このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続きです


この愛すべきペットに職業を!Byカズマ

一仕事終えて今日はカエルの唐揚げパーティー~新鮮キャベツとこってりマヨを添えて~!

家に帰ったら一番風呂はいって、風呂上がりには冷蔵庫でキンキンに冷やしたシュワシュワを一杯キューっやってプハーッつって今日一日の疲れを癒やすんだ!

 

そんなこと思いながら首にタオルをかけて腰に手を当てみんなおいでよ幸せスパイラル……つまりお酒をグビッてたらば玄関のチャイムが鳴り響く。

夜間かつ突然の来客だったが俺は顔を顰めることもなく快く迎え入れる。

 

 

「こんな時間にお客さんとは珍しい、こんばんわ、今日はどうされましたか?」

「どうされたもこうされたもあるかい私が家主じゃボケぃ!」

「ただいまかえりました、お腹空きました……揚げたての唐揚げのいい匂いのせいで余計お腹と背中がくっつきそうですよ」

「とりま手ぇ洗ってこーい。今日はこの自称プロの料理人ことカズマさんが自腹を切って手塩につけた愛情たっぷり真心ぬくもりてぃーな一品だ心して頂けヤローども!」

「うおっほーぃ! もうヨダレがジュルジュルのジュルリですわぁ! この千束めが僭越ながら洗面所での手洗いの先陣を切らせてもらいます! 異論は家主権限を使って却下じゃい!」

「あっ、ズルいですよ!」

「そーよそーよ千束ばっかりズルいわよ! 私だってお腹ペコペコなんだから!」

「とりあえず玄関で言い争ってないで俺のマイホームに入れよ」

「私のだっちゅーに……」

「千束! 餓死すんでの所ですが靴はきちんと揃えください! 玄関は家の顔と言いますし、こんなんではだらしなく見られますよ? ……まったくもう、子供じゃないんですから」

「じゃあ私も遠慮せずおっじゃましmペブッ!?」

 

 

俺は何故か千束たちの後ろに勝手にくっついてきた背後霊的な疫病神を家に入れまいと素早く戸を閉めた。

ついでに家の玄関に幽霊対策の盛り塩と鬼は外福は内の炒り豆をインテリア風に飾っておく。

駄女神が勢いよく閉められた扉に鼻をぶつけて痛がってる音が聞こえた気もするが無視無視。

 

 

「よーし全員はいったな」

「えっと、アクアさんがまだ入っていないのですが……」

「うん、全員はいったなオッケェ! 俺は先に軽く摘まんでたから遠慮なしにどんどん食え食え! そんでそのままブクブク太ってオオカミの餌になっちまうかわいそうな赤ずきんになっちまえ!」

「あ、あの! アクアさんがまだ……」

「乙女に対して太れとは何事!? 一応言っておくとリコリスは太らないんだかんなぁ、毎日ハードワークだから」

「ならなおさらたくさん食え! なんだそのほっそい体は肉つけろ肉を!」

「聞いてます? アクアs……」

「そこまで言うんだったら筋肉ムキムキになっちゃるわい! どんどん作って持ってこーい!」

「…………千束なのに結構ちゃんとした理由で太らないんですね、空腹で活力が減ったせいで一周回ってた頭のエンジンが正常になったのでしょうか……」

「なんちゅーこと言うんじゃたきなぁ! 私だってたまには常識的なことに一つや二つ言いますよーだ。まったく、普段からわたしんことをどういう目で見てるんだかしっかり聞いたろうか!」

 

 

よしよし、一瞬たきなの口からアクアとかいう不穏因子が漏れた気がするが気のせいのはず。

手洗い現場がやかましい以外はものの見事に平和な環境だ。

やかましいと言えば玄関前が若干騒がしい気がしなくもないがお酒のアルコールが頭に回ってサイコーにハイになってるカズマさんは細かいことは気にしない質なのだ。

俺が例のバーからくすねてきたおいしそうな酒をチビリと飲んで喉を熱くしていると、千束は手洗いが終わったのか猛スピードで廊下を走ってリビングのドア前でキキーッと急ブレーキの後テーブル席にダイレクトアタック!

椅子がガタンと音を立てながらもうまい具合に激しい着席が成功した千束は丁寧かつ超絶スピーディーに、さながら某ハンター協会会長並の感謝の合掌をして正拳突きの代わりに箸を手に取り口の中に飯を詰め始めた。

それから数十秒遅れてたきなさんもご到着だ。

 

 

「ちょ、千束! そんなにほっぺをリスみたいにしてクルミじゃないんですから!」

ふぁっふぇふぁっふぇ(だってだって)! はふぇふひんくほふへふぃ(カエル肉のくせに)めひゃふひゃうひゃいんはおん(めちゃんこうまぁいんだもぉん)!」

「何言ってるかわかりませんよそれじゃ……。食べ物を口に入れながら喋るのはお行儀が悪いですよ?」

「んぐっんぐ……ゴックン! たきなも食べてみんしゃい! ゲテモノ料理なのに全然ゲテモノじゃないぞこれぃ!」

「でもカエルの形残ってますよコレ……よく躊躇せずに食べ始めましたね」

「四の五の言わずけぇけぇ!」

「むぐっ!? …………おいしいな」

「はいおいしー!」

「こんな見た目ゲテモノなのにどうしてこんなにもおいしいのでしょうか解せませんよ私は……」

 

 

千束がバリくそ旨そうに食い散らかしてる一方たきなも一口ずつむしゃりと肉を嚼んで味わって食べてる。

ちなみにカエルの形がまんま残ってるのは俺が形を残しつつきれいに内臓やら骨やらを摘出して形を整えた結果だ。

あの見た目にドン引きするんじゃないかと思ってたが喜んでくれてよかったし、旨そうにがっついて食ってくれちゃって、料理人冥利に尽きるわ。

いつの間にか外も静かだし、さっきまで潜入調査とかいう変なことにつき合わされてたが、日常に帰ってこれてしみじみと幸せを感じる。

 

そうだ、これが俺が望んでた日常!

年が近い女の子と一緒に屋根の下、寝起きをともにし食事を用意し洗濯やら掃除やらをしつつ充実してる親父と子供の……やっぱなんか違うのかもしれない。

ま、まあ俺が望んでいた生活には着実に近づいているはずだ!

そんなこと思いながら良さげなワイングラスに注いだ純米大吟醸をクルクル回してダンディーな大人の雰囲気を楽しんでいるとまたしても玄関のチャイムが鳴り響く。

 

 

「カズマお客さんだほぐもぐ!」

「食べ物は逃げたり攻撃したりしないんだからもっとゆっくり食べろよ……異世界じゃあるまいし」

「異世界でも普通調理済みの食べ物が攻撃してくるなんてことあるかい! 家長命令よ、来客対応よろしくぅ!」

「はぁ……しょーがねーなぁ」

「あ、私も行きます」

「いいよいいよ、俺見てくっから千束の胃袋に唐揚げ全部ぼっしゅーとされる前に食べろよ」

 

 

たきなが俺について来ようとしたがそれを片手で制する、相手は厄介な宗教勧誘かもしれないしな。

そんでもって家長とか言ってるが一番子供っぽい千束を放っておいて、俺は玄関の扉を開けた。

そこには一升瓶をラッパ飲みしてるオヤジくさい女神様が「あ、来るの遅いわよ! 塩と豆が切れちゃったんですけど! 早くおかわりちょーだいな!」と。

 

……パタン、ガチャッ。

俺は静かにドアを閉じ、チェーンロック含めた鍵三つをガチャリと閉め、酒の席に戻ろうとした。

幽霊と邪気の対策で飾っていた物を食べる妖怪なんて見てないぞ俺は。

……チャイムの音もきっと聞き違いだったんだ。

だから俺は平静を装い、トテトテとスリッパをならしながらやってきたたきなの前に立ちはだかった。

 

 

「何も……なかった……ッ!」

「そんなに幽霊を見たみたいに顔青くしてどうしたんですか!? そこにいるのアクアさんですよね? カズマとの間に語るに語れない因縁があるのかもしれませんが中に入れてあげませんか?」

「何を言ってるのかさっぱりだ。そこにいるのはただの酔っ払った乞食だし、俺らは関与しちゃいけない……」

「といいますか、千束はご飯を目前にして全てを忘れてしまったみたいですがここまで連れてきたのは私たちです。数分現状を放置しておいてなんですが、客人として中にあげますからね」

 

 

そう言って俺の横をするりと通り抜けたたきなは片足をサンダルに突っ込み、片目を瞑りドアスコープを覗き込む。

そして「やっぱりアクアさんですね……今開けますから」と扉の鍵を解錠しようとした。

 

 

「いや、何やってんだオマエッ!! ドアを開けたら最後、妖怪穀潰し酒飲み借金塗れに取り付かれるぞ!! 悪いことは言わないからやめておけ!」

「何ですか妖怪穀潰し酒飲み借金塗れって……名付けるにしたって安直すぎませんか? ネーミングセンスを疑いますよ」

「大体どの妖怪だってそうだろ、地縛霊の猫とか、狛犬の妖怪とか!」

「はいはいそうかもですね。ですがそもそも妖怪なんて非科学的な存在は何らかの自然現象として立証されています。そして私は自分の目で確かめたもの以外は信用しない質なのでカズマが言う非科学的な言い訳はスルーしますね」

 

 

ああ、一つずつ魔の扉が解放に向かう絶望の解錠音が聞こえてくる……

今から俺の全力フリーズでドアを固めるか!?

いや、それだとたきなまで氷漬けになっちまう!

ドレインタッチ使ってたきなを昏倒させるか!?

いや、秒で反応されてドラゴンスクリューか昇龍拳されるに決まってる、玄関で大技かけられたら大惨事だ!

クソっ、こんな事態想定してなかったぞ……

想定してたらゆいゆいお義母さんにスリープ教えてもらったのに!

魔王城にいる奴ら大体そこそこの状態異常耐性もってると踏んでそっち系統の魔法スキルを取得しなかったのが悔やまれる!

俺がオロオロしてる間にも着々と魔界の門は開放へと向かってる。

……こうなれば門が開かれた後の対策を考えるんだ!

顎に手を当てながら俺は千束の方へ戻って。

 

 

「かーずまー誰だったー? たっきゅーびん? ってどしたそんな冷や汗かいて……」

「何も……なかった……どっかの誰かのいたずらっぽいな、人は誰もいなかったぞ、人は」

「ねー、かじゅまさぁん、おつまみまらぁ? 早く持ってきてくれないとお酒が先になくなっちゃうんれすけろー。まったくもー、ここのお店は接客態度がなってにゃいんじゃないかしりゃ……」

 

「……ねえやっぱ音聞こえない? というか人はいないって言った? もしかして猫ちゃん? それともまさかゴーストオブレディ!?」

「何言ってるんだ千束、心霊現象じゃあるまいしどちらかって言うと駄犬だ……はっ! なあ千束! ここはペット禁止だよなそうだよな!」

「ええっ!? 急にどうしたよ肩つかんで揺さぶるなよ!? ま、まあペット、ペットねぇ……。私は別にいいんよ? ってマジでどうしたのカズマ!?」

 

 

おうっぬおおおおおおっ(OH NOOOOOOOOOOO)!!orz

家主のペット許可がなければここの家はペット禁止という名目でアクアを追い出せたのに!

いや、ちょっと待った?

どうして千束の許可がいるいらないの話になってるんだ、今この家で実質的な権力者は俺だ、だって家事のほとんどを引き受けてるし胃袋は掌握してるし一番年上だし絶対間違いなく俺がこの家のナンバーワンだ!

なお、ハウスキーパーという役職であることには目を瞑るものとする。

 

 

「ねー、かじゅまさぁんろーしてろあしめたのぉ? かえりゅのかりゃーげのいいによいしゅるんれすけろたべたいんれすけろ……」

「アクアさんはそこの椅子に座っておいてください。お酒はありませんが唐揚げはカズマが張り切って大量生産してるのでどうぞ」

「ろーもぉたきなぁ! じゃあ遠慮しにゃくっていいのよね! 今日はじゃんじゃん飲み食いしゅるわよー! 持てるだけ持ってきにゃしゃい!」

「あっ、アクアさん……わ、忘れてたわー

「ありゃちしゃとしゃん! ろうしてわらしかりゃ視線を反りゃしゅの? 懺悔したいことありゅんらったらこの女神の前で吐いちゃってラクになりなしゃいな! みじゅの女神様は過ちをしゅべてみじゅに流してくれりゅ」

「じ、実は……」

 

 

アクアが案の定入ってきやがった!

というか今日あったばっかりの人様の家を無遠慮に入りすぎだろもっとしっかり遠慮しろ酔っ払い!

というか千束は何懺悔しようとしてんだよ!

お前より駄女神の方が懺悔しろ!

そんなことを思いながら疫病神をどうにかするために即興の計画を実行する。

 

 

「コラたきな! 不審者を家の中に入れるんじゃありません! 段ボールに戻して元いた場所に捨ててきなさい!」

「なんですか急に……しかもその言い方は道端に捨てられてた小動物に適応する言い方ですよね?」

「言い訳しない! この家はペット禁止です! 家まで連れてきちゃって全くもう……」

「えー、私はいいって言ったんだけど。家主権限で許して進ぜよう!」

「お父さんは黙っててください!」

「お、お母さんじゃなくて!?」

「家事は俺が仕切ってるんだ! 俺が一家の大黒柱で家長よりヒエラルキーが上なのは明らかだろそうだよなそうだろう!」

「ええー……」

「何んで何言ってるんだこいつっていう目をしてくるんだよ! だってこいつは人じゃないだろ」

「人扱いしないとか鬼畜のカズマだろお前……略してマダオ!」

「誰がまるで駄目な男だこのやろー! 本当にこいつ人じゃないんだって、なあ駄女神!」

「ちょっと待ちなさいな、まさかとは思うけろその駄女神っていうのはわらしのことらったりしないわよね? わらしはれっきとした高貴な女神様よ! 崇めなしゃい!」

「ほらな?」

 

 

よし!

自分が人間じゃないことを自白させたぞ!

これでアクアはペット枠……つまりこの家から追い出す口実はできた!

……このときの俺はずいぶんお酒で頭が変な方向に回ってたらしい。

 

 

「と言うわけでコイツはノー人間! つまりこの家にもし居候するとか言い出したらペット枠!」

「ま、まあこのアクアちゃんが不思議ちゃんなのはわかったけど、流石にペットじゃなかろうて」

「…………じゃあこの際コイツは自分のことを女神だって思ってるお酒のせいで頭がやられて弱くなったかわいそうな疫病神ってことでいいよ」

「よくないわよ! わらしは疫病神れもお酒れ頭がおかしくなってもにゃいんらから!」

「いや、疫病神だわお前! 目を離せば借金をこさえてくるし、その度にナイフを舐めて舌を切って血を見せつけてくる怖い借金取りに俺が借金を立て替えるはめになるしだな」

「ちょちょちょ、借金取りの人がリアルホラー過ぎる!? そっちの方が気になりすぎるんだけども!?」

「とにかく! 俺が言いたいのは身寄りのないコイツを警察に渡して保護してもらわなかったってことは家で飼う気なんだろそういうことなんだろたきな!」

「いや、私は別にどちらでもよかったのですが……千束が」

「むぅ! いいじゃん別に! みんなでガヤガヤしながら映画鑑賞会する修学旅行気分がこれから毎日エブリディだよ! ……修学旅行とか行ったことないけど。私が渇望してたワクワクエキサイティンな日々の始まり始まりに文句あるかい!」

「さっきまでアクアのことを忘れてた人とは思えない発言だなオイ」

「わ、忘れてなんかないよ~? 既に先生のメールに『明日からバイト体験したいって子が来たから~』って送信しちゃったしそこまでして忘れるわけないでしょ!」

「おまっ、マジで何取り返しのつかないところまでしちゃってくれてんの!?」

 

 

……いや、今ならまだ間に合う!

ここから千束の携帯を奪い取って返信取り消しボタンをタップすりゃ万事解決だ!

本当なら千束に腹一杯食わせて睡魔と言う名のデバフをかけてから挑みたかったが現状は一刻を争う。

ミカ店長にこのメッセージを見られてOKの返事をもらう前に取り消さねば!

 

そんなこんなで深夜のプロレス乱闘大会(ガチ)の幕が開いた。

誰が勝って誰が負けたのかは想像にお任せしておく……ううっ

 




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