このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続きです。


この仮面の不審者に追跡を!By千束

……カズマとアクアが「今日は帰り遅くなるからー」って言ってリコリコを出て行って約10秒後。

お店には私、たきな、クルミ、ミズキ、先生しかいない……よーし、決行するぞ!

私は店全体に聞こえるように声高らかに召集令を発表した。

 

 

「はい、8時だョ!」

「全員集合ー!!」

「現在時刻はまだ19時33分です。大分サバ読んでますよ……」

「えぇっ!? もしもしかめしてこれっ今の若い子知らないんかウッソだー!?」

「そーよぉ、私たち若い子が知ってるんだからたきなが世間を知らないだけよぉ」

「お前は三十路だろ? いてっ」

 

 

もはやミズキだけしかノッてくれないこの番組ネタ……時の流れが速すぎて時代に取り残されるわ、ミズキが。

ミズキはそんな現実を受け止めきれずにクルミをお盆で仕置きし……ってありゃいったいわぁ!

だってお盆の面使うんじゃなくて縦にして威力あげて……ご愁傷様ぁ、なむ。

でもこれでわかったんじゃないかな、おばs……乙女に年齢は禁句だってことが。

デリカシーに欠けた者、クルミよ、己の罪を見直せい!

そんなこと思ってるとたきなが。

 

 

「それでどうしたんですか私たちを緊急招集して……」

「うむ、よぉく聞いてくれたよたきなくん! 実はこれからカズマとアクアのことを尾行しようと思うんだけどぉ賛成の人は挙手ー!」

「……私、明日の仕込みしたいので戻っていいですか?」

「た、たきな!?」

「いいんじゃないかしら? 私も明日のためにジェンガの必勝法動画見なきゃ……」

「ミズキ!?」

「ボクはもう寝るから、じゃあな」

「クルミも!?」

「オーイ、店の鍵閉めるぞー」

「先生まで!? ちょーいちょい! これは重大事項なの! もっと興味津々に話聞いてよぉ~!」

 

 

誰にも相手にされないとか予想外すぎるよ……

だぁってみんな見てたじゃん、あの二人が挙動不審なところとか、事件の解決一緒に手伝うって言ったら「気持ちだけで……」みたいな!

絶対おかしいって!

あの勤勉と怠惰のメリハリが極端すぎるカズマが私たちのことを頼らずに何かしようってのは絶対なんか裏があるよ!

 

 

「重大事項、ですか? 確かにアクアが何かおかしなことをやらかさないかは心配ですがカズマがいますし大丈夫では?」

「そーゆーことじゃないわっ! あのカズマが切羽詰まった様子で、それなのに私たちを頼ることなく事件に関与しようとしてるんだよ! これはもう黒幕がカズマで確定じゃ! それにクルミ! 君にも犯行補助の容疑がかかってる! 大人しく吐け!」

「いや、なんでボクが変な容疑かけられてるんだ!? 何も覚えないぞ……」

「嘘おっしゃい! さっきカズマに仕事頼むって言われて何かしてたじゃん!」

「別に……カズマに『ハロウィンに取り残された悲しき中二病系魔女っ娘……めぐみ…を探してるんだ! どこにいるか探してくれないか?』って言われて監視カメラの映像を漁ったら見つかったから情報を教えただけだが?」

「ほぅれ! 重要参考人物確保ぉー!」

 

 

つまりカズマが探してるそのおジャ魔女めぐみが事件の黒幕か!

そしてその犯人とカズマは知り合い……

なんだかんだ言って知り合いには甘いカズマ、犯行を隠蔽するために目的を隠してクルミに近づいたに違いない!

……そう囁くのよ私のゴーストが!

 

私はこの哀れな子リスちゃんを助けなければと決意した!

かわいい顔して何か隠してると思ったら、実は犯罪者に唆されて犯行を知らず知らずのうちに助けてたこのなんの罪もなかった被害者を救わねばと決意した!

 

そう、このままじゃいけん。

責任を分散させて罪を軽くしようったって、このリコリスの眼が黒いうちはそうはさせないぜ、犯人隠避罪のカズマ!

それにしてもクルミのぽっペ気持ちいいな……

 

 

「うわっボクの体をまさぐるな!」

「あっメンゴ、あまりにもモチスベ肌すぎてなで心地よくて無意識だったわ……じゃなくて! カズマに騙されて犯罪に手を貸したんだろん? 大人しくめぐみとやらの居場所をはけぃ! カズマの先回りしちゃる!」

「それはほら、爆発事件が起こった場所だ」

 

 

そうか、そういうことか!

つまり犯人は現場に戻ってくる!

そういうことでしょ!

となればそこ目指してバイクでかっ飛ばせば!

 

 

「よしっ! そうとわかりゃリコリスとして街の平和を脅かす人は許しとけん! たきなしゅっぱーつ! 私のチンアナ号用意するから乗って!」

「あの……千束?」

「なにたきな! 急がないとカズマが本当に犯罪者の手助けして牢屋行きよ! ほれ! 私の後ろについてきな! ハリーハリー!」

「いえ、その、カズマを追いかける理由ってありますか? そもそもどうしてカズマが犯人と知り合いだって言う可能性を見いだしてるんです?」

「い、いやでも!」

「だってあのカズマですよ? 優しさはありますが仲間にこそ目には目をの精神で躊躇なく殴り、銃を持っていないならセクハラし、何だかんだ言って頼りになる人です。そんな人が単に仲間を擁護するように見えますか? きっと事件解決の方に奔走してるだけですよ」

 

 

た、確かに!?

たきなの言うとおり、カズマはセクハラをすることと暴力暴言に対して拳で抵抗すること以外はかなりまっとうだ。

って気をしっかり持て錦木千束!

たきなの詭弁に騙されるな!

今のたきなの言葉でカズマが大丈夫かもしれないって思ったけど、こんな人生で二度となさそうなスリリングなイベント、参加しないなんてもったいない!

それにあれだけ啖呵切っておいて今更「あっそうか……」なんて口が裂けても言いたくないし、100パーカズマの容疑が消えたわけでもない!

というかたきなの弁があってもカズマの容疑はフィフティーフィフティなんだよ!

 

 

「たきなさん、アンタの推理は確かにいい線をいってるよ……」

「別に推理というか経験則ですが?」

「だがそんな一見完璧そうな推理にも穴があるとこの千束が断言してみせましょう!」

「ですから別に推理では……」

「みんなよぉーく聞いて! カズマの特性、それはトラブルメーカーな友人が引き起こした騒動の責任を自分自身で背負ってしまうこと!」

「……確かにじゃんけんに負けたことがないレベルの無駄に高い幸運の持ち主のはずなのにやっかいな体質を持ってますよね……。ちなみに私はトラブルメーカーではありませんが」

「そうよねぇ。アクアとか千束を筆頭に結構苦労してるわよねぇ? ちなみに私もトラブルメーカーじゃないわよぉ」

「神はサイコロを振らないとは嘘っぱちだな。今までのボドゲ大会の順番決めでもサイコロ、じゃんけんは絶対勝つんだ。絶対チートしてるとボクは睨んでる。そしてボクもトラブルメーカーじゃない」

「街中で銃ぶっぱするやつ! 酒飲んで財布なくて帰れずアクアと一緒に私ん家押しかけて来るやつ! そしてネットにたきなパフェ載っけんの手伝ったやつ! 姿見持ってきたろか!」

「「「千束に言われたくない!」」」

 

 

わ、私が何をしたっての!?

みんな私のことを悪者にして酷いよおよよ……

そもそもお出かけの時とかよくポージングしてみたりする私が今更姿見の前に立ったところで何も悪いことわかるわけないでしょうが!

 

 

「ってそんな自分がトラブルメーカーとかどうとかはどうでもいいんじゃい! 問題はそのカズマの知り合い、めぐみちゃんが何かやらかしてるんじゃないかってこと、オーケィ?」

「つまりなんですか? 今回の騒動はカズマの知り合いが引き起こし、カズマが騒動の責任をとることになり、何やかんやで死刑になるってことですか?」

「死刑は重すぎるわ! 人的被害ないしそこら辺のことは先生と楠木さんになんとかしてもらうから……」

「……奥でおっさんが項垂れてるわよぉ? あーんまり面倒くさいこと押してけないであげなさよぉおっさんも年なんだから」

「ミズキ、お前の一言でミカの傷が広がって致命傷になってるぞー」

「はいはい、ちょっとお口チャーック! 話進まないから!」

 

 

先生にはちょっぴり申し訳なく思ってるけど本当にこのままだとカズマに先を越されちゃうから!

で、ええっと何のお話だっけ?

……カズマがトラブルに巻き込まれやすくって、その責任を押しつけられてってとこまで話したはず!

 

 

「でね! ここ重要ポイント! カズマはこれ以上借金を作りたくない、いち早く返済したい、そう思ってるはず! つまり、カズマがバス代という名の借金を作りたくない一心で犯人が知り合いだったり、それに関わってる友人がいたとしたら匿うのは確定でしょ!」

「……そう、ですかね?」

「そうなの! だからたきなも一緒に行こうっ!」

 

 

私の精一杯の説得にたきなの心が揺らぎつつあるに違いない!

それにちょっとありえるって思ったでしょ?

私の洞察力を以てすればこんくらいストーリーを想像するなんてちょちょいのちょいよ!

 

 

「はぁ……仕方ありませんね、行きましょうか」

「ため息!? い、行きたくないんなら無理して付いてきてくれなくても……。私がちゃちゃーって行って解決してくるだけだし……寂しいけど」

「私としては何となく腑に落ちない感じがありますし、カズマに対してそこまで心配するべきなのかと思うのですが……。まあ、リコリスとして事件解決に貢献すべきなのは確かです。行きましょう」

「えっホント!?」

「あ、ですが千束のバイクには乗りたくないので普通に走って行きましょう」

「えぇー! 何で! 私のカックイ~バイクに乗れよぉ!」

「流石にチンアナゴには乗りたくありません」

「えぇ~ただのバイクなのにぃ……」

 

 

今度はタツノ・オトシ号にして誘ってみようと心に決めた。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

そんなこんなで今私たちは例の場所にやってきて物陰に潜伏中!

いつぞやカズマにミッションをこなすスパイ役を奪われたから今回こそは私が映画監督絶賛ものの迫真の演技とアクションシーンを披露してあげましょう!

というわけでがっつり顔を隠してる犯罪者カズマとアクアの背後でヒソヒソお話中。

いや、顔隠したら悪いことする気なのバレバレだろ、以外とカズマってば天然か!

私たちを見習って都会の迷彩服でも着とけぇ?

 

 

「そういえばカズマのことばかり話してましたがあれってアクアさんですよね? カズマと一緒に行動してますが一体どうして……」

「ああ、あっくんね? きっとあっくんも知り合いなのよ。それにあの二人、真夜中で真っ暗闇の中でもお構いなしにどつき合いできる暗視の持ち主よ」

「わ、私が寝ている間にどんな乱闘騒ぎが!? ご近所さんに迷惑かけないでくださいって注意しないと……」

「そんで、こんな夜だから連れ出したんじゃないかってのが私の推察よ!」

「なるほど……私はてっきりアクアさんが余計なこと言わないようにわざわざリスクを冒してまで自分の近くに置いてるんじゃないかとばかり……」

 

 

た、たきなさんの推理の方もしっくりくる、だと!?

まさか悪知恵を働かせて、二重三重に意味を含ませてる感じ?

い、いやいや、ただ単なる偶然でしょ?

そうだそうに違いないんじゃわ!

そんなこと思ってると向こうの方から二人の会話が聞こえてきた。

 

 

「カズマさんカズマさん!」

「カズマさんだよ?」

「何だかこの辺り空気が淀んでるのか臭くないかしら? 何だか胃のあたりがムカムカしてきたんですけど」

「それはここに来る前に濃いチョコレートのムースを腹ごしらえとか言ってたらふく食った天罰だ」

「わ、私、女神よ! どこの誰だか知らないけど私を人族と間違えて天罰食らわせた不届きな神はポセイドンちゃんだろうと何だろうとお仕置きして上がるから覚悟なさい!」

 

 

なんかよくわかんないけどギリシャの神様に喧嘩売ってる!?

たぶんいないんだろうけどとばっちりにもほどがあるから神様に八つ当たりするのはやめといてあげて、ちょーぜつ罰当たりだから!

 

 

「ねーいつまで歩けばいいのかしら、私もう疲れちゃったわ。ここら辺で休憩がてら月見酒でもしない? さっきカズマさんがお店でくれた純米大吟醸もってきたからお酌してくれてもいいんだけど」

「あー確かに俺もさっきまで潜伏スキル使って疲れたしそうするのも……って、うん? なあアクア、それ、(ミズキの酒)おいてこいっつったよな? どこに潜めてやがった四次元ポケットか!」

「そんな非現実的な科学道具持ってるわけないじゃない。ちょうどね宴会芸の一つに物を小さくするやつと逆に大きくするっていうやつがあってね?」

「どうしてお前は酒のこととなると途端に頭よくなるんだよ……。それと非現実的なのはお前の方だわ! スモールライトもビックラだわ!」

 

 

あの調子じゃ本当に爆発させる宴会芸とかもあるんじゃないかな?

最初はカズマの知り合いが犯罪者なわけないと思ってたけど、ああ言うの見ると実のところそのめぐみって娘が爆発させてる犯人なんじゃないかって思うわ。

ほ、本当に犯人じゃないよね?

そういう風に思っているとあっくんが渋々宴会セット(ブルーシート、お酒、おつまみ)を片づけて、また歩き始めた。

 

 

「千束千束」

「千束でぇす」

「なんか思ったよりカズマたちの調子がいつも通りですね。やはり私たちが出張る必要はなかったみたいですね」

「そんなこと言わないの! 今の私たちは二人の動向を探るスパイ……だから依頼者から中断命令でも出ない限り続けなきゃミッションは失敗なんだよ!」

「スパイって私たちの方が犯罪者ポジションじゃないですか……。それに勝手に千束が始めたことなので依頼者は誰もいませんし、強いていえば千束が止めると言えば終わりますよね? …………終わりたくないんですね」

「さっすがたきな! 私んことよーくわかってくれててうれしい!」

「そんな捨てられそうな子犬の顔されたら誰だってわかりますよ」

 

 

私どんな顔してたの!?

全く顔に出してるつもりなかったのに、恐るべしたきなの洞察力……!

そんなこと思っているといつの間にかカズマとアクアの足が止まって、それに気づかなかった私はたきなに。

 

 

「先走らないで集中してください」

「グエッ!? あ、ありがと? だけど流石に襟を引っ張って止めるのはどうなんよ……」

「注意不足が招いた不幸な事故だと思ってください。カズマたちの前に標的らしい魔女の服装をした人がいますよ」

「ほ、本当にいたんだ!? 現実世界にあそこまで時代……というか季節に取り残された人がいたんだ! 中二病でもあそこまでしっかりとした服は着ないよね…ということはコスプレイヤーの方かな?」

「かもしれませんね。それにしてもなかなか堂に入っていますよね、まさか私たちより年下とは思いませんでしたが」

 

 

私の目では暗くてあんましわかんないけど、少なくとも身長は低くて、魔女っ娘にふさわしい帽子とローブ、そして暗くともわかる仮面越しの赤い瞳。

…………犯罪者というか不審者だ!

仮面つけて顔隠すとかまるで犯行予告してるも同意義じゃん隠す気ないじゃん!

えっ、もしかして仮面同好会とか変な団体様だったりする?

……するわけないよね!

 




休日の終わりを告げた三が日……
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