このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続き~リコリコ第8話直前のお話です。


カズマのいる異世界に突撃を!Byアクア

水の女神アクア様こと私なんだけど、どういうわけかニホンに来ちゃったみたい……

一体どう言うことなの!?

こうなっちゃった理由も何も心当たりがないし、不幸よ不幸!

 

……まさかだけど面白そうなボタンがあったから押さないといけないという衝動に駆られちゃったのは関係ないわよね?

カズマさんが「お前ウィズのとこにあった魔道具……こんくらいのボタン押したか?」って聞いてきたけど、怒られそうだったから念のため首を横に振っておいたわ。

ええ、私の胸の内に秘めていた宴会を楽しむ芸人魂が爆発してボタンを押したっていうのは認めるけれども、それとこれとは関係ないに決まってるわ、だって不思議なことはそれより前からあるもの。

 

具体的に言うとちょっとだけ瞬きしてみればいきなり暗闇なんて無効化しちゃう女神様なのに視界が今後の将来みたいに真っ暗になるし、もう一回瞬きすればウィズのやわっこい快適膝枕の上だったし。

ボタンを押してからはもう一回目を閉じて開けて見ればいつの間にかカズマに抱っこされてたし、幸せな気持ちになったと思ったら急に頭にたんこぶできてイタかったし、今回の摩訶不可思議な出来事は一体何なのかしら?

……ハッ、もしかしなくとも新手のスタンド攻撃かしら!?

 

じょ、ジョーダンよメガーミジョーク…………コホン。

兎にも角にも住み慣れたアクセルの街じゃないこんな場所に来ちゃって、私にとっての初めての異世界転移みたいなものだから一人で心細かったの。

そんなときに見ず知らずの私のことを助けてくれたのは千束ちゃん!

捨てる神あれば拾う神ありとはこのことね……そう言えば私の方が本物の女神様なんだけど。

同居人のたきなちゃんが私のことを温かく家に迎え入れてくれたときにはそれはもう嬉しかったのを覚えているわ。

ここの家で私に冷たくしてるのはカズマだけよ!

そんなカズマが作ったカエルの唐揚げがあったからモグモグしてると、千束ちゃんが「カズマとはどのようなご関係で?」とかお義父さんみたいなこと言ってきたから、これはみんなと仲良くなるために正体を明かす場面だって判断して、私は正直に言ったのよ。

 

 

職場(天界)から『お前は俺のもんだ!』って無理矢理戻れないところ(下界)まで連れ出されたり」

「おんまえふざけんじゃねぇーぞ!? その言い方だと俺がとんでもないプロポーズしたみたいなんだが!? お前ら誤解すんなよ!」

「も、もちろん誤解なんか! 結婚は人それぞれ自由だしね、うん、未成年でプロポーズはとっても勇気あるしいいんじゃないかな」

「それが誤解なんだが!?」

 

「それからの生活は大変だったわ。安い馬小屋にお泊まりしたり、土木工事のバイト終わりにシュワシュワ飲んだり、魔王を討伐したり、山あり谷ありだったわ」

「カズマ、流石に結婚するにしても結婚資金を調達してからの方が……」

「いやいや魔王って言っとるじゃろがい……ゲームの話だよ、ね? なんだか甘々な生活送ってるなぁこのこのぅ! 恥ずかしがって嫁さんを家に上げないのはよくないぞぉ!」

「だあああああ! 確かにゲームみたいな話だが全部事実というか、間違っちゃいないが間違ってるんだ!」

 

「まあ女神である私がいたからちょちょいのちょだったんだけどね!」

「……千束の言うとおりゲームの話だったんですね」

「そんでそんでぇ? もっとこのコーヒーを甘くしてよアクアさん!」

「インスタントコーヒーに湯注ぐな! いいか千束、こいつの言ってる世迷い言は全スルーしt」

 

「ねえ! さっきからどうして私の話を信じてくれないの!?」

「現実味なさ過ぎるからだろ。なんなの馬鹿なの死ぬの?」

「ばかずまさんってば、バカって言った方がバカなの知らないのかしら? カズマよりちょーっと思いつくのが遅かっただけで私が馬鹿なわけないじゃない! ……確かに現実味ない話だったけれど、魔法とか見せたらきっと信じてくれるわよね! よっ! 初対面の花鳥風月ー!」

「カズマより洗練されたその手品……もしかしてカズマの器用さってアクアさんの指導の賜だったり?」

「鯉の芸を教えてもらった」

「やっぱり! すごいマジックじゃんもう一回見せてもっと見せて!」

「スゴいだなんて、いやぁ~、それほどでもありますけど! でもね、芸は請われてするものではないの、自ずから披露してしまうものなの。また興が乗ったらやってあげるわ」

「やたーっ!」

 

 

ってことがあったの。

今思い返して気づいたんだけど私、女神だって信じてもらえなかったんですけど……

千束ちゃんのノリがよくて気持ちよくなってたら、いつの間にか私が女神であるという事実が自然消滅の一途を辿っていたんですけど。

私のアイデンティティーの一つである女神要素が無に帰したんですけど。

まあ日本じゃ神秘が廃れたせいで女神パワーが霞んで見えちゃうって聞くししょうがないのかもしれないけどなんか悔しいわ。

今後もしっかり女神アピールして私が女神であることをすり込んでいかないとね!

 

そんなこんなで千束ちゃんのお家で一晩お泊まりすることになり、深夜のお布団乱闘パーティーで真っ先に撃沈したカズマを差し置いて、枕投げという名の死闘を繰り広げた私と千束は意気投合しちゃったりして!

たきなは観客席の方に行ってたからまだちょっとただの友達止まりだけど、あの子は今まであってきたこの中で一番アクシズ狂の素養があると私の曇りなきアクア(アイ)が訴えているしあと少しで親友に近い仲良くなれるはずよ!

 

 

そんな暖かい体験をしたのだけれど、それ以前の記憶がちょっぴり夢と混じってるのよね。

例えば家の前で座り込んでお塩と炒り豆をおつまみに、千束が「な、なぁんだ、コレしゅわしゅわするだけでお酒じゃないじゃん炭酸水じゃん!」って言って返してくれた愛しの高級シュワシュワ「ドラゴンスレイ」ちゃんを飲んだり。

例えば高級シュワシュワは水みたいに飲みやすかったし、おいしかったんだけど、こっちに来る前私の差し出す酒(アクアの親指出汁)を遠慮してたウィズに善意で一口あげたら喜びのあまり昇天しかけたり。

結構リアルだったのだけどこれらはぜーんぶ夢の話だったって私の冴え渡る脳から導き出した推理は言っているわ!

 

推理その一よ!

流石の私だって冒険者ギルドで散々飲んだあげくの一升瓶シュワシュワは二日酔い確定なのに、こうしてシジミ汁を飲まずとも完全回復してたのは辻褄が合わないわ!

推理その二……はないけど完璧で究極ないい証拠でしょ!

そうやって私はむっふっふーんって鼻高々に胸を張って自慢の推理を披露してみる!

つまーり、あれは私の強き思いが作り出した幻想に過ぎなかったのよ!

 

……あによ、そのカズマみたいに「お酒で頭がやられたんだかわいそうにとか」何か失礼で不敬なこと思ってるような顔は。

一応言っておくとね、お酒を飲んでたからって記憶がおかしくなってなんかいないわよ?

酒は百薬の長だってだってよく言うし当たり前体操よ。

もし少しでもそういう無礼なこと思った愚かな子羊ちゃんがいたら今一度私の顔を見て懺悔なさい!

……あっ、でも今ならアクシズ教に入信することで女神アクアの名の下に今回の非礼は水に流してあげましょう。(今だけの入信チャンス!)

入信ついでに食べる飲める石けん洗剤もご一緒にどうぞ!

 

 

「もちろんそれだけじゃないわ! 今だけ送料&商品無料ですよ、さああなたも今日からアクシズ教! 恐れることは何もないわ! レッツ入信入信!」

「……ねえあっくん何やってんの? 今はあんまりエネルギー使わない方がいいよ」

「いいえちーちゃん。これは残りわずかなエネルギーを使うべき重要な一大局面、いわば私たちに残された最後の戦いよ。画面の向こうのみんなにアクシズ教を布教して、もし教徒が増えたら私へのお貢ぎチャンスの到来……」

「しかしアクアさん、次元が違うのなら食べ物はもらえないのでは?」

「そこは気持ちだけで結構ですって言えるかっこいい大人になりなさいななっちゃん」

「なっちゃん!? それ私のことですk」

 

 

まあ私がこの部屋に居候するようになってから1ヶ月。

私は千束ちゃんのことをちーちゃん、たきなちゃんのことをなっちゃんと呼ぶほどに友情を深めた……

というのは半分本気の半分冗談。

本当はお腹がすきすぎて余計なカロリーを消費する余裕がないから名前を互いに短くして呼び合っているだけ。

静かに呼吸するみたいな涙ぐましくもエコを心がけてる私と千束ちゃんに救いの手はないのかしら。

……ないのならこんなところで縮こまって消極的な状態じゃよくないわよね!

 

 

「……ねぇちーちゃん」

「なんじゃいあっくん」

「いつまでそうして何も食べないでいるつもりかしら? このまま過度なダイエット続けてると肌のハリツヤがなくなってカッサカサのヤサグレリッチーになっちゃうからおすすめしないわ。というわけで何か料理作ってくれないかしら?」

「私だってこんなことしたきゃーないんだよあっくあん。でもカズマが、この家の料理番が行方をくらませちゃったから我慢しないとなんだよ。はぁ、乙女の胃袋を射止めるだけ射止めて、自分の奥さんが来たらポイかぁ」

「ねえちーちゃん、何回も言ってるでしょ私は奥さんでも何でもないって。私はカズマに養ってもらいたいだけなのよ!」

「……けっ、ノロケじゃんか」

「違うってば……私たち、このままじゃお腹ペコペコで死んじゃうのよ」

「花咲き散る、恋乙女の命短しってね。わたしゃここで枯れるよ」

 

 

千束が今にも風で吹き飛ばされそうなほど痩せこけてとっても心配なんですけど。

こんなことになるんだったら二人で枕投げに没頭して、カズマをひとりぼっちにしとくんじゃなかったわ。

じゃなきゃカズマは……カズマは……!

 

 

「なあたきな」

「たきなです」

「アイツら何やってんの?」

「カズマが行き先も言わず喫茶店を欠勤してる間に千束は母親の温もりが足りずに寂しさで喉を通らなくなってあんなことに……」

「ま、マジで!? 悪い、台所借りるz」

「……と言うのは冗談で、実のところカエルの唐揚げ以降、健康な食生活というか、適切な食事量を見誤ってしまい過食気味で一週間で10リンゴ増えてしまったようで」

「……リンゴって何だよリンゴって」

「オブラートです。まあ、増量を自覚してからというものダイエットに励み、現在は二週間の減量の成果があって6リンゴ減量しました」

「4リンゴ……つまり1.2キロくらいふくよかになったと。週1キロペースで減量は激しすぎないか?」

「ぅおおおおっっ! 食欲の秋に支配された乙女の末路を赤裸々にすんな! 体重は禁句よ禁句! 太ったと思っても痩せたって言うのが気遣いってもんじゃろがい!」

「千束ヤセタナ」

「心にも思ってないこというんじゃない! わしは太ったんじゃい!」

「どっち言っても結局怒るんじゃん」

 

 

カズマってば気配を消して帰ってくるとか中二病種族のめぐみんじゃないんだから……

ビックリさせないでよ、もう。

でもおかげで元気100倍になったみたいでよかったわ千束!

ここ最近ずーっと体重のことで頭悩みっぱなしで、体重計に乗る顔が苦痛そうでストレスで禿げそうだったもの。

アクシズ教のご神体である私から言わせればストレスなんて百害あって一利なし、ストレスを忘れさせるお酒は一害くらいはあるかもだけど百利あり!

毎日を楽しく過ごして一喜一憂するのが人生の醍醐味ってもんだって説法を説きたかったんだけど、千束ちゃんの決意は強くて私じゃ止めることができなかった。

でもそれも今日でおしまい!

今日帰ってきたカズマさんが何かとびきりのお手製料理を作ってくれるんだもの!

 

 

「ったく、お前らがそろそろ諦めてアクアを保護施設に入れると思ったから顔出したのによ……」

「ねえ、カズマさんってば私のことをかわいらしい猫みたいに思ってくれてるのは嬉しいんだけど、前々から本当の小動物みたいな扱いしてくるのはどうかと思うんですけど。一度私のことどう思ってるか聞こうじゃないの」

「俺の人生最大のやらかしポイントで、今は知り合いカッコ未成年カッコ閉じの家に上がり込んで居候してる収入なしのニート。ペットの方が食費かからないからまだましかなって」

「うわああああっっ! 元引きニートのくせに生意気よ!」

「誰が元だ! 最初から引きニートじゃなかったわ! 高校生だったしニートじゃない!」

「でも私は聞いたわよ、今は喫茶店で働いてないって! ニートに傷に塩を塗り込まれるなんて思いもしなかったんですけど! 謝って! 私の心をえぐったことを謝って!」

「いや、俺は千束からの給金貯蓄で潤ってるから働かなくても今んとこ大丈夫なわけで。ネカフェとかキャンプとか時間を潰せたし夏休みなかった分、いい秋の長期休暇になったわ…………お前もいい加減自立しろよ?」フッ

「鼻で笑われた!?」

 

 

こんのアウトドア派のニート……女神である私に嘗めた口きいて、一体どうしてやろうかしら。

とりあえずお腹空いたし焼きそばパンを買ってこさせることは確定よね。

昔ウィズのとこにあった「願いが叶うまで外れません~チョーカー型の首締め魔道具~」の報いをここで受けさせるべきかしら。

そうしましょう! 私はこの世界のお金持ってないし近場のコンビニで自腹を切ってもら……

……そう言えば今のお金ないのよね。

ここ最近千束のお家から出なくなったし、千束ちゃんが「ミズキからお酒掻っ払ってきたよ!」っておいしいお酒を持ってきてくれるからそれをチビチビ飲んで満足してたから気づかなかったわ!

何という盲点ッ、このアクアじゃなきゃ見落としてたことでしょう。

まあとりあえず今日はまだ食べてない朝食を買ってきてもらうか作ってもらうかしてからこれからのことは決めましょう、そうしましょ!

 




そろそろメリークルシミマスですね(吐血)
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