え?前話投稿した時お気に入り70だったのに!?
どんどん増えていくお気に入りや評価に驚きしかありませんでした
本当にありがとうございます!
「………ん」
カーテンの隙間から伸びる日光が目にかかり意識が覚醒する。
良く寝れていたがまだ寝足りないのか、気を抜けば微睡んでしまいそうだ。
ベッド近くの時計を手繰り寄せ時刻を見ると午前九時。
そろそろ起きないとな。
「フフッ、おはようございます。ツツヒコさん」
静かだが自然と耳に入る声がする。
顔をその方向へ向けると、そこには眠そうな俺を見ながら面白そうに小さく微笑んでいるハルナがいた。
やっぱり顔立ちの美しさと醸し出す優雅さにこんな殺風景な部屋でも絵になるな、と思う。
チープな表現だが、日本だと百人中百人は振り返るだろう。
そんな美少女が目と鼻の先にあるとは役得だな。
俺の顔はまだ眠そうなのだろうか、ハルナは少し首を傾げる。
「ツツヒコさん、まだ少し眠たい様ですわね」
「あぁ………悪い、ハルナ。机の上にあるスマホを取ってくれないか?」
「これでしょうか?」
「すまん、ありがとう」
上半身を起こして、スマホを取ってくれたハルナに感謝しつつ操作する。
眠気で頭が回らないが目的のサイトへ繋げる。
お、この電話番号だな。
さて、俺がやる最適解は──
「もしもし、ゲヘナの風紀委員会でしょうか?美食研究会が現れました」
──不法侵入者の通報だ。
俺の渾身の電話はハルナが俺の秘宝(エロ本)を人質に取った為、徒労に終わった。
まぁ、ブラックマーケットにまで風紀委員会が来るとは思ってないが。
寝室から出ると美食研究会のジュンコ、アカリ、イズミがリビングでくつろいでいた。
「あ、おはよう、ツツヒコー」
「お邪魔してます☆」
「あはよー、ハンバーガー食べる?」
「毎回言っているが人の家でリラックスしてんじゃねぇよ、テロリスト共」
あのオークションの一件からこの部屋に美食研究会共々逃げたのが運の尽きだった。
それから奴らはここを緊急の避難場所として利用しており、いつの間に侵入している事なんて日常と化していた。
コイツら見た目は本当に美少女だし、そんな美少女が俺の家に居るという『これ何と言うラブコメ?』みたいなシチュエーションなんだが…………
コイツら、テロリストだもんなぁ………
「あ、起きたんだ。軽い朝食できているけど食べる?」
「いただきます、フウカさん」
キッチンからは空腹を刺激する様な匂いが漂っており、いつも通り拉致られて来たフウカさんが皿に乗った朝食を見せてくれた。
おにぎりに卵焼き、ウインナー………
ほー、こういうのでいいんだよ、こういうので。
「いつも拉致られてここに来ているから疑問に思うんだけど、何で私にだけ敬語なの?」
「母ちゃんから『自分の為に飯を作ってくれる人間は崇め奉れ』と教えられたので」
「どう言う教育環境か知らないけどアンタのお母さんはヒエラルキー高かったんでしょうね」
どうだろうか。
母ちゃん………両親と過ごした時間は短いから、今では記憶が薄らとしかないけど、多分幸せな家庭だったと思う。
二人の顔を思い出して嫌な感情なんて湧かないからな。
「あ、そうだ。アレ、勝手に直したんだけど」
「ん?お、ぉおおお!?おぉ!?」
フウカさんが指さした方向を見て、俺は変な声しか出なかった。
そこには渦巻きの校章が付いた学ランが。
宿儺との戦いによってボロボロになった高専の制服が殆ど新品な状態でハンガーに掛けられているではないか。
「前にそれを見てため息吐いてるのが気になったから、素人なりに直してみたんだけど…………って何で土下座してるの?」
「フウカ様………一生付いて行きます………!あ、お疲れではないですか!?俺、ちょっとコーヒー買って来ます!!無糖派ですか!?微糖派ですか!?」
「ちょっ、止めて!普段からそんな態度取られてないから慣れないし、申し訳ないから!!」
「むぅ、ツツヒコさんとフウカさんの距離が近い様な………」
「いや、アレは一方的な崇高に困惑している光景かと思います☆」
「ハッ、ハッ、ハッ」
ビルの間を縫う様に逃げる。
いつも着けているガスマスクが呼吸の邪魔をし、煩わしく思う。
何処に逃げるか。
そんなの分からない。
ただ道が続く限り走るしか出来ないのだ。
どうすればいいのか。
“アレ”には銃が効かない。
まるで粘土細工の様に弾が埋まるだけだ。
とりあえず今は逃げないと。
始まりは花屋に並んだ花を見ていた時だった。
視界の端に黒い靄が写った。
ちょっとした目の異常なのだろうか?
瞬きを何度かしたり、目を擦ったりしても、それは晴れない。
ただの幻視だろうか。
そう思っていた。
しかし、それは時間が経つ毎に大きくなり、やがて形を作っていった。
芋虫のようなブヨブヨとした体に無数の手足が生えており、百足のような嫌悪感に襲われる。
胴体から首に近づくほど細くなっており、その顔は埴輪の様に穴が顔のパーツを作っていた。
地面にまで伸びた女性のような艶やかな髪を引き摺りながらが私を見ると──
「み、みみみみつけたぁ………ととととうとき血血血血血血血血…………」
──おどろおどろしい声で埴輪の顔を歪まして笑っていた。
これは関わってはいけない存在だ。
私はビルとビルの間へ脱兎のごとく逃げ出した。
それからは我武者羅に後ろを見ずに走ったが、撒けたのだろうか?
ゾクリッ
背中に氷嚢を突っ込まれた様な悪寒。
そして、ねっとりとした絡み付く視線。
曲がり角からアレが来ると言うのが嫌でも分かる。
振り返り銃を構える。
例え、奴にこれが通じなくても現状を打破しない事には何も変わらない。
心音が大きく体内で響き、呼吸が荒々しくなってしまう。
しかし、化け物は現れない。
逃げた?
いや、悪寒が止まらない。
奴は近くにいる。
吐息が耳にかかった。
「むむむむ、むだぁ」
「あァッ!?」
突然、強い握力で捕まれビルの壁に押し付けられる。
カエルのように壁に張り付いた化け物は胴体から生えた無数の腕で私の四肢を拘束し、フードに包まれた頭を握りつぶさんばかりに鷲掴みにされる。
「ハッ!ハッ!ハァッ!ハァッ!」
「ちちちちち血を!のみたいのみたい!!」
vanitas vanitatum, et omnia vanitas
──全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。
どんな人間に銃で殺されても、どんな兵器に無様に蹂躙されても、その先はただ虚しいだけ。
だから、殺される覚悟もあった。
「………い………や………皆………」
でも、でもこれは違う。
こんなのは嫌だ………!
「ギィィィィィィィイイイ!?!?」
突然、悲鳴をあげる化け物。
拘束を解かれた私は一瞬、呆気に取られてしまった。
目を白黒させている私の目に入ったのは痛みに奇声をあげている化け物の姿があった。
私を掴んでいた化け物の両手には無数の穴が貫通しており、そこから紫の体液がボタボタ、と零れ落ちている。
「何で
「…………!」
私の前に現れたのは鋼鉄の如き筋骨を学ランで覆った男だった。
不敵な笑みを浮かべ腰を落とし、拳を音が出んばかりに握り締めながら構える。
「お、おおおまえ………!?」
「久々の”本業“なんだ。ガッカリさせてくれるなよ?」
瞬間、男は化け物の懐に潜り込み、骨太な拳で顔面をぶん殴った。
埴輪の顔に拳がめり込み、巨躯が空中へと舞う。
襟元に付いた渦巻きの校章が鈍く光った。
筒彦の制服は学ランは前を開けて、中に黒いシャツを着ています。ズボンはボンタンの様にゆったりとしてます。
そこまで改造はしてない感じです。