このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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リコリス・リコイル第1話の最後あたりの内容です


この酔いどれ高生に職質を!By千束

私は錦木千束。

世界一平和な街と言われている東京の喫茶店リコリコで働く17歳!

まあ、そんなこと言ったけど喫茶店の看板娘は表の顔。

本当の仕事は日本の平和を維持するために悪者をばったばったなぎ倒す、殺しをしない正義のエージェント、その名もリコリス!ビシッ

 

 

「銃のハンドサイン……まさか敵がまだ潜んで……ッ!?」

「ちゃうわっ! 特に意味ないからステイ、たきな! 銃を下ろして!」

「そ、それなら紛らわしいポーズしないでください! いいですか、我々の任務は……」

「ああ~ん堅苦しい言わないでよぉ」

「……そのおかしな言動を謹んでくれるのなら考えなくもありませんが」

「もー、たきなのいけずぅ……。ちょっとくらい千束って呼び捨てで呼んでくれたりぃ」

「しません。そもそも私は千束さんの強さの秘密を学ぶためにですね……」

 

 

この真面目な娘はたきな。

今日、リコリスの属する組織の中央、DAからリコリコに左遷?されてきた新人店員16歳。

一応、リコリスは任務のためなら殺人を許されているから、悪人殺すべしを心情とする人が多くて、たきなもその一人で……

何て言われたのか知らないけど私から学んで殺しに活かしたいって言って真剣に頑張ってる。

ちなみに私はどんなときでも殺人はしない方がいいと思うのはここだけの話。

まあ、そんなこんなで秘密裏に街の平和を守ったり護衛したりしてる私達。

今日は護衛任務を終えたので護衛対象のお家から帰るところだ。

 

 

「あ~あ、お泊まりしたかったなぁ」

「まだ言ってるんですか? 今日の襲撃を対処し終えたので私達の仕事は終わりでしょう? 徹夜で護衛する必要はありません」

「まぁたお堅いこと言ってぇ、護衛しなくてもいいなら余計楽しいお泊まりになるじゃん! せっかく仲良くなったのにぃ~……」

「護衛対象と仲良くなることは重要でしょうか?」

 

 

たきながムスッとした感じで話してくる。

……ちょっとパジャマパーティーするとか言って遊び過ぎたかなぁ、いや、私はいたって真面目で信頼関係あったほうがスムーズに守ったりできると思ってたけど!

 

 

「あの、千束さん?」

「はいはーい千束でーす!」

「そんなに激しく返事しなくてもわかってます。それよりあそこの街路樹の辺りからガサガサと音がしませんでした? さっき襲撃してきた奴らの仲間かもしれなせん」

「うん、そーかなぁ? ま、わかんないけど見てみよ」

「ちょっ、気を付けてください!」

 

 

たきなは心配性だなぁなんて思いながら低木の方に近寄ってみる。

ここはさっき襲撃された場所だけど、敵が潜んでるとかいう感じじゃないし気を付ける程でもないと思う。

万が一敵だとしても銃弾なら避けられるし大丈夫だいじょーぶ!

とか思ってるとたきなが言ってた場所から呼吸の音が。

怪しがりて寄りて見るに筒の中光たり……何てことはなく普通にお酒の香りを漂わせた男性が頭から突き刺さっていた。

いや、かなり怪しいな!?

 

 

「不審者ですね。もしかしたら先程の襲撃を、銃を使っているところを見られたかもしれません。殺しますか?」

「いーやいやいや!? 殺さないから……てか、何でこの人突き刺さってんの? ミズキみたいなアルコール臭するし」

「大方酔っ払ってそこの木に登って頭から落下したのでは?」

 

 

確かに隣には高木があるけど、この芸術的な突き刺さり方を見るに結構な高さから落ちたんじゃ?

 

 

「それでどうします? この人を起こして、もし私達の記憶があったら頭叩いて記憶飛ばしますか? それとも殺し……」

「ません! もう、そんな殺気立たないでさぁ、一先ず引っこ抜くの手伝って!」

「……仕方ありませんね」

「ほれ、そっちの方持って! いくよぉ~、いっせーのっせっ!!」

 

 

不審者の足を片っ側ずつもって引っ張りあげるとズボッッと効果音がするくらい激しく抜けた。

地面に打ち上げられたその人を見ると緑色のジャージ姿で幸いにも外傷はなく、街路樹の枝や葉まみれだった。

いや、そんなことはどうでもいい。

 

 

「な、この人、成人してる? いやしてないよね!?」

「私たちと同じくらいでしょうか。というかあんなに激しく抜いたのに起きないですね。叩き起こしてみましょうか?」

「いやいやまずは声をかけるところでしょうよ。ほら心肺蘇生の前に意識の確認するでしょ?」

「心肺蘇生は必要ないですよね?」

 

 

そんなことわかっとるわい!

……どうやらたきなは少しばかり天然らしい。

新たな一面を垣間見て顔を綻ばせかけたが、目の前のうつ伏せになるように寝返りを打った男の子から呻き声が聞こえてきたので気を取り直し声をかける。

 

 

「う、うぅ~ん……」

「お、お~い? き、聞こえてますかぁ?」

「んあ……知らない天井に知らない人の声だぁ? 俺ってアクセルの街から日本に帰って来れたのかなぁ?」

「おっ、起きた起きた! 君、大丈夫?」

「これは……随分と重傷ですね」

 

 

たきなが言いたいのはきっとこの男の子がアルコールのせいで変な妄言を言っているに関してだろう。

私から見ても体は健全な男子高校生らしく丈夫そうだけど頭は随分とおかしい、お酒のせいで。

知らない天井……ってかただの地面だし、せめて夜空見て天井だって言ってほしかったし、アクセルの街とかわかんない地名出てくるしかなり酔ってるなぁ。

 

 

「うん? もしかして日本のJK?」

「ま、まあここは日本ですし私たちは女子高校生ということになっていますが」

「おお、じゃあウィズのヘンテコ商品は今回に限ってはまともに作動したのか!」

「千束さん千束さん? この人頭を打った衝撃でおかしくなったのかもしれません」

「たきなたきな? もともと酒臭いしアルコールのせいだと思うよ?」

 

 

それに私たちが投げ飛ばしたせいかもしれないって思いたくないからアルコールのせいってことでいいんじゃない?

そんなことしてると顔がぶつけた衝撃でか、それともアルコールのせいかはわからないものの赤くしている男子高校生らしきその人がむくりと起き上がる。

 

 

「もしかして俺のこと介抱でもしてくれてたのか? だとしたらありがとな!」

「いやいや、さっき発見したばっかだし……感謝されるようなことはしてないぜ!」キラン

「イケメンだ、アニメの中だけだと思ってた顔面かわいいのに言動がイケメンJKが目の前に! 感動した!」

「かわいいでイケメンって言われた嬉し~! じゃなくて!」

 

 

この酔っ払ってる若者を帰らせないと!

もし警察官に補導されてたら目も当てられないし、このままこの辺りで寝落ちしたりして風邪引いたりとか大変な目に遭ったらたいへんだし!

 

 

「そう言えばこんな夜更けまで俺の介抱をしてくれたんじゃないとしたら何してたんだ? 美少女がこんな時間に闊歩してたら悪いヤツに拉致られるぞ?」

「誰が悪いヤツじゃこんの未成年男子! 我が身見直せぃ!」

「そうですよ、未成年での飲酒は立派な犯罪です。一先ず交番まで送り届けますんでついてきてくだ……」

「なぁんだ、俺は立派な大人だぞコラ! 酒飲んで何が悪い」

「す、すみません! 私としたことが人を見た目で判断してしまったようで……」

「いやいや、この人どう見ても高校生くらいの未成年だろ……」

 

 

この人意識しっかりしてるように見せかけて結構酔っ払ってますなぁ。

足の方を見るとリアルに千鳥足になってる……初めて見たよ。

こんなに酔っ払ってると視界もぐあんぐあんって悪いし、ついでに明日は二日酔いが確定してるって、ミズキが言いそうだなぁ。

うん、こりゃ二日酔い確定ご愁傷様だなぁ、南無。

 

と心の中で合掌したけど一体どうしてこの人がこんな状態になったんだか全くわかんないし、これからもお酒を飲みまくるんだとか言ったら法律的に止めさせないとだし、とりあえず事情を聞いてみるとしますか!

 

 

「あ、ああ~」(下手くそ低音)

「千束さん、喉の調子でも悪いんですか? 私の喉飴でも舐めます?」

「ご、ごほん! ちょっと警察の者だが、そこの君、いいかね?」

「あ、すみません、まさかこんなJKコスプレしたかわいいお巡りさんが! お巡りさん、お疲れ様で~す!」

 

 

よしよし、バレてないバレてない!

この千束さんの演技力の前に酔っ払いは簡単に騙されてくれる!

さすが私、演技の才能もあるなんて!

 

 

「あの、本当に大丈夫ですか、咳までして……。それと警察でもないのに警察を自称するのは……」

「しぃー!!」

「……」

 

 

たきなが何か物凄い変な顔してる、おもしろ。

きっと私の演技力の高さにくびったけってわけだ!

よし、じゃあ私の本気、見せてあげまっしょー!

 

 

「ちょっと職質中なんだけど、君、自己紹介してくれる?」

「もちろんです! 俺の名は佐藤和真! 前世も今世も天下不滅の無一文、よろしく! ところでお巡りさんは?」

「お巡りさんはって何ですか?」

「ほら、俺は自己紹介したぞ、次はお巡りさんの番だ! ほれ、ハリー!」

 

 

酔っ払うとコミュニケーションが取りやすくなるって聞いたことがあるけどあながち間違いじゃないのかもしれない。

不思議と目の前の酔っ払いからは私以上の意欲を感じるわ!

 

 

「しょ、しょうがないな。えと、私は錦木千束! 天下不滅の……不滅のぉ……? えーっと、何だっけ?」

「別に相手に合わせなくてもいいでしょうに、私は井ノ上です。で、あなた年は?」

「うす、井ノ上さん! 18ッス! ……ところで下のお名前h」

「ばりばり未成年やんけ!? 酔っとる君に言ってもしょうがないかもだけど、日本では20歳未満の飲酒は禁止なんだよ? わかる?」

「うん? ……あぁ、そう言えばそうだったなぁ。久しぶりの日本で忘れてた」

 

 

日本人なら忘れんなよ常識を、外人でも守れよ規範意識をよッ!

てか、久しぶりの日本って言った?

もしかして外国人なのか、それともつい最近まで海外留学してたのか。

 

 

「だけどイギリスだと16から飲めるだろ?」

「もしかして英国に留学でもなさっていたのですか?」

「いや、アイドンスピーキングリッシュ」

「千束さん、この人英語話せませんし留学の経験も何もなさそうですよ?」

「いや、喋れてんじゃん。あんまネイティブじゃないけど」

 

 

なるほどね。

この千束さんの洞察力にビビッと来ましたわ!

この人はイギリスじゃなくて本当はアメリカに留学してた人だ!

どこで判断したかって?

そんなの簡単で、英国紳士はぽくないし、アメリカ訛りに聞こえたよ。

この何カ国語も喋れる千束さんを欺こうとするだなんて、相手を見誤ったね!

 

 

「そう言えば何故か街路樹に突き刺さっていたんですよ貴方。何か心当たりはないでしょうか?」

「あるっちゃあるが……黙秘権で。一応任意ですよね?」

「……まあいいです。それより、アルコールなんて未成年には百害あって一利なしです。随分酔われてますが一体何を飲んだんですか?」

「ネロイドだよ。街中を探すとニャーって鳴く、口に入れるとシャワシャワする謎生物、後それからシュワシュワ」

「……?」

「じゃ、じゃなくてあれだ、竜…………鬼コロ」

 

 

この人の空想話を聞いていると面白いけど真面目に答えてほしいかなぁ。

まあ酔っ払いの戯言は無視してとっとと質問を終わらせて家に帰らせるに限る!

家に帰ったら見たい映画もあることだしね。

 

 

「うん、自覚してないみたいだけどね? 君、結構酔っ払いの症状あるよ……こほん。じゃあ次の質問ね。住所と職業は? ニートじゃないよね?」

「引きニートじゃねぇ!! 俺は……高校生です!」

 

 

ニートとしか言ってないのに引きニートって言ってスッゴい思いっきり反応したってことはつまり……

 

 

「はいはぁい、引きニートね。ママのおっぱい吸ったり親の臑齧りでお酒するのは頃合いを見て卒業するのをお勧めしまぁす。はいじゃあ次n……」

「千束さん本当なんです! 信じてください! 俺は確かに不登校気味だったけどちゃんと高校生してたんですって!」

「ちょ、何なんですかこの人! 私は千束じゃないです! は、離れてください変なとこ触るな撃ちますよ!?」

「ちょちょたきな!? 気持ちはわかるけど銃は駄目! ステイ、ステイだよ!?」

 

 

私は止めたんだよ?

だけどたきなが引き金を引く速度の方が一足早かったせいで。

……ゴメン、知り合ったばかりでたきなにセクハラしたりだるがらみしてきたカズマ君。

助けるの面倒くさいと思いながらも助けようとしたけど、間に合わなかったよ……

 

それにしてもたきなぁ、任務以外の発砲は御法度よ……

銃刀法的にも傷害罪的にも、マーダーライセンスありだとしても道徳と倫理的にどうなのよ?

 

たきなが肩辺りに標準を合わせ、引き金を引いた銃から弾が発射される。

そのまま銃弾は肩に当たるかと思われた。

 

 

そのとき、不思議なことが起こった。

不良少年が変な挙動で体をずらし、弾を避けてみせたのだ。

 

 

「ひえっ!?」

「……は?」

 

 

偶然だったのかもしれない。

でも、それにしては何というか、本当に私の想定外の不自然な動きだったなぁ。

 

 

「……あ、あの。今の日本って、そんなに簡単に銃使えるんスね……」

「先ほどは運良く避けられたみたいですが次変なことしたら命はないと思ってください」

「ひっ……!?」

 

 

そんなこんな思ってるうちに向こうの方でたきなが不良にさらなる追撃、というか脅しをかけて質問を続行しようとしているのを見て思わず頭を抱える。

流石にね、何にも悪いことしてない人……とは言えないけど、軽犯罪程度で一般人に銃を持ち出してどうこうしちゃ駄目でしょうが!

 

 

「ちょっとたきな! いくら未成年飲酒とかセクハラとか悪いことしてても銃は駄目よ銃は……」

「ですが! こ、ここ、この人! 私の胸を弄ろうとしたんですよ!? いえ、それだけじゃありません、私の動きを見て銃弾を避けるとか、千束みたいな頭のおかしい事を……」

「誰が頭がおかしいって? 誰が!」

「何変なところに噛みついてるんですか、目の前のこの人の話ですよ! 一般人の動きじゃないです!」

「あ、そっか」

 

 

……い、いや、私は騙されない!

たきなは確実に銃弾避けが気持ち悪いって、そう言ってったんだ!

私のアイアンズハートは不朽だけどちょっぴりへこんだ気がする……

そうだ、このへこんだ気持ちは明日、たきなの髪を弄くりまわして給仕服にバッチリ合うようにヘアセットして戻そうっと。

 

 

「たきな? 一先ず極悪非道な犯罪者じゃない限り銃は禁止、アーユーオッケィ?」

「……わかりました」

「ならよろしい! すまないね、和真君、でいいかな? この子はまだ新人でね? このこと口外されるとちょぉっとマズいことになっちゃうから私たちの間での秘密にしておいてほしいんだけど……」

 

 

ここまで言って後ろを、和真君の方を向いて気づいた。

私は虚空に喋りかけていた……

つまり独り言をベラベラ喋ってたってこと!?

うっわ、はっずかしー!?

 

 

「じゃなくて、逃げられた!? ってか逃げ足速すぎんだろ……」

「い、一体どこに!? 千束さん、彼を捜索しますよ!」

「え!? まさか今日一日中とか言わないよねぇ……? 今晩は早く帰って映画鑑賞会をたきなとするプランがあっt」

「そんな予定より犯罪者を取り締まる方が大事です! 早く探しに行きますよ!」

「そ、そんなぁ~! 私の映画ちゃんたちぃぃ……」

 

 

この後近所をくまなく捜索しても見つからなかった。

酔っ払いだったから銃のことは都合よく忘れてるなんてことを期待して朝帰りして、先生に「いくら何でも手を出すの早すぎる」って怒られた……

いや、ちゃうねん!

別にたきなといかがわしいことは一切してねぇから!

ミズキも「破廉恥よぉ!!」とか騒ぎたてんじゃない!

 

ちなみに、和真君とは一ヶ月後にばったりリコリコで再会したのは別の話。

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