このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の続きです。


このロリっ娘人形に銃弾を!Byカズマ

今回の黒幕はバニルだった。

めぐみんじゃなくてお前かい!

そんな怒りで三人に捲し立てるように指示を飛ばしてしまったが、それを幾度となく止めようとしたバニルを見て、一応知り合いだし話だけは聞いてやるか、と耳を傾ける。

 

 

「はぁ、はぁ……わ、我が輩の話を、心して聞くがよいっ!」

「……いちおう聞いてやる」

「ふー……では紅魔の娘に会えて嬉しいとぬか喜びした小僧に最大限の感謝しよう」

「やっぱ聞くのやめようかな」

「食前酒のような悪感情、そこそこ美味であるが、まあ落ち着け。して、何から話し始めたものか……そう、この事件を起こした理由についてだが、これには天より高く地獄より深い理由があるのだ」

「何だよ」

「実は我が輩、一月ほど悪感情の摂取を控えていてな」

「うん」

「というのも悪感情という名の嗜好品を浴びるように摂取した我が輩はいつしか満足感が得づらくなった」

 

 

なんだなんだ?

話を聞いてやるっつったが結局何一つ話が見えてこないぞ……

たばこを吸いすぎてヘビースモーカー大佐になったみたいなこと言ってるのはわかったが、だからなんだって言うんだ?

そんな訝しげな顔をしていてもバニルの話は続く。

 

 

「満足できず、生きがいを感じなくなり、そして我が輩は深い絶望に打ちひしがれていた……そんなときのことだった……魔道具店に帰宅し、半透明店主と酒瓶を抱き枕としてたアホが我に妙案をもたらしてくれたのだ。空腹時に食す最高の料理という妙案を」

「はい?」

「つまり、我が輩は美食を味わうべく、エセ宗教の自称女神を小僧の元に送りつけ、胃に穴が開くすれすれのストレスを与え続け、その蓄えに蓄えられた悪感情を断食後に食せば……この世とは思えぬほど絶世の美食が生まれるのでは、とな。というわけで我が輩、断食を決意し、その直後に青髪の酒瓶抱えた泥酔女に例の魔道具をポチッと押させ、勝手に何かやらかしてもらってる間にせっせと断食とバニル人形作成に精を出し、そして今に至る、というわけだ」

「お、おま、おまままま……!?」

「ぷっ……いやぁ失礼、食事というのは空腹が最高のスパイスとよく耳にするが正しくそれは真実であったな! 汝の悪感情、未だかつてないほど大変美味である!」

「人外外道畜生! 道徳心も倫理観も欠如したサイコ悪魔めぇぇええっ! 八つ裂きにしてぶっ殺してやるッ!」

 

 

俺は怒りに震えた。

未だかつてないマグマがぐつぐつと火口に押し寄せる怒りは留まることを知らず爆発した。

なまはげもびっくりな形相でアクアを見ると、もちろんわかってるわよと言わんばかりに魔法を発動させる準備を始める。

 

 

「なーんかめぐみんが臭いと思ったら地獄に引きこもってる根暗陰湿寄生虫じゃない。一度私の浄化魔法で存在ごと匂いも消してあげましょうか? 断るといっても無駄よ! アンタのお仲間がいっぱいいるあの世に葬送してあげるわ!」

「汚物は消毒だぜーヒャッハーッ! 弱ったところをスティールして仮面剥がしてやるぜっ!」

「ふはははははは! ゲスで卑劣な悪党め、正義の仮面カラススレイヤーのバニルさんがそのような悪の所業をみすみす見過ごすと思うてか! バニル式破壊光線をくらうがよい!」

 

 

バニルがウルトラセブ○のワイドショットして、アクアがバルタ○星人みたいに手をチョキにして赤と白の光を……

ってアレ!?

なんでだろう、善悪の立場逆転してないか!?

何で悪側が正義の技使って俺ら被害者が怪獣役の技使うんだよ!

最終的に勝った方が正義って言いたいのかもだが、神経逆撫でて楽しいか馬鹿悪魔!

心を弄びやがって……許さんと決意し、あの揚げ足取りの極悪悪魔をどう葬り去ってやろうと知略を巡らせているとたきなが。

 

 

「えっと、結局これってどういうことですか?」

「あー、きっとあれよ、カズマを巡った泥沼三角関係が悪化して、そんであっくんとあの仮面の人がバチバチ大道芸対決やり合って、それを見てたカズマが俺のために争わないで! って感じじゃわ」

「なるほどそう言う感じ……」

「じゃねぇよ! 何勝手に俺のことを悪女みたいにしてんだよ! しかも大道芸対決って何だよ死闘してるんだよ! そもそもあの仮面野郎性別不詳だしアクアに関しても借金女神としか見とらんわ!」

「つまりあっくんとめぐみちゃんの好意を棒に振った悪女ってことね? そんでカズマのストライクゾーンは実は大人のお姉さん……はっ!? まさかミズk」

「大人のお姉さんだからって何でもいいと思ったら大間違いだかんな! 酔っ払いだのドMだの、そういう奇天烈はノーセンキュー! というかアイツ、めぐみんじゃない! 変装して俺に借金を着せようとした極悪卑劣な悪魔だ! 滅ぼせ!」

「うっわーお、こんな殺意ましましなカズマさん初めてなんじゃ? というか人殺しは駄目でしょ人殺しは……」

「いいか、異世界では山賊をレアモンスター扱いするんだ。つまり犯罪者に人権など存在しない! 爆裂愉悦悪魔を殺すのは当たり前、そうだろたきな」

「山賊が出るとかそりゃどこの異世界大魔境の話よ……それに私の教育が施されたたきなが殺しをよしとするわけn」

「はい、その通りです。悪はきれいさっぱり抹殺すべきだと思います」

「たきな!?」

 

 

やはりたきなは頼りになるな!

それに対して千束は……俺を殺しかけておいて私は殺人したくないヘイワ主義者でーすとか片腹痛いわ!

一先ず魔法が使えないこっちの世界の二人を巻き込むなんて気が引け……ないな。

こいつら暗殺者だし、何なら俺より力というか攻撃力あるし、武器が銃とか近代チートだし。

俺なんかめぐみん相手すると思ってたから銃持ってないし、つまり狙撃できないし、コイツ相手に潜伏スキル意味ないし、魔力量的に中級魔法一発で倒れるし、回避スキルで時間稼ぐくらいしかできない。

なんだ、リコリスって俺より有能じゃん。

ってどうして俺より女の子の方が直接的な戦闘力あるんだよ!

本当に泣いてもいいか?

 

 

「ぐすっ……」

「ふはははははは! 俺は戦闘に向いてない分、頭の方で勝負してきたんだ、幸運と知恵で魔王相手に頑張ってきたんだと泣いて強がっているそんな小僧に吉報だ!」

「泣いてねぇし! そもそも散々おちょくられたお前のいうことを誰が聞くか! 悪魔と魔族は人の言葉を操るだけの人外! 嘘で人を欺き捕食するその性がある限り言葉に耳を貸すだけ無駄なんだ!」

「そうかそうか、実は幸薄な発光女神がいたせいで汝の様子が見通しにくいと思っていたのだが、実際のところは魔王を討伐してレベルアップし、見えにくくなっていたと言っても信じないのか、いやぁ誠に残念であるなぁ」

「ま、まさかこの俺の秘められし力が解放されて!?」

「まあ嘘であるが」

「殺すッッ!!」

「全くもって大量豊作であるな! 羞恥の悪感情が大変甘美甘美!」

 

 

やっぱこいつとはわかり合えない!

絶対滅ぼさなくてはならない害悪であると思い知らされた。

この俺を怒らせたからにゃいくらウィズの友達だからって許さねぇ。

残機を一つ残らず刈り取ってやる!

そんなことを思っているとバニルが両手を広げ、満足げな様子で。

 

 

「いやぁ、本当に満足させてもらった! しかしこのまま無償で善意を提供してくれたものに見返りをやらねばバランスが釣り合わない……というわけでそこの白髪娘、それから黒髪娘!」

「えっ? もしかしてそれって私たちのこと? あっ、私、千束っ! こっちはたきな!」

「えと、どーも?」

「そうか、では小腹が空き夜な夜なアイスを貪り尽くし、とうとう体重が大台のピーキロに迫り危機感を覚えている小娘」

「な、ななんでそんなこと知ってんの!?」

「いつの間にか買ってきたアイスクリームが箱ごとなくなっていると思ったら、まさか千束の仕業でしたか……。てっきりアクアが酔っ払って食べてしまったものだと思ってました……」

「ち、ちっがーうしぃ? わたーしはぁカズマにおいしい料理作られて太らされてるだけだしぃ? ってか太ってないわっ!」

「ふははははっ! 我が輩に問い詰めようなら自分の愚かな夜食行為が露見し、問い詰めなくばどうして知っているのかもやもやするという羞恥の葛藤、なかなかに上質である!」

「うぐぐぐぐ!」

 

「ああ、それと最近、秘密裏に大の方のパフェに変わる新しい商品を開発しようとして卵を炒っていたらいつの間にか未知の暗黒物質ダークマターを製造してしまった天然娘」

「大の方とかはしたないこと言わないでください! それと別に私は料理に失敗したわけではありません! あの見た目で割と味はよかったんです!」

「いや、我が輩としてもあの見た目はシミュラクラ相まって決して口に入れようと思う代物ではなかったぞ? それと焦げと思っているようだが実は本物の暗黒物質を創造してしまったのである! もしやノーベル賞受賞者になる才能があるのではないか?」

「わ、私にそのような秘められた才能が!?」

「そんな二人にはこのお手製バニル人形、爆裂ロリっ娘バージョンをくれてやろう」

「ちょっと待ってください! 私が作った卵焼きはもしかして体内に害を及ぼすタイプの物質だったりしませんよね!?」

「どうだろうか……ふむふむ……!? こ、これは!?」

「い、一体何か問題があったのですか!?」

「たきな、こいつの言うことはマジで気にしちゃ駄目だぞ。今のはもしかしなくてもたきなの天然さを逆手にとって遊んでるだけだ」

「えっ!?」

「ふはははははは! まさに小僧の言うとおり! 引っかかりやすく美味なる悪感情を量産するのにちょうどい……パパパンッ……コラっ話の途中で鉛弾打ち込んでくるでない!」

「うるさいです! ぶち殺しますよ!」

 

 

たきなさん、殺しますよって言うタイミングが一足遅いわ!

そもそも絶対殺す気で撃っただろ……

そんなこと思っていると地面がボコボコと盛り上がって行くのを千里眼スキルが捉えた。

出てきたのは何十という数の二頭身バニル人形だ。

なお、千束とたきなの近くに出てきたのはめぐみんに仮面を被せた二頭身人形。

そんな人形を見て、千束が黙って棒立ちしてるということはなく。

 

 

「おおっすっげーっ! たきなたきな」

「たきなです」

「見てよこの人形フェスティバル! しかもただの人形じゃないよ! 自分で歩いてるんだよ自立式だよ! それに何かトテトテ歩くから庇護欲がかき立てられるんだけど! 抱っこしてもいいかな?」

「さっきまであの人におちょくられていたというのに切り替えが早いですね……」

「私は切り替えの早さに定評があるのです! いつまでももじもじしてるのも私らしくないしね! でさぁこの人形すごいと思わない?」

「そうですね……私としては地面から妙にヌルヌル動き出てきたことに驚きです……もしや高性能な機械が中に入っているのでしょうか?」

「いや、きっとあれは操り人形の手法じゃわ。サーカス団のピエロがよくやるどんだけ玉増やせば気が済むんだよジャグリングと同じで、きっと見えない糸で……ってありゃ? どこにも糸ついてないじゃん?」

「やっぱり人形の中に機械が入ってるんですよ!」

「ええー夢がないなたきなは……って、おおー! なんかこの子懐いてくれた、のかな? 表情変わんないから喜んでるんだかよくわかんないけどこの子家に持ち帰ろっかな」

 

 

二人の近くからも湧き出たバニル人形爆裂ロリっ娘バージョン。

その人形は拙い足取りで千束の方へ歩き、抱っこしてと言わんばかりに手を広げる。

くっ、なんて卑怯な作戦なんだ……

こんなの脅威性を知らない素人なら誰だって引っかかっちまう悪魔の罠だ!

 

そんな人形にキラッキラ目を輝かせ、人形を抱っこしてまじまじと「紐はどこにあるんだぁ?」と探し始める千束。

そいつがバスを爆発させた爆弾だわ、やばい威力持ってるんだから顔近づけんな吹っ飛ぶぞ!?

 

 

「ふはははは、安心してもらって結構! 爆発の威力は予算の都合上一体一体は低めであるからして、頭がポンっと爆発する程度で済む」

「人の心読んだ上に安心要素がない返答だわ! 千束聞いてたろ! 早くそいつを離せ!」

「えぇー……でもぉんそんなこと言ったってなんとなく可愛げがあるしぃ、優しく接しておけば爆発なんてしないでしょ? ねーバニーちゃーん♪」

「もしかして家で飼育するおつもりで?」

「飼育じゃなくてホームステイじゃ! 映画の予定だって立てたんだから!」

「そんな危険物を勝手に名前までつけてペットにしようとするんじゃねぇよ」

「ペットじゃないよお友達じゃボケィ! 自分の家に友達を呼んだっていいでしょ! それにハグしたらもうそれはそれは結構な関係性ってことで、それぎゅーっと!」

「ち、千束ーっ!?」

 

 

な、何をするだーっ!

ぎゅっとしてドカーンしたわ、案の定!

千束は!? 千束は無事なのか!?

そう思って晴れていく煙の中を見ると、実験に失敗して煙を口からけほっと吐き、頭がアフロになった博士みたいな風貌になった悪逆披露な仕打ちを受けた者の姿が。

クソっ、俺は千束が真島さんに変身するのを防げなかった……!

 

 

「くっ……まさか自立して動くだけじゃなくて自爆機能まで搭載しているとは……いい、センス、だ……ガクッ」

「千束ーっ! なんて残酷な……」

「たきな、落ち込むのは後だ! 千束の敵は俺たちで討つ! あの人形をどうにかできるか!」

「ちょちょい! ガクッとか言ったけど私まだ生きt」

「もちろんできます! 精密性だけはファーストリコリスにも引けを取らない自信があります! 人の命を弄ぶような輩は死すべしです!」

「よしっ、ならここにいるバニル人形を一掃してくれ!」

「はい!」

「あ、あのぉ、私生きてるんだけ……って、あっ、ようやく気づいてくれた?」

 

 

俺と千束の視線が交差する。

……見れば見るほど立派なアフロだ。

ミスターサタンやボボボーボに負けず劣らずのパンクさがそこにはあった。

くっ、耐えろ!

俺は笑いを耐えられるTPOをわきまえる男!

いくら千束が面白い髪型になっていたとしてもレディの前で笑ってやるな!

 

 

「敵は俺たちがとってやる……だから安らかに眠れ」

「ちょーっと待った!? 私のこと完全に見てから言ってたよね!? 目ぇ合わせてから言ったのにどうして私は故人扱い!? 私だってね初めての人形のお友達を目の前で破壊されてあったま来とるんじゃい!」

「無理に動くな!? 乙女の命、前髪をそんなチリチリにされて致命傷だろ!? ……ぶふっ」

「んな!? 今笑った!?」

「笑ってない。あまりにも悲惨すぎて鼻水出て涙ちょちょぎれただけだ……」

「な、泣いてたの!? で、でも私は大丈夫! 頭が真島さんなくらいなんくるないさー! 私も爆弾魔ボマーをぬっころしちゃるから頑張ろ、ね? それにゴム弾でも人形をなんとかするくらいできるから任しとき!」

 

 

千束は風になびくアフロを頭に、たきなに加勢しようと颯爽と走っていった。

……ぶふーっ!




最終回ではなかった今回。
次回、千束のアフロ、ヒールで治る。
そしてバニル死す! デュエルスタンバイ!
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