このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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かき氷屋、カズマ OPNE!!


このバカに暑い冬にフリーズを!Byカズマ

俺は年末と正月にバリバリ働く。

……なんか「あの怠け者が働くなんて異変だわ!?」とか駄女神が言ってたが、別にワーカーホリックになったとか、気が狂ったとかそういうわけじゃないぞ?

常に借金返済に追われる身としては休みを返上して働くのは平常運転だ。グスン。

 

それはそれとしてどうして俺は赤道近くの南国ハワイへ移動させられたんだ?

そんなことを理解する前に千束らに空港まで引っ張られ、正式に偽造した本物のパスポートを使い(空港で挙動不審になりすぎて空港職員に怪しいやつを見る目で見られたが)飛行機に搭乗して今、ハワイに至る。

店長以外はハワイを満喫しようとしてるが、俺は借金返済頑張るぜ!

 

 

「ヘイいらさいいらさい! 正月というめでたい日にハワイで開店するここは冷たい日本の伝統甘味! 涼をとれるKAKIGOORIだ! 口の中でほどけ、スッと溶けるおいしいおいしいデザートはいらんかねー」

 

 

てなわけでかき氷を売ることにしたんだ。

原価安いし、気温的に売れそうだからな。

ただ何にもないところで普通に売っても普通にしか売れない。

俺は一つの作戦を考えつき、協力者とともに宣伝をすることに決めた。

 

……え?

日本語でそんなこと宣伝しても現地の人も誰も寄ってくれないって?(幻聴)

いやいや、実は俺ってばそれはそれは堪能な英会話力を持ってるんだぜ!

どれくらい堪能かっていえばアメリカへ留学してきたんかってくらいには流暢なネイティブイングリッシュでな!

 

いや、別に勉強とかしたわけじゃなくてな?

なんかわからんけど異世界転生するときに「ほんやくコンニャクで異世界でも言葉通じるわ! 注:頭がパーになるリスクがあり」みたいのあったと思うんだが、どうやらそれが実は異世界言語だけじゃなくて英語にも適応されてるっぽくてな。

今の俺は日本語、英語、異世界語を喋れるトリリンガル!

てなわけで宣伝開始だ!

協力者、カモ~ンヌ!

 

 

「ヘェ~イ、そこのお兄さ~ん? このKAKIGOORIってなぁに~?」

「お姉さん、うちの名物KAKIGOORIに注目するとはお目が高い! それは俺の故郷にあるジャパニーズトレディショナルスィーツ! 氷を削って上にシロップをかけて食べるんですよ」

「アーハッ! つぅまぁりぃシェイブドアイスってや~つ?」

「ちっちっち、そこらのシェイブドアイスと同列に扱ってもらっちゃぁ困る。うちのKAKIGOORIを嘗めちゃあいきゃあせんよ。なんと言っても使ってる氷は天然氷。口に入れた瞬間にふわりと溶ける絶品でっせ!」

 

 

まあ実は天然氷じゃなくて自家製の人工的に作られた天然氷に近い氷だが。

知ってたか?

天然氷に近い氷を作るには一度水を沸騰させるらしいぞ?

俺は知らんかったが、調べて実践したら割となんとかなるもんだな!

 

ちなみに協力者というのは千束のことだ。

本当はたきなにも協力してもらう手はずだったんだがどこいった?

それはそれとして千束さんや、その喋り方アメリカのテレビショッピングみたいに演技大げさすぎてなんか嘘っぽいぞオイ。

 

 

「ウワーオッ! それはとってもおいしそー! でも天然ってことはお高いんでしょう?」

「お値段は通常10ドル!」

「10ドル、10ドルかぁ……天然氷ならまあこれくらいの価格になるのかなぁ……でももうちょっとお安くならなぁい?」

「ええ、ええ、通常は10ドル、な、ん、で、す、が!」

「おおっ! 安い買った!」

「まだ何も言ってない。……今日はハワイ出張先! ハワイの皆さんに手頃な値段で楽しんでもらいたいという店長の粋な計らいでリンカーン1枚で提供してるんです、いかがですか? ……っていつの間に食ってる!? オイ千束、食うタイミング早すぎるぞ!?」

 

 

さっきからフライングしすぎだろ!

俺がしゃべってる途中で「せんせー、かき氷私にひとーつ!」とか言ってるんじゃねぇ!

それと店長も「あいよー」って、何で通常通り注文はいったらすぐに提供するんですか!

宣伝するんならタイミング重要でしょうが……いや、千束が美味そうに食ってるのを見て嬉しそうな親父さんの顔になるのはいいんですけど、千束ってば俺が全部言い切る前に食べ終わりそうな勢いでがっついてるじゃないっすか!

このままじゃ頭キーンなりますよ!

 

 

「わ~おっ! 口の中で溶けてなくたったわぁ! こんなにおいしいのがたった5ドルなんてやっすーい! たきなーもー! はよこちゃこーい!」

「千束ー、すみませんが私の分は確保しておいてくださーい! 今アクアさんの力作砂絵がアニメーションのように場面が次から次へと展開されてて目が離せなくてですね……」

 

 

新発見だ。

人工の天然氷でも頭キーンってならないらしい。

 

……てか結局あんまり台本の意味なかったな。

無茶苦茶アドリブしまくる(セリフを無視しまくる)千束は一応仕事してくれたが、たきなはアクアの砂絵の虜となって任務放棄してるし。

まあ正式に頼んだわけじゃないし、報酬代わりのかき氷が溶けるだけだからいいんだが。

そんなことよりアクアの砂絵の件について詳しく!

 

 

「も~、しょうがないなたきなは~……せんせー、かき氷もう一丁!」

「そう言われると思って用意しておいた」

「パーフェクトだよ先生!」

「それは光栄の極みだ」

「でぇはではでは~ぁ!タッタッタッタ こんのめちゃ美味しいかき氷を私がたきなん口に入れて進ぜよう! ほれ、アーン!」

「走り寄ってきたと思えば何を言ってるんです? それは自分で食べるのでわざわざ食べさせてもらわなくても結構ですよ」

「いや、さっさと食わんと溶けてなくなるよ!? 悪いこと言わないから口開けて! 開けねば私が口鑄のツボ押して強制開口させることになるから!」

「えぇ……何ですかそのツボ、聞いたことないんですがン!?」

「隙だ! ……んでどうよ? んまい?」

「……うまいです」

「はいンまぁい!」

 

 

俺の考えてたシナリオとは違うが英語を喋れて、人目を引く美人で、しかも素でいい反応してくれる二人を起用したおかげでこっちに注目してくれるターゲット……じゃなくてお客さん候補も増えてきたな。

いやぁよかったよかった!

今日は一先ずいい感じで売れそうだ!

そんなこと思っているとクルミが。

 

 

「おおっ、なかなかおいしそうじゃないか……ボクにもひとつおくれ。あ、ボクはどこからどう見ても体が子供だからな。子供割り価格で無料でいいぞ」

「なぁにが子供割り価格で無料だよ。都合のいいときだけ子供ぶりやがって……」

「自分の持てる武器を最大限活用することこそ社会を生き抜くための術だ。和三盆でたのむぞー」

「そもそもお前は従業員だし客じゃないだろ……勝手に子供無料とか言って営業妨害すんじゃない!」

「なんだよ、原価100円もしないくせケチだなぁ……」

「もうホントどっか行けよ!」

「はあ、しょうがないなぁ……暇つぶしにもう一回海に浮き輪浮かべてぷかぷか漂ってくるわ」

「いや、暇なら子供らしく向こうの方でアクアがイカのマネして遊んでるから一緒に遊んでこいよ。ついでに何かやらかさないように監視してくださいお願いします!」

「えぇー……」

「報酬で和三盆やるから」

「……大盛りだからな」

「はいはいわーったから。後でサンオイル塗りたくって暇そうなミズキに届けさせるから」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

そんなこんなで海の家れもんの看板をたて、注目かっさらい商売繁盛!

実は繁盛した要因は千束とたきなの宣伝効果だけじゃない。

アクアにイカコスプレさせてクルミと一緒に行動させたらいつの間にかこの周辺に人がわんさか寄ってきて「アクアの砂絵シアターにポップコーン代わりのかき氷を!」という声がけしたら売り上げが加速した。

途中氷の製造スピードが足りなくなって俺が魔力ギリギリまで使って『フリーズ』して時間を稼いだりして、なんとか今日の営業を終えることができたって訳だ。

明日は氷もっと準備して、ついでに焼きそばとかイカのホイル焼きでも作って稼ごうか……

でもとりあえず今は今日の成果を喜ぼうじゃないか!

 

 

「うーしっし頑張り完売乾杯だーっ! てんちょ! 一緒に飲み食いきゃしょ!」

「本当にお疲れさん。今日はカズマのおかげで活動資金は潤沢だ。お礼にどこか料理の美味しい店に行こうか、経費で下ろすぞ?」

「おおっ店長太っ腹ぁ! ち、ちなみにお酒なんかはダメ……ですよねぇ?」

「……本来なら二十歳未満の飲酒を咎めなければいけない立場なんだがな……私が居酒屋でお酒を嗜んだらカズマが酒を頼んだかきっとわからないだろう」

「つ、つまりそれって……!?」

「ああ。店選びは任せたぞカズマ」

「て、てんちょー! 俺一生ついてきます!」

 

 

時刻は16時、まだ早すぎる気もするが6時間労働後のキンキンビールできゅーっと一杯決めたら最高にハイだろうな!

そんなこと思いながら労働の義務から逃れてる子供連中(一人大人含む)に声をかけようとして、そいつらがいるであろう海の方を見ると……

アクアがはしゃぎまくっていた。

その遊び相手を務めているのは千束。

二人はそれはそれは無邪気に水を掛け合ってる。

……ちなみにたきなは何故か海に漂うカツオノエボシごっこをしてた。

 

言葉にすると平和そうだが、ひとつ問題があったのは魔法を使いまくって荒ぶる海原之神素戔嗚尊(スサノオ)のようになってることだ。

きっとたきなはあの激流にやられたんだろう。

千束はなんとか粘ってて、アクアが放つ水を避けつつ隙を狙ってるが……

 

……っていや、何やってるんだアクア!

今日は完売したからお客さんがどっか行っても今日のところは問題が、明日以降の集客に影響でいたらどうすんだ!

というかそれ以上やったら砂浜が壊滅的な被害受けるからやめろマジで!

 

 

「おーいアクアー! 海外に来てテンション高いのはわかるがはしゃぎすぎだー!」

「えー、なんでゲソー? カズマさんも私と一緒に遊びたいのでゲソー? そうならこっちに来て一緒に遊ぶゲソよー!」

「くっそ! 何にも聞こえてねぇし話を勝手に進めんなよ!」

「ふっふっふ、私の水の弾幕を避けきれるかしらぁ? ……あっ、当たっても水だし怪我しないように加減してあげ……ようとも思ったけれどイージーモードが許されるのは小学生まででゲソね!」

「なんか調子乗っててくっそむかつくんだが!?」

「カズマってば拳世握りしめてやる気ゲソね! この水の女神の神聖なる領域で精々足掻いてみせるでゲソ! 貧弱なカズマのクリエイト・ウォーターじゃムリかもだけど! ゲーソゲソゲソ!」

「そんじゃ『スティ……』」

「ああっそんな35億人を敵に回す卑劣な一撃必殺を繰りだそうだなんて! 私を行動不可能状態に陥れてたこ殴りにする気でしょう!? 今の私はイカなのに! たこ助の卑怯者ー!」

「誰が卑怯者だよ! それと全世界70億人の半分が敵に回ったとしても残りの半分は拍手喝采スタンディングオベーションだわ! 俺の攻撃を阻止しようとしたみたいだがそんな脅しじゃこの俺は止まられねぇ! 男の夢は終わらねぇ!」

「いやー! 私の水着を奪ったらちーちゃんとなっちゃんに言いつけてやるから!」

「んなことどうでもいいから食らいやがれ! 『スティール』ッ!」

 

 

俺のスティールはアクアから一つ身に纏ってる物を奪い取った。

アクアの水着の価値は0だから違うぞ?

奪い取ったのは神器の全状態異常を無効化する羽衣だ!

 

もし俺が水着スティールすると思ってたアクアと同類がいたら名乗り出ろー?

いつから俺がパンツ剥ぎ取り魔だと錯覚していたのか小一時間問い詰めてやる!

 

確かに普通の女性の場合はパンツが一番価値あるもんだからゲットする確率がバカ高い。

が、男からパンツとっても寧ろいらないもんだし微妙な顔になるだろ?

つまりそういうことだ。

 

……だからな、たきな。

確かにさっき俺はスティールしたが、たきなの水着を持ってるのは誤解なんだ。

アクアが起こした波がお前の水着を奪ったんだ。

で、俺のところに流れ着いてきたのは全くの偶然で、さっきのスティールで奪ったわけじゃない。

だからそんな冷ややかな顔で俺のほう見ないで!

俺のスティールは別にパンツやら水着やらを喚び寄せる技術じゃないから!

恨むなら元凶のアクアか紐の水着を選んだ千束にしろよ!

 

 

この後アクアの浄化作用によってこの場所は世界で一番きれいな水質を持つ透き通る砂浜としてバズって観光名所となったとかならないとか……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「いやー経費で食べる料理はおいしかったわね!」

「それは一歩間違えたらクズ発言になりそうだからやめときなあっくん」

「んなこと言ってぇ、ロコモコのプレート三枚目頼もうか頼んでた娘の発言かぁ?」

「うっわ酒くっさ、どんだけ飲んだのよ!? 遠慮も何もないミズキにゃ言われたきゃないなぁ……ってこっちもたれかかってくんな、今クルミのことおんぶしてるの見えんのか!」

「クルミちゅあんはお子ちゃまねぇ? うりうりー! 普段は生意気なガキだけど寝顔だけはかわい……ってギャッ!? 今私に噛みつきやがったわこの齧歯類!」

「あらあらぁケガしちゃったの? 私の魔法で痛いの飛ばしてあげるわ! 痛いの痛いのー飛んでけーヒール!」

「……私、ミズキじゃなくて千束なんだけど」

 

 

背中には寝落ちしたガキんちょ、両脇に侍らせているのは酒瓶を片手に持ってる肩組んでる酔っぱらい……いとあわれなり、千束。

まあなんだかんだ鼻をつまんで「アルコール臭プンプンじゃわ……」とか言ってるわりに仲よさそうなのが見てて微笑ましい。

 

ちなみに俺も飲んだ。

と言っても明日も仕事頑張ろうって思ってるから控えめだが。

向こうの二人組のように浴びるように飲んで翌日二日酔い確定になったら目も当てられないからな。

あれは仕事ないからこそできる所業……

 

 

「ってあれ? そう言えば明日からたきなたちも仕事だっけか?」

「ええ、そうですよ。一応ここには喫茶リコリコとして来ているので、お正月休みが終了し次第働きます。それと依頼が入ったらそっちのお仕事も」

「なあたきな……ミズキがどんだけ飲んだか思えてるか?」

「少なくとも仕事に差し支えあるくらいには飲んでたと思います」

 

 

明日仕事あるんならバリバリ働いてもらいたかったんだが……

まあアクアのキュアッポイズンッでアルコールの毒素解毒してもらえばいいっか。

そんなこと持ってると店長が。

 

 

「まあ正月の最後くらいいいだろ。生きてるだけで偉いんだ」

「なんだその人を駄目にするような甘やかし言葉!?」

「そうは言うが、あれは言いたいことも言えない世の中を足掻いて生きる大人の姿だ。そう今日くらい見過ごそうじゃないか」

「店長……私、あんな自己管理ができない大人には私はなりたくないです。カズマもそう思うでしょう? 自制できないほど酔ってしまったら奇襲かけられて痛手食らってしまいますよね」

「そーだなー。たきなは穢れを知らない子供のままでいいんだぞ~?」

「1つか2つしか年違わないのに子供扱いですか?」

「スゥー……いいか、たきな。あれが将来のお前だ」

「えっ!? ま、マジですか?」

「ああ。社会に対して不満を覚えて、抑圧された環境に耐えかねたヤツが酒に手を出してああなって……大人ってのになるんだ。そうだろミカさん」

「……否定はしない」

「否定してくれないんですか!? コワい! 私大人になりたくないです!」

「だからたきなはそのままでいいんだ。大人になろうとしてもなれないのが現実だからな」

「……下手な怪談話より肝が冷えました。というかそんな話ができるカズマは一体どんな経験をしてきたんですか?」

「聞かないでくれ。酒が入ってるせいで涙もろいんだ」

「本当にどんな経験を!?」

 

 

別にトラクターに轢かれたと思い込んでショック死したり、なんやかんやあって異世界転生して、サンマが畑でとれたり、お酒代わりにニャーって鳴く謎生物ネロイドを摂取したり、キャベツが空を飛んだり、カエル肉が主菜だったり、借金が桁おかしかったり……

まあ、いろいろだ。




「ハァ~イ! アーユーイナチュゥラボー?」
「アローハー」
「浮かれてんじゃねぇぞテメェら……」

そんな始まり方な次回。
依頼者、凍えたペンギンの依頼内容とは?
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