現在時刻は18時、リコリコは閉店し、店内ではゲーム大会が行われていた。
と言っても参加者は4……いや、3名で、元々参加していたミズキが速攻で負けたせいでほぼ三人のバトルロワイヤルになってるのだ。
ちなみに何故参加者が3名しかいないってかって言うと、日中、店があまりにも混雑してたせいで常連さんの多くが途中帰宅したからで、閉店後まで残っていた客は2人しかいなかったからだ。
現在その2人だけがクルミと賑やかに勝負を楽しんでいる。
そんな愉快な状況だが、俺の状況は裏腹に、危機に陥っていた。
「この店にゃ歴戦の猛者がいるっつがァ……まァた俺の一人勝ちになりそォだなァ? 情けねェ、情けないにも程があんぞ。もっと俺を楽しませてくれやァ!」
「くっ……コイツできる……!? さ、サイレント……まだ、いけるか?」
「…………」コクリ
「いいわねぇまーじまくぅん! この調子でにっくきコイツら倒して私の敵をとってぇ!」
座敷からやかましく聞こえるのは初っぱな大敗北を喫したミズキの声。
その応援の先を見ると何故か真島の野郎、サイレント・ジン、ウォールナットがテーブルを囲んでジェンガをしていた。
いや、テロリスト、プロのアサシン、トップハッカー……お前ら一同集まって何やらかすつもりだ俺の胃に穴開けてそんな楽しいか!
実は極悪犯罪をしでかそうと三人寄れば
もしミズキが役に立つ人員なら四人集まって
「おォ、カズマこっち来いや、この使いモンにならねェ店員とチェンジだ。やっぱ全員拮抗した実力でバランスとらなっくっちゃあなァ!」
「何ちゃっかりこの店の雰囲気に混ざってんのオマエ! それと俺はやらないから!」
「そォ固ェこと言うんじゃねェ、俺ァ今日食ったモンで確定した、常連になってやるってなァ! だから常連の催しにも参加しなくっちゃあなァ!」
「ヘーイヘイヘイヘイまーじまさぁんもしかしてビビッてるぅ? さっさと最後の一本積み上げろぉ! ほーらほりほるほれほろバランスバランス~!」
「…………」
「ほらサイレント! 真島の集中力を乱すんだボクと一緒に! ま~じまさぁん!」
「クハッ! いいぜいいぜェ楽しくなってきやがったなァ! コールありがとよォ負け犬ども! その応援を糧にしてジェンガのバランスとらなくっちゃなァ!」
「クソッ! サイイレントが協力しなかったせいで成功しちゃったじゃないか!」
真島がクルミのルール遵守全力妨害を食らいつつもジェンガをザッと引き抜き余裕の笑みを浮かべつつブロックを上に乗せる。
悔しそうなクルミの顔を見てより人相が悪い笑みになる真島さん……
一体俺は何を見せられてるんだ!?
「ほら次はオメェ、カズマの番だぜェ、さっさとオメェ実力曝け出しやがれッ!」
「俺まだお仕事中なの理解してるか!? ……ってかこの全部のブロック上にのせた状態からどうジェンガしてけばいいんだよっ!」
「あァん? んなこと簡単だろォが。さっさとブロックをその上に重ねろ」
「無茶言うなよ! エクスプロージョンッ!!」
「テメッ! 何しやがるカズマ! せっかく面白くなって来やがった勝負を台無しにしやがって……!! バランスを取り戻さなくっちゃあなァ!」
「知らないのか、一日に一回だけ問答無用でゲームを終わらせるこの最悪卑劣な技を……って元の形より難しそうに積み上げるなピサの斜塔建築すな!」
俺の必殺ジェンガ崩しを発動させてこの話を切り抜けようとしたのに絶妙なバランスでジェンガを積んでいくんじゃねぇ!
今は悪の犯罪集団の相手してる場合じゃないんだ!
一人いれば魔王軍幹部を滅ぼし、一人いればデストロイヤーを灰燼に帰し、一人いれば魔王城を崩壊させるそんな凶悪魔法を一日一回の日課にし、考えなしにバカスカ撃つ最凶のアークウィザードを止めないと日本が大変なことになるんだよ!
アクアのおびき寄せ作戦は悔しいことに実に理にかなってるが、それだけに頼ってる暇はない!
いち早く見つけ出しドレインタッチをお見舞いしなければいけない義務が俺にはある!
「今度こそちゃんとやれよォ、俺の相棒で風穴空けられたくきゃなァ」
「だからしないっての! 今度参加すっからジェンガはそこの三人で続きやっててくれ……クルミはもらっていくぞ!」
「アンタ……まさかロリコンのロリマだったんかこんのぉ!? 私の魅惑ボディに靡かないし今思えば確かにロリコンけがあるって感じっけど流石にクルミを嫁にもらってってのは引くわぁ……」
「違うに決まってんだろだまらっしゃいこの酔っ払い!」
ロリマ言ったミズキは後で後悔させてやる!
店のありとあらゆるところに寝かせてある酒をアクアにプレゼントするか、年末の大掃除とか言って店全体にピュリフィケーションかけさせて全部水に浄化してやらぁ!
「私はまぁだぜぇんぜん酔っ払ってまっせーん!」
「無自覚って怖いよな……酔ってるからジェンガ敗北RTA世界記録樹立すんだよ自覚しろ! まあいいわ、アクアにおいしい女神のだし汁(冷水)もって来させるから酔い冷ませよ? ってどうしたクルミ? なんか顔赤くないか? ま、まさか酒飲まされたn……!?」
「ち、違うぞ? ぼ、ボクは確かに大人の中の大人だが酒は飲まない主義で……で、でもそんな急に告白されても、その、対応に困るというか……」
「なな、なに照れてんスかクルミさん! 仕事の時間だから手伝えって話だかんな?」
「仕事だァ? 子供の仕事は食べる・寝る・遊ぶ・勉強するだろォ……これから就寝たァ健康にすくすく育ちそうだァ。嫌がらねェでオメェの責務を遂行しやがれ。ちょうど代わりが来たし、そォ思わねェかジン……」
「…………」コクリ
「み、みんなでボクを子供扱いするなぁ! 仕事だ! って何の仕事だ?」
「実は連続爆発事件の調査してほしいんだが……ってちょうd」
ちょうど代わりってまさか俺のことじゃないよな真島さん!?
……と、俺はそこまで言いかけて、店の扉が開いたことに気づく。
そして振り返ると……爆裂犯が、そこに立っていたのだ。
「やあ、ミカ」
ジョジョの奇妙な冒険、第四部ラスボス、吉良吉影……にそこはかとなく雰囲気が似ているヨシさんがドアをバァーンッ!と開け放っていた。
ちなみに吉良吉影とはシリアルキラーでスタンド使い……特殊能力を持つ
そんなヤツが操るスタンドは触れたものを爆弾に変え、さらにその爆弾に触った者を爆弾に変えるヤベェ特殊能力を有する……
っていやいや、流石に吉松さんがそんな連続殺人鬼なわけないよな!
何を考えたんだ俺は、ただ見た目が似てるだけじゃないか。
実写したら目の前にいる吉松さんが演じてそうだけど二次元のキャラクターが現実にいるわけないよなうんそうだろう!
首を横に振ってそんな考えをかき消そうとしているとミカさんが。
「こんな時間に来てくれるなんて珍しいなシンジ」
「遅くにすまないね。実は真島君に『ゲームをするにゃ人数調整が必要だ、お前も来い!』と呼び出されてね。もしよければ眠気飛ばしにコーヒーを一杯くれないか?」
「オイヨシさんよォ、ずいぶん遅かったじゃねェか。事故事件に遭わねェで無事なら何でもいい、早くコッチに混ざりやがれッ!」
「ああ、今行くよ」
ガンを飛ばす真島に吉松さんが応えてテーブルに着く。
ってお前らいつどこで知り合ったんだよ!
そしてなんでそんなに仲よさそうな友人してんだよ!
アランとかDAをぶっ壊して革命起こすために日本に来たんじゃなかったのかよ真島の野郎!
まさか頭が爆発アフロなアランチルドレンに支援したらちゃっかり仲良くなっちゃったのかそういうことなのか吉松さん!
「そ、その……秘密の多い君と真島くん……一体どういう関係だ? い、いや別に私のところに顔を見せないうちに別の男と一緒にいたから心配になったわけじゃ」
「ははは、浮気ではないから安心してくれミカ。……ここだけの話なんだが、実は最近私は追われる身でね。真島くんに匿ってもらっているんだ」
一体どういうことだってばよ!
追われる身!? 警察にってことか!?
やっぱり爆裂事件の真犯人はめぐみんじゃなくて実は吉松さん、アンタだったのか!?
それでスタンド能力「キラークイーン第一の爆弾」でバス爆破したんか!?
というか匿ってもらうその先がテロリストってどう言うことだよ!
ガチで犯罪臭しかしないんだが……
「な、なあ真島さん?」
「おォ、どうしたカズマ、混ざりたくなったかァ?」
「そ、そうじゃないんだが……吉松さんとはどのようなご関係で?」
「そォだなァ……アラン機関にヨシさんが属してるってロボ太……うちのハッカー経由で見つけてなァ。ちと拷問かけようとしたんだがなァ、ルール違反見つかってアランから追放されたとかで匿う代わりに俺らの計画の協力をしてもらうことにしたんだわ」
「……」
「おかげさんで少しずつ計画は進んでんだぜェ? どうだ、オメェも仲間にならねェか?」
「バインドォッッ!! 犯人ども確保おおおおおおッッ!!」
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「マジですみませんでした! まさか、爆裂事件を追ってる立場だっては思ってなくて……」
「ったく貸しイチだかんな。俺らがその事件を明るみに出して今のDAを引っ繰り返そうとしてんの知らねぇなら仕方ねェ……が人にいきなり襲いかかるのは常識外れだぜェ?」
「すみませんでした、いや、ホント……って今何か無法者に常識説かれたあげく国家転覆的な話が聞こえた気がすんだが!?」
「わかりゃいいんだ」
「よくねぇよ!」
「じゃァまた来るぜェ」
「話聞けよ!」
俺は全力でスキル「バインド」を使用した。
この邪知暴虐の真島と吉松を捉えてこの事件を解決しようとしたんだ。
でもわかってたよ?
スタンド能力なんて存在してないって。
でも希望を捨てずにはいられなかったんだ!
めぐみんがやらかしたっていうのはまだ100%決まったわけじゃない!
だって現場を目撃した人は誰もいないのだから!
それに魔法が使えるならそれに準じた超能力だって使えてもおかしくはないだろそうだろ!?
だったらスタンド能力があったとしてもいいじゃないか!
俺は借金を背負う生活はもう懲り懲りなんだ!
最終的に借金どころか裁判に発展して独房生活なんてことにはなりたくない!
あの外につながる鉄格子から入ってくる冬の冷たい風、隣から聞こえてくるダストの魂の叫び、腹が膨れない食事、脱走をさせて罪を増やそうとする爆裂女神ララティーナ。
……そんなストレスで現実逃避をしてしまった俺は現在全力で土下寝させてもらっている。
というかバインドに全魔力を注いだせいで一歩も動けましぇん。
しかも俺のとっさのバインドもアクアが真島と吉松を絡め縛る前にブレイクスペルで無効化しちまうし、俺は何もできなかった!
俺は……無力だっ!
力なく全身を床に投げ出してると真島と吉松さんが店のドアを開け、帰ってく音がする。
何でも護衛とハロウィンイベントのときに頭だけロボの仮装をしたロボ太くんが外で待ってるらしい。
顔を上げられない状況で何もわからないが。
そして店のドアがパタンと閉まる音がして、それを機に千束とたきなが。
「はぁ……カズマさん、どうして常連さんにこんな暴挙を……」
「反省しております……それに真島さんとの和解は成立したんで踏みつけるのはやめてくれませんかたきな様」
「踏んどるのは私ぃー、どうじゃ気持ちいいか? ほれほれぃ!」
「御御足をお退けなさい! スカートの中が丸見えではしたねぇですわよ千束お嬢様!」
「たきなと勘違いした時点で見えてないのは確認済みなんじゃわ。それに私はお嬢様じゃない……今の私は、そう、女王様! もし筋肉痛の緩和マッサージに感謝してんなら女王様とお呼び!」
「女王様が奴隷の上に立つとか中世の風刺画か! というか筋肉痛でぶっ倒れたわけjああっ、イタイイタイ! 肩甲骨のあたりグリグリしないで健康的になっちまう!」
実際借金奴隷と言っても過言じゃない俺は千束に重税という名の料理を納めてる。
そろそろ一揆レジスタンス起こしてもいいか?
というか自分のことを女王様って呼ばせながら背中をマッサージしてくれるのは一体どんなプレイだよ!
「てか確かに真島さぁんは人相悪いけど、だからって何してんの? あっくんが秒で対処したから笑い話みたいな感じだし、人ならミスの一つや二つあって当然……だけど、まさかジェンガしたくないからってありゃやりすぎよやりすぎぃ」
「ちょっと待て! 俺は別にジェンガしたくないから二人を拘束しようとしたわけじゃないぞ? 爆裂事件の重要参考人として捕縛しようとしただけであってだな……あっ、そこいい! もうちょい左……あそこそこ! 効っくわぁ」
「二人とも何マッサージ屋ごっこしてるんですか……というか現行犯でもないですし、実際犯人でもない人を縛ろうとするなんて……同意の上でもどうかと思います」
「どう言うときに縛ることに対して同意得られるんだよ……マジックか? それともそう言うプレイなのか? 今のこの状況もその一貫なのか?」
「そ、そう言うプレイ……? 一体どういう試合なんですか?」
たきなには一生そう言うのは早かったな。
このまま清らかに育ってくれ……
「たきな、カズマの言うことを一々聞いてたら耳が腐っちゃうから聞こえた音を右耳から左耳に流す感覚で無視して?」
「現実的に音で耳が腐るというのはどう言う状況なんでしょうか……私、今までカズマの言葉をたくさん聞いてきましたし、右耳から左耳に流す感覚もわからないので何か少し怖くなってきました……。ど、どうしましょう千束! 私の耳は腐ってしまうのでしょうか!?」
「俺の声で耳が腐るわけないだろ……って、あっ! 耳を塞いで音を遮断するんじゃない! いいか! 千束の言う『耳が腐る』は現実的に起きえないかんな!?」
純粋すぎるのも考えもんだわ。
異世界じゃスイカの種を食べると手術して取り除かないと胃に寄生して成長、後に腹が破裂して大惨事みたいな嘘から出た誠現象がたっくさんあるが、この世界はそこまで狂ってないだろ!
……狂ってないよな?
狂います。