このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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このパフェも洗剤も……実は食べれちゃうんです!


この見た目アレなパフェに洗剤を!Byカズマ

たきなが経理を始めてから一週間が経過した。

俺は結局たきなに無理矢理引っ張られてお仕事の手伝いに。

何だかんだ行きたくないって駄々捏ねたが、銃を使うことにまだ躊躇があっただけで、実際には「敵感知&千里眼&潜伏」コンボセットで容易いお仕事だった。

 

……べ、別に行くまでに踏ん切りがつかずにたきなに尻を思いっきり蹴られて戦場に投下されたとか、どうにでもなれの精神で目を瞑ってゴム弾一発撃ったら電気系統の機械に偶然当たって上手くいったとかでは断じてない。

俺はスタイリッシュ反社スレイヤーだ、電気が復旧した頃には「ふっ……他愛ない。銃を使うまでもなかったな」とかっこつけるくらいには余裕だったんだぞ?

 

なんて余裕こいたが運の尽き。

俺は銃を取り上げられ、この一週間ありとあらゆる危険な仕事を任された。

もちろんこんな理不尽に黙っている俺じゃない。

 

 

~回想~

 

 

「断固拒否させてもらう!」

「ですが適任はカズマしか……」

「俺の本業は料理人だ! この店の料理番と言えば? そう、カズマさんだろみんな!」

 

俺はカウンターから顔を出して座間でボドゲを楽しんでる常連の5人に問いかけた。

 

「いよっ! 職場復帰おめでとー! 今日からカズマの料理が食べられるって聞いたから作家の仕事ほっぽり出してきちゃったよ!」

「それ大丈夫なんですか米岡さん……退院おめでとうカズマくん。まさかクルミちゃんから段差のないところでコケて足を骨折したって聞いたときには驚いたけど元気になってよかったよ」

「おめでとーってアレ? そうだったの阿部さん? 私てっきり伊藤さんのアシスタントで監禁生活してるのかと……」

「た、確かにちょっと編集の人に仕事見張られてたせいでここに来られなかったけど私がカズマくんのことを監禁なんてするだなんて心外よ北村さん! そう思わないジンさん!」

「……」

 

それぞれの回答をいただいた俺は厨房に体を戻してたきなに。

 

「ほら見ろ! みんなが俺の料理を待ち望んでいるだろ! この期待を裏切ってなるものか!」

「カズマの耳は節穴ですか! それにカズマには料理は作ってもらいますよ?」

「ブ、ブラックタキナサンダー!?」

「ですが安心してください。一週間で終わらせます」

「何を?」

「千束のしつけをです」

「ちょちょちょい! 今何か不吉なワードが出てこなかった? 私はイッヌか!」

「あ、ちょうどいいところに。千束にこれからお金のかからない任務の遂行方法を叩き込んできますので、その間は接客と調理をお願いします。ほら千束、行きますよ」

「そんなことしなくても私はうまくできるから! だから手を掴んで地下に引きずり込まないで!? いやあああカズマさんお助けを! マジで何でそんな華奢な腕してるのにたきな力強いのよっ!? あ゛あ゛あ゛躾されちゃううううエロ同人みたいn……!」パタン

 

 

~回想終了~

 

 

千束…………どこでエロ同人みたいにって台詞覚えたんだ?

なんて思いながら小一時間接客してると、開かずの扉から現れたのは「今日はここまでです。慣れたでしょうし明日はもう少しハードなやつでいきましょう」と言うたきな。

それから「カズマ……助け……ガクッ」と満身創痍な千束。

 

ダクネスなら「ど、どんなハードなプレイをしてきたのか詳しく! いや、実際に私にしてみるといい!」とか言い出しそうだが、俺はわかってしまった。

きっと千束はこれから俺がする任務より過酷な調教を受けるのだと。

 

だから俺はそんなかわいそうな千束の想いを胸に抱いて過酷な任務をこなそうと決意した。

決してボロボロの千束が面白いからとかではなく、ダイエットにもなるし、千束のためを思っての苦渋の選択だ。

そんなこんなで任務を引き受けた俺は麻薬の取引現場を損害なしで鎮圧し、重鎮の暗殺を説得により阻止し、アイドルを凶器を持ったストーカーから守り……とまあいろいろな無茶ぶりだったが一週間無事完遂!

 

そして今日からたきな監修「お金のかからない任務の遂行方法」を叩き込まれた千束が俺の代わりに行ってくれるらしい。

頑張れ千束! 負けるな千束! すべては俺の収入アップのために!

 

 

 

 

****

 

 

 

 

というわけで今日から俺は自由を手にする!

お日様の光で目を覚ます寝起きは最高で、家の玄関で靴をとんっと履いてから喫茶店に向かう。

後ろからついてくるのは疲れ切った顔をしてる千束、それからなぜか距離を置いてくるたきな、そして客引き担当のアクア。

トラブルメーカーを引き連れているのにも関わらず俺の足取りは軽やかで、鼻歌交じりのスキップステップを踏みながらお店の扉を開け放つ。

 

気分はさながら自由な屋敷僕妖精、もしくは世界一自由なヤツである海賊王。

このサトー、テンションがぶち上がって頭がハイになっているのだ。

 

 

「おいっすー。今日から一生厨房に住み着くカズマさんでーす。今日からフルタイムで料理頑張りますのでじゃんじゃん注文よろしくっす!」

「今日はテンション狂ってるわねぇ……何かいいことでもあったぁ?」

「いやぁ別にないっすよ! 強いて言えばたきなが昨日開発した新作が楽しみってとこっす!」

「あぁー……アレか……」

「昨日千束とミズキさんにはOKもらったって自信満々だったので楽しみだなぁ!」

「ふふふっ……朝から大変気持ち悪いと思っていましたがそんな子供っぽい理由だったんですね。私、今から作ってくるので待っててください!」

「おーう!」

 

 

動悸ドキドキドキ……と落ち着かない興奮。

深呼吸して落ち着けぇぃ、俺の中のカーボーイ・ビル・ワッツ!

この鼓動は心臓病のせいでも恋煩いのせいでも馬娘のOPでも何でもないはずだ。

きっと出勤時にスキップしてたせいで胸が高鳴っているに違いない!

それ、ひっひっふー。

 

ふー、ちょっと落ち着いた気がする。

落ち着いたらさっき「大変気持ち悪い」ってたきなの口から毒が吐かれた気がしなくもないことを思い出した。

……が気のせいだってことにしておこう。

ついでに俺の意識の外で行われている不自然なやりとりも気のせいっていうことにしておこう。

今の俺はそれくらいの些細なことはさらりとトイレに流せるくらい気分最高潮なのだ。

 

 

「あっあー! わ、私ちょっと用事を思い出したかもぉ……ちょっくら出かけてくるから後のことはミズキよろs」

「誰が逃がすかこのアホンダラァ。わかってんだろ死なば諸共よぉ」

「い、いやそこは屍を越えてゆけとか言うところじゃん!」

 

「どうしたの二人とも何か慌ててるけれど……もしかしてトイレに行きたいの?」

「う゛っ……そ、そんな感じかもぉしれなくもないかもぉ……しれない……」

「うんk……今日に限って鋭いっ……痛みがぁ……!」

「?」

 

 

それから約5分後。

俺は目を閉じ、鼻腔を擽る温かなカカオの香りを肺いっぱいに吸い込む。

たきなの渾身の作品はチョコレートを使った何からしい。

となれば俺の料理スキルで簡単に滑らかな口触りにすることで質もタイパも向上、給金向上、生活の質向上、睡眠の質向上、集客率向上、質向上……

ふっふっふ……インフレエグすぎてお金がガッポガッポのウハウハで笑いが止まんねぇ!

明るい将来を見ようとして目を開け……

 

 

「……た、きな、さん? こ、これは」

「寒い冬にぴったりのホットチョコパフェです!」

 

 

俺は絶望を見た。

 

 

 

 

****

 

 

 

「一先ずアクア、ピュリフィケーションかけてくれ。もしこれがドッキリなら浄化できるはずだ」

「い、一応試してみるけど私、この名状しがたい半固形物に手を触れさせたくないんですけど……」

「あっ、すみません! スプーンを持ってくるのを忘れてました! 今とってくるので待っててください」

 

 

たきながトテトテと履き物を鳴らしながらキッチンの方に背を向ける。

あの真面目なたきなさんがこんなおかしい発想をするはずない。

誰がこの事件の黒幕なのか、断罪するためにこう声を上げた。

 

 

「……はい、やらかしウォーマンおとなしく名乗り出ろー」

「やらかし2号見参!」

「おん前かああああああっっ!」

「いひゃい! かじゅまひゃんほっへ裂けちゃうはらやめへ! 口裂け女になっひゃう!」

「お前がたきなにうチーン の形状になるように仕向けたのか! 少しくらい悪びれて名乗り出ろよ」

「ちがわい! 私がそんな下品な乙女に見えとるんか! それに私はやらかし2号って言ったよ!」

「じゃあ何で名乗り出たんだよ……」

「……その残酷な行いを止めることができなかった。純真無垢なたきなが何も知らないままその手を汚しているのを知っていながらここにいる主犯を止めることができなかった。そんな私にも責任があると思って……」

 

 

俺は純粋無垢なたきなを悪ガキの道へ誘った極悪非道な千束に怒りと悲しみの鉄槌(頬を思いっきり抓るの刑)を下したのだが、それは半分間違いだったようだ。

だけど俺の股が水浸しになったときにクルミと一緒に馬鹿笑いしてたお前は十分下品だわ!

 

しかしほかの犯人ねぇ……

千束とクルミより下品なやつが犯人だろうと目星をつけるが、そんなやつなんてこの喫茶店にはたった一人しかいない。

俺は餅みたいに伸びたほっぺたから手を離してパチンっと音を鳴らし、第二容疑者にジト目を向ける。

 

 

「……ふっふっふ。バレたならしかたないわね。私はやらかし3号よー!」

「バカミズキ! 薄紅色の頭をどうにかしろよ!」

「いひーっ!? 千束より激しくしないでぇ! それと頭はピンク色じゃねぇし私は3号よ! 主犯は別にいr」

「いやアンタ以外考えられねーよ! もし他に犯人いるって言うんだったら大人しく白状しろ! あのうんピー事件の犯人は誰だよ!」

「スプーン持ってきましたよー……ってどうしたんですかみなさん?」

 

 

今たきなが入ってきた瞬間静寂が訪れる。

千束とミズキがたきなから視線をそらし、何か諦めたような顔で指さした……たきなの方に。

俺は否定したかった。

だが千束とミズキの顔を見ても諦めたように首を横に振るだけで、俺は察してしまった。

 

 

「嘘、だろ、おい……。そ、それならなんで二人とも事前に止めてくれなかったんだ! 事件を未然に防ぐことだってできたろ!」

「ごめん……ごめん、カズマ。料理のレシピを見ただけでは全然こんなことになるだなんてわからなかったんだ……」

「第一発見者は私、千束はなんっにも悪くなんてないわ。……でもあの純粋な顔を見たら私……私、何も言えなかったのよぉ!!」

「……ミズキさん、話の経緯はよーくわかった。よく……話してくれたな」

「ううぅ゛…………ッ!!」

「本当に何が起こってるんですか! もしかしてミズキさんと千束が何かやらかしたんですか現行犯逮捕なんですか!?」

 

 

やらかしてるのはお前だよたきな……

最初、話の全容を理解したとき受け入れがたい事実に直面して一瞬体が硬直した。

これ、たきな、自分で作ったホットチョコパフェなのに気づいてないのか!? って。

嫌な汗が噴き出し、声が出なかった。

 

だがしかしミズキさんの背中を優しく叩いてるときに思ったんだ。

たきながまだ気づいてないのなら見た目とか見た目の改変を加えるチャンスがある。

あの純粋な心を汚さずに解決する方法がある!

 

なら俺はどうすればいい……

料理長であるお前はどうすればいい……

答えは一つ、思い浮かんだ。

目の前にあるほっかほかのブツを口に含んで、商品に向いてないと一言発するだけでいい。

俺はたきなが持っているスプーンを取り上げるようにして手に持ち、ええいままよと意を決して茶色をすくい取り口の中へ入れた。

 

 

「あ、おいしい……」

「ですよね! この中で一番料理が上手なカズマがそういってくれるなら商品として売れますね!」

「あっ! これは違っ」

「早速材料の買い出しに行ってきます!」

 

 

そう言ってたきなは顔をぱああっと朗らかに緩ませ買い出しに行ってしまった。

 

ふー……

ああああ思わず口が滑ってしまったあああああ!

いやだってあんな見た目なのに味が予想外に結構いけるんだぞ!?

思わずおいしいって口に出しちまうだろうが!

くそぅ……味までソッチに再現してくれればよかったのにこのままじゃ!

 

 

「ちょっとカズマなにしてくれちゃってんの!? ここで止められなかったらあの商品が世に出回っちゃうんだよどうしてくれんの!?」

「ちょ! 肩揺らすなよ! 今変なもの食べたイメージが脳にこびりついてて吐き気が増進され易い状態だからマジでやめろ! そ、それよりアクア! ピュリフィケーション試したか! これで浄化されれば衛生上だめだって判定できるんだが!」

「ピュ、ピュリフィケーション……あ、ねえねえカズマさん! どうやらこの物体は汚れたもの判定されないみたいよ! でも待って、もしかして遠目で見ればきっとおいしそうに……」

「うん、遠目で見たらよりうんピーだわ! 何で遠近法で乗り切れると思った!?」

「チョコ味のソフトクリームに見えないかなーなんて思っただけよ! あっ、それならいっそのこと隣に洗剤とかおいてみましょう! ……ってうわっ、よりそれらしいわね」

 

 

うっわー、本当にそのパフェピュリフィケーションできそうに見えてきた……

じゃねえよ!

どんだけそんなことしてもこいつは見た目があれなだけでおいしいホットチョコパフェ価格1200円なんだ!

見た目が非常に悪くなっただけで味も品質も変わるわけないじゃねーか!

 

って本来の目的を思い出せサトウカズマ!

お前の目的は如何にしてこの見た目最悪なパフェを提供させないかだ!

……いや、でもやっぱその前に一つだけいいか?

 

 

「おま、それどっから出した洗剤!? 常に携帯してんの!?」

「ええ、もちのろんよ! アクシズ教たるもの、いつ何時入信したいって人が現れてもいいように入信書と特典のアクシズ教印の石けん洗剤は手品で取り出せるようにしてるの!」

「んなこと聞いとらんわ! 俺が聞きたいのはわざわざそんなの出して馬鹿なのかお前の頭って話だよ!」

「馬鹿じゃないわよ! もし不潔に見えるのなら……」

「石けん洗剤使えばいいって?」

「そうそう!」

「やっぱりお前馬鹿の世界チャンピオンだよ! かき氷にシロップかける感覚でピーーに洗剤はかけねえよ! そもそも本物のブツに洗剤かけたところでブツは消えねぇんだから意味ねえよ!」

「でもこのホットチョコパフェ、実は食べれるのよ? そして言わずもがなアクシズ教の洗剤は食べれるの」

「だからなんだよ!? 食用じゃないだろ石けん洗剤は!」

 

 

ほんとうちの駄女神はアホの子で……ううっ。

推しの子のアクアとうちのアクア交換しませんか?

もしくはエリス様と女神チェンジしてくれませんか?

えっ? 無理? 知ってました。

 

ぬおあああああ!

一体どうすればたきなの心を汚さず恥かかせずに自信満々に見せてきたアレをいい感じにできるんだああああ!!




調子に乗ってクルシミマス……12/25、エリス様、クリス様、お誕生日おめでとうございます。

次回「気づき」
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