このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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第6話です。


この隠れ家1号に家政夫を!Byたきな

現在は松下氏の護衛依頼から一月経過し、残暑厳しい9月。

まだまだ半袖の制服が欠かせない暑さの中、短期間で立て続けにリコリスが襲われる事件が発生している状況で私たちができることと言えば犯人が特定されるまでの期間慎重に過ごすことくらいでしょう。

 

 

「というわけで今日から共同生活を開始したいと思います」

「…………どゆこと?」

「異論は認めませんからね。立て続けに起こるリコリス襲撃事件の真相がわかるまでの間は単独行動は控えた方がいいと考えました。ですので出勤時も睡眠時も二人一組で常に片方は警戒している状況を作り上げないと……」

「つまり今日から同棲!?」

「まあ、端的に言えば……」

「やったー! ひっさしぶりのお泊まり会だぁ! 記念すべき初日は映画鑑賞会しよー! 4月の時にはカズマのせいでできなくなっちゃったしそうしよーっ!」

 

 

すっかりウキウキした様子で映画のDVDを漁り始める千束ですが、本当に私の意図を理解してくれてるんでしょうか……

もしDAの情報が漏洩しているのなら私たちが襲撃の対象になってもおかしくはないのでこうして千束と交代で睡眠をとったりするためにここに来たというのに……

 

 

「映画を一緒に見るんでしたら夜の9時前ですからね。それ以降は交代で見張りする必要があるので一人で見てください」

「ええ~! いいじゃんもうちょっと起きてよーよ! ほら、このスパイ映画なんて終始緊張感マックスの千束ズセレクションだぁ、一緒に起きて感想言い合おう~!」

「それでは十分な睡眠がとれないのでは?」

「なぁに言ってんの! カズマなんて『プロゲーマーの俺は一日かそこらの徹夜なんて徹夜のうちに入らない!』ってエナドリ飲んでたよ」

「あの人プロだったんですか!? 今思えば確かにボドゲ大会の時はいつも勝ち抜けしてるイメージでしたが……」

「自称だけどねぇ」

「と、とにかく、私たちはゲーマーでもありませんし、カズマはいろいろと常識が狂ってるので比較に持ち出さないでください」

「え~……」

 

 

えー……じゃありません。

そもそも一般常識を適応すべきです。

カズマや千束の常識は一部おかしくなっているので却下です。

 

最近だってクルミの『カズマ秘蔵映像(脅し用)』を見せてもらった映像で、何か変な技名を叫んだと思ったら、よく原理もわからないまま物が瞬間移動しているように見えましたし、ロープが自我を持ったかのように巻き付いたり、私が使った限り全く使い物にならない非殺傷性のゴム弾を百発百中で同じ箇所に撃ち込みますし銃弾避けますし……

 

そんな頭がおかしい人の常識を一般的な私に適応するのは間違ってます!

 

 

「とにかく、これから共同生活開始です。それに当たって私もこの部屋で寝泊まりするわけですが……ルールを決めましょう」

「る、ルール!?」

「はい、この部屋はあまりにもだらしがなさ過ぎです。片付けや家事について決めていきましょう」

「どーやって?」

「そ、そうですね……公平を期して交互にやるというのは?」

「それじゃあどっちかが一回多くやることになるじゃん、詰まんないしヤだよ」

「つ、つまらない……!?」

 

 

この私が作成した家事分担表を見ると一週間で掃除、洗濯、料理の3×7で確かにどっちか一人が多くやらなくてはいけませんが……つまらないはないでしょう!?

ですが千束の意見を却下して、このまま私が勝手に分担した場合、千束のやる気をそぐ結果になってしまい、結局お皿を洗い直したりして私の仕事量が多くなるに違いありません。

……困りましたね。

 

 

「……ではまず、公平にって言うなら割り切れるようにしましょう」

「えっ!? 家事増やすの!?」

「いえ、家政夫を雇います」

「か、家政婦? そんなことできんの!?」

「私に心当たりがありますので……食事担当にするために呼びますので今晩からの夕食は期待していいですよ?」

「おお~大きく出たなぁ! そしてもしかしてその人とも一緒にお泊まりかぁ!? うほっほーぃ! 楽しくなってきたぁ! あ、お布団敷いてくるね~」

 

 

一体どんな人を想像して喜んでいるのかわかりませんが、初対面の人であってもすぐに仲良くなろうとするのはある意味才能の塊ですね……

まあ、全然知り合いなのでそこまでテンションを上げなくても……

と言いかけ、布団敷きや散乱したテーブルの上の片付けを熱心にしてくれているときにあえてやる気を削ぐようなことは言わなくていいでしょうと、私は千束から目を離して携帯を耳に当て……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「ここがあの女のハウスか!」

「ということでよろしくお願いします」

「成る程、わからん」

 

 

カズマを呼び出して先ほどまでの流れは電話で全て説明したのにも関わらず何がわからないと言うのでしょうか?

そう思っているとカズマが来ることを知らなかった千束が驚いた様子で。

 

 

「ちょちょちょいちょい! 家政婦さんてカズマのこと!?」

「ええ。悔しいですが、私たちの料理に比べるまでもなくレベルが高いので適任だと思って。それに見知った顔の方が安心できるでしょう?」

「た、確かに、よくよく考えたらいいこと尽くしだ! うへっへっへ、モーニングからイブニングまでフルコース……!」

 

 

クルミに次いでカズマの手料理で餌付けされている千束は垂れかけた涎をジュルリと啜りながら幸せそうな顔をしています。

納得してくれたのはよかったのですが、もしかして私も千束のように口が緩んでしまうほど胃袋を掴まれてしまい、あんなだらしない様子に落とされてしまうのではと心配やら楽しみやら……

 

ともかく、カズマが料理担当をしてくれるのは私たち二人の中で決定事項となりました。

あとは私と千束の洗濯と掃除の分担を決めるだけだったのですが、そこに待ったをかける声が聞こえてきました。

 

 

「何で俺、お前らの家政婦しなきゃなんないの? 金をくれるって聞いてたから来ただけなんだが!?」

「……電話で全部説明しましたよね?」

「……ごめん、金の部分しか聞いてなかったわ。……と、とりあえずその仕事、引き受けた! 手ぇ抜かないからその分駄賃は弾んでくれよ?」

「もっちろんよ!! ただ働きでも大歓迎だけど1日につき札1枚! 一週間後には札束でビンタしてあげるわ!」

「喜んで働かせて頂きます千束様!」

 

 

私には1日1万円を払ってまで食べたい千束の気持ちと札束でビンタされたいカズマの気持ちはよく理解できません。

ですがお互い楽しそうですし、元々私が払うつもりだったのに、私からは1円も出さなくていい感じで話が進んでいるので何も口出しはしないことにしましょう。

 

 

「じゃ、そーゆーことで決まりっ! 晩ご飯からよろしくぅ……あ、冷蔵庫の中のは勝手に使ってオッケーだから!」

「りょーかい! 今晩は何をお作りしましょか……ってろくなもん入ってねぇじゃねーか」

「あ、バレた?」

「野菜もねぇ、肉もねぇ、バニラとチョコしか入ってねぇ……箱詰めでぇ、隙間がねぇ、野菜も肉も入らねぇ!?」

「クッキーはぁあるよー! ……食べる?」

「いらねぇよ!? ってか偏食すぎだわっ! こんなんばっかじゃ体壊すぞ!?」

「大丈夫! ちゃんとカズマがお昼とか賄い作ってくれるじゃん!」

「それだけじゃ駄目だろ! ……ったく、せっかくこの家の料理番まかされたんだ。俺が来たからにゃこんな体に悪いもんばっか食わないからな!」

 

 

私も冷蔵庫をチラ見しましたが、チョコとバニラしかないというのは言い過ぎだとしても生鮮食品が一切見当たりませんでした。

もし、千束に料理担当を任せたら毎日お菓子ばかりの生活でしたね……我ながらカズマを呼んだのは英断でした。

 

 

「何にせよこの家にまともな食材があるとは思えませんし後で買い出しに行きましょう」

「そうだな。冷蔵庫にはなんにも入んなそうだし食える分だけ買って作るかぁ。……ところで俺って料理作ったあと、俺も一緒に食べていいんだよな?」

「何を言い出したかと思えば……買い出しの材料費は3人分ありますから変な心配はいりませんよ? 貧乏生活で大変で、夜も寝られないと聞いたので泊まってもらおうと思っていたのですが」

「誰が貧乏だ! 大変助かりますありがとうございます! って今何て?」

「……? 私何かおかしなことを言いましたか?」

 

 

カズマさんが信じられないようなものを見る目で見てくるのもよくわかりませんが、千束もサイレント・ジンをお客さんと間違えたとき以上に驚いて、今にも目が飛び出そうな……

一体何だと言うのでしょうか……?

 

 

「いやいや! 男の子を家に招くだけでも危ないのにカズマならなおさら……泊まるとか、勘違いしちゃうから!」

「勘違いってなんですか?」

「な、何でもないから気にせずに……って勘違いしねぇし! それに俺ならなおさらってナニ!?」

「だって私と話してるときよく下の方に視線を感じるし……。邪な視線じゃないって言うなら反論してみぃ!」

「……ハッ」

「鼻で笑われた!? と、とにかくたきな、いい? 男は狼とかケダモノってよく言って何かの拍子に食べられちゃうんだから気をつけないと!」

「まさか男性の多くがカニバリズムだったとは初めて聞きましたが……にわかには信じられませんね」

「千束、お前の後輩、もしかして赤ちゃんはコウノトリが運んでくるとか思ってるんじゃないか?」

「今度、学校の先生から保健の教科書借りてくるわ」

「流石に冗談のつもりだったのですが……」

 

 

……なぜでしょう。

「えっ、あのたきなが冗談を!?」とか「本当は知らないんだろぉ?」とか言う視線を感じます。

普段から私のことをどういう目で見ているのか銃で確認してあげたい衝動に駆られましたが、流石に例の事件を繰り返しては駄目な気がしたのでグッとその衝動を心の奥底に仕舞い込んでいると。

 

 

「じゃ、じゃあ何でカズマのことお泊まりさせるなんか言うの!?」

「そんなの俺を信用してるからに決まってんだろ!」

「パンツ強奪魔を信用するわけないだろ……。あ、もしかして友達感覚だから? 異性としてみてないからそんな対応を!?」

「それもありますが、それ以上にカズマはお風呂に乱入されても夜這いかけられても手を出さなかったヘタレですよ? 私は一緒に寝ててもセクハラもそれ以上のこともしないって信じてますから」

「あ~……確かに」

「ぅおおいッッ!? すんごいショックなんだが!? 何、俺そう思われてたの!?」

 

 

そもそも自分で言ってたことじゃないですか。

ある意味ですが信頼していると言うのに何が不満なのでしょうか……

私としては悪い意味で言ったつもりはなかったのですが。

 

 

「くそぅ……二人して俺をいじめて何が楽しいんだ! もうあったま来たッ! 俺をセクハラできないヘタレだとか何とかだって散々バカにした報い! てめえらのパンツ、スティールしてやる!」

「その手の動き……アレをやるって言うならこちらにも考えがありますよ?」

「やってやるさ! この俺をべろべろに舐めやがったこと後悔しやがれッ!」

 

カチャ

 

「ごめんなさい」

「ほら、言ったとおり大丈夫でしょう?」

「え、えげつなぁ……トラウマだから止めたげて?」

 

 

銃を構えただけで大げさな……

銃を向けられてすっかり意気消沈したカズマは自業自得だと思うので放置しておくとして、私たちはまだやるべきことがあります。

 

 

「千束、カズマが無事、料理担当となったので私たちも家事分担のスケジュールを」

「無事って言うか銃を向けられて脅されたように見えなくもないけど?」

「そんなことはないですよね? もちろん快い同意のもと成り立っていますから」

「ハイ、ソウデスネ、タキナ、サン。俺、料理、作リマス」

「では千束は何をやりたいですか? 掃除と洗濯を交互にやるかどうしようかと思っているのですが……」

「はいはーい! じゃんけん! じゃんけんしよう!」

「まあいいですけど……それだとわざわざカズマが料理担当になった意味が……」

「食事はおいしければおいしいほどいいんだからいいの!」

 

 

なぜか張り切って肩をぐるぐると回す千束。

そんなに気合いを入れてもじゃんけんで勝つ確率はみんな1/3、つまり平等に家事分担は決まるはずです。

 

 

「じゃあじゃんけんしようか! 心の準備はどうだぁ!」

「何も準備することはないでしょうに……いきますよ」

 

「「最初はグー、じゃ~んけ~ん……」」

 




明日、トランクス回の次に書きたかった話がようやく書ける! 作者大満足!

次回誰視点がいいでしょうか

  • 千束
  • たきな
  • カズマ
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