このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回、カズマは呪われてしまった


この呪われた体にディスペルを!Byカズマ

こんにちは、それともこんばんはですか?

どうも、サトウカズマです。

父さん、母さん、お元気ですか?

俺は今、長年連れ添ってきた相棒を失い、深い悲しみに暮れでいまず……ズビッ。

事の発端は、そう、一通の手紙からでした。

 

『こちらの世界で過ごして早1週間あまり、思う存分楽しめたがそろそろあの貧乏店主のことを確認しに行かねばならないので失礼させてもらう』

 

差出人の名前を見なかったが最初の文面で何処のバニルが書いたのかわかってはいました。

その悪魔……比喩表現じゃないですよ?

その本物の悪魔に襲われ、散々煽って悪感情吸い取られ、なんとか苦労して倒したと思ったら借金を押しつけられ、さらには最初の文から煽りまくりな手紙を送りつけられました。

 

……正直正気ではなかったんだと思います。

そのときの俺は最後まで手紙を読むとかできない、我慢限界状態だったんです。

だってそうでしょう?

誰だって馬鹿にされたらキレる、人間だもの(み○を)。

そんでこのときの俺は酒をがぶ飲みしてて、感情ゆるゆるな状態。

ならなおさら、手紙を破ってしまうくらいなら仕方のないことだとは思いません?

そういうことで俺は深呼吸をして、意を決して手紙の続きを読まずに真っ二つに破り捨て。

 

……この日ほど後悔した日はありません。

 

 

「くそったれえええええッッ!!」

 

 

さっきあの悪魔の手紙を青髪の大道芸人に米粒で千切れた紙を直してもらったところ、見た目は完璧に復元してくれました。

正直才能の無駄遣いだと思いましたがそれはおいておいて。

その手紙を読むと俺が手紙を破くことで発動する悪魔の罠だということが判明しました。

 

そんな悪魔に陥れられ、絶望に打ち拉がれていた俺ですが、一筋の希望がありました。

それは千切れた痕跡がわからないほど完璧に近い形で修復された手紙です。

もう一度破けばプラスマイナスゼロになるんじゃないかって、そんな僅かな希望があったので、もう一度藁にも縋る思いで思いっきり破いてみました。

が、残念なことに何も変化はありませんでした。

代わりに大道芸人の自称女神が涙目です。

 

……別に最後まで手紙に目を通して、案の定イライラして破り捨てたとかではありませんよ?

本当です。

 

ところで、相棒がいなくなったと言いましたが、アニメの展開なら普通、そこに新しい相棒がやってくると思います、主に胸とかに。

しかし、残念ながら、俺にはそういうのはありませんでした。

そもそも有性じゃなくて無性でした。

何が言いたいかって体つきはまんま男のままということで。

 

……バニル、お前は俺が女の子になったらその特権を利用して正々堂々銭湯とかに行くことを予想してたんだろ?

なのに……なのにどうしてどこまでも残酷なことをしてくれるんだよ!ホロリ

 

 

「ううっ……どうじで、どうじで俺人間やめるこどになっじゃっだんだよっ!」

「あらあらカズマちゃん、涙がもったいないわよ?」

「ちゃん言うな! あと涙がもったいないって言うんだったらブレイクスペルしてくれ!」

「えっ、ふつーに嫌よ。解呪するにはソコに触んなきゃならないの。申し訳ないんだけれどこの麗しき女神である私が汚されるようなこと、あってはならないの。だからごめんね?」

「……ふっw」

「な!? もしかしてショックのあまり壊れたのかしら!?」

 

 

なーにが麗しき女神だよ。

土木作業に汗水垂らし、酒を飲んでは胃の中を空っぽにして、馬小屋で寝泊まりして……そんなことを繰り返してきた過去がありながら何を今更。

そんでもって今は俺よりニートしてる飲んだくれが麗しとか……寝言は寝てから言ってくれ。

というか汚されるだって?

そもそも今の俺には汚す汚さない以前にカズマさんのカズマさんは行方知れずなんだぞ!

それから何か勘違いしてるようだが俺はお前が確実にヒロインだとは認めない!

イコール! 即ちお前のことは女として見れないんだ、ごめんな?

強いて言うならノーパンにも関わらずお色気の一つもない残念なゲロインといったところか。

すでにキレイからほど遠い汚れた存在なんだよなぁ……

だから四の五の言わず治してくださいお願いします喪失感ぱないんです!

 

 

 

 

****

 

 

 

 

この後、千束とたきなにバレた。

何があったかと言えば壁に耳あり障子に目ありとは誰が言ったもんか、千束とたきなに俺とアクアの会話が筒抜け状態で俺のカズマさんが家出したことを知られてしまった。

気づいたときには手遅れで、実は俺は女の子である、ということは確定してしまったらしい。

……正しくは無性別なんだが。

 

俺がどうやって事態収拾すればいいんだってアワアワしてたらアクアが。

「だいじょぶだいじょぶ! この女神アクア様に任せなさいとっておきの秘策があるの! ちょちょいと現状についてうまーく説明しておくからカズマちゃんは普段通りになさい!」って。

 

こんときの俺は馬鹿だった。

こいつに一抹の希望の光を見てしまったんだ。

希望が0じゃないなら、1パーでもあるんなら賭けてみようって。

幸運値が無駄に高い俺なら、FG○で神引きしまくった俺ならできるんじゃないかって、追い詰めら過ぎた俺は正常な判断ができず過ちを犯してしまった。

どうせアクアのマイナス幸運値によって帳消しされんのに、アクアに任せたら碌なことにならないってわかっていたはずなのに。

 

……一応、事態はなんとか収まった。

なぜか俺が元々性別を偽ってたってことになってたが。

 

 

「なあ、女の子同士ってこんな距離感が普通なの? 筋肉いじくるのやめてくださいくすぐったいから!」

「こんなもんよ距離感は……それにしてもいやぁ、まさかまさかで驚いたわ。私たちの仲なんだから教えてくれればいいのにぃ! うほっ、マジいい筋肉してんね!」

「そうですよ、最近は多様性を認めるというのは当然の風潮です。……それにしてもいい筋肉ですね。羨ましいです」

「いや、何か誤解してないか!? とくにたきな」

「そうだよたきな! たきなは誤解してるよ、そういうことじゃないでしょ?」

「そうなんです? てっきりカズマは心が男の子で……」

「いんや、ちゃうね。私、あっくんから聞いたよ? カズマって今まで髪型とかファッションとかおしゃれとかそういうのに無頓着で、女の子の服を着る機会もなくって、それが普通の生活で、機能性を追求した結果平凡なジャージ姿に落ち着いたんだって……」

「そうなんですか?」

「ち、ちが……わない……くそっ、ある意味反論しようがねぇ!」

「ほらね?」

 

 

なんで反論できないかって?

確かに昔俺は廃ゲーマーと自宅警備員という職業柄、家族以外に顔を見せることはなかったし、家族以外に顔を見せるとしても大会とかで知らない奴らと激戦を繰り広げるために会うくらいなもんだ。

そしてこの前までは荒くれ家業を生業とする冒険者。

どう言う職業かって言えば何でも屋ってところだが見た目が各独特で、鶏より立派なモヒカンだったり、オーバーオールだったり、裸ネクタイだったり、自身の戦闘スタイルに合わせてるだけの独自ファッションから、目立ちたいからって理由だけで変な武器を所持してるアホもいた。

自然とそういう流行とかには疎くなったし、稼ぎまくって冒険者を引退した日にゃ家でゴロゴロしてるか例の店にダストらと行ってるか、まあそんなところだし、不潔感がないだけいいかと思う程度の意識だった。

まあそう言うわけだ。

でも言っておくが決して、決して俺は男であることをやめたわけじゃない!

カズマさんのカズマさんが消えても俺は漢だ!

そこだけは強調しておく、俺は漢だ!(大事なことなのでry)

 

とりあえずあらぬ誤解を招く厄災ことアクアについては、今晩寝てる間に油性マッキーで顔に落書きする実刑判決を下すことにした。

極悪人に情状酌量の余地なし!

執行猶予もなし!

覚悟しとけ!

そんなこと思っていると俺の鍛え抜かれた肉体美をいじるのに飽きたのか、千束が離れる。

そんでもって急にこんなことを言い出した。

 

 

「ハイッ! というわけで今日はみんなでショッピーング! というわけでカズマの初陣じゃ! 皆のもの出合え出合えぃ!」

「……まぁた千束の突発的な思いつきが始まった。何がというわけだよ、言っておくが俺はどこにも行かないぞ!」

「えぇー、だってメッチャいっぱい元気じゃんカズマ。そんな元気なら外行って体動かした方が健康にもいいって! 一緒にパンツ買いに行こーよー」

「俺は今、大事な相棒を失ったせいで希望の光を失い深い絶望の中藻掻いているんだ! 心がデリケートになってる真っ最中なの!」

 

 

俺の繊細な心は優しい言葉を欲してるんだ。

でもそれ以上に家出息子の帰還を心待ちにしてるんだ!

アクア曰く「この呪いは大悪魔の呪いだからセイクリッド・ブレイクスペルじゃないと解除できないわよ? まあ私は解く気はないんだけどね? しばらくすれば解除されると思うしそれまで我慢しときなさいな」とのこと。

一瞬アクアから解呪魔法を習おうかって思ったが、どうせ習得したところで魔力不足に陥り俺が干からびて絶命するのが先だし、アクアがそもそもアイデンティティーを奪うなって頑なに教えようとしないから時間経過での解除を待つことにした。

とにかく!

何が言いたいかって、俺は俺の俺が戻ってくるまでガラスのハートだからほってほいてくれ!

 

 

「そんなに女の子バレしたのがショックなの? 後でバラしたあっくんにはメッって言っておくから、ね? それにそう言う嫌なときこそ体動かした方が気が晴れるってもんでしょ! 今日はせっかく天気もいいし外行こ外!」

「いや実は女ですらねーよ! あ、でもアクアの件はよろしくお願いします、できれば強めに懲らしめてください! でも外には行かない! そもそも俺の初陣とか言ってたけどナニソレ!?」

「だってカズマってば男もんのトランクスはいてるっしょ?」

「まあそうだけど……それが?」

「それがちゃうわ! 男もんをはくな!」

「いや、それは個人の自由だろ」

「そうですよ、今は多様性を認めるべきだってミカ店長も言っていましたし、真島さんも黒のトランクス派でした! ならば私やカズマがトランクスであることにだって自由があるはずです!」

「はぁいそこぉ! 私と一緒に買いに行ったパンツはどしたー!」

「はいてますよ?」

「じゃあ! じゃあじゃあじゃあ今はいてるコレはナニ!」

「うおっ! スカートめくっちゃって破廉恥! ハレンチよ!」

「女の子同士で何恥ずかしがっちゃってんのよカズマったら……。てか目を隠したふりして指の隙間から見ようとするんじゃない! 乙女か! あ、乙女だったわ」

 

 

誰が女々しい乙女だ!

俺は男、そう、紳士ならば紳士らしく淑女のパンツを直視しないように目を隠さなければならない。

でもせっかく目の前に広がる桃源郷を目に焼き付けなければ失礼というもの。

その矛盾を解消すべく編み出された高等テクがこれだ!

決して思春期真っ盛りの乙女が恥ずかしながらに、でも興味津々に裸体を見るときの表現ではない!

 

 

「まあ、カズマはいいや。それよりたきな! たきなはカズマを見習った方がいいよ」

「何を見習えと? そもそもスカート捲ってる人に言われたくないです。それと私だってパンツはきます。ただ今日は気分的にトランクスの日だっただけです」

「トランクスの日って何!? いや、そもそも何の恥じらいもなく私のスカート捲りに無表情で対応すな! 乙女なら、少しは顔を、赤くして!」

「五・七・五ですね」

「千束、心の中の俳句……じゃないの! 確かに不意にそうなったから自分でもおおって思ったけど! ほら、四の五の六七言わずパンツ買いに行くよ!」

 

 

そう言えば洗濯してるとよく俺以外のトランクスが入ってたな……

それと、トランクスはいいものだ。

通気性もいいし、見られても恥ずかしくないし、快適そのもの。

お前もトランクスをはかないか?

はかないなら…………まあどうということもないんだが。

そんなこと思っているとアクアが。

 

 

「パンツ買いに行くだけなら私、やっぱりお留守番してるわ。今日はポテチと黒いシュワシュワできゅーっとキメたい気分なのよね」

「だめよダメダメ! あっくんがいっちばん来なきゃダメじゃ! 全く色気感じなくて最近何も思わなくなってたけどノーパンじゃん! ちょーちじょじゃん!」

「ちーちゃん。聞きなさい。昔の神様も天使もパンツなんてはかないの。なんならすっぽんぽんよ」

「すっぽぽぽん。変態じゃん」

「そう。だからそれに比べれば私は普通でしょ? それにちゃんと見えないように不自然な影ができる女神のパッシブスキルのおかげでへっちゃらよ!」

「すんげー! 本当に見えない……ってそーゆーことじゃないわ! 見えなくてもはいてないっていう事実は変わらないんじゃい! 今日も商店街に犇めく面白そうな商品が私たちを待っている! 宇宙の果てまで、さあ行くぞ!」

 

 

ジャンプしたりしても中身は決して見えないそのアクアのスキル。

一瞬アクアの実演で興奮して話がそれかけた千束だったが、何とか軌道修正。

意志は強いみたいだ。

商店街の商品に対して好奇心の鬼であるちーちゃんこと千反田……じゃなくて千束を止められるものは誰もいない。

俺はどうせ一生に一度、つまりその時しか着ないであろう女性ものの下着を買わされに手を引っ張られるんだ。

そう、イヤイヤなんだ。

決して女装趣味に目覚めたとか、そう言うわけではない。

嘘じゃないもん、ホントだもん!(Byメイちゃん)

 

 

「……なあ、やっぱ面倒くさいし三人で行ってこいよ。俺は借金もあるしまだ使えるこの愛着あるトランクスはいてるからさ」

「だめ、四人で行くぜ! もしかしてカズマ、気ぃ遣ってんの?」

「……」(違う。ただ面倒くさいだけ)

「確かに男の子じゃないって知ったときはびっくりしたよ? でも、それでもカズマと私たちの関係は変わんない、今まで通りでしょ? カズマが男の子だって女の子だって、トランクスでもパンツでもカズマはカズマだよ」

「千束……」

「ええ、千束の言うとおりです。カズマとリコリコで一緒に汗水垂らした事実は変わりません。この家で一緒に家事をしたのも不変の事実です」

「たきな……」

「そうよ! どこ行っても女の子のパンツを盗む変態趣味は変わらずだし、性転換してもエロマさんは健在よ!」

「アクア……」

 

 

ごめん、なんか面倒くさいだけなのに気ぃ遣わせてごめんなさい。

でもみんながどんな俺でも仲間だと思ってくれてるって、そう思ったらなんか嬉しいじゃないか!

 

 

「だからみんなで外に出よ?」

「ああ……そうだな! こんなところでくよくよしてる暇は俺にはないんだ! ありがとう千束!」

「カズマが元気を取り戻した記念に私が代金を出します! 借金のことは今日一日だけは忘れて、思う存分楽しみませんか?」

「そうだな……そうだな、ありがとたきな! そう言うんだったら今日だけは思う存分楽しんでやる! そしたら明日は昨日放棄してた家事を取り返す気で頑張る!」

「今日は合法的に女性の下着売り場に潜入できるから張り切ってるのね! 私はアクシズ教の女神だからちょっとくらいアブノーマルな趣味でも悪魔やアンデッド以外なら許してあげるわ! そのうち呪いは解けると思うけど、今日はその特権を最大限行使して思う存分パンツを物色しなさいな! 私が許すわ!」

「お前は後で泣かす」

「!?」

 




次回、カズマちゃんとお買い物へ
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