このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続きです。


このリコリスのパンツにスティールを!Byカズマ

俺の愛弟子をかわいがってくれた千束にお礼をしなくっちゃあならない。

負けられない戦いが……ここにあるッッ!!

 

 

「「あいこでしょ!」」

「「あいこでしょ!」」

「「あいこでしょ!」」

「「いい加減諦めろよ!!」」

 

 

正々堂々勝負しても俺が負けることはない。

何故なら魔王を倒したときに女神様から一つ願い事を叶えてくれるって言われて、俺は女神チェンジを所望。

幸運のエリス様は俺の転生特典、つまり幸運の女神様は俺のもんだ!

それにブレッシングもかけたし持ち前の幸運値的に負けるはずがねぇ!

とじゃんけんを一心不乱にしていると。

 

 

「千束、カズマ。そろそろお客さんが来ますよ? 100回以上あいこになったときから数えてませんが何十分あいこしてるんですか逆にすごいですね!? ……そろそろ仕事に戻ってくださいって店長が言ってますよ?」

「バカおっしゃい! これは聖戦! 悪を根絶やしにするための戦いだわ! ここで休戦なんてしてられっか!」

「……なあ、俺、そろそろ面倒くさくなってきたんだが? それに心なしかお前の頭から湯気が見えるんだが……」

「こちとら脳みそフル回転で全集中させてるんじゃい! カズマはなんなの!? 頭使ってないみたいだし、なんで永遠にあいこ出せんの!? 絶対ずるしてんだろ!」

「お前みたいに二択で悩むなんてしてないし完全な運だからなぁ……確率の神様に愛されてる俺のことをズル呼ばわりすんじゃねぇよ!」

「むっきーっどすとこどっこいめっ!! もう頭がバッカーンですわ!」

「頭大丈夫か!? カッチーンとか超えて噴火してない!?」

 

 

永遠のあいこ……

端から見たらいつまでやってるんだアイツらって感じだろうが、俺たちは割と真面目だ。

 

……まあ俺は千束のじゃんけんは相手が出す手を変えるか変えないかを判断するだけだから、それを読んで絶対出す手を変えるようにしてるだけで、丸バツの二択の正解を引き続けるみたいな感じで永遠とあいこにできるって戦法なんだが……

何か、このじゃんけん……叩いてかぶってって言ってるくせに最初の二回以外ずっと「あいこでしょ」しか言ってないの何なの?

 

 

「なあ、店長さんも困ってるしそろそろ終わりにしないか?」

「ここまで粘ったら確率が収束していくはずなんだよ! そうしたら私の勝ちがどんどこ出てくるはず……」

「沼にはまったギャンブラーかっ! 一応ズルっていうか、お前が有利になるように手加減してるんだ。端っからお前に勝ち目なんてないんだ、そろそろ負けましたカズマさまって言ってみろよ? でないとそろそろ俺の枷が外れるぜぇ?」

「上等じゃこらぁ! 卑怯な手ぇ使ったら一点マイナスにしちゃる! ……あいこでしょ!?」

 

 

そのとき、俺の神すら下す右手は初めて前のグーの手と同じ手を出した。

もちろん千束は勝ちを確信した顔でその疑似餌に食らいつく……回路ショート仕掛けてる頭では、それに針がついてるとも知らずに。

直前になっても変わらない俺の握りしめられた右手に勝利をしたと高をくくった千束が左手で新聞紙を握りしめ、今まで勝てなかった鬱憤を晴らすが如く会心の一撃を左右の手で繰り出そうとして……

 

俺は事前の左手に用意しておいた勝利のVサインを繰り出し、ノートを右手に取り、千束の一撃を受け止め、ノートの角で頭をぶっ叩いた。

 

 

「イッタアアアアアい!?!?」

「はい、マイナス1対2の3点差でお前の反則負け、俺の勝ち。なんで負けたか明日までに考えといてください。ほなかいさーん」

 

 

俺はノートの角の衝撃と回路が焼き切れて頭が沸騰してる千束に勝ちを宣言して今日も厨房担当として精を出すのであった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「って全く納得できるかあああッッ!!」

「うぉ!? なんだなんだ急に起きたと思ったら大声出して……。これだから常識がないやつは」

「誰が常識ないって!? 鏡見せてやろうかぁって! 私が勝ったのにノートの角でぶっ叩くのは反則でしょうがぁ!」

「たきな主審!」

「千束、反則2回。勝負ありです」

「えっ!? 私ぃ!?」

「先ずじゃんけん終わる前に新聞紙持つのが反則です。ちゃんと勝ってから新聞紙を持ってください」

「そ、それはほとんど誤差でしょ!? もしそれが反則だとしてもそれ以外に反則してないでしょ!?」

「いいえ、千束が負けたのにカズマに一撃入れようとしたので反則2回です」

「私勝ってたじゃん!」

「リプレイの用意があるのでクルミに見せてもらってください」

「ってことだ。大人しく仕事しろよー?」

 

 

というわけで俺の勝ちで「たきなをめぐっての叩いてかぶってじゃんけんぽん」は幕を閉じたのだ。

さすが俺、ルールの穴をついて、かつ、相手の言葉を巧みに利用したあっぱれな作戦だった。

……ず、ズルいとかいうんじゃねぇズルくねぇし!

正直あのままずっとじゃんけんするの怠かったんだ、一時間過ぎないうちに決着つけられてよかったわ。

そう思ってるとクルミが。

 

 

「また訳のわからないトリックして……。本当にどう言う仕掛けだ? ボクにだけこっそり教えろよ」

「言っただろ? 俺の使う魔法は魔法だから種も仕掛けも一切ないって」

「……ケチだなぁ。せめてここで見せてくれよ」

「『芸は請われてするものじゃないの、自ずから披露してしまうものなの』って宴会芸の神様が言ってたから……まあ、そのうちな」

「ブー……」

 

 

ふて腐れているクルミには申し訳ないが、スティールのタネとか何にも説明できないし、回避スキルとか潜伏スキルもどうやってんのって聞かれても知らん。

あ、ただヴァーサタイル・エンターテイナーでの即興ものまねとかコイのイルカショーみたいなのは……それも感覚みたいなもんか。

結局俺は何にも説明しようとしてもできないんだ……だからタブレットとチラつかせて脅しをかけるのはやめようか!

 

 

っと今日も今日とて日常を過ごしていたわけだが……

毎度恒例閉店後のクルミ主催ゲーム大会が終わり、お客さんは帰宅。

今日も一日お疲れ様でしたって言おうとしたところだったのだが、そこに……

 

 

「改めて決着をつけようじゃないの!」

「……お疲れ様でしたー」

「ちょおおい! 私を無視するとはどういった了見じゃワレィ!」

「誰かー! ヤンキーに襲われるー! 助けてー!」

 

 

もちろん悲しいことに俺を助けてくれる人はここにはいない。

いつものことだみたいな感じでニコニコしてお皿ふきしてるんじゃないわ店長!

それと閉店後だからって飲酒は家でやれよ家で! 何俺の作ったスウィーツで晩酌してんのミズキさん!

あと、たきなとクルミは単純に無視するんじゃない薄情者ぉ!

 

 

「さぁて、今朝の借りをここできっちり返してあげるわぁ……。じゃじゃんけんの準備はいいよなぁ!」

「能力者は帰れよっ! そもそもその振り上げた拳を下ろそうか! じゃんけんって言って本当は物理攻撃仕掛ける気だろ!」

「……ッチ。そんなことないよ」

「い、今舌打ちした!? じゃんけん(物理)のチョキとかしゃれにならねぇからマジで止めろよ!?」

「……まあ、冗談はここらへんにしておいて、続きだ続きぃ! 私がマイナス1点なだけでカズマは0点だかんね! ってか0より下って普通設けなくない?」

 

 

絶対俺がツッコミしなかったら「じゃんけんグー!」して俺をぶん殴る気だったろ!?

仮に俺がパー出しても殴り抜けるつもりだろっこの暴力大好きアサシンめ……

それとさっきの勝負は俺の勝ちで決着ついたんだからこれ以上つっかってくるな!?

 

 

「一応言っておくがさっきの試合はもう終わったってことで俺の中でなってるんだ。あの戦いの延長戦は面倒だししないからな?」

「ええ~……。どうしても駄目ぇ? せめて納得できる勝負がしたいんだけどッ! せめて一回! 一回だけ! お願い!」

「……本当に一回だけやればもういいんだよな?」

「マージマジ! どれくらいマジカって言うとマジマジンって感じ!」

「ちょっと何言ってるかわかんない」

「何でわかんないだよ! と、とにかく本気なの!」

 

 

じゃんけんに勝つまで止めない気がするんだが……見た感じ、嘘っぽくはないんだよなぁ。

というかコイツの嘘ってわかりやすすぎて、誰もが一目見ただけでわかるかんなぁ。

このままじゃんけんしないってなると三人の共同生活は夜になれば「あなたはぁ、じゃんけんがぁ、したくなぁるぅ……」って洗脳という名の睡眠妨害してきそうだし、共同生活が終わったとしても執念深く執拗なじゃんけんストーカーと化すに違いない。

だが、負けるのは癪だ……

 

 

「しょーがねぇなぁ……もう一度言っておくが、マジでガキの頃からじゃんけんで負けたことがない。俺に何連敗もしてるお前とは違ってな?」

「キィーー!! 絶対勝つ! 絶対勝って泣かしてやるぅ! 本当は負けたことがあるんですーって言わせるためにも絶対!」

 

 

ああ……やっぱ勝つまで粘るのか、ダルッ。

……うん、エリス様?

あの人は神様だからノーカンで。

俺が言ってるのはあくまで人対人の話だから。

 

 

「絶対叩く絶対叩く絶対叩く絶対叩く……」

「何ブツブツ言ってんのコワッ!?」

「ふぅ……ヨシッ! たきな~とりあえず1本選手で審判お願~い!」

「今行きます」

「思ったよりノリノリだなたきな? 俺が一番だるいのわかってる?」

「こういうのは納得できるまで数やらせないと一生終わりませんよ? それに私を散々いたぶってくれたので、お返しをと……」

「もしかしてそれ、俺のこと!? 千束のことだよな!? 確かに俺と練習したときに一回も勝たなかったけどさ、流石に師匠って呼んでくれてたのに俺のことじゃないよな!?」

「さあ?」

「さあ!?」

 

 

まさかあの直接攻撃(DA)を体現したかのようなたきなが俺の影響でずる賢い感じに!?

俺はたきな成長を師匠として喜ぶべきなのか!?

それともあんな子供の遊びでムキになってる千束共々まとめて怒るべきなのか!?

い、いや、さすがにあのたきなが一夜でこうも変貌するとは思えない!

きっと俺と同じで千束に対する憤りを俺に託してくれてるんだ!

この期待を裏切ったら漢が廃るぜ!

 

 

「とにかくもう始めますよ。千束、今回のルールは?」

「じゃんけんして私が叩く!」

「殺意ましましですね、頑張ってください。では勝負を」

「あれたきなさん!? 俺へのエールは!? 信頼してるから送らないだけならしっかり送ってくれた方がやる気出るんで……!」

「カズマ……」

「は、はい! お願いします!」

「試合直前なので慎んでください。では勝負開始です」

「あ、アレぇ!? や、やっぱもしかしなくてもやっぱり俺のこと恨んでたr……」

「ほらいっくぞぉ~ッ! じゃーんけーん……!!」

「ああっ! まだ俺が喋ってる途中!!」

 

 

か、勝手に始めやがって……!

だ、だが、功を焦ったみたいだな千束!

最初はぐーじゃないオマエが俺に勝てる分けねぇだろーがっ!

 

 

「「ぽん!!」」

 

 

ほれ見たことか!

俺の勝ち!

後は俺がハリセン新聞紙で叩けば即試合終了打ち上げだ!

そう思って手探りでさっきまで新聞紙があった場所を探してもその感触がない。

……一体どういうことだ?

さっきまでここにあったよな?

 

 

「ってかお前が新聞紙持ってんじゃん! 反則だ! 審判! 反則ですよね!」

「反則がなんぼのもんじゃい! それに私気づいちゃったんだ。何か姑息な手を使って絶対負けないカズマには勝てない」

「ただの幸運なのに姑息とか言うなよ」

「でもさっきね、たきなが言ってたこと思い出したの。『正々堂々と運勝負しないならこちらも策を弄すれば』ってね。でも私、そんな突然言われても思いつかないし、とりあえずカズマにイライラしてたからぶっ叩ければそれでいいかなって……」

「じゃあじゃんけん関係ねぇじゃねぇか!?」

「ま、そう言うことで私が叩くって言ったら叩くんだい! 必勝エクスカリバー受けてみろお!」

「うぉお!?!? あっぶない!? マジでぶっ叩こうとすんなよ!? そして負けたやつが新聞紙振り回すな! いいのか! そっちがその気なら俺のスティールが火を噴くぜ! 奪って殴って泣かせてやるっ!」

「大人しく叩かれればいいものを! やれるもんならやってみぃ! 果たして私の必勝剣を奪い取れるかなぁ!」

「だったらお望み通りとってやるよ! ……パンツを!」

「そうだパンツをとれぃ! ……って今なんて?」

 

 

「問答無用! スティールッッ!!」

「ああっ!?」

 

 

……ふっ。

目で見るまでもなく手触りで、数多のパンツをスティールしてきたパンツマイスターにはわかる、これはトランクスなんかじゃない、しっかり女物のパンツだってことが。

また詰まらないもんを盗ってしまった。

これで千束も恥ずかしがって「ぱ、パンツ返してぇ~!」って泣きながら懇願するに違いない!

そして俺はそれに対して「なーっはっはっは! 返してほしければ俺に『じゃんけんでカズマ様に刃向かってすいませんでした』って言え! じゃなきゃこのパンツのためにお社を作って我が家の家宝として末代まで崇め奉ることになる!」って高笑いしてやる!

 

……って何だ?

まったく泣き叫ぶ声が聞こえないぞ?

千束の方を見るとどうしてか、顔を俯かせて肩を震わせている。

まさかダクネスみたいに興奮してるわけじゃあるまいし、どうしたんだ?

 

 

「お、おーい。だ、大丈夫かー?」

「……」

「何だって?」

「ぶっ……」

「悪い、よく聞こえなっかった。もう一回大きな声で……」

 

 

「ぶ、ぶっころしてやるぅぅううッッ!!」

 

 

 

……どうやら俺は、怒らせてはいけない相手を怒らせてしまったらしい。

千束が赤面しながらたきなの鞄から実弾を奪い取るといつもの非殺傷弾を抜き捨て……

発射してきた。

 

 

「ちょ!! マジで危ないってお前! 第二のたきなになりたいのか!?」

「そんなの関係ないんじゃい! やっぱりカズマは女性の敵でここで殺さないと駄目なんだ!!」

「ヒッ!? お、お前! 今まで何のために人殺ししないできてたの!? 俺がお前に殺されたら今までの人を殺さないって主義が……」

「そうですよ! 落ち着いてください千束! あんなゲスクズマのために自分の信念を捨てるのは馬鹿げてます!」

「とめないでっ! 退いてよたきなッッ! どかないと殺せないッッ!! パンツが! 私のパンツとゴミマが逃げるッッ!!」

「あ、ありがとうたきな! 千束を止めておいてくれて……っておい、お前ら今何て!?」

 

 

俺はいつぞやのように喫茶店が穴だらけになる前に、そしてここに来る前にあったギルドの宴会での時のように、どこか冷たい何かを感じながら逃げるように外に飛び出したのだ。

そのまま脇目も振らず全力疾走をかまそうとしたそのとき……

目の前に誰かがいたみたいで、ぶつかり転げてしまった。

 

 

「いってぇッッ~~!! もう閉店してんのに誰がって吉松さん!?」

「……おや、今日はもう店じまいかな? それにそんなに慌ててどうしたんだい?」

「い、いい、今千束が俺を殺そうとして実弾をぶっぱしてるんです!」

 

 

吉松さんが頭にハテナを浮かべている。

そりゃそうだわ、行きつけの喫茶店で急にリアル大乱闘が実弾で起きてるって言ったらこんな反応になるわ!

ってそんなことしてる暇ねぇ!

こんなところで道草食ってたら……

 

 

「かずまぁッッ!! どこいった!! ぶっ殺!!」

「で、出たぁ!? た、助けてくださいよ! ってどうしてそんなにいい笑顔してるんだよ!? 命の危険を前に感性バグったか!?」

「いいや、そんなことはないよ。とりあえずここは私に任せて早く逃げるといい。君たちのような才能同士をつぶし合わせるのは私としても本望じゃないからね。……それにしても千束が……」

「ああっ! そこにいるのはヨシさんと…………みぃつけたぁ~!!」

「ぎゃああああ!? 怖い怖すぎる!」

 

 

……思えばどうして日本に転移してきたのにこんな頭おかしい騒動ばっかりに巻き込まれてるんだ俺。

異世界で魔王討伐してチヤホヤされると思ったらされなくて、日本に戻ってきても青春なんて全くなくって。

 

日本も異世界も全然変わんねぇじゃねぇか!!

 

 

「カズマ待てぇい!! まずはそのパンツ返してもらおうか! O☆HA☆NA☆SHIはそれからじゃいっ!!」

このリコリス(ムカついたヤツ)のパンツにスティールをしただけなのに何で殺されかけてんだ俺ぇぃぃいい!! このくそったれぇぇええ!! 」

 




もともとショートの予定だったのにここまで長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。(最後無理矢理まとめて、タイトル回収)

やりたいことは書き終えたので一応完結とさせていただきますが、気が向いたり、思いついたらコメントや感想で拾った面白いストーリー、
それと続きの「vs真島」とか7話の「潜入調査」とか8話の「たきなのパフェ」とか、時間ができたときにでも不定期で書こうかなと思っています。

P.S.
毎日投稿は……計画的にしましょう……ガクッ
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