カースド・ダークネスを受けたカズマはどんな呪いをかけられたのでしょうか……
この引きこもりニートに説得を!By千束
バスガス爆発事件が収束してから2日後。
私とたきな、それからアクアは元気にやっていまぁす! ブイっ!
……え?
カズマの名前を忘れてるってぇ?
そうそう、実はただ一つ、されどひとぉつ、大・々・だぁい問題があるんよ。
それは何かって言うと……
「カズマぁ、一応夜ご飯作っておいたから……ドアの前に置いとくから食べてねー? あのね、もしよかったらちょっと顔見せてくれると、その、私たち、安心するから……」
「……うん、あんがと……ぐすっ。でもまだ……ムリ……」
「ねー引きコウモリのカズマさーん、私、そろそろ仕事に行った方がいいんじゃないかって思うのー。だからもうクローゼットに引きこもるのはやめなさいな。そろそろアゲアゲの唐揚げ食べたいんですけどー、シュワシュワにおつまみないとちょっとだけ寂しいんですけどー」
「…………ぺッ!」
「ああっ!? なんか室内なのに唾はかれたような音したんですけど!? 引きニートのくせに上等よ! わからせてあげるから出てきなさい!」
「はいはいアクアさんステイですよ、どうどうどう……二度揚げした外カリ中ジュワな唐揚げでしたら私が作りますから落ち着いてください!」
「がるるるっ!」
ってわけでカズマがクローゼットに引きこもっちった。
クローゼット越しに聞こえる声はいつもとなんとなく違い、どことなく悲壮感を覚える。
どうしてこうなったかって理由は定かじゃないけど、そうなっちゃった理由は何個か思い当たる……
この前バニルっていうカズマの奇術団の仲間を「カッとなって……」という理由で手にかけちゃったこと。
そして借金完済の目処がついていたところに完済不可レベルの莫大な借金付加されたこと。
うん、こんな運命の女神様から見放されたような展開に陥っちまったら私でも一日寝込むわ。
でもでも、カズマは根っからの怠け者を自称せし者!
違うって勤勉だからって私は思うけど、このまま太陽の光を浴び続けない生活を送っちゃいつしかカズマはヴァンパイア!
そんなのいや!
だって今でさえあのおいしい朝ご飯を食べられない私は悶え苦しんでんのよ?
もし本当にカズマが完全夜行生物になっちゃったら私の朝ご飯どうなっちゃう、なくなっちゃう、空腹耐えられなくなっちゃう!
「というわけでハイ! これよりカズマ・脱・引きこもり計画の会議を始めまぁす!」
「……唐突ですね。急にどうしましたか?」
「どうしたもこうしたもあるかぁ! カズマが引きこもっちゃったきり出てこないんだよ我が家の一大事だよ! このままカズマのご飯が食べられなかったらどーすんの!」
「カズマの心配をしたかと思えば……私のご飯じゃ口に合いませんか」シュン
「ああん、そうじゃないのよぉたきなぁ! 今日の西京焼きおいしかった! ……でぇもマイウルトラソウルが望んでるフードはミルクたっぷりママの味なの!」
「まだ二日も経っていませんよ? 懐かしき母の味を恋しむのには早すぎます。……確か冷蔵庫には武蔵野4.5牛乳があったはずなので母の味を思い出したかったらば飲んで気でも紛らわせておいてください。では少し席を外しますね」
「うえーん、すねちゃやだー! どっかいっちゃやだー!」
「別にすねてませんし……。それにどこに行ったところで私はもう大人です、個人の自由でしょう?」
「そう言って私の育児を放棄するんでしょ! 育児放棄はんたーいっ!」
「いい年して子供ですか! あの、催してるので! コラ、放してくださいダムが崩落します!」
……何だか今日はご機嫌斜めのたきなじゃ。
トイレに行きたいなら最初からそう言えばいいのにぃ。
私はぱっと手を離して、少し早足でお手洗いに向かうたきなを見送る。
……ふと思ったんだけど、カズマっていつどうやってトイレ行ってるんだろ?
もしかして我慢に我慢を重ねて膀胱破裂寸前なんじゃ!?
なら私の……いや、私たちのすべきことはただ一つ。
このクローゼットの中で体育座りしてる膀胱破裂寸前のカズマをどうにかして引っ張り出して助け出さななくっちゃ!
救世主さんが私のことを助けてくれたみたいに、今度は私が誰かを、カズマを助ける番だ!
そう思って私はフンスとやる気を漲らせているとあっくんが。
「カズマは引きこもり体質だから、前にもよくこういうことはあったわ」
「ほう、カズマを何とかする手がかりになるかも! 詳しく!」
「いいわよ、よくお聞きなさいな! ……そう、あれは冬が来て、お金もたんまりあったときのこと。あのときのカズマはこたつむりだったわ」
「こたつむり」
「そう。意地でもこたつの中から出てこようとしなかったのよ。それでね、私はどうでもよったんだけど、ダクネスとめぐみんが体に悪いからって何とかして出そうとしたの」
「そりゃ一日中こたつの中にいちゃあ体の節々がばきばきだし、体鈍っちゃうからねぇ。それでそれで?」
「そんな二人の厚意をカズマは無碍に……鬼畜の所業よ。無理矢理出そうとしたダクネスには首に氷結魔法を、押して駄目なら引いてみろと優しい言葉をかけためぐみんにすらドレインタッチをしたの! だからそのときは打つ手なしってことでこたつごと庭にソーイしたのよ」
「……つまり?」
「クローゼットをソーイすれば……」
「……」
「どうかしら! 私の話は参考になったでしょ?」
「う、うんっ、そーだねー。ためになったわぁ」
「……あれ? ちーちゃんってばどうして私の方から目を反らすの? 感謝の言葉は目と目を合わせないと伝わらないのよ? まあ私の女神オーラがまぶしすぎて反らしたならしょうがないことだとは思うんだけどね」
クローゼットって持ち運びできないじゃん、そしてそもそも心弱ってる人にそういう強引な手段は最終手段よ!
あっくんは役に立たないわ、別の作戦を考えなきゃ。
そんなこと思っているとすっきりした顔で扉から出てきたたきながこっちきた!
「ナイスぅ! ナイスタイミングよたきな!」
「何がです?」
「いや、今ちょうどあっくんとカズマを脱引きこもりさせる手段について討論してたとこよ! でもあっくんが何か家を爆破するみたいな強引な手段を提示してきてさぁ」
「そんな物騒なこと私考えてないわよ! 私はただクローゼットからカズマを出せないならクローゼットごとお持ち運びしちゃえばいいって思っただけで……」
「……それはつまり家を爆破するということなのでは? クローゼットは持ち運びできませんし家を壊さない限りクローゼットを持ち運ぶのはできないと思うのですが……」
あっくんが論破されてたきなから視線をプイとそらす。
見た感じたきなが指摘したクローゼットの移動方法までは考えが及んでなかったみたい。
というか私が爆破って言っておいてなんだけど、家を爆破したらクローゼットどころかカズマまで木っ端微塵でしょ。
「とりあえず私的にゃカズマには自発的に出てきてほしいんよ、きっとカズマは間接的に殺人を犯した反動で塞ぎ込んじゃってるから」
「でもちーちゃん、そんな甘っちょろい手段じゃあのナマケモノは出てこないわよ? それにあのかわいいかわいい安楽少女を経験値の糧にした鬼畜のカズマさんが悪魔を地獄送りにしたくらいで病むわけないわ」
「安楽少女? 経験値? それが何を意味してるのか私にはわかりませんが、確かに私と千束に殺されかけても翌日にはケロリとした顔で普段通りに接してくれますし、案外そっとしておけばすぐとは言わずとも出てくるのでは?」
そーかなぁ、私的にはあれは結構つらいことだって思うんだけど……
だって人は一人じゃ生きてけないし、きっと悪い人にも想う人、想ってくれる人、帰りを待ってくれてる人がいるはずなんだよ、きっとそう。
私たちが見ているのはその人の一面だけで、たまたま悪い面だけ見ちゃっただけだと思うと……どんな状況とか、どんな感情とか、そんなこと関係なく殺してきた人を振り替えるたびに何だかやるせない気持ちになるよ私は。
そんなこと思ってると私は暗い顔をしてたのかあっくんが。
「暗い顔しちゃって考えすぎよ? 私はなっちゃんのいう通りだと思うわ! それにあの外道悪魔のことはみんな嫌いでしょ? いつかきっと誰かに討伐される運命ではあったのよ。……もっとももしカズマが手を下さなくても私が絶対土に還してたわ」
「そうですね。私も初対面なのに私の心にズカズカ入ってくるあの仮面にはいらつきを覚えていましたし……カズマがやったことは世界が優しくなるために必要なことだったんですよ、きっと」
「ちょーいちょい! そこの悪人を殺すのに賛成派な二人は私の後に続いて復アンド唱! ゥリピートァフタミィ! この世に絶対悪なんていない! 殺人、ダメ絶対! さんハイ!」
「えぇー……私、あの悪魔とは絶対わかり合えない自信しかないわ」
「私は……まあ、凶悪な殺人事件になる前に殺れたのであれば別に……」
「リピートしろよおー! 私はそういう風に教育した覚えはないじゃん!」
……そこ! 教育された覚えがないとか言う反論は認めないかんな!
うがーっ、どうしてこの二人はこうも協調性が欠如しとんじゃ自由人過ぎるわ!
いつもやりたいこと最優先な私が言うのもなんだけど!
……もしかして私が協調性ないだけ!?
あっくんとたきなはあの件はしょうがなかったって派で、私だけがなんとなく心に支えがあるマイノリティーなのマジ!? ぉりてぃー!?
くっ、私は数の暴力には屈さない!
こうなったら何が何でも私は我が筋を通しちゃるわ!
「とにかく! 私はカズマを脱ニートしたいの! あくまで優しく! そのための第一歩として私たちの前に姿を見せてもらう必要がある……ドゥユゥアンダスタンッ?」
「英語はわからないけどニュアンスわかったわ! つまりこの偉大なる女神の力を借りたいってことね? 面倒くさそうなことには首を突っ込みたくないけど私もいい加減カズマのおつまみ食べたいもの、協力するわ!」
「私も別に脱ニートに協力すること自体はやぶさかではありませんが……ただ、こう言うときにどのように言葉をかけたらいいのかよくわからなくて。下手に刺激するより自力で立ち直るまでそっとしておいてあげようと思っていたのですが」
「でも友達が落ち込んでいるときに何かしてあげられたら……って思うでしょ?」
「そうですね、やりましょう」
****
「なあああんでよおおっ!! もっかい! もっかいやらせてお願いよー!」
「……じゃんけんってこんなにも実力に優劣がつく競技でしたっけ?」
「まあまあ、何だかんだ言ってあっくんがカズマとの付き合い一番長いんでしょ? 一番槍はまかせた!」
「それとこれは別物よ! どうして私はいつもじゃんけんでビリなの!?」
「千束が不正をするならともかく、私にはそのような不正手段が最初はパーしかないので単純に運が悪いとしか……」
「あァァんまりよォォオォ!」
あっくんの負けっぷりから考えるに、もしかするとこの世界には天使の悪戯か悪魔の罠が運という形で表れてるのかもしれないなあ……
とりあえず三人いっぺんに行ってもよくないから一人ずつ行くためにじゃんけんをすることになって、その厳正なるじゃんけんの結果、私の一抜け、そしてたきな抜け、ビリのあっくんの順で挑むことになったのであった。
……い、いや、別にカズマのメンタルが二人とも「大丈夫でしょ」って言ったのを咀嚼して「あー……確かにそうかも」って思い始めて、じゃあ数打ちゃ当たる精神でそれぞれの方法を試すことにしたわけじゃないんだからね?
ただの人海戦術という立派な戦法よ!
ってなわけであっくんから特攻することになったんじゃ。
まあテンプレ的に一番は玉砕するけど……
儚く散れ、私は戦友のことをきっと忘れはしないだろう、犠牲者に敬礼!
「あ、あのーカズマさーん? さっきミズキから一番高いお酒を貰ってきたんだけど一緒に飲まないかしら?」
「…………なあ」
「な、何かしら?」
「今そこにいんの、お前だけか」
「え、ええ、まあそうよ?」
「ちょうどよかった!」
おや? おやおやおやぁまさかのあっくんで即解決!?
一緒にいた日の長さ的に一番信頼度が高いのかもしれないけど私がいろいろ考えてたの無駄に終わったんだけど!?
い、いや、まだ私の使命は終わってない!
私は小声で「あ、あっくーん、カズマに今どういう気持ちって聞いてー」と言うとわかったわと言わんばかりにいい表情でグッと親指を立て。
「今どんな気持ち? N・D・K? N・D・K?」
「今すぐお前をドラゴンスクリューしたい気持ち」
あっくん何やってんのぉ!?
確かに私はどういう気持ちって聞いてって言ったけどもストレートが過ぎるよドストレートだよ!
おかげで全く元気だってことが知れてよかったけどもドッジボールじゃないんだからキャッチボールなんだから会話のボールがしっかり投げてよ最早直撃しちゃってーるよ!
剛速球がダイレクトアタックだよデッドボールだよ!
しかも何でちょっと煽っとるんじゃい!
「……って今はそんなこと言ってる場合じゃない! 緊急事態なんだ助けてくれアクア!」
「何かしらもしかしてボトルがほしいのかしら? ならちょっと待っててね? 今からこの瓶空かして渡すから」
「別に俺はボトラーするまでもなくトイレには潜伏しながらちょくちょくいっとるわ!」
「えー? じゃあ何よ、もしかしてちーちゃんの言うとおりあの悪魔について何か思うところでもあって?」
「そうだよそう! 緊急事態ってのはあのクソッタレ悪魔にかけられた呪いなんだ!」
そんな会話が繰り広げられてる最中、私とたきなは隣の部屋から、壁に耳ありな感じでドアに耳を当てて会話を聞いていた。
なんだけど何かイマイチ二人の会話についてけない。
「たきなたきな」
「聞こえてますよ」
「何だか結局カズマ元気そうだね」
「そうですね。よかったです」
「うん。だけどさっきボトラーとか呪いとか、ちょっと理解に苦しむフレーズがあったと思うんだけど」
「呪いについてはアレでしょう? 借金というか負の遺産というか……でもボトラーというのはよくわかりません。私、気になりまs」
「知らないのなら気にしちゃ駄目じゃ。人には知らなくてもいいこともあるのだよたきな君。……それにしても借金か、借金……借金ねぇ」
「何か腑に落ちない点でも?」
「わざわざ呪いっていうのがなんだかねぇ。まあ事の真相は聞いてればわかるはずじゃん! 引き続き調査続行!」
私の目が綺麗なうちは私のたきなは穢させん!
どうかどうか、その変な知識を詰め込むことなくきれいな脳みそのままでいておくれ。
純粋なたきなを見てそんなことを思いながら私たちは扉に耳を戻した。
「ちょっと今……モニョモニョ……だからその、魔法で呪い、解いてくれないか?」
「それはいいんだけど今なんて言ったのかしら? よく聞こえなかったんですけど」
「だからカズマさん…………」
「んー……やっぱり聞こえないわ。もっとはっきり言ってくれないと。呪いを解くには呪いが発生した部分に触らないといけないししっかり言ってちょうだいな」
「……カズマさんのカズマさんがなくなった」
「…………はい? なくなった?」
「だからっ!! カズマさんのカズマさんが行方知れずなんだよっ!!」
私の頭を駆け巡る未知の言語とシチュエーション。
理解の範疇を超えた出来事に遭遇した私は、しばらくして何かを悟った。
たきなが「一体どう言うことです? カズマのカズマってどういうことですか!? 教えてください千束!」と私の肩を揺すり頭がガックンガックン揺れる……
それでも私の頭は宇宙空間にちょむすけが漂ってニャー鳴いてる状態から正気を取り戻すことはなかった。
毎週日曜に更新できたらいいな……と思います。