよマジで死んだかと思ったわ!

 

異世界での戦い方を思い出せ!

もっと俺は安全な戦い方を心がけて……心がけ…………

毎度のごとく魔王軍幹部と敵対しては討伐して魔王軍に顔と名前がバレてるのはアクアの幸運値が低いせいだ、うん、そうに違いない、俺のせいじゃない!

 

とにかく!

今はサイレント・ジンを倒したし、何とかなったってことで万事おっけぃ!

使用した弾は非殺傷用のゴム弾だから血は流れていないし、ヘルメットを被っているから視線はわからないが、きっと気絶しているはず……

……

……あれ? さっきの俺、「やったか!?」とか言っちゃってた?

これってよくあるフラグだわ、何つーこと口走っちゃたんだよ俺!

 

 

『オイ、もしかしてやったのか! 流石ボクが見込んだだけの狙撃の腕だ! これで全部解決したも同然だな! 帰ったら旨いもんでも食べ……』

「おお、おいッ!? トドメと言わんばかりにフラグを乱立させるな!」

『バカだな、フラグっていうのは物語に登場するお決まりの台詞なだけで、現実で言ったとして起こるわけないだろ?』

「また言いやがった!? ってホラ! お前がそんなこと言うせいで起き上がってきたじゃねぇか! この責任どうやってとってくれんの、もう俺のライフも銃弾もゼロだよ!?」

『いや、別にボクのせいではないだろ!? アレだ、サイレントの防弾コートが衝撃を和らげたんだ。念のためもう一度言うぞ? ボクのせいじゃない!』

 

 

いいや、俺の経験則上これは完全にクルミのせいだ。

めぐみん並びに紅魔族の連中もフラグには運命を引き寄せる効果があるっつってたし間違いない!

ということで帰ったら覚悟しておけ!

絶対泣かす!

 

ってそんなこと考えてる場合じゃない!

本当なら潜伏しながら逃走したい、だが異世界での経験的に依頼失敗となっちゃ多額の負債を背負わされる可能性が……!

今回はあの借金をこさえてくることに定評のある駄女神も重要な建物を破壊して損害賠償を幾度となく命じられてきた爆裂娘もいない……

が、代わりに店の物を勝手に値引きして提供した前科があるアホと店の中だろうと何処だろうと敵を殲滅するために見境なく銃を乱射するバカたちがいる。

ついでに東京観光中に暗殺者とか言う邪魔者を行かせて台無しにしたら俺に責任がある感じで何かやだ。

 

クソッ、俺がなんとかしなきゃいけないって訳か……!

相手はヘルメットと防弾コートで銃弾みたいな直接的な攻撃はイマイチ効かない……

なら……!

 

 

「食らえ! スティールッ!」

「!?」

 

 

まずは凶器を没収だ!

スティールの有効範囲になるまで壁を背にし、距離が詰まったところでスキルを発動するために隠れていた壁から飛び出す。

幸いにも最悪の引き(パンツ)じゃなくて手に入れたのは望み通り拳銃だ!

下手に抵抗されるとケガする可能性があったから奪っただけで俺は博愛主義者のカズマさんだ、銃を使っても意味がない状況で無闇やたらに発砲したり、無益な殺生はしない!

 

それに本命は銃を奪い取った後だ!

武器を取り上げただけじゃきっと反抗してくるはずだから拘束する!

 

 

「バインド!」

 

 

よしっ、成功だ!

避けられたらより凶悪なクリエイトウォーター&フリーズの窒息コンボとドレインタッチをお見舞いしてやろうと思ったが成功した以上追撃はしなくても大丈夫そうだな。

バインドは繋ぎ目なしのロープで相手を拘束するスキル。

つまりロープの強度が問題ない限り結び目が存在しない以上脱出はできない!

 

一瞬ナイフとか隠し持ってたりしてないか冷や汗をかくが、縄でぐるぐる巻きにされたサイレントは戦闘続行が無理だって判断したのか敵感知スキルの反応がなくなった。

 

 

「……こ、今度こそ終わったよな? よ、よかった~! ……ってアレ? 力が入らない……?」

『お、おいカズマ!?』

 

 

そのまま俺は地面に頭から倒れてしまった。

まさか伏兵がいたのかと思い心臓がバクバクなりかけたがきっと違う。

体に痛みはなく、意識もしっかりある。

この気怠くて指一つ動かせずに倒れることしかできない状態……

 

まさか、魔力切れして体力まで消費した感覚!?

毎度爆裂魔法した後にめぐみんが「おんぶお願いしまーす」って言って俺に負ぶさってくるが、エクスプロージョンの後に毎回これが待ってると思うと撃つ気なくなるだろう普通……さすが爆裂馬鹿だな、逆に尊敬したわ。

ってか無意識にバインドに魔力込め過ぎたってことか……?

 

……まあ、いいや、何とかなったし。

頑張ってサイレントの方に這いずってドレインタッチする気力もないしこのままの状態で待って助けてもらお。

 

 

「あぁー……こちらカズマ……敵の無力化にせーこー……ダルくて一歩も動けませぇん、お迎えおなしゃーす……」

『……案外平気そうだな。心配して損したわ。というかいくら何でも疲れたからってそんな頭から倒れるか普通? 麻酔でも打たれたか?』

「緊張が解けたから脱力したんだ……腕時計型麻酔銃のせいじゃない」

『何意味不明なこと言ってるんだ? とりあえずミズキ行かせるがそれまでの間脱力し過ぎてもらすなよ?』

「漏らさねぇーよ……。俺の縄がほどけないうちにジンの拘束しっかりよろしく……」

『締まんないなぁ……』

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「お~っす、おつかれぇい! カズマのおかげで東京観光ぜぇんぶ恙なく終わりましたぁ!」

「ただいま戻りました……ってどうしたんですか、ダリの時計みたいになって……もしかして残暑でやられましたか?」

「俺、仕事、疲れた。もう、動けない」

 

 

千束とたきなが松下さんを元々のボディーガードの人のところに送り届けて今日の依頼は完遂したみたいだ。

もし、第二の刺客とかいたらどうしようかと思ったがそんなヤツはいなくて一日中観光を楽しんだ千束の顔は、出がらしみたいな顔してる俺とは対照的にツヤツヤしていた。

 

 

「あ、そういや聞いたよ? カズマが暗殺者を撃退したって! すげーじゃん!」

「ちなみにその敵はどんな感じでしたか?」

「……あそこにいるヤツいるだろ?」

「あ、もしかしてお客さん? どうも~!」

「あいつがサイレント」

「どぅッええぇっ!?」

 

 

そう、あの後ミカ店長が信頼できる昔の職場仲間だからということでお店に連れてきたんだ。

というかサイレントとか呼ばれてる割にペラペラと敵の情報をしゃべるタイプの暗殺者だとは思いもせず、取っつきにくい寡黙なクールキャラかと思ってたのにイメージがぶち壊れたのはここだけの話。

 

俺が指を指して紹介するとジンさんも軽くお辞儀をする。

……今さら取り繕ってもお前が俺と店長の前でベラベラと敵の情報をしゃべってた事実は変わんないんだからな?

というか負けたからって敵の情報を包み隠さずさらけ出すのはどうなんだ?

よくあるパターンだとこの後口封じとかで頭部に仕込まれた爆弾が爆発したり、毒薬が漏出して殺されたり、元見方から裏切り者扱いされて殺されるみたいな展開になりがちなんだがこの人は大丈夫なんだろうか?

15年以上裏で働いてたから今更殺されるなんてことはないと思うがそう言うのは後々怖いからやめた方がいいと思う。

 

そんなこと思ってたら大分体が動くようになってきた。

一切体を動かさずにいたおかげで体力と魔力の回復が早まったんだろう。

俺は体を伸ばして起き上がる。

 

 

「んぐぐぐ……! はぁ……」

「なんでい、そんな怠そうな顔して……寝疲れでもした?」

「そうじゃないんだが……これから明日の仕込みをしなきゃいけないのが怠くてな。気持ちはやる気で満ちあふれてるんだが体が追いつかなくて……」

「どんだけ頑張ってくれたの!? ってか怠いんだったら今日はもう休んで明日やった方がいいんじゃ……」

「いや、今日中に仕込みたいことがあるんだ」

「ほ~う? もしかして新作スウィーツかなぁ? 名前は名前は?」

「ところてんスライム」

「あ~、ところてんスライムねところてんスライムって何!?」

 

 

ところてんスライム……それは喉ごし良いプルプル食感の葛餅みたいでちょっと違う異世界の食べ物。

おじいちゃんから子どもまで幅広く好まれていたが、よく噛まずに食べて喉につまらせる人が毎年出て、それを狙ってか嫁入りした奥さんが姑の誕生日に贈るものとして人気の闇深い食べ物。

アクシズ教徒の間では「白い粉」などの危ない隠語を使って密かに出回っているらしい。

 

 

「水分多めの葛餅のイメージでいいぞ。地元の人がそう言って子供に売ってたんだが、いかんせんレシピがないし、そろそろ暑さが終わるから早めにってな」

「おお! いいねぇ! 黒蜜とかきな粉とかかけて食べるおいしいやつだぁ!」

「今回はそれ自体に味をつけておいしくカラフルに仕上げようって試みだ。それにこのところてんスライムには水分が大量に入る予定だ、夏の熱中症予防にもぴったりなお菓子として売り出そうかなって」

「おいしくてしかも熱中症予防にもなる……控えめに言って天才では!?」

「だろ?」

 

 

千束が目を輝かせているところ悪いが、本当の目的はそれじゃない。

本来の目的はクルミに対する罰として、だ。

 

……もちろん普通通りに食べさせてやるだけじゃ罰にはならない。

この作戦の肝は「ところてんスライムは水分多めの食べ物」ってところだ。

こいつを大量生産し、給金アップを目指しつつクルミの尿意を高めさせる!

 

その後、クルミがトイレに駆け込もうとした瞬間に「ごめん! お先!」って言って俺が先に入っていつまでも立て籠もってやる!

前回、そう心に誓ったんだ。

 

最近調子づいてるからな、流石にそろそろお灸を添えないと。

……別に俺が積もりに積もった、もはやエベレストを超越した鬱憤を晴らそうとかそういうことじゃない。

ただ、俺とクルミ、それからリコリコのみんなのためなんだ!

 

 

 

……そう思って試行錯誤してできたところてんスライムもどき。

試食した千束が「んめっちゃうまぁ!」って声高らかに言うもんだからお客さんの興味を刺激してしまい、クルミの口に入る前に完売してしまった。

 

ふっふっふ……これならクルミは大量につまみ食いやらするに違いない!

明日以降が楽しみだぜ!

なーっはっはっは!

 

そんな高笑いも空しく、夏の期間中、ところてんスライムは開店と同時に売り切れるほどの大ヒットメニューとなり、結局夏期間俺の給金が1.5倍にはなったもののクルミを倒すことはできなかった。

 

 

……とりあえず常連となった煽られ仲間のサイレント・ジンと一緒にいきりロリを正座させてしびれた足をツンツンするだけはした。

 

っておいジン!

お前それでも暗殺者か!

アサシンなんだから拷問得意だろうが!

アニメじゃアサシンは拷問好きってそう相場が決まってるんだ!

だから俺みたいに躊躇わずにツンツンしまくれ!

 




しっかり最後まで東京観光を娘と楽しんだヨシさん。
お父さん呼びに喜びながら「おや? サイレント来ないな……」と思ってるヨシさん。

不吉な予感は何もなかった……いいですね?
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