このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続きです。


バズっちゃったチョコパフェで返済を!Byカズマ

3日前、たきながホットチョコパフェを宣伝した結果お店は死ぬほど忙しくなった。

 

今日も例に漏れず忙しいのだが……

ちょっくら言いたいことがある。

俺のちょむすけとたきなのパフェをセットメニューみたいに一緒に注文すんなセットじゃねぇよ!

そちらのお客さんはホットチョコアイスのご注文はお控えください!

いくら暖かいからアイスクリーム頭痛が起きないって言ったって血糖値爆上がりして気持ち悪くなりそうだが!?

 

ああっそちらのお客どもコーヒーのシロップ注文せずにホットチョコパフェのシロップ注文すんな!

そもそもパフェのシロップってなんだよ俺知らねぇよ!

いつの間に石けんの見た目した焼き菓子と洗剤みたいな容器に入れたミント風味のシロップ提供してんの!?

チョコミントはいい発想かもしれんが、容器駄目だろうが!

……何でお客さん方嬉々としてそれを写真に収めてんの!?

 

おいバカアクア!

お前こっそりアクシズ教の入信所紛れ込ませてアンケート実施中ですーっつって接客すんじゃねぇ!

ってよくよく見ればこのナプキンにアクシズ教教義と署名欄書くんじゃねぇ!

わざわざ無駄に器用にお札みたいなすかしにして俺に気づかれないように実施すんな!

というかどうやって透かし入れたのかちょっと詳しく!

 

……っておい、何無茶ぶり受けてるんだ千束!?

確かにソフトクリームみたいにちょむすけをお持ち帰りはしてないが、お客さんの要望に応えてお持ち帰り用に「ミニちょむ作って来ます! カズマが」ってバカなんじゃねぇのお前!

あの等身大サイズだって結構大変なのにそんなアイスの上に乗っけられるような大きさは無理だって!

というかう○この上に猫のせんな!

 

 

なんて忙しくて逆にあっという間に感じられた閉店後のリコリコ。

今の俺の顔はやさぐれて目が死んでいる。

もちろん疲れのせいもあるだろう。

だがそれは些細な理由でもっと別の原因がある。

それはアクアが警察のお世話になったとか、たきなが知らずに自爆したとか、クルミがネットリテラシーに欠けてたとか、未だに自分のパフェがどう思われてるかわからないまま自信たっぷりに接客するたきなとか、そんなちゃちな理由じゃあ断じてない。

 

 

「アクアさん、横領は立派な犯罪ですよ。お金に困っているのなら私が何とかしていましたのに一体どうして……」

「ち、違うのよ! 聞いて! 私は横領は一切していないわ!」

「なんじゃいなんじゃいてやんでい! 一体何が何だってぃ!?」

「いや、経理の仕事手伝ってたらお金がなくなっててな? ちょちょいとクルミに監視カメラとか履歴とかを探らせたら青髪が容疑者として浮上したって訳だ」

「た、確かにお店のお金を使ったのは認めるわ! でもこれは立派な経費でクルミの仕事を手伝っただけよ!」

「ボクは何も知らないぞ? 何を手伝ったって?」

 

 

アクアの額からダラダラと汗が出る。

自分の味方と言える存在がここにはいないことを察したのか目がキョロキョロと挙動不審だ。

反論をしないあたりやはりアクアが何かやらかしたのは間違いなさそうだな。

 

 

「アクア、申し開きがあれば聞こうか」

「いや、あのですね、そのぅ、私、アニマルの森っていうのでねカブの収穫には自信があったの」

「最近ボクのを貸してやったらハマったやつか? というか子供みたいに駄々こねて借りパクしてないでさっさと返してほしいんだが」

「そ、それは……できないわ! ……だって私の力作の数々を無に返すんでしょ!? そんな暴挙女神様は許さないわ!」

 

 

お前自身が許さないじゃないだろ、法律がお前を許すかこのドロボー女神!

クルミが涙目になる前に早く返せ!

ってそうじゃない。

別にクルミが噎び泣き叫いたとしてもそれはいいんだ……クルミの「たきなにSNSを教えた」という罪は涙の一粒や二粒で拭えるもんじゃない。

そんなことより今はどうして言い訳の言い出しがゲームの話題なんだってことだ。

そんなこと思っていると千束が。

 

 

「あーアレね! めっちゃゆるくて癒やされるよねー!」

「うんうん! そうでしょうそうでしょう! 通信して他の人が作った島にお邪魔できるのもいいわよね!」

「そうそう! この前たきなに新しいの買ってやらせたんだけどさぁ、すんごかったの! 何がって、自分の家に置いてある家具が大砲とか銃とか武器系ばっかりでさ~」

「何ですか悪いですか!? そもそも千束の家だって散らかり放題だったじゃないですか! 服のデザインだってチンアナゴでしたし……」

「かわいいだろチンアナゴ! アクアもそう思うでしょそうでしょ!」

「見てみないことには何とも言えないけれど、人の好みは千差万別だしいいんじゃないかしら? もし適正なジャッジがほしいなら私の島に遊びに来なさいな!」

「うぉう! そんときはアクアの服とか内装もチェックさせてもらいますよー? このゲームをマスターしつつある私のお眼鏡にかなうかぁ?」

「期待してもらってていいわ! 我ながらいい感じに作れたと思うの……あっ……」

 

 

何コイツらアニ森で盛り上がってんの?

いや、楽しいのはわかるが、俺までそっちの話題にシフトしたくなるからやめて?

たきながどんな趣味の部屋を作ってるのかとか、チンアナゴの服とか、アクアの芸術点高そうな島の全容とか気になりすぎるから!

 

 

「とりあえずその話終り! さっきのカブの話の続き聞かせろ!」

「えぇ……。しょーがないわねぇ。えっと何だったかしら? カブが上手く収穫できて、ぶり大根にしようとして、それで釣りをしてても長靴しかつれなくてバキッて本体を折っちゃっt……」

「そんなゲーム機能あったか? ……って違うわ! ゲームのことはどうだっていいんだよ!」

「お、おい! ボクのゲーム壊したのか!? どうでもよくないぞ!?」

「クルミ、アンタは黙っとれぃ! それでアクア、その株が何だって?」

「あ、うん。そのカブの収穫には定評のある私はこう思ったの。ゲームで上手なら現実でも無双できるんじゃないかってね。それでクルミのパソコンから株を買ってみんなに褒めちぎってもらう算段だったんだけれど……」

「言い訳言うな!」

「言ってって言われたから言っただけなのに!?」

 

 

株について何も知らないのに適当に買いまくり、持ち前の運の悪さと相まってこの店の黒字を一週間前の状態に戻したアクアを、とりあえず理不尽に言葉で殴っておく。

だが、俺はさらに最悪な状態を想定している。

いつぞやの魔王軍幹部のデュラハンとの戦後に発生した何億エリスという借金を俺は忘れはしない。

その後やけに子供に人気なワシャワシャ動く機動要塞デストロイヤーを倒したときに裁判沙汰になって処刑されかけたのも忘れやしない。

こいつが手加減せずに防壁を魔法で壊し、デストロイヤーを作ったアホな転生者を適当に送り込んだ張本人だし、裁判でも余計なことばかりして……

 

 

「他に何かないのか」

「な、何かって……これで終わりだけど」

「お前、本当は他にやらかしてるだろ?」

「……やってない」

「それを俺の目を見てもう一度言ってみろ?」

「……やって……な……い……わよ?」

「目ぇ見れてねぇなやっぱ何かやったろこんの駄女神! 今更驚かないから包み隠さず吐け! その方がお前のためだぞ!」

「べ、別にお店のお金を使ったみたいな話はないわよ! 私を見くびんないで! …………で、でもね? ちょっとお店の雰囲気に似合うと思って高級な1億円の壺を100万円で譲ってもらって……。あっ、でも、親切にお金書いてくれる人紹介されて、それで借金して譲ってもらったやつだからカズマさんが働いて返さなくてもいいのよ?」

「当たり前だァァアアッ! ってか金貸しもグルで非合法な利子かすやつだろ! 簡単に詐欺られてんじゃねぇよアクシズ教のご神体のくせに!」

「何か言葉に悪意を感じるんですけど! アクシズ教のご神体のくせにってどう言うことよ!」

 

 

普段なら詐欺を働く立場だろお前らが!

ゼル帝といい明らかにおかしい話には乗るなよ!

あといつものように借金してんじゃねぇ!

 

 

「あ、あのーカズマさん? 落ち着いて話し合えば私たち、わかり合えると思うの。私はこのお店のために何かしようと思って行動したの。そしてカズマさんもそれは同じでしょう? だから冷静になって話し合う場所が必要だと思うの。だかがその振りかざした拳を一度下ろしてくれないかしr」

「そうかそうか、そんなにこの手を下ろしてほしいのか、お前の頭に」

「……アクシズ教の教えにはこうあるの。『アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、うまく行かなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは世間が悪い』ってね。だから……許してくんさい!」

「お前が泣いても殴るのをやめないッ!」

 

 

取りあえず無心で目の前の迷惑系バカに殴りかかった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「たっだいまー我が家ー! お仕事完璧は完了! 千束さんが帰還しましたよーってうぉっほー! めちゃんこ良い匂いー!」

「仕事終わりなのに元気ですね……。千束が早く終わらせようって急かしたせいで私はもうヘトヘトですよ……」

「なっさけないのうたきなさんや。今日はハンバーグよハンバーグ! しかもちょーちょーちょーちょーービィィッグサーイズのっ! 超絶楽しみにしてるときの千束さんはテンション激高なんのオウケィ牧場?」

「……何言ってるかわからないのですが。私、少しソファーで横になってますね」

「オッケーっ! 料理できあがったら起きないとぜーんぶ私の胃袋に収まっちゃうんだからなー! 起こしてほしかったら言ってね?」

「ではお願いします。……というかそれだけ元気有り余ってるのでしたらカズマの料理の手伝いすればどうですか?」

 

 

クルミにその詐欺師グループの居場所を突き止めてもらい、千束とたきなに殴り込んでもらった。

帰ってきた二人の様子を見るに多少骨は折れたようだが壺の借金は何とかなったらしい。

よかったよかった……これでアクアの借金は全部なんとかなった……

 

なんてうまくいかないのが現実。

アクアが消し飛ばしたお店の利益がある。

そしてその損失分は俺がなんとかすることに。

おかげで俺がコツコツ千束から貰っていた給金含め全部パーに。

ちなみに返済すべき分にはまだ届いていないため、全財産は0円、実質的にマイナスとなっている。

 

そんな俺は今千束の家で料理中。

転落人生を味わい項垂れつつ、涙流しながらタマネギを刻んでると千束がニヤついた顔でテーブルで頬をつきながら足をぶらぶらさせる。

そんな千束をお行儀が悪いですよと指を立てピシリと注意するたきな。

今日の晩ご飯が楽しみなのはわかるが俺との対比が酷すぎて余計泣けてくる。

 

 

「ううっ、何でこんなことに……ううっ」

「ふっふふーん♪ いやぁお料理大変だねぇカズマぁ」

「何でそんなに慰めの言葉と表情が一致してないんだよ千束! せめてこの一週間で疲弊した心に寄り添えよ!」

「いやぁねー、私は悲しんでるのだぁよ? カズマがコツコツ貯めた私からのお給金がなくなりーの、私専属、年中泊まり込み無休無給のハウスキーパーに転職しーの、トツギーノ!」

「カズマさんは千束のお嫁さんになるんですか? おめでとうございます? これでカズマは家政婦から専業主婦にジョブチェンジですね」

「誰が千束の嫁だよ! ただ単に借金支払い終わるまで自由を失った屋敷僕だわ!」

 

 

そう、俺は奴隷落ちしてしまった。

千束に……いや、千束様に楯突くことさえできない奴隷なのだ。

ダクネスの欲してるシチュエーションなのだろうが俺はあいつみたいな特殊性癖を持ち合わせていない。

ダクネスの「くっ! うらやまけしからんぞ! そういうのは私の役目……じゃなくて仲間の面倒ごとを私に背負わせてくれ!」という鬱陶しい幻聴をBGMに挽肉にタマネギを入れる。

……残りのタマネギは5個、か。

 

 

「まあまあカズマの? 借金も半年も無休で働けば返済できるくらいじゃん? そんな気張らずにゆっくりしてけばいいんじゃい!」

「とは言ってもな、どうせこの駄女神は借金をまたどっかで作ってくる」

「いやいや、少しくらいあっくんを信用したげなぁ?」

「信用してるから言ってるんだが?」

「マジで言ってる? 信用してる相手を床に転がしておくのはどーなのよ……」

 

 

アクアは俺がフタエノキワミ、アーッ!をぶち込んで、二段アイスクリームを頭に生やしながら床に撃沈している。

そんなアクアには悲しいことに損害を賠償する能力はない。

 

 

「飲み屋に行けばツケで帰ってきーの、何故か莫大な借金こさえてきーの、俺に泣きつきーの、俺がなんとかしーの……」

「うっわー……もう駄目男の財布じゃん……」

「アクアが駄目男、俺が財布か……ううっ、俺はもう疲れたよパトラッシュ……」

 

 

なんて弱音を吐いてはみたものの、こんなところでへこたれてる暇は俺にはない!

自ら払わせてくれって申し出たときにミカ店長は「別にそこまで深刻そうに土下座しないでくれ!? それに赤字にはまだなっていないんだ、君の貯金をもらうわけには……」と言われたが身内がやらかしたことの責任はとらないとなんだ!

自責の念に駆られ損失に対してちっぽけな金額を無理矢理受け取ってもらい、残った借金は千束の奴隷としての働き分とお店での給料から差し引きという形で俺が自ら選択した。

 

お人好しな店長のことを思うほどに借金を早く返さねばという思いが強くなる。

だからこんなことになるんだったら長期休暇で散財しなければよかったとか、アクアのせいなんだからアイツを地下労働施設送りにすればよかったなとかという後悔をするよりも俺はしなければいけないことがある!

まずはハンバーグを作り終えて明日頑張る!

散々俺の鼻粘膜を刺激して泣かせてくれたが、ナガサワ、てめぇが最後だぁっ!!

 

 

「ねぇーえカズマぁ? そろそろ私の超巨大ハンバーグできt……ってうわぉう。涙でぐっしゃぐしゃじゃん!? ほら、今ティッシュ持ってくからチーンして?」

「ありがど。おで、あじだがらがんばるがら」

「いやいや、こんなに泣いちゃって流石にこれ以上働いたら駄目だって私にもわかるから! たきな! この急患に包帯を!」

「何ですか……カズマが怪我したんですか? ……って外傷は何もないですね」

「ちゃうわ! カズマの心がボロボロのボロだから何とかしてって言ってんの!」

「涙を包帯で一体どうしろって言うんですか!? とりあえず手と足と目に巻いて拘束しておきますね」

「そうそう、それでいいんじゃわ」

「あの二人とも? 涙はたまねぎのぜいだがら大丈夫だし、包帯でストレスはどうにもならないんd」

 

 

この後数週間ぶりに休んだ。




次回「返済のために」

なかなか終わる気配がないたきなパフェ回
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