このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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前回の千束視点です


この新人店員に挨拶を!By千束

先週、とある大物から護衛の依頼が舞い込んできた。

と言ってもその任務は最終的に何やかんやあって成功(?)したんだけどぉ……

 

 

「なあ千束? 私も悪かった。……だからいい加減千束メガ盛りスペシャルを100円でお客さんに強制的に注文させる暴挙は止めにしないか?」

 

 

暴挙とは失礼だなぁ店長さん……もとい先生ぃ?

元はと言えば私とたきなに護衛依頼の計画をきっちり話してくれなかったのが悪いんじゃい!

私を甘い物(賄賂)で買収しようとした罪をこれで償うがいい!

それに……

 

 

「みんな完食してくれてるし喜んでくれてるじゃん!」

「それはいいことだがもう一週間近くだ。お店の経営がそろそろヤバい……何せ原価が売値の倍だからな。千束もお店を潰すのは不本意だろう?」

 

 

うっ、それは確かに喫茶リコリコの存続に関わる問題だ。

……なら、まあ、しょうがないっか。

 

 

「……は~い。じゃあ本日をもって終了しますぅ……」

「お、もう千束メガ盛りスペシャル終わっちゃうのか?」

 

 

そう言ってくるのは座敷の方で千束メガ盛りスペシャルをがっついている、その依頼の依頼主、スーパーロリハッカーのクルミちゃん。

帰る家がないからここで預かってるんだけど、毎日のように千束メガ盛りスペシャルを言い訳がましく「頭脳担当には糖分が必要だ。これは経常費用だぞ?」と無銭飲食を繰り返す小動物が残念そうにこちらを見つめてくる。

そんな目をされたらサービス精神旺盛な私が黙ってられっか!

 

 

「そそ、今日で終わり……だぁけど! ふっふっふ、聞いて驚くなかれ! これより悲しみの販売終了直前セールを開始しま~すッ! 今日一日は千束メガ盛りスペシャルを頼んでくれたお客様には! ななな、何と! 100円分のお食事券とぉ看板娘か新人店員のスマイルをプレゼントぉ! 今日がラストチャンスですよ~! 持ってけドロボー!」

「ち、千束ぉぉおお!?!?」

「あの、千束さん? 私、何もスマイルしなきゃなんですか? まだ了承してn」

 

 

先生の喜びの悲鳴が聞こえるぜ!

まあメガ盛りは今日で最後なんだ、出血大サービスで大盤振る舞いしないと!

 

 

「じゃあコッチに。スマイルはたきなにやってもらうからスペシャル一つ持ってこさせて」

「はいはぁい! スペシャル一丁! ってたきなに指名して私は!?」

「お前の笑顔なんか一日で見飽きたぞ」

「何ですと!?」

「ということでたきなぁ、スペシャルおかわり」

「クルミ、私は了承してないのでスマイルしませn」

 

 

このロリリスめ……

常日頃ウォンバットよりニコニコしてると言われてるこの千束さんの笑顔を見飽きたとはどういう了見か!

飽きるくらい私の笑顔を堪能してくれたのは私の笑顔がサンシャインしてるってことでいいことだけども、私のスペシャルスマイルは年中見放題で、たきなの笑顔がレアだからって私を拒否するのはいかんぜよ!

 

 

そんなこんなでわちゃわちゃしてる日常に満足している私の機嫌は絶好調!

お客さんからじゃんじゃん注文が入ってくる!

先生のコーヒーもどんどん注文されていい感じ!

順調にみんなの分の千束メガ盛りスペシャルを配って……

おおっとぉ! 追加で店中にお客様一名入りまぁす!

 

 

「また来たよ」

「おお~っヨシさん久しぶりぃ! 元気してましたか?」

「千束も元気そうでよかったよ」

「もちのろんですよ! 私はいつでも元気です! なんたって子供は風の子ですからね! 丈夫な私が風邪を引くなんてありませんよ~!」

 

 

ヨシさんはたきなの初めて(のお仕事のときに新規で来てくれた客さん)で、先生の昔からのお友達(裏家業系の仕事もしてる人)で、多忙でなかなか会えないレア客さん。

すっごい優しくて印象的な人で、前来たときより見た感じ肌艶が良くて安心したわ。

ほどよく息抜きできてるみたいでよかったよかった……ってアレ?

ヨシさん、何か可哀想なものを見る目してない?

 

 

「あっ! もしかして今私のこと馬鹿にしたでしょ! 私が風邪ひかないのは……」

「はは、馬鹿は風邪を引かないという俗説は迷信だよ、お利口でかわいい看板娘さん? それと今日は私の知人が来る予定なんだ。ここのコーヒーと店員さんは最高だから紹介したんだよ」

「そぉんなこと言ってぇ話すり替えよったって騙されないぞぉ! ヘイ先生! ヨシさんに特製コーヒーと千束メガ盛りスペシャル一つ!」

「ぬぅぉぉおお!!」

 

 

ホイッパーを使って一心不乱に生クリームを泡立てる先生。

いつもならミズキの仕事だけど今日はお休み。

ちなみに休みの理由はマッチングサイトで知り合った男がいい人だったのに既婚者だったと知って傷心しているという、まあ何とも私からしたらくだらない理由だった。

とりあえずお客さんとずっと立ち話をしてるのも悪いし席に案内しようと手招きをする。

 

 

「ささ、コッチ! 座った座った!」

「ああ、ありがとう。そろそろカズマ君……私の知人何だがね、来ると思うからもう一つコーヒーを頼めるかい?」

「もっちろん! せんせ~! セット追加でぇ!」

「私ヘルプに行ってきます」

「おう、たきなに任せたぜ!」

「本当はあなたがやるべき仕事ですからね、千束さん?」

 

 

ちょ~っと都合が悪くなって目をそらす。

だってしょうがないじゃん?

私的にはいつも立ってる厨房より久しぶりに来てくれたお客さんの接客の方がやりがいあるし好きなんだから、うん、しょうがないよね!

 

 

「ねね、ヨシさんヨシさん! その紹介したカズマ君ってどんな人?」

「ああ、先日知り合ってね。深夜に見かけたもので熟睡するためにはホットミルクでもどうかなと話したら『俺は夜型だからコーヒーの方が……』と反論してくる人でね。ちょうど君と同じくらいの年の男の子だよ」

「へぇ~ヨシさんって年齢関係なくいろんな人と知り合いなんですね! というか私も最近カズマって名前の人と会ってね、酔っ払いの不良少年が街路樹に突き刺さっててさぁびっくりしちゃって……」

「その子は随分とユニークな寝相をしてるね」

「でしょ!」

 

 

その男の子がどんな人かを想像して待ってようかと思っているとお店の扉が開く。

さっきヨシさんが言ってた人かもしれないと思って第一印象大事に元気溌剌な声を投げた。

 

 

「へい、らっしゃっせー! ……あ」

「あ……」

 

 

店のドアの前で棒立ちになってるのは一ヶ月前に逃げられた未成年飲酒男子。

まさかヨシさんの言うカズマ君が酔っ払いの不良少年だって思いもしなかった。

ちょーびっくり!

 

私はそんな感じで驚いたんだけど、その不良少年、もといカズマ君は私を入店するなり発見して顔を引きつらせていた。

あのときはでろんでろんに酔っ払ってたし私たちの記憶が消えてないかなぁ……なんて思ってドアの方に近づきながら挨拶を。

 

 

「ど、どぉも~?」

「スゥー……。間違えました」バタン

「何も間違えてないからドア閉めんな! たきなぁ! お金がないお客さんが逃げようとしてる!」

バタン「ぅおおおい!? 俺は何も飲食してねえだろ! 勘違いされるから人聞き悪いこと言うな銃刀法違反野郎!」

「野郎じゃないですぅ! 未成年飲酒くんを現行犯逮捕ぉっ!」

 

 

一度閉められた扉が再び開いて弁明しようとしたのが運の尽き!

素早く接近して抱き寄せるが如く締め上げる。

銃刀法違反はまだしもこんなピチピチの女子高校生風エージェントの私を野郎扱いした輩には罰をあげなくっちゃ私の怒りは収まらない!

 

じょ、冗談だろ~! そんなくだらない理由じゃなくて、あくまで、そう、不良行動を見過ごせないから私はやむを得す武力行使するだけでさっきのは冗談、冗談だから!

 

 

「ぎゃ! 襲われる!? ス、スキンシップいきなり激しいのはって近い! それに柔らかい!」

「……急に抵抗なくなったんだけど、どした~? 体調でも悪いn」

「くっ、最近強制的に訓練させられてる俺が力で勝てないなんて……くっオークに襲われたトラウマが!」

「あーっ! 乙女に言っちゃいけないこと言ったなあ! 鉄拳制裁じゃあ!」

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「二人とも元気なのはいいが、いい大人だろう? 店の前で騒ぐこと、もといプロレスごっこはしないでくれ」

「「はい、反省してます……」」

 

 

先生に怒られた。

何で私まで怒られなきゃいけないのよぉ……そこのリス笑うな!

そもそも、未成年飲酒してる少年を正しき道に戻すために前回のように逃げられないように関節技が必要だったんだよ、正義は私にある!

よし、そう思ったら何だかクヨクヨしてるのが馬鹿らしく思えてきた!

 

 

「よぉしー! これで反省は終わり! さぁてと、少年、えっとカズマ君であってるよね? ヨシさんの顔に免じて先の素行は許して進ぜよう!」

「カズマです。一応言っとくが俺は18で少年じゃない。それに暴力振るったのはそっちだ。よろしくどうぞ?」

「私17だけどタメでいいよ? ってことでこれからよろしくぅ。せんせー仲直りの印にスペシャル大盛りで!」

「ぐほぁ……!」

 

 

カズマ君が何か渋い顔してるし先生も過労で倒れそうなふりしてるけど無視無視。

それに私たちはこれから話し合わなければならない重要なことがあるのだ。

 

 

「へい、たきなカモォンヌっ!」

「変な呼び方しないでください」

「そう言って何だかんだ来てくれるたきなのことスキー!」

 

 

たきなの特大ため息。

呆れと冷たい反応されるとションボリつらいよう……

でも頑張り屋さんのたきなが好きなのは本当だし抑えきれない私の思いが表現の自由に則っただけだから!

 

 

「……それで何ですか? 食い逃げ犯が皿洗いのバイトをうちですることになったって話ですか?」

「食い逃げじゃねぇよ!」

「ちょ、ま、バイトって何よ? 無銭飲食だから体で返せってこと? さっきのアレは私の冗談で……」

「いえ、昨日店長が新人を雇うって言ってましたよ?」

 

 

何それ初耳なんですけどー……

自然にバイトする方向になってたけどたきなは知ってたの!?

また私だけ仲間はずれか!?

 

そうとなれば私も手段を選んでられっかって!

先生には罰としてこの100円分お食事券強制無料配布キャンペーン期間の延長を申請する!

 

 

「昨日店長が私たちの目の前で言ってましたよね? 新しいパートさんが入るって」

「あ、アレぇー……? そ、そうだったかなぁー……?」

「……また聞いてなかったんですね」

 

 

私はつい最近も同じようなことあったなぁ……と気まずくて目をフイっとそらした。

学習しません(アホなんです)ね……」みたいな冷ややかな視線の暴力が痛い!

 

 

「それとカズマさんでしたっけ?」

「はいカズマです」

「先ほど物騒とおっしゃってましたが、確かに今思えば先日の件なら少々申し訳なかったとは思いますが今の時代、いつ何時変質者が現れてもいいように護身用の武器は必須です」

「護身用!? 過剰武力じゃ……」

「護身用です」

「………………そ、そーですよねー! 俺は最初から知ってましたよたきなさん!」

 

 

たきなの敬語と圧、それから拳銃(どっから出した!?)を頬にグリグリ押されて、敬語で受け答えする年上。

後でたきなには銃の携帯はリコリス制服の時だけにするように言っておこっと。

カズマ君は一般人……銃弾避けるし私たちから逃げられるし……ではないけどそれでも簡単に武器は出しちゃいかんって教えないとね!

 

 

「わかればいいんです。犯罪行為……ではありませんがお互いに見なかったことにしましょう」

「そうそう! お互い平和に、そして友好的にいきましょーう!」

「……何か譲歩してあげるみたいな雰囲気で騙されそうになったけど、初っぱな手出してきたのはそっちだろ!? 俺は前科にはならないから別にその提案に乗んなくてもいい気が……」

「ああ、あそこにいる刑事さんと繋がってるから~(私たちの存在は国が勝手に揉み消すんでぇ)深く考えないでね?」

「ふーん……何それ怖い!?」

 

 

私が手を振ると手招きしてくる阿部刑事。

 

 

「千束ちゃん、こっちに来て一緒にボドゲしないかい? クルミちゃんが強くて強くて……どうかおじさんたちのカタキを……!」

「しょーがないなぁ、このじゃんけん無敗の千束さんが加勢してあげましょー!」

「今なんて? 無敗!?」

「ってことで私は仕事に戻んなきゃなんで新人後輩の指導は任せたー! とう!」

 

 

後ろの方で後輩二人が騒がしい。

さっきまでかな~り険悪な状態だったけど仲良くなってくれたならよかったよかった……

 

こんな感じでリコリコに新しい働き手がやってきたのだ!

きっとこれから私が先輩風ブイブイ吹かせて、尊敬されるんだろうなぁ……ニヤニヤが止まんないねぇ!

 

 

 

 

数時間後……

 

 

 

 

「いいですか? ここは、こう、角度が肝心ですので……」

「おおっ、スゴいですたきなパイセン! 遊び歩いてるどっかの先輩とは格が違う!」

「いえ、私もまだまだです。それに佐藤さん、教えたばかりなのに器用ですね。私も負けてられません、新人同士励んでいきましょう」

「はい!」

 

 

うん、仲良しでよろしい!

どっかの先輩……きっとミズキのことだろうけど、私としても年長者の自覚を持ってちゃんとしてほしいもんだよ、まったく……

というか一体何作ってんの!? ソフトか!?

 

ま、まあ、できる先輩ってのは後輩が困ってるときに早速とサポートする奴だってことよ!

ふふっ、できる後輩を持った先輩はツラいぜ……

 

 

もっと尊敬されるはずだったのに、何か私が思ってた展開と違うんだけど。




書き溜めがなくなりました。書けたら投稿します。
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