このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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リコリス・リコイル Recovery days 面白かったです。
そのせいで創作意欲UPして、文量が多くなってる気がします。


このオムライスの上にケチャップを!Byカズマ

「せんせー!」

「なんだ千束?」

「我々参加者一同はー、日頃の料理道の成果やらなんやらを十二分に発揮しー、正々、堂々、競い合うことを誓います!」

「……私のことを呼んだわけじゃなかったのか」

 

 

千束の運動会さながらのかけ声で始まったのは第一級メイド長選抜試験(仮)

……どうしてこんなヘンテコな大会が催されたのか。

実はこの謎試験、俺の思いつきによって始まった試験なのだ。

元々俺がみんなのメイドとしての立ち振る舞いとか何やらがどの程度のもんかを見て指導するだけのはずだったんだがな。

千束の地獄耳によって俺の呟きが拡大解釈され、こんな事態に。

まあ業務の支障になるほどじゃあないし、何ならこのまま№1ホストよろしく競い合って売り上げに貢献してほしいという考えだ。

ちなみにこのわけわからん試験に合格した人には俺から何かしらのご褒美をゲットできるとは千束の言葉だが、アイツが勝手に言い出したことだから俺は知らん。

 

自分が呼ばれたと勘違いして、わずかに赤く染めた頬を軽く掻く店長がカウンター裏に引っ込む中、千束とミズキが我先にと動き出す。

動いていないのはアクア、クルミ、たきな、そしてサイレント・ジンだ。

そんなやる気のないメイドたちに俺は。

 

 

「メイド服に身を包んでいるウェイターは準備を開始しろー。評価者は、身近にメイドを侍らせていた経験もある俺ことカズマがお送りするぜー」

「おっしゃきた、私の料理教室で磨いた愛妻弁当技術を見せつけるときがきたようね……!」

「……いや、何ですか、コレ」

 

 

ミズキさん、涙ぐましくも密かに料理教室に通ってたんかい。

常日頃から「素敵な出会い」について耳にたこができるほど口にしているミズキの努力が報われる日が来るのだろうか。

そんな同僚のお姉さんに訪れるかどうかもわからない悲しき未来現実を直視していると、状況が把握できず不可解なものを見るような顔をしているたきなに千束が意気揚々と説明をする。

 

 

「フッフッフ、第一級メイド長選抜試験――それは、私たちのメイド力を推し量って誰がメイド長に相応しいかを決める試験!」

「ねえねえちーちゃんさん、つまりどういうことなの?」

「メイドっぽくすればカズマがご褒美くれるってヤーツ」

「なるほど! 理解したわ! じゃあじゃあ私はドジっ子メイドごっこするわね!」

「それはなんか違う気が……?」

 

 

アクアのドジっ子メイドはお客さんの飲み物を全部水にするという凶悪さを持っている。

海外で慰謝料とか請求されたら洒落にならない問題になっから後で矯正しておこうと心にとめながら、たきなにかみ砕いて説明をする。

 

 

「とにかく、誰が現場を取り仕切る責任者になるかを決める試験だな」

「なるほど。私も理解しました」

「ねえねえカズマさん! ちーちゃんにはご褒美の内容はトップシークレットって言われたんだけど、私にだけひっそり教えてくれないかしら?」

「私としても景品が魅力的なら、このようなよくわからないイベントであっても是非上位を狙っていこうと思いますが……」

「さっき理解したっつってなかったか? 実は理解放棄したろおい」

「いえ、理解はしました。ただ納得してないだけで。それで、私を納得させられる物なんですかその景品とやらは?」

「あー……たぶんあれだ。合格者には俺からソイツにあった好物を料理してやるとかだろ」

「私、なんだかやる気に満ちあふれてきたわ! 早速、何を審査してくれるのか教えなさい! 女神パワーなら誰にも負けない自信があるんですけど!」

「誰が女神パワーとかいう頭悪そうな力を試すか! メイドに関係する公平な勝負だかんな?」

「私の一人勝ちを防ごうって魂胆ね。でもこのパーフェクトメガミメイドの私なら……」

 

 

なんか駄メイドのイドの雰囲気をだだ漏らしにしている駄女神。

そもそもお前はめちゃくちゃ自信満々に女神力で勝負しようとしてたが、千束やたきなはおろか、クルミにすら女神力劣ってるからな?

そんなこと思っているとたきなが。

 

 

「あの、ではそもそもこの試験、一体何をやるのですか? 評価基準や試験内容は?」

「それは発案者の千束に聞けよ」

「千束……」

「それは言い出しっぺのカズマに言ってよ」

「つまり何も考えてないってことですね……」

 

 

気怠げなジト目で、如何にもやる気が削がれましたと言わんばかりの顔だ。

いや、だってしょうがないだろ?

今から考えるからちょっと待ってろ……

 

 

「うーん……んじゃあとりあえず、メイドって言ったらアレだ。オムライスだ」

「うん、それだ! 間違いない」パチン

「となればまずはオムライス作らないとな」

「よっしゃ、試験内容はそれか! 腹が鳴るわー!」

「腕が鳴れ」

 

 

俺のアイディアに指を鳴らして同意するどんなときでも食い意地が張っている千束。

吸血鬼と言えば生娘の生き血、メイドと言えばケチャップ……これぞ世界の真理!

気がつけば千束を出し抜いてミズキが材料を揃えてフライパンにバターを溶かし入れている。

しかし質問者たきな君は小首をかしげて。

 

 

「そうなんですか? もっと、紅茶を入れるとか、そう言うのではないのです?」

「チッチッチ、わかってない。わかってないなぁたきな」

「なんですかその人を小馬鹿にしたような言い方は……」

「いい? ここはメイドはメイドでもメイド喫茶のメイドよ。ちょー本格的なのもいいけど即席なんだからそこんとこに拘ったら」

「あっ、絶対ボロが出ますね……」

「そう! だから本格路線は今回はお預け。今日は~もえもえ~きゅーんっ♡ だよね、カズマ」

「うむ、良きに計らえ」

 

 

エクセレント、やっぱ千束はわかってる!

確かにたきなが思い描いていたであろう落ち着いた雰囲気の純なメイド喫茶は確かに捨てがたい。

あれはあれでいいものだ、が、バズるかどうかって言われたら……な?

それに加えてここは常夏の島ハワイ!

そんなところでロングスカートやら長袖やら……どれだけ機能性を追求したところで熱中症になる未来しか想像できない。

……別にミニスカが目の保養になるとか、そんなことは思ってない、本当だ。

そんなことしていると厨房の方からミズキが出てきて。

 

 

「おかえりなさいませ~ご主人様ぁ♡ オムライスの準備ができましたよ♡」

「うんむ」

「サービスでケチャップでオムライスに何か描きますかぁ?」

「じゃあハートでも描いてもらおう」

「はーいっ! おいしくなりますように~! ハ~~~ト♡」

「なかなかうまいじゃないか」

「お褒め頂き光栄ですぅ! でぇはご主人様? 一緒にオムライスもっとおいしくなる魔法の言葉♡ 一緒に~せ~の!」

「「おいしくなーれ、もえ、もえ、きゅ~んっ♡」」

「……なんですか、ソレ」

 

 

たきなが白い目で見てくるが俺は採点者。

採点するためにオムライスを一口、口の中に入れる。

するとご飯と卵がほどけ、酸味が飛ばされたケチャップの甘み、そしてコクが広がる。

 

……店で出せるレベルでうまい。

細かくカットされたタマネギは飴色で香ばしくもうまさを感じ、ケチャップライスの中にあるウインナーもまたご飯と一体化しており、旨い。

そしてそのウインナー以外にたこさんウインナーがオムライスの横に添えられている。

これは海を意識したからか、それともケチャップライスの中のが細かく切られているから食べ応えを出すために添えられたのか、その両方か。

 

細やかな手間が込められた古きゆかしきオムライス。

フワトロではないが確かに旨い……料理に込められたこれは……愛情?

そう、愛情だ!

ミズキがお料理教室で培ったモノ、それは手間を惜しまない、愛情とかまごころ。

そんな旦那様に作るオムライスは手が止まらず次を欲してしまうほどに最高だ。

 

加えてこの振る舞い。

メイドとしてなかなかに完成度が高い。

が、それだけじゃない!

相手に合わせ、相手を思いやるその精神が見て取れ、本気度が窺える……。

 

俺は正々堂々と正当な評価をつけなければいけないジャッジメントですの!

白黒はっきりつけてやりますの!

 

 

「判決! 94、96、87、92、黒……合計点は369点、黒だ!」

「一体何の合計点で、その色はどういうことなんですか……あれですか? メイドの服装で何色の割合が多いかですか?」

「んなこと言わなくても決まってるだろ……言わせんなよ、恥ずかしい///」

「何が恥ずかしいことあるんですか!?」

 

 

別に俺は恥ずかしくない。

だが乙女ならば恥じらいというものを持ってだな……なんて言おうとしたそのとき。

千束がたきなをからかうようにニヤニヤして。

 

 

「あーそっかー。たきなはこの意味がわからないのかー」

「なんですかその無駄にムカつく顔は」

「あー! そんな酷いこといってると教えてあげないぞー?」

「……なんですかそんなにもったいぶって」

「あのね……パンツの色、だよ」

「……はい? ……はい!? もちろん冗談ですよね!?」

「もちろん冗談ですよ」

「は、ホントですか!?」

「ホントほんと」

「本当にホントなんですよね!? なんかカズマならあり得そうで怖いんですが!」

「ほんとだって、からかって悪かったから信じて? そんなに勘ぐんないで、ただの冗談だったんだから。ね、カズマ!」

「……」

「カズマ……?」

 

 

俺の目は泳ぎまくる。

い、いや、べ、べっべべ別に俺はミニスカはいてるから見えかけただけで見ようとしてないし見てもないし!!

だから単純に千束の言葉に驚いただけで、俺は何もやましいことはしてないし!

そんなことを思って千束を見つめ返すと。

 

 

「……大変よ。今お客様の頭の中で侮辱の限りを受けているのよ、たきなが」

「大変なのは千束ですよ。今カズマの頭の中で卑猥な辱めを受けています、千束が」

「ちっがうからな!? そんな卑猥だのなんだのは考えちゃいないから! ……ふー。まあそんなことはおいておいてだ」

「おいとけますかね!? まじまじと千束を見つめていたのは次の受験者のパンツを見透かすためなんですか!?」

「暫定順位は……!?」

「い、一体何位なんだ!? ドキドキ……!」

「無視しないでください! というか一位に決まってるでしょう!?」

「一位だーっ!」

「うおっしゃー!」

「でしょうね!!」

 

 

俺とミズキをアホを見る目で見てくるたきな。

それをケラケラと可笑しいものを面白がってる様子で見ている千束。

だが、俺はエンターテイナーのカズマさんだ。

いくら冷たい視線を浴びせられたって、外野がうるさくて集中が途切れそうになったって、こんなところで開催された大会の採点者を辞退するわけにはいけない!

 

 

「わかりきってるのに喜びすぎですよミズキさん……」

「暫定一位のミズキさん! 今のお気持ちは!」

「優勝したわけでもないのに何のインタビューですかこれ」

「いやー料理の腕を磨き続けてよかったわぁ。この順位に位置できたのも喫茶店で働いてきた経験が生きたおかげよ! メイド長になった暁には素敵な旦那様を捕まえてみせる!」

「おおげさな……」

「自分だけの力じゃなくて喫茶店のみんながいたからここまでこれた。お客様をどんどん連れてきて店を繁盛させる……つまりはそういうことですね! 素晴らしいお言葉、ありがとーございましたー! ではミズキさんは控え室でお待ちください!」

「一言もそんな言葉言ってなかったように思いますよ!?」

 

 

強靱なメンタルで後ろで何か言ってるヤジを全スルーしつつ、俺は次のメイドを呼び寄せる。

次のメイドは……ミズキと同じくらいやる気に満ちあふれている千束か。

はてさて、普段は料理しない彼女の腕前は如何なものか。

俺は千束の料理の様子を観察する。

 

 

「卵といてー、牛乳しょうしょーこしょうしょうしょーしおしょうしょーしょーしょうしょー! エンドチャッカファイヤー!」

「……なんでこの人日頃料理しないのに手際だけは優秀なんでしょう」

「失礼な。私ゃね毎日腹減りな状態に耐えかねてカズマが料理を作る光景を見学して催促してんの。毎日見てたらなんとなく見て盗んでね?」

 

 

うん、手際もいいし、ご主人様に待ち時間も楽しんでもらえるように俺が見える位置を陣取ってる。

お客さんを待たせすぎないように手際もいい、これは期待大だ!

そんなことを心の中で思っていると控え室(そんな場所はない)から出てきて参加者にプレッシャーを与えに来たミズキが悲鳴を上げる。

 

 

「ま、まさか千束……フワフワタンポポオムレツを!? や、やめなさい! 料理教室に行っている私でも辿り着いていない境地にアンタが……無茶よ!」

「控え室に行ったはずのミズキはぁ、どーぞ控えくださーい! この店に君臨するメイド長に、私はなるッ!」

「ヤメテーッ! 私の一位の座を奪うつもり!? 再現性の高い昔ながらの堅焼きタマゴを求めてる人は多いはずよ! 考え直して、千束!」

「よっ! ほっ! ……ここで鍋を傾けてぇ、トンットンットンットンッヒノノニとぉんっとぉ!」

 

 

このメイド対決、このまま順当にいけば千束が勝つだろう。

持ち前の身体能力を生かした料理技術、元気溌剌な笑顔、スカートの丈、何から何まで全て千束が勝っている。

ミズキに勝ち目はなさそうだな……

そこまで思って一つ、千束が犯した重大な選択ミスが目にとまる。

しかし千束はそんなことは気づいておらずルンルンとこっちにやってくる。

 

 

「クルクルクルー……シュタっと! お持ちしましたご主人様ぁ! ふわとろ卵のオムライスでーす! スベスベすーはだのオム肌にスーッとナイフを入れれば~! 花咲けタンポポっうーんっ開花!」

「……なあ千束。このソースはなんだ?」

「えっ? 何ってデュミグラスだけど」

「絵も採点対象だが、何か描いてくれるんだよな?」

「もちのロンよ! このデミソースでぇハートかいちゃるわい! そーいソース!」

 

 

デミグラスソースで描いてくれたハート。

もちろんケチャップよりデミグラスは水っぽいし、纏まらないし、絵を描くには相応しくない画材だ。

そして千束のハートも案の定だれてきて、徐々に原型がわからなくなっていく。

今の見た目は絵とは呼べない。

ここからどうやって持ち直すのか。

そんなことを思っていると千束が暴挙に出やがった!

 

 

「ソーイッッ! デミ汁ブッシャーッ!」

「なあああああっっ!? おんま、なにやっちゃってんだよ! 絵が描けなかったからって上からソースドババ全がけして塗りつぶすこたぁないだろ!」

「見た目は大事だけど問題は中身でしょ中身。私の愛情はデミグラスの量と比例してんのよ! 結局口の中に入れれば同じくうんまいオムライス早く食べてみぇ、飛ぶぞ!」

「俺はからあげにはマヨ、オムライスにはケチャって決めてんだ! モグモグ……なかなかうまくできてたが、俺の好みに合わせるべきだったな。89、86、94、84、白。合計点は363点、白だ」

「う、うそ! 私がミズキに負けた……!?」

「しゃーっうらオラ! 私の方が一枚上手だったわーあね!」

「何なんでしょう、この暑苦しい戦い……やっぱり私、やらなくてもいいですかね?」

 

 

ミズキの勝利の雄叫び。

一切負ける予想をしてなかった相手に僅差で負けてしまった千束。

 

いや、うまいんだよ?

ケチャップでやってたら絵もいい感じだろうし、380点、白くらいになりそうだったろうに、残念だ。

敗北感に打ちひしがれて床に崩れ落ちた千束におしかったなーと思っていると、そんな俺らをくだらないもののように見下すたきなが視界の端に映り込む。

そんなたきなに対して千束が。

 

 

「ダメダメダメ! たきなもやんないとフェアじゃないし、私の無念、代わりに果たしてよ~」

「いや、任務の対象外かつ、やりたくもない仕事を新たに作り出すとか、無駄でしょう?」

「ああ~、そんなこと言ってぇ実はミズキと私に負けるのが怖いんでしょー?」

「ム、怖くなんかないです」

「またまたぁ、平均点9割超えなんてたきなには無理だと思って辞退したんでしょ? 大丈夫! 自分の可能性を信じてみようぜ!」

「……いいでしょう。そこまで私を煽って、後から泣くことになっても知りませんからね」

「おおっゆ~ねぇ!」

 

 

なんとノリがいいたきな。

唇にヘアゴムをくわえ、ロングの髪を頭の高い位置で一本に束ね、卵をとき始めた。

たきなは京都出身で、そこで料理について学んできたと聞いている。

得意料理は出汁系料理全般で、最近は「たまごふわふわ」とか言うご当地料理を振る舞うほど料理に精通している猛者。

したがって、だ。

かつて、バニルが「卵焼きを作ろうとしたらダークマターを作り出した」とか話していたが、彼奴の話は当てにならないし、きっと今回のオムライスは素晴らしいものが出てくるだろう……そう信じたい。

 

愛想は多少足りないかもしれないが、それを加味してもクールビューティーな大和撫子は、そう言うキャラとして成立させるのであればむしろボーナス加点。

意外なことにメイドとしての素養が高いのが彼女だ。

俺の期待が高まっていく!

 

 

「おまたせいたしました。オムライスです」

「おおっ、たきなはオーソドックスなタイプか」

「再現性が高くていいでしょう? 絵も描きやすいです」

「ぷぷー! ミズキと同じこと言ってるー!」

「千束様は控え室に行ってください、控えめに言って邪魔です。私が負ける要素は今のところないんですから余計な茶々はよしてください」

「ほぉ、ということはもしかして絵も期待していいのか?」

「ええ、まあ。それで何を描けば?」

「別に絵じゃなくたっていいんだよな……何か俺にメッセージでも書いてくれ」

「了解しました」

 

 

やはり最初に「紅茶を淹れるのか」とか聞いてきたガチメイドなだけある淡々とした、けれども所作に気品と気遣いを感じるたきな。

俺基準の評価だが、今のところ全項目で9割を超えている。

この調子なら即戦力として働いてもらえそうだ。

「よくかんで食べてください」とか書くのかなと思いながら目を閉じて待っているとたきなの「ふー、終わりました」という声が。

その声に促されたように俺は目を開けると……

 

 

「うわうわうわ……カズマ、一体何やらかした? 滅茶苦茶たきなにキレられてんじゃん」

「心当たりねーよ! 94、-100、93、95、黒。合計182点、黒をくれてやる!」

「な、なんで一部マイナスなんですか、納得できません! あとその色、本当に下着の色を見て判断してませんよね?」

「なるほどなるほど、たきなは今日は黒……っと」

「何メモしてるんですか千束……黒じゃないですから」

 

 

俺の直感(幸運EX)をなめる事なかれ!

普段は中の上な成績を叩き出す俺はマークテストになった途端8割9割近くを叩き出す化け物となり、先生にカンニングを疑われ職員室に呼び出されることが多々あったんだ。

つまりたきなは黒確定だ。

……パンツの色と犯人という二つの意味で。

 

 

「お前は黒より黒い、闇落ちたきなだよ!」

「や、闇落ち!?」

「うんうん。流石に『私の点数よくなかったら……どうなるかわかってるよね?』みたいな感じで脅すのはどうかと思うよ? 何というか公平性に欠けてる。たきならしくもないしどっちゃった?」

「お、脅し!? 私そんなこと一つも思ってないですよ!?」

「どこをどう見たらこのオムライスから害意以外の何かを見いだせるってんだ! 見ろ、この文字! 血と呪いの殺人予告だろ!」

「いやいや、私は『夜道に気をつけて、特に背後に』って書いただけですよ! それにケチャップの色も香りも血の色とは全然違いますから」

「今何も弁明できてなかったぞー? まずなんで血が飛散してる感じになってんだよ……文字もホラー系の映画でよく見るやつだろ!」

 

 

そう。

俺が目を開けた瞬間に映り込んできたのは殺害予告じみた何か。

確かに世の中にはドMって種族がいるし、ダクネスなんかだったらオムライスに罵詈雑言書かれたあげく「とっとと食べて退店しなさい。じゃなきゃバルスるわよ」って冷たくあしらわれるのが好みだろう。

……何か「姉様!? 俺がなんだって罵倒のワードとして使われなきゃならないんですか!?」「さすが姉様です!」なんて声が聞こえた気もしなくもないが気にしないでおく。

とにかく、俺の好みじゃない!

 

 

「まったく、本当にどうしてこんなことになった?」

「いえ、仕方なくてですね。ケチャップに空気が入ってしまって、ちょっと飛んでしまったり、文字と文字の隙間に間が開いてしまったり、そういうアクシデントです」

「……じゃあなんでこんな恐ろしいワードが羅列してんだよ」

「あ、いや、単純に最近のカズマはよく呑みますし、その状態で夜道を歩いたら転びそうで心配で。人間、視覚から得られている情報から外界を把握しているといっても過言じゃありませんし、そういう意味で背後という死角から不意の何かあるかもしれませんし……」

「うーん……なら-100点から34点に変更して316点か?」

「それでも千束より低い!? ど、どうして……」

「どうしてもこうしても、こんな呪物をお客様に提供できるわけないだろ……。ま、私みたいにデミグラス使ってあげるのがオヌヌメ~」

「開き直るな千束。10点減点」

「ナヌッ!?」

 

 

……どうしようか。

俺の中でこの試験の合格点は9割の360点にしてたんだが、だとしたらここのメイド喫茶にはまともなメイドがミズキしか今んところいないぞ?

ここいらで合格ラインを下げるか……

いや!

俺はメイドのことに関しては一切が今日を許さないメイドソムリエカズマ!

まだクルミ……は料理できなそうだし期待薄だが。

でもアクア……は言わずもがな。

ならばジン……は男だがワンチャン……あるか?

 

とりあえず全員試験してやっからかかってこいやー!

そして俺がメイドとはこうあるべきだって指導をしてやる!




後編へ続く

カズマオリジナル評価項目
振る舞い(メイドっぽさ、笑顔)+オムの見た目(絵の巧さで加点)+提供速度+オムの味付=合計400点満点(パンツの色)
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