このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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注、お食事中の方は閲覧をお控えください。前回の続きです。


この悲しきチョコパフェにアイディアを!Byカズマ

俺は努力したんだ。

 

 

「ふー……この行程が大変苦労しました。温度を高めると溶ける性質をもつチョコレートをいかにして温かい状態で形を維持させるか……」

「ね、ねえたきな? 確かにクリームなのに暖かいって言う矛盾を乗り越えたのはノーベル賞並の快挙だと思うよ? ただ、盛り付けがぁ……ちょおっとぉ……」

「そ、そうだぞ! SNSで人気を博してるスウィーツはかわいらしい見た目だ! 味がよくても流石にこれはかわいいとは隔絶してるんじゃないか?」

 

 

そう、できる限り販売の方向から遠ざけるように頑張った。

 

 

「ですがかわいさを求めると数を多く作れずに売り上げが……あっ、閃きました! 宣伝用に数量限定でかわいいパフェを作りましょう。それで品切れになったら味は変わらない私のを出せば万事解決です。我ながら冴えてますね」

「あっ……あぁっ……たきな、もっと別のいい案が……ねえカズマ!」

「…………」

「か、カズマ?」

 

 

何も、思いつけない。

たきなを説得させられるだけの材料がそろわない。

 

確かに俺は努力した。

それでもたくさん売りたいという確固たる意思を打ち砕くには届かなかった。

もし、かわいいものを作ってバズったらそれだけ繁盛し、お客さんも波のように押し寄せる。

買い出しも終わった後なのに今更別の材料にするなんて言えない。

う○こパフェを提供すればこの店のコンセプトがいろいろ終わる。

だからと言ってうんピーをかわいく成形するには俺の体力も時間もかかる……

ならもう……過労死ぬしかないじゃない!

 

 

「お、おーいカズマぁ生きてるー?」

「俺、頑張るから! いっぱいかわいいの作るから!」

「カズマ!? まさか死ぬ気じゃないよね!?」

「大丈夫、大丈夫だ……俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

「か、カズマアァアァアアっっ!」

「何苦しそうな顔してるんですか二人とも……やる気があるのはいいことですが、流石にお店の後輩を過労死させるまで働かせるほど鬼ではありませんよ私は」

 

 

俺は目をキラキラと輝かせて一生懸命なたきなのやる気を削ぐようなことはできなかった。

だが、だからこそカワイイを死ぬ気で量産することに決めたんだ……

たきなの黒歴史をリコリスの闇に葬り去るために!

俺と千束、アクア、それからミズキ……この四人はこの歴史を誰にも話さず、誰にも知られることなく隠し通す。

目を合わせることなく心が通じ合った俺たちの誓いだ。

 

……一つ訂正。

多分アクアとは何も通じ合ってなかったみたいでたきなに「チッチッチ、まだまだね」とムカつくドヤ顔で人差し指を立てて首を横に振っていた。

 

 

「なっちゃん、私的にはその案も捨てがたいのだけれどまだ足りないと思うの」

「何がです?」

「ズバリ! 味変用のシロップよ! あんなに大きいと確かに食べ応えはあるけれど食べ飽きてしまう可能性があるでしょう?」

「た、確かにチョコレートのもったりとした甘さと風味は食べ飽きてしまう可能性が……私としたことが盲点でした、ありがとうございますアクアさん!」

「お前は常に盲点見てるだろ……」

「何ですカズマ?」

「いえ、何も」

 

 

バカアクア!

お前何余計なことしてくれちゃってんの!?

たきなに闇をみせたらいけないから今のところは手出ししないが、一周回ってこのパフェのことを気に入りだした駄女神は後で訳も話さずに絶対シバキ倒す!

 

 

「いいのいいのよ! ちなみになんだけどぉ……ちょっとお耳貸して?」

「なんです? いいですけどせっかく案があるのなら堂々と言えば……」

「ホットチョコソフト」コソッ(囁き)

「……はっ!」(ひらめき、圧倒的ひらめきッッ!)

「店内が混むと回転率悪いでしょ? だから外でお楽しみくださいって言う感じでお持ち帰り用にホットチョコパフェの上部分をカップに乗っけてホットチョコレートソフトクリームなんて言って販売するのはどうかしら」

「そうか……そういうことですか! 季節を楽しむなら外! 寒空の下で温かいものを食べることでよりおいしく感じる算段……とすればお客さんもリピートしてくれますね……流石アクアさん……いえ、アクア師匠!」

「ふっふーん、ま、まあ? それほどでもぉ……ありますけど!」

 

 

……さっき後でシバキ倒すっつったが訂正させてもらおう。

親の敵に拳を叩き込むくらいの剣幕で腰にドロップキックを食らわせる。

そしてそれは今だッ!

 

 

「死ねいっ!! 対駄女神ドロップキィーックッッ!!」

「ぶぺらっ!?」ズザァー

 

 

クリーンヒットして顔面ダイブをかますアクア。

胸を張って油断してる隙をうまく突いた俺の必殺技は効果てきめんだろ。

悪鬼滅殺、自分の胸に手を当てて反省しやがれ!

 

 

「ふぅーー…………スゥーっとした」

「ねえちょっと何よ!? ヒドいじゃないバカズマ! 腰とおでこがヒリヒリするんですけど!」

「ヒドいバカなのはお前だよ! 俺たちの目的を見失いやがって!」

「あ、あのー……もしかして私……なんかやっちゃいました?」

「おう、盛大にな」

「……テヘッ私ったらまた間違えちゃったわ♪ そのぅ、許して……ヒヤシンス?」

「うん、駄目だ、こんのすかぽんたんめっ☆」

 

 

俺を苛立たせることに特化した精神攻撃型の駄女神が自分の頭をコツンと叩きキュルンテヘペロリンしてきた。

今俺はどんな表情をしているかわからないが人っていう生き物は怒りすぎると一周回って仏のような笑みになるらしい。

ちょうど舌を出してぶりっこしてるバカナ頭(banana-head)アッパーカット(cheeseburger tornado)(全身のバネを使い強烈な回転の掛かった掌打を相手の顔面に叩きこむ霊験あらたかな必殺技。相手は死ぬ!)を叩き込んだ。

 

 

 

 

**そして時間は加速する、3日経過!**

 

 

 

 

「よし、今日の分はこんなもんか?」

「なあカズマカズマ」

「カズマだよ?」

「前から疑問に思ってたんだがこの生き物は何だ?」

 

 

厨房にノコノコやってきたガキんちょ。

クルミが目の前にある「ちょむーすけーき」を指さして……そのまま指を目ん玉部分にぶっさしてほじくり、手にべっとべとくっつけたクリームを口に含んだ。

 

 

「んー! 結構うまいな! ……元がアレなのに」

「ああああ! なんて残酷な!? それでもおまえは血の通った人間かッ!」

「いや、食べもんだろ? 別にこれは僕がしっかり責任とって食べるから……」

「そういうことじゃねえよ! 目玉部分に指を突っ込むとかグロテスクだろ! もしそれがアクアが作ったバージョンだったらどうする気だ!」

「……アクアが作ったやつだとどうなるんだ?」

「イチゴか何かの液が噴き出して目が転げ落ちる」

「グロいな」

「だから俺が作ってるんだ」

 

 

 

もしかしたら芸術面では秀でてるアクアなら量産できるんじゃないかと思って試作させてみたら毛の一本一本まで再現された超リアル志向の食えないパフェその2が完成した。

ちなみに食えないパフェその1は言わずもがなたきなのパフェだ。

 

 

「ふーん……じゃあそのアクアは今どこだ? 逆にどう作るか聞きたくなったんだが……」

「夏服みたいな格好で駅前に宣伝しに行かせた」

「お前、やっぱり鬼畜だな」

「いやーそれほどでもー」

「褒めてない」

 

 

余計なことしかしなそうな駄女神は駅前に放り出した。

今頃一人寒空の中くしゃみしながらリコリコの宣伝活動に励んでる最中だろう。

……いちおう弁明しておくと俺は風邪引かないように防寒対策してけよって言ったんだ。

だがあのアホ、「これくらいの寒さならこのまま女神の勝負服で行ってくるわ! それに女神は風邪なんか引かないんだから!」と馬鹿は風邪引かない理論を自慢げに話して制止も聞かずに行ってしまった。

だから帰ってきたときにアクアが(ボー)ちゃんのようにハナタレ小僧になってたとしてもそれは俺のせいじゃなく体調管理ができてない季節外れの半袖ミニスカ女神のせいだということを言い訳として用意させてもらう。

 

 

「まあいいだろ? 馬鹿は風邪引かないらしいしな」

「本当は馬鹿だから風邪引いてることに気づいてないだけだと思うぞ?」

「いいたいことはそれだけか? 用が済んだらさっさとどっか行ってろここはお子ちゃまの遊び場じゃない、厨房は戦場なんだ!」

「ボクは十分大人だ、少なくとも千束とアクアよりは」

「はいはい、俺はこれからそんな大人なクルミちゃんが目玉を抉ったせいで一仕事増えましたよー。グスン」

「わ、悪かったよ……。だが、まだこの謎生物のことを聞いてない、教えてくれないか? コイツは何なんだ? クリーチャーやUMAの類いか?」

「どこからどうみても黒猫だろ? ここに来る前に家で飼ってたんだよソイツ」

 

 

反省したと見せかけて結局手刀で俺の作ったケーキを解体し始めるクルミ。

やはり子供、大人より純粋で残酷なことを兵器でするモンスターなんだわ。

まあバカおいしそうにほっぺに茶色のクリームをくっつけてるのに免じて許してやるか。

なんて珍しく思ってクルミの目を見ると白目が大きく見えるほど目を見開いて驚いていた。

もしかして俺の新作の虜かぁ?

 

 

「お前……前々から特殊な性癖があるとは思っていたが流石に動物保護の観点からして額に十字入れ墨を入れるのは……」

「やっぱ大人子供関係なくお前の発想は残虐か!? どこからどう見てもただの模様だろ!」

「そ、そうか? 赤色の毛を持つ珍しい猫がいるのか?」

「お前はネットの情報ばっかりでふれあい体験が足りてない! 今度動物園に連れてってやる」

「お、おい! ボクを子供扱いするのはやめてもらおうか! ボクだってそれくらいの常識知って……ってガシガシ頭撫でるな!」

 

 

なんだろ、くそ生意気なロリのくせに照れちゃって……

かわいげあるじゃないか。

よし、今度肩車してやろう。

きっと腕を組んで「ボクの方が高いぞー」とか言ってムフーっと鼻高々に胸を反らせたせいでバランス崩して転落するに違いない。

……やっぱ危険だしやめとこ。

 

 

「なあ。この背中にある翼みたいなのは何だ? それも模様なのか? それとも動物実験でもして羽を移植したキメラなのか?」

「……正直に言おう。そいつは俺のように勤勉なやつに懐いて、アクアみたいなだらしないやつには爪を立てるお風呂が好きなきれい好きのお利口さんな黒い翼付き子猫だ。……だがそれは偽りの姿」

「い、偽り!? 一体どんな秘密が!? もしかしてクローン細胞使ったホムンクルスなのか!?」

「実はコイツ、火や電気を吐いたり空を飛んだりして……だがいずれはお世話をしてくれたお礼に美少女になって俺のことをご主人様って呼ぶけも耳っ娘になるはずだ」

「おーい、ちさとー、カズマの頭がぶっ壊れたぞー」

「あちゃー、流石に働きすぎたかぁ」

「誰がぶっ壊れただって失礼な! ただ単に俺は確かに体験した摩訶不思議なありのままの体験を話すぜしただけだ!」

「だけどその話は子供でも嘘八百だってわかるぞ」

 

 

人の話を疑うところから始めるのはよくない。

俺は嘘つき少年でもオオカミでもない、いろいろな意味で信頼の厚い人物だろ?

信頼できない人を疑うのならいざ知らず、俺のような誠実紳士を体現したような人物を初めから疑ってかかるのはどうなんだ!

人は信じるところからすべてが始まるんだ!

 

 

「そんなこと言ったって事実だしなぁ……それにアクアだって実は幽霊が見えるらしいぞ?」

「何か、お前らはファンタジー世界の住人だとでも?」

「おう!」

「……おーい、たきなー、やっぱカズマの頭がぶっ壊れたぞー」

「わかりましたー。じゃあ私が休ませてきますので後の作業はミズキさん、引き継ぎ頼みまーす」

「あいよー」

「誰も休まねぇよ! 俺はまだやれる! あと一つで今日のノルマは達成なんだ! だからたきなさんその手を離そうか! や、やめろー俺はまだー……」

 

 

俺の敵感知スキルをくぐり抜けて背後をとるとは……

まさかたきな、殺気を抑える上級暗殺者にシフトチェンジしたのか!?

こ、殺される!

いや、殺されるというか俺のことを心配してくれるのはありがたいんだが、今最も窮地なのは実はお前自身なんだからな!?

 

 

「こらっ暴れないでくださいよ、カズマはよく頑張ってますから休みましょう、ね?」

「駄目だ! 今ここで休んだらたきなが!」

「ワーカーホリックですか!? 私なら大丈夫ですよ。それにホットチョコパフェを作るのは案外簡単なんです! 絞って飾るだけですので。私のことを心配してくれるのはありがたいですが、今のカズマは無理にでも休まないと! 休憩中ヨシヨシしてあげますから」

「それは膝枕してくれるってことっすか!?」

「い、いやそこまでは言ってませんよ……まあしてほしいというならしても……ってしまっ」

 

 

いくらたきなが「私のために無理をしないで!」みたいなことを言っても俺は無理させてもらうぜ……

というかたきなさんが動くと余計な手間が増えるからできれば動かないでほしいんですお願いします!

なんて思いながら藻掻いてると、ぎりぎりたきなの手をすり抜けることができた。

俺はちょむすけのトレードマークである額の赤い十字架をデコる。

ふー、これで今日はう○こパフェを誰にも注文させずにすむ!

俺は背後から迫る手に無抵抗状態で拘束され、そのまま休憩室へ連行された。

 

 

……何だよ。

額のマークくらい別にどうだっていいじゃないかってか?

そこまで完成してたのに大げさだってか?

たきなの膝が柔らかそうだから誘惑に惑わされて大人しくなったんじゃないかってか?

 

……たきなの腿の話はさておき、別に俺は大げさなことなんて一つもいっていない!

最後の行程なしくてちょむすけはちょむすけたり得ようか!

否だ!

それに商品の見た目が違うのに提供するのは詐欺だのなんだのっていちゃもんつけられて面倒くさいことになるに決まってる。

 

俺は異世界生活で学んだんだ、アクシズ教とか爆裂狂とか性騎士様とか、頭のおかしい人間が何故か俺の周囲に密集しやすい性質があるってことを。

……俺の唯一馬鹿高いステータス、幸運値よ、仕事しろっ!

 

そしてもう一つ学んだことがあるとするなら、アクシズ教の連中が「向こうのエリス教徒のパンの方が大きいのはどういうことなの! 宗教差別というんじゃないかしら!」とエリス教のお店で騒いでるのなんて日常的だから悪質な宗教には要注意ってことか。

……いや、これは狂ってる異世界がヤバいだけか?

 




話が進まない……長くなりそうなのでまた明日。

次回「バズる」
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