このリコリスのパンツにスティールを!   作:桃玉

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続きのたきな視点です。


この後輩の衣類に洗濯を!By たきな

あれは先程起きた悲惨な事件。

まさか後輩が……

 

 

「なぁにしょんぼりしてんのぉ! あれはたきなのせいじゃないよ……」

「ですが! 私を庇ったばかりにこんな……!」

 

 

千束に励まされても、床に倒れている辛そうな表情をしているカズマを見ると気は晴れない。

私と出会ったときに見せてくれた銃弾をも回避する瞬発力ならあんな被弾をすることもなかったはずです……

それが、私が近くにいたせいで……

 

 

「たきな……千束の、言う通り、防ぎようのない、事故……だったんだ……。笑ってくれよ、千束みたいに。笑ってればいつか、笑い話になるから……」

「カズマさん……」

 

 

息を絶え絶えに、肌を血色に染め上げ、見るも耐えない姿になっている優秀な後輩が泣きそうな目をしながら私に儚く笑いかけてくる。

近くに駆けつけてくれたクルミもカズマの様子を見て、あまりの出来事に堪えられず、口元を隠し、涙を見せた。

 

 

「カズマ……お前ってやつは……ずいぶん派手にやられたな……」

 

 

千束もクルミも肩を震わせている。ですが、それは仕方のない事なのかもしれません。

だって、まさかカズマさんの……

 

パンツがビショ濡れになってしまうなんて。

 

 

「こんな辱しめを食らうくらいなら、クッ、殺せ!」

「だぁめだよ簡単に死にたがっちゃあ! ……フフッ。まあ、事後カズマは現場検証のために写真に納めさせてもらいまぁす」バシャシャシャシャ……

「こんな姿を見て楽しいか! 笑いたきゃ笑えええ!! あと写真はらめぇ!!」

「あ~っはっははっ! ひぃー! 腹が捩れちゃう! 私らを笑い殺す気か、もぉう涙出てきたんだけどぉ……  自称大人のカズマくぅん? おもらししちゃったんでしゅかー? ブハッ」

「誰がそこまで人を小馬鹿にしてバカみたいに笑えって言った!? てか見てたろ!? 俺が『覚悟しやがれ!』って言った瞬間、驚いた酔っ払いのブドウジュースがかかったの見てたろ!」

 

 

……本当にこんなことになってしまって申し訳なく思います。

いくら原因の大元がミズキさんだからと言って……よりにもよって千束とクルミがいる前で不覚にもこのような失態を犯してしまうとは……

この二人ならふざけてカズマをいじるってことは想像の範疇だったのに回避できないだなんて、私なら回避できたはずなのに一体どうして……

いくら自分のせいじゃないから気にしなくてもいいと言われたとしても、予想通り千束がアホなことをやっていますし、かなりの罪悪感を覚えてしまいます。

 

 

「でも何だってそんなおもらし……ブフッ。股関のとこだけ被弾して……ブフォッ!」

「こ、小刻みに笑うんじゃないロリっ子! 俺は老若男女平等主義の和真さんだ! いくら非戦闘員の子供だからって手加減してあげると思うなよ! テメェらは後でこの恥ずかしさの方がまだマシだって思える辱しめをしてやる!」

「じゃあ、その気力を殺ぎとってやる~! クルミ! 証拠写真をプロテクトー!」

「任せろ!」

「や、止めろ!? 俺はドMでも何でもないんだ! マジで止めろくださいお願いします!」

「私、布巾とって来ます……」

「ああっ、待って! 助けt」

 

 

あのヒートアップした二人の勢いを止めることは誰にもできないので、私は断末魔を聞き流しながら自分にできる償いに取りかかろうとその場を離れました。

具体的に言うと床や仕事着にかかっているブドウジュースをシミにならないうちに拭きとったり、シミになってしまったら染み抜きをしたり……

……決してあの二人に関わったら面倒臭いことになると思って避難したわけではありません。

 

それにしても何だかんだ言ってカズマさんも元気になってきましたね……

この千束が始めた変な元気付け方も一定の効果はあったという事実に驚きです。

 

 

「店長、お風呂沸かせますか? ミズキさんがジュースをこぼして、カズマさんがそれに被弾したので。私が洗濯や掃除はしておきますのでそちらはお願いしたいのですが……。それと下着も濡れてるはずなので替えがあれば……」

「ああ、わかった。しかし、たきなは今回何も悪いことしていないじゃないか。年ごろだろうし全部私やミズキに任せてくれても……」

「いえ、洗濯くらい問題ありませんし、酔っ払いに任せるより私自身が罪悪感を晴らすためにやりたいので……」

「そうか。洗剤と重曹は洗面台の下だ」

「わかりました!」

 

 

私は急ぎ足で洗面所の方へ向かい、洗濯用具を取り出す。

洗濯する準備ができればあとはカズマの染みつき作業着を私に渡してもらうだけです。

……一刻も早くシミの対処をしないと落ちるものも落ちなくなってしまいますのでバケツに重曹の準備をし終えた私は早足でイエスキリストの血(赤ワイン、もといジュース)がぶちまけられてる現場に急行。

そろそろあの二人とのケンカ(?)も終わっていることでしょうと思っていたのですが……

 

 

「……ィール!!」

「ああああッッ!! 今どうやって奪った!? 不味いぞ千束、ボクのタブレットが盗られた!! っておい! 精密機械だぞ、乱暴に扱うな!」

「うるさあああいッッ!! こんなものぶっ壊せば証拠隠滅できるんだ……ってかたっ!? 床に叩きつけてもヒビ一つないとかおかしいだろ!」

「かかったなマヌケ! ボクの特別製タブレットは銃弾でもなかなか壊れない強度だ! そもそもそれを壊したとして既にボクの作ったネットワークに送信済みだ!」

「さっすがクルミさん! 私にできないことを平然とやってのける!」

「そこにシビれねぇし憧れねぇ!! ってかナニ人の痴態ネットに晒してんの!?」

「安心しろ。世間には、まだ、流してない」

「まだ!? いつか予定あんなら取り消せください!」

 

「……まだやってたんですね」

「た、たきなさん! 助けに来てくれたんですか!」

 

 

呆れ半分でぼそりとつぶやくと綺麗な土下座を披露してた後輩が首をもげそうなほどの勢いでこちらに向け、希望を見つけたようにうれしそうに見つめてきた。

 

 

「別に助けに来たわけじゃないです。それより今、店長がお風呂の準備をしてくれています。汚れてしまった服を放置しておくと落としにくいシミができてしまいますので、お風呂入るついでに脱衣所のかごに服を入れておいて外に出しておいてくださいください。洗濯したいので」

「つ、ツンデレたきな先輩! 今ならわかる、ツンデレは良き文化だった!」

「つんでれ、ですか……」

「ああ、知らなかったらそれでいいんです。素っ気ない風に見せかけて実は俺のことを気にかけてくれていて、その尖った態度は優しさの裏返しだってわかってますから!」

 

 

……この人は何もわかってない気がします。

つんでれという言葉はあまり聞き馴染みがないため意味はよくわかりませんが、面倒くさいことになる前に逃げようとしてカズマを見捨てた私が優しいとは思えません。

それに今私が一番気にしているのは洋服のシミです。

 

 

「立てますか? その場所も濡れているので拭きたいのでどいていただけると助かります」

「と言いつつ手を差し伸べてくれるあたり……もしかして……!」

「もしかしてって何がどうしましたか?」

「い、いやお構いなく……!」

 

「? とりあえず先ずは浴室の方へ行きましょう。私、店長からタオル受け取ってきます」

「お、おう……そこまで面倒見てもらわなくても」

「いいえ。こんなことになってしまった一因は私にもあります。何かしないと気が収まりませんし、掃除洗濯くらい任せてください」

「じゃ、じゃあお任せしようかなぁ……?」

「そうしてください。着替えの間に床を拭いていますので」

 

 

そう言いつつ布巾を見せつけ、後輩を退かせる。

それにしても後輩のお構いなくとはどういう意味だったのでしょうか……

常に奇想天外な千束は何考えてるのかわからないときがよくあるのですが、私と同じ常識人なカズマさんもたまに何考えてるかわかりません。

私が常識はずれなわけはないと思うのですが少々不安になってします……

と思っていると店長が。

 

 

「たきな、やること終わったら買い出しを頼まれてくれないか? さっきカズマがあんこと牛乳を使い切ってしまったみたいでな。本当は千束に頼みたかったんだが……」

「何かよくわかりませんが忙しそうですね……わかりました、後で代わりに行ってきます」

「頼んだ。もし千束が暇になったそのときは存分に顎で使ってやれ。それと何を買ってほしいかは鞄にメモを入れておく」

「はい、了解です」

 

 

私と店長が千束の方を見ると、先程までケンカしていた三人が寄り集まってコソコソと何か話始めていました。

しかし、どうせ私が聞いてもよくわからない碌でもないことでしょうし、カズマさんが脱衣するまで無心で布巾にブドウジュースを染み込ませてはバケツに絞る作業に集中することにした。

 

床掃除の後は洗濯して、それから買い出しですかね……




短編って言っていい量じゃなくなってきましたので連載に変更しました
次回こそカズマのスキルをパンツに……!
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