このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回のカズマ(酔っ払い)視点です。


この暗殺少女から逃走を!By カズマ

何となく周囲の音が聞こえてきた。

もしかして俺、ちょっと寝ちゃってたのか?

酔った勢いで日本に来れるとか言う魔道具を使ったはずだが、そんなに酒飲んだっけ?

 

ってあったまいってぇ……

酒飲み過ぎた感じってより何かに頭ぶっつけたような、たんこぶがズキズキするような痛さだ……

 

 

「う、うぅ~ん……」

「聞こえてますかぁ?」

 

 

痛さで唸っていると何処からか優しさ声が聞こえてくる。

今まで聞いたことない声に起こされて頭が痛いながらも目を開けると真っ暗な天井が。

 

 

「んあ……知らない天井に知らない人の声だぁ? 俺ってアクセルの街から日本に帰って来れたのかなぁ?」

「おっ、起きた起きた! 君、大丈夫?」

「これは……随分と重傷ですね」

 

 

まさか、ここは病院か?

にしてはベッドが固いし冷たいが、それ以上にさっき聞こえてきた重症ってのはまさか頭痛いのと関係があるのかどうなのか気になってしょうなない。

ちょっと怖くなって頭がどうなってるか確認しようとして、自分がうつ伏せだったことに気づいた。

 

……どういうことだ!?

さっきまで俺は確かに天井を見てたと思ったらいつの間にか体勢が反対になっていた!

ま、まさかスタンドの攻撃を受けているのか!?

……何て非現実的なことを言ってみたりして、この不可思議な現象を解明すべくガバッと起き上がり周りを見渡すと、そこは夜空の下で、周りには二人の美少女高校生。

片方は幻想的な白髪と紅魔族のような紅き瞳、もう片方は紅魔族のような黒髪にクールな黒目。

一瞬ドキッとときめくが、普段から顔のよい、顔だけはよい奴らが周りにいたせいで平静を取り戻す。

なんて悲しいことだろう、俺は二度と美少女を純粋にかわいいと見られないのだろうか!?

い、いや、大丈夫、ここは日本だからそんなに変な人はいないはずだ!

そんな思いが先行して変な質問をしてしまった気がする。

 

 

「日本のJKですよね?」

「ま、まあここは日本ですし私たちは女子高校生ですが……」

「おお、じゃあウィズのヘンテコ商品は今回に限ってはまともに作動したのか!」

「千束さん、頭を打った衝撃でおかしくなったのかも」

「たきなも思う?」

 

 

ここは病院じゃなかったけど千束とたきなと呼びあってる二人によると俺はやっぱり怪我を……!?

も、もしかしてそんな俺のことを心配して膝枕してくれてたり、心臓マッサージの前のキ、キス(人工呼吸)を恥ずかしがってたとか!

王道かはわからないがこれってラブコメ的な展開になってくんじゃないか!?

そうとなればこうしちゃいられない!

まずはお礼から行こうか!

 

 

「もしかして俺のこと介抱でもしてくれてたのか? だとしたらありがとうございます!」

「さっき発見したばっかだ……感謝されるようなことはしてないぜ!」

 

 

イケメンだ!

アニメの中だけだと思ってた顔面かわいいのに言動がイケメンJKが目の前に!?

しかもカッコいいだけじゃなく目の前の子は何故か顔を赤くして……

 

異世界で一皮剥けた俺に惚れたのか?

だとしたら俺は猛烈に感動した!

このまま抱きついてしまいたい衝動が溢れ出すが、俺は余裕のある紳士だ。

決してマツラギみたいな鈍感系たぶらかし野郎じゃない!

深呼吸して落ち着けぇぃ、俺の中のカーボーイ・ビル・ワッツ、あくまで紳士的にだ。

 

 

「スゥ……ハァ……。そう言えばこんな夜更けまで俺の介抱をしてくれたんじゃないとしたら何してたんだ? 美少女がこんな時間に闊歩してたら悪いヤツに拉致られるぞ?」

「誰が悪いヤツじゃこんの未成年男子! 我が身見直せぃ!」

「そうですよ、未成年での飲酒は立派な犯罪です」

「俺は立派な大人だぞ、酒飲んでもいいだろ?」

「す、すみません! 私としたことが人を見た目で判断してしまったようで……」

「わかればいいんだよ?」

 

 

俺は寛大な大人だ。

魔王をも下した俺がそんな狭量なわけないだろ?

 

……だから急に女子高生が警察になりすましてコミュニケーションを図ってくるという意味不明な展開でも、きっと目の前の美少女が不思議ちゃんなだけで、彼女なりに頑張ってコミュニケーションしようとしてるのだと理解して、そつなく対応するのだ。

 

 

「ご、ごほん! ちょっと警察の者だが、そこの君、いいかね?」

「あ、すみません、まさかこんなJKコスプレしたかわいいお巡りさんが! お巡りさん、お疲れ様で~す!」

 

 

よしよし、美少女の笑顔がかわいい。

きっと俺の演技に満足してくれてるんだろう。

黒髪の美少女が白髪の美少女を見て呆れた様子になってるのも趣深いなぁ。

 

 

「ちょっと職質中なんだけど、君、自己紹介してくれる?」

 

 

なんと 美少女が なかまに なりたそうに こちらをみている。

なかまに してあげますか?

 

→YES

 YES

 YES!!

 

ここは日本だ、異世界じゃない。

そしてこの美少女二人に迫られるという夢のような状況は現実だ。

何か異世界での過去の嫌な記憶を思い出すが、ここはあのおかしい異世界じゃなくて日本なんだ、YESかはい以外の選択肢があるだろうか、躊躇う必要があるだろうか……いやないッ!

 

 

「もちろんです! 俺の名は佐藤和真! 前世も今世も天下不滅の無一文、よろしく! ところでお巡りさんは?」

「お巡りさんはって何ですか?」

「ほら、俺は自己紹介したぞ、次はお巡りさんの番だ!」

「しょ、しょうがないな。えと、私は錦木千束! 天下不滅の……不滅のぉ……? えーっと、何だっけ?」

「私は井ノ上です。年は?」

 

 

なんと もう一人の 美少女も……

ふっふっふ、この異世界帰りの佐藤和真、元の世界でモテ期はいりましたっ!

まさかさっきまでクールだった子が身長差のせいもあるが上目遣いで俺を知ろうとしてくれてるってことは確実に好意的だってことだ!

サキュバスのお店で鍛え上げられたこの洞察眼に狂いはない!

 

 

「うす、井ノ上さん! 18ッス! ところで下のお名前h」

「未成年は飲酒禁止だよ? わかる?」

「うん? ……あぁ、そう言えばそうだったなぁ。久しぶりの日本で忘れてた」

 

 

井ノ上さんのお名前を聞きそびれてしまった……まあさっきたきなって言われてたからきっとそれが名前なのだろうが。

たきなちゃん自身から聞き出せなかったことは少し残念に思うが、それ以上に千束さんから日本の常識を聞かされてしみじみと考えてしまう。

二年間ずっと異世界だったからか、すっかり向こうの感覚に慣れてしまってたのだ。

 

……ってこのままだと俺、ただのチョイ悪自慢してる風になってない!?

いかん、訂正せねば!

 

 

「弁明させてもらうが、イギリスだと16から飲めるだろ?」

「もしかして英国に留学でもなさっていたのですか?」

「アイスピーキングリッシュ」

「千束さん、この人留学の経験も」

「ネイティブじゃ」

 

 

ふっ、俺の語学スキルに驚いているようだ。

異世界留学の経験すらある俺には英語なんてちょちょいのちょいよ!

きっとこれで俺が変な方向に気取ってると思われなくて済むだろう。

そんなこと思っているとたきなちゃんが俺の方にズイっと顔を近づけ、興味津々に俺の方に来た!

 

 

「そう言えば何故か街路樹に突き刺さっていたんですよ貴方。何か心当たりは?」

 

 

こんな間近で何を真剣な表情して迫ってくるのかと思ったらそんなことか。

告白とかかと思ってドギマギしてしまった……

 

にしてもどうして、か……

……理由はあるっちゃあるが……黙秘権で。

異世界の魔道具の力で転移してきたはずだが、そこんとこの前後の記憶が曖昧だ。

でもきっとその魔道具が俺のことを空中に召喚したか植木に埋もれるように召喚したかのどちらかだろう。

 

誰かに頭から植木に突っ込まれたとか、自分からそうしたとかは絶対ない!

 

……ないよな?

 

まあ、一応任意ですよねってことで俺は口を噤んだ。

 

 

「……まあいいです。それより、随分酔われてますが一体何を飲んだんですか?」

 

 

馬鹿正直に言うとネロイドだよ。

街中を探すとニャーって鳴く、口に入れるとシャワシャワする謎生物、後それからシュワシュワ。

なんて答えたら「……?」みたいな反応するに違いない。

それから水だったけど竜殺しってのも飲んだから…………鬼コロを飲んだことにして話すか。

いきなり知らないお酒じゃあわかんないだろうしな。

 

 

「鬼コロって安酒だよ」

「うん、じゃあ住所と職業は? ニートじゃないよね?」

「引きニートじゃねぇ!! 俺は……高校生です!」

 

 

駄女神に抉られた古傷のせいで過剰に反応してしまった……

そして冒険者してましただなんて言える訳ねぇ……

なんなら魔王討伐したんだぜとか自慢したいのに日本でそんなこと言った暁には紅魔族というか中二病患者に向けられがちなあの可哀想な人を見る目の餌食となってしまう。

 

 

「はいはぁい、引きニートね」

「ち、ちがわい! 千束さん本当なんです! 信じてください! 俺は確かに不登校気味だったけどちゃんと高校生してたんですって!」

「ちょ、何なんですかこの人! 私は千束じゃないです! は、離れてください変なとこ触るな撃ちますよ!?」

 

 

いや、たきなちゃんが勝手に千束さんの前に立ち塞がっただけでしょうに。

もしかしてこれ、ヤキモチを焼いたってことか!

まったくクールに見せかけて実はツンデレなのか!?

 

何故か手に伝わる柔らかい何かを無心で、悟りを開いた気持ちで、邪な心ややましい思いなどはいっっっさいなしに触り心地をを確かめていると。

 

 

「ちょちょたきな!? 気持ちはわかるけど銃は駄目! ステイ、ステイだよ!?」

 

 

目の前に突きつけられたのは拳銃。

プラスチックのエアガンかなと思ったけどメタリックな重厚感。

……モノホンの拳銃だ。

 

そして一発パンッと激しい音が鳴る。

 

……

……

思わず酔いが覚めてこう思った。

この一般女子高生拳銃持って銃刀法どうなってんの?

幸運値が高くて回避スキルを持ってる俺じゃなきゃ死んで……いや、ダクネスとかはたいしたリアクションなく「いたっ!?」程度で済みそうだ。

 

そして何か爆裂魔法に慣れすぎて拳銃がショボく感じるの何なの?

 

 

「……あ、あの。今の日本って、そんなに簡単に銃使えるんスね……」

「先ほどは運良く避けられたみたいですが次変なことしたら命はないと思ってください」

「ひっ……!?」

 

 

別に俺は拳銃なんかにビビってなんかいない。

だって俺はあの魔王を倒したカズマさんだ。

その間に何回も死んでるし今更たかが近代兵器ごときに恐れをなすわけ……

 

ただ、たきなさんの瞳がマジで怖かったとか、初めてのコミュニケーションはお酒なしの方がよくて、今回はお酒のせいでおかしなことになっちゃったんだと心の中で言い訳をしながら潜伏スキルと逃走スキルを使用する。

音もなく素早く、サトウカズマはクールに去るぜ。

 

……今の俺はおっかなびっくりな様子かつ忍び足だ。

きっと見る人が見たら忍者かアサシンか、それともコソ泥か、そんな物騒な職業にたとえたに違いない。

って誰がコソ泥だッ!

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