今回は大好きな真島さーん視点で
前回の続きです(前回:カズマキラーと化した千束から逃げるカズマ)
このサイレントナイトに暗躍を!By真島
俺らのアジトで繰り返されていた一つの映像。
赤い服を着た白髪のリコリスが男二人を撃退している。
そのリコリスが首にかけていたのはアランチルドレンの証、フクロウの飾り。
そして最初からじっくり聞いていると俺の耳に入ってきた別の男の声。
「ふっ……ふはっ……ふっはっはっはッ!! オメェさんが俺以外のアランチルドレンと浮気して絡んでるたァ知ってたが、まさか次のリコリスと一緒だってはこれっぽちも思わなかったぜェ……なァ、カズマ?」
「な、急にどうした、急に誰だカズマ!? お願いだから気が狂って僕を殺すなんてしないでくれよ!?」
「ああ……笑った笑った。そんな心配すんなロボ太ァ、俺たち、仲間だろォ?」
「そ、それならいいんだk……ってさっきまで僕、筋肉モリモリのゴリマッチョに拘束されてお前に拳銃突きつけられてたんだけど!? 急に手のひら返されると最後の晩餐みたいにどうせ死ぬんだから最後くらいは良くして弔おうみたいな嫌な想像が……!」
「そうなりたくなきゃあ、明日の準備をとっととしとくんだな」
「それが仲間に対する態度かあああああ!?!? お、おい! まだ話は終わってn」
さっきから鬱陶しいハッカーを無視して席を外す。
まさかこんの胡散臭いハッカーが持ってきた情報が俺にとっちゃあ思いがけない幸運だって思うか、フツー?
俺と同じアランチルドレンがこの街のどこかにゃいることは知っちゃあいたが、こんなタイミングで見つかるたァまさに棚からぼた餅だ。
こいつらの居場所と素性がわかれば俺の計画「アラン機関やリコリスみてェなキショい組織の壊滅」が進むかもしれねェ!
「……明日が楽しみだ」
なァんて思っていたらぐっすり9時間睡眠かましたもんで直ぐに次の夜が来ちまった。
一ヶ月前あたりに大爆発に巻き込まれたにしちゃあ上出来なコンディションで用意されている車に乗り込む。
それにしてもホント、あんときゃヤバいくれェ頭から出血したのになものの見事に回復するたァ……
最初の頃にゃ痛みが多少なりともあったが、傷の状態も痛みも数日後にはきれいさっぱり消えちまったし、不思議なこともあるもんだ。
前に部下どもにこの話したら……
「さっすが真島さん! あんなヤバい状況から生還しただけでもスゲぇのにまさか数日で完全復活するなんてパネェっす!」
「まさかそのカズマってやつ、善い行いをしてるからって真島さんの前に現れた神様……んなわけないっすよね! というか毎度生還してくる真島さんの方拝んどいた方が御利益あるかもしれないので拝ませてください!」
「お、おい! お前だけあやかろうなんてズルいぞ! こ、今度俺の子供生まれるんでそのときに頭撫でてやってくだせぇ!」
……俺自身、今回の普段以上の脅威的回復力に不気味さすら感じてたが、まさか部下どもが俺を神様みてェに拝みだすたァ思わなかった。
面白かったもんで気まぐれでその日は放置しておいたが、後日「マジマ神を主神とする『マジマ教』」なんつーヤベェ新興宗教を発足し始めた馬鹿Aどもの事態収束に手を焼いて最近まで行動が滞ったのは秘密だ。
ま、俺らがそんな馬鹿丸出しなやり取りするくらいに鬼がかった復活を果たした俺だが、カズマの初期手当が相当上手かったおかげだと、今度お礼参り……もとい、礼を言いに行きたいと思っていた矢先、さっきの映像だ。
早く再会したいと思うのは当然の心理だろォ?
そんなことを思いつつ車は目的地へエンジンを吹かす。
ハッカーが「僕があのリコリスのところに誘導する!」なんて啖呵切りやがったから俺は探すまでもなく悠々と部下Aが運転する車で片足を組んでリラックスしていた、そのとき。
運転手が急ブレーキを踏みやがったせいで体が浮いた。
「す、すいやせん真島さん! だ、大丈夫っすか!?」
「っぶねェなァ……テメェ気をつけて安全運転しやがれ! 俺ァシートベルト締めてたから無事だったが、テメェの方こそ大丈夫かァ?」
「だ、大丈夫です! (ベルト閉めてるとか……さ、さすが真島さん! それに俺にまで気にかけてくれるなんて感激っす!)」
「そんで? 何があった」
「ああ、その、男が車に突っ込んできたんすよ」
「前方不注意かァ?」
「い、いえ! 何というかその男が何か慌てた様子で脇道から走って……。当たった感触はなかったんですがあんなに吹き飛ばされて……動きませんし、まさか死んで……」
「……ったく、俺が確認してくっから待ってろ」
ここは狭い路地。
法定速度で走らせてたとは言え、こんな宵闇に紛れて細い脇道からいきなり飛び出してくる自殺志願者を避けきることできっかってんだ。
俺もブレーキされるまでそいつが近くにいたことすら感知できなかった、ぜってェ意図的に気配を消してやがった。
リコリスみてェな狂った規則ならともかく、まともなルールすら守れねェガキ以下の当たり屋みてェな輩の介抱をする義理はねェが、流石に死体をそこらに転がしておいたら今後の活動に支障を来しやがる。
生きてるなら適当に脅してそこらに転がしておくなりしときゃ構わェが、もし骸なら豚の餌にでもするかと考えつつ、ドアをスライドさせ降車すると、ピクリとわずかに動くヤムチャしやがったバカが。
……何だかこのバカに見覚えあんなァ?
「あっぶな……走馬灯みたいにエリス様祭りでハッピーで埋め尽くされた……。もしスキルが発動してなかったらレストインピースで二度目の転生果たすところだったぜ……」
「無事かと思ったが素っ頓狂なこと言って……頭ぶっておかしくなっちまったかァ当たり屋さんよォ。いくら物事がうまくいかないからって世間に八つ当たりしちゃあ世話ないよなァ? 当たる対象はちゃあんと見定めないとよォ俺らみてェな無法もんに絡まれちゃあ終いよ」
「す、すす、すみません! というか当たり屋じゃないですから! それに今の俺はヤンキーとかヤクザとか、そんなちゃちな奴らにはビビらないほどヤバい状況なんだ! ってわけで身体に異常もないし殺人鬼が来て大事になる前に俺はこの辺で……」
余程急いでるのか俺の方に一切目をくれないままワゴン車に衝突しかけたってのに駆け出そうとするソイツ。
最初は当たり屋に特化したバカかと思ったがどうも違ェ。
そりゃそうか、アランチルドレンがこんなセコい方法で人から金をむしり取るような虫唾が走るこたァしねェ。
それに俺ァコイツにずっと会いたかったんだ。
だから絶対ェ逃がさねェっつー気持ちで俺たちから離れようとするヤツの肩を掴んだ。
「まあ待てよ、会いたかったぜェ当たりかましてくれたカズマぁ? 俺のこと忘れたァ言わせねェ」
「い、急いでるんで本当に勘弁してください! ってアンタはいつぞやの頭爆発してた真島さん!?」
「そんな切羽詰まってどうしたァ、殺し屋に狙われてるったってテメェのアランに認められた才能なら慌てなくても大丈夫だろォ?」
「俺をなんだと思ってるんだ、男女平等博愛主義者のカズマさんだぞ!」
「そりゃあ知ってる。なんせ俺みてェな見知らぬ輩に応急処置してくれるほどにゃあお人好しだ。ありがとなァ?」
「お、おう、どういたしまして……」
「だがなァ……」
「そんなこたァどうだっていいんだ」ってカズマに言いかけたそのとき、俺の耳にロボ太から『ひょ、標的がお前の方に向かってるぞ!?』っつーうっせェ悲鳴じみた声が。
世にも珍しいヒステリックハッカーかこの野郎……
そして耳を澄まさなくてもわかる、コッチに勢いよく走ってくる足音。
……ったく、想定外だが余計な手間が省けたなァ!
「かぁずまくぅ~ん? おいかけっこはお終いにしてお家に帰りましょ~? 実弾撃ちきってなくなっちゃったから大人しく降伏してくれたらゴム弾で優しく沈めてあげるからぁ出てきなさぁい」
「ひ、ひぇ!? もうこんなところまで!? た、助けてください真島さん! あいつに追われてるんです!」
……そういやカズマとあのアランリコリス、一緒に暮らしてんだよな?
一体何をしでかしたのかァわからんが、つまり痴情の縺れか何かでこんなことになっちまってんだろう?
博愛主義者を自称するからには彼女を攻撃するなんてできるわけねェしなァ?
「……なるほどなァ、何となくだがどうしてオメェが戦おうとしねェのかの事情は把握した。何だか面白いことになってんなァ?」
「おもしろくねぇよ!? 早くしないと俺がゴム弾の餌食になるんだ! く、車出してくれませんか?」
「残念だが俺ァあいつに用があるんだ、逃げたきゃテメェ一人で逃げときな。時間稼ぎじゃあねェが、ちょっくら相手しとくからよォ、もし逃げ切れたら俺の仲間にならねェかァ?」
「ま、真島さん! も、もちろんです、あの殺人鬼のこと、よろしくお願いします!」
カズマが俺の足先の方向とは反対に走り出す。
……前々からカズマには俺の仲間になってほしかったが今回は一体何の幸運だァ?
アランリコリスに会う手間が省けて、会いたかった同志とも再会を果たし、さらには仲間に入れる約束も取り付けた。
こんな幸運に幸運が重なって、一体、一石何丁なんだァ、こんなにもバランスが崩れまくってんのに犬歯が剥き出しになるほど口角があがりやがるぜェ……
「カズマ~! この辺にいるのはわかってるし包囲されてるんだから大人しく出てこいやッ! 追いかけっことかくれんぼの時間が延びれば延びるほどコッチの堪忍袋の緒が順々にブチギレるんだからさっさと降伏した方がいいよ~」
「堪忍袋の緒が一回切れたらそれ以上ねェだろうが、堪忍袋の緒を何本も持ってるとか、バケモンかテメェ……一人一本じゃねぇのかよ常識的に……」
「初対面のおじさんに急に常識説かれたんだけど……」
「失礼なガキだなァ、俺ァまだ20代、お兄さんだ。そんなことよりだ、テメェ、リコリスなんだろォ? 国によって秘匿されたエージェント様がこんな公の場で声と銃を上げて……マズいんじゃあねェのかァ?」
「え、何このブロッコリー頭、説教に説教を重ねて……」
ホンっト、クソ失礼なガキだな……
初対面だっつった手前、ブロッコリー頭とか、身体の特徴を揶揄するのはコンプライアンス違反だろうがッ!
「ってそんなことどうだっていいんだよ! カズマ! カズマをとっちめないと……」
「さっきからカズマカズマ連呼しまくって……同棲するほど大好きな恋人か何かかァ?」
「んなわけあるかい! 確かに同棲はしてるけど召使いポジだから!」
「ツンデレかァ?」
「ちゃうって! 話聞けよ!」
やっぱツンデレじゃあねェか。
でなきゃ普通うら若き男女が同棲なんてしねェ。
仲間であることにゃ違いねェだろうが、流石に言い訳というか嘘が下手すぎだ。
「ふっ……」
「ねえ何で今鼻で笑った!? というか何私とカズマのことそんなに聞いて……私んちの召使いはアンタにとっての何なんだよ!? ……まさかカズマのこと狙ってるんのぉ?」
「そうだなァ……俺ァ、テメェのカズマを寝取り……もとい仲間にする予定だかんなァ。っつーことで俺の仲間に手ェ出すバイオレンス野郎をなんとかしなくっちゃあいけねェ」
「ふーん、もしかして私と殺り合おうってぇ? 悪いけど今の私、サイッコーに最悪な気分真っ最中だから手加減できないんだから!」
そう言ってアランリコリスが拳銃を構える動作をする。
脅しじゃねェ、本当に撃ってでもここを突破してカズマを捕まえてやるッつー気持ちがビンビン伝わってくる。
……ちとヤンデレな彼女だが、嫉妬心を刺激するのは作戦として間違っちゃあいなかったようだなァ。
「本気でかかってきな! 俺を倒さねェ限り、ここを通す訳にゃいかねェんだ!」
「邪魔するってならアンタのこと倒すよ! 答えは聞いてない! 行くぜ行くぜ行くぜぇ!!」
「いいねェ! 戦いってのは最初からクライマックスじゃなくっちゃあなァ!」
楽しくなってきたぜェ……
手出し無用のタイマン勝負、新月の今夜は子供にゃちょっとばかし過激で暑い夜になりそうだ!
こうして夜の街に戦いの火花が散った。
戦闘描写はありません。(技術不足)
きっと数分の激闘の末、カズマ抹殺マシーンが目標討伐のために覚悟振り切れて勝つ。
アクア様って……
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ノーパン派
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イェスパン派