ちょっと要約が多い回になりそうです。
見にくいかもしれませんが、よろしくお願いします。
銀行に金を下ろしに行ったら銀行強盗に巻き込まれた件について。
ブラックマーケット唯一の花屋の前で久方ぶりのアツコちゃんが居たので少し談笑していた。
アツコちゃんはここから『少し遠い場所』に住んでおり、友達との『お使い』でしか来れないらしい。
花とは縁遠いがバラを見ると色んな意味で笑顔が素敵な後輩女子である釘崎が連想される。
前に真希と釘崎のスカートをパクり五条先生と履いて悠仁に一発芸を見せたっけなぁ。
その後、ひっそり返しに行ったら見つかって笑顔で前が見えなくなる程ボコボコにされた事──五条先生はいつの間にか消えてた──は頭から振り払う。
あの呪霊を祓った後、アツコちゃんは呪霊とは会っていないみたいだ。
うーむ、あの呪霊は偶然、負の感情が重なって生まれてしまったと考えるべきか………
だが、そうなると生徒達から漏れる正のエネルギーに近い『何か』で満たされた世界に何故生まれてしまうのか疑問が残る。
何れにしろ、アツコちゃんが酷い目に会ってないだけマシか。
あの時渡した呪力で満たしたマガジンはまだ持ってくれていた。
そのマガジンを『大事な物』とギュッ、と抱き締めてくれる姿にお兄さん思わず鼻血が出そうになったよ。
閑話休題。
そんな幸せいっぱいな気持ちでアツコちゃんと別れ、金を下ろしに銀行に入る。
『あー、今日は良い一日になりそうだなぁ』なんて思ったら突如として辺りは暗くなる。
そして、続くように入口が爆発で吹っ飛び、複数人の目出し帽を被った生徒達が突入して来た。
「全員、動かないで!」
「ん、手を後ろに組んで腹這いになるべき」
「はーい、皆さ〜ん、言う事聞いて下さいね♬」
「うへ〜、既に外部との連絡は切ってあるから抵抗は無駄だよ〜」
「ど、どうしましょう………」
「おおぅ、本物の銀行強盗だぁ………」
前の世界では遭遇しなかった、と言うか遭遇してはいけない存在に出会い、俺の脳は麻痺してしまった。
カメラの死角とか外部への連絡手段とか警報装置の場所とか把握してる所を見ると彼女達は念入りに計画していたのが分かる。
だとしたらブルーとかクリスティーナとかファウストとか、もうちょっと設定しっかりしろよ。
さて、どうしようか………
呪霊じゃない上に俺に直接的な被害が出る訳でもないし、放置でいいか(無慈悲)。
ここにいる客なんてどうせろくな奴らじゃないだろうし。
ふと、視線をブルーからずらすと、コートを肩にかけた生徒がまるで憧れの人間を見つけたかのようにキラキラした目をブルーに向けていた。
せ、先生、この子、犯罪者に憧れているよ!?
早く指導した方がいいんじゃない!?
この場にいない優男の顔を思い浮かべて縋るように銀行の出入口を見ると電柱に隠れている見知った背広の男が。
それを見つけると同時に銀行強盗は華麗に退散。
肩コートの子も追うように銀行から飛び出して行った。
辺りが騒々しくなる中、俺もそそくさと抜け出して連中を追い掛ける。
マーケットガードが封鎖した区間を抜け出し、先にある歩道橋で肩コートの子が強盗団を呼び止めていた。
「銀行の襲撃、見させてもらったわ………ブラックマーケットの銀行をたった5分で攻略して撤収。稀に見るアウトローっぷりだったわ。あまり上手く言えないんだけど衝撃的と言うか感動的と言うか………」
肩コートちゃんはそれはもう推しに出会ったかのように言葉を捲し立てる。
そして、強盗団は『なんだコイツ………』みたいな表情をしていた。
「最近、ブラックマーケットの傭兵達が殆ど謎の賞金稼ぎに捕まって人数不足で襲撃に失敗したけど、私、挫けずに頑張るわっ!貴方達みたいな本当の自由を持ったアウトローになりたいから!」
…………何か、ごめんね?
俺もさ、生活があるからさ………
強盗団もとい覆面水着団が夕日に向かって──まだまだ日中──走り出したので、深い息を吐いて余韻に浸っている肩コートちゃんを追い越して、更に追い掛けてアビドス自治区の手前でやっと追い付いた。
向こうも俺に気がついたのか警戒したが、その中にいる先生は『あっ』と声を出して気まずそうにしている。
俺は色々な感情を込めてジト目で先生を睨み付けた。
「言いたい事は山ほどあるが………何してんだ、アンタ………」
「えーと、強いて言うなら成り行きかな」
「成り行きで銀行強盗…………?」
一応アンタ先生だよね?
普通、止める側だよね?
流石のろくでなしな五条先生でも銀行強盗は止めるよ。
止めるよね?
「あり?先生の知り合い?ヘイローの無い男子生徒って珍しいね」
俺が先生と顔見知りなのが分かったのか覆面水着団は構えていた銃を下ろした。
「あ、どうもー。先生の知り合いの真茅 筒彦です。この中で見知った顔だと、そこの猫耳さんかな?」
「あ!前に先生とトイレで暴れてたお客さんじゃない!」
「その言い方、語弊生みそうだなぁ!?」
「はぇー、成程な。自分達の返済した金が闇銀行に流れていて、集金記録を抑えるべく銀行強盗したと………何で?」
「これが手っ取り早かったからねぇ〜」
「手っ取り早いから銀行強盗って………アビドスパネェ………」
事の顛末を聞いたがやっぱり疑問しか浮かばなかったです。
覆面水着団もといアビドス高等学校の生徒達と簡単に挨拶を交わして、今はアビドスへ戻っている最中である。
「非行に走ったとかそんなのじゃなくて良かったわ………それにしても──」
俺の視線は小鳥遊ホシノから少し後ろにいるトリニティ総合学園の阿慈谷ヒフミに移った。
「トリニティって生粋のお嬢様学校だと思ってたのに意外とはっちゃけるんだな」
「え!?こ、これは違うんです!私、普段はこんなのじゃないんです!」
「そうだよ、ヒフミちゃんことファウストは表では大人しいトリニティ生を装っているけど、裏ではキヴォトスの転覆を虎視眈々と狙う『覆面水着団』のリーダーなんだ〜」
「ファウストパネェ………」
「誤解です〜〜!!!」
ここからの話を要約すると、アビドス高校が借金していたカイザーローンはアビドスから利息を受け取ると、その一部をカタカタヘルメット団に流していた事が集金記録から分かった。
つまり、カタカタヘルメット団が資金提供を受けていたのはカイザーローンの親元『カイザーグループ』だったわけだ。
その後、ファウストもとい阿慈谷はトリニティの首脳陣にこの事を報告しようとしたが恐らく知っているだろうし何もしないだろう、と言うのが小鳥遊の判断で断念する。
政争の事はよく分からんが、確かに他の自治区の問題に介入するのは逆に自身の自治区に問題を起こすようなものだな。
そのまま阿慈谷とはお別れとなり、巻き込まれた俺は未だにアビドス高校に居た。
まぁ、この事態に自分の意思で入ったわけではないので放ってもいい。
しかし、ここまで聞いておいて、このまま見て見ぬふりをして帰るのも後味が悪過ぎる。
めちゃくちゃ中途半端な立ち位置である事に少し悩んでいた。
砂塗れの屋上には良さげなベンチあったのでぼー、と座る。
アビドスの人が居ない砂に埋もれた住宅街を眺めながら対策委員会の様子を思い出していた。
真面目な話の中でちょっとしたお巫山戯を入れる光景はウチの学校と似た感じがした。
借金やら自治区やら政争やら、そんなのを取り除くとやっぱり彼女達は学生なんだな。
そう考えていると屋上のドアが開かれ銀髪と犬耳、瞳孔の色が違うオッドアイが特徴的な女の子である砂狼シロコが入ってきた。
「真茅先輩、ここにいたんだ」
「砂狼、だったよな。今後の話は明日にするんだろ?…………あー、俺が居座り過ぎたな」
ろくに素性の知れない人間が自分達の学校を歩き回っていたら警戒するか。
立ち上がろうとするが、砂狼は首を横に振る。
「ん、別に居ててもいいよ。先生の知り合いなら悪い人じゃないと思う。後、私のことはシロコって呼んで」
「じゃあ、俺も筒彦でいいよ。年下からはよく呼び捨てにされてるし」
砂狼もといシロコは俺の隣に座る。
「初めてアビドスに来た時は砂に覆われていない場所を歩いているから分からなかったが、こう見ると結構砂地の面積が多いな」
「年々、砂漠化が進んでる。この校舎も元は別館だった」
「そっか。借金問題あるし、土地の問題もあるのか………」
確か借金は9億あるんだっけ?
少なくとも俺達が生きている間に返せる金ではないのが分かる。
と言うか利子で精一杯だよな。
だからこそ、少し気になってしまう。
何故、彼女達は今でもこの学校に居るのか。
「凄く嫌な事を言うかもしれないけどさ、この学校に拘る理由はあるのか?学生なのに借金塗れの青春なんて嫌だし、それこそ他の学校に移る選択肢だってあるだろ」
俺の失礼な質問にシロコは少し考えると、ポツリポツリと話し出した。
「ん、毎月の利子を返すのは大変。賞金首を倒すにも弾薬がいる。その間にも砂漠化は進んでいる。だから、その選択肢を取るのは簡単だと思う」
シロコは懐かしむ様に首に巻いている青いマフラーに触れた。
「でも、この学校が無かったら、今の私は居なかった。ホシノ先輩やノノミ、セリカ、アヤネにも会えなかった。先生にもヒフミにも──そして、ツツヒコにも」
シロコのオッドアイが俺の双眸と合う。
そして、少し微笑んだ。
「この場所が私達のたった一つの青春の場所。だから、絶対に手放せない」
その言葉にハッ、とさせられ、勘違いしていた事に気づく。
俺の世界での学校は教育施設と言う認識だ。
だが、彼女達の学校は一つの国『故郷』に近い。
思い出が詰まった場所を捨てるなんてできない。
彼女達の居るべき場所、帰るべき場所はここなのだから。
「悪ぃ、ナンセンスな質問だったな」
「ん、気にしてない。ツツヒコの学校はどうだったの?」
「え、俺の学校?………学校ねぇ………」
中学生の時は五条先生に連れ回されて任務の毎日だった。
そして、高専では凡そ普通の学生生活は送っていなかった。
学生は手と足の指で数える程度しかいない。
やる事は少しの座学と体の鍛錬や呪霊を祓う、青春なんて縁遠い事ばかりだ。
だけど、その中にあるちょっとした平和が身に染みる。
戦う事が多い分、自由を謳歌する。
そんな奴らが集まった様な学校だ。
思い出せば笑顔の皆の姿が浮かんでくる。
少し、胸にぽっかりと穴が空いたような感覚がした。
「ツツヒコのその顔で分かる。ツツヒコは楽しんでいた」
「やめてくれよ、シロコ。ちょっとホームシックなんだからよ」
「ん、大丈夫。ここには私しか居ないから泣いていい」
「いや、泣かないからね」
「嘘!ちょっと目が潤んでいた!」
「何で急に声大きくなるの!?」
この子、意外とお茶目なのかもしれない。
暫く泣いた泣いてないと言う水掛論を繰り返し、少し息を整える。
「うん。君達を見て既視感を感じてたのが分かったわ。似てるんだよな、俺が居た所にさ」
少人数で、授業らしい授業なんて無い、何かに奔走する、そんな毎日。
でも、皆、笑っている。
それが分かったら俺の腹は既に決まっていた。
「シロコ、これは俺の勝手な善意の押し付けだ。拒否してもいい。それでも許してくれるなら、君達の借金の問題、俺も手伝わせてくれないか?」
「いいけど………急にどうして?」
「んー、俺の学校の先生曰く『子供から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ、何人たりとも』ってやつかな?」
俺はもう、嘗ての仲間との青春は送れなくなった。
でも、彼女達は違う。
彼女達の青春はまだまだ続いていく。
だから、それを途絶えさせたくない。
自分の後輩を呪ってしまった無責任な先輩の俺だが、それでもこの光景は護っていきたい。
「ん、ツツヒコもまだ子供」
「そこ揚げ足を取られると困るなぁ」
筒彦「………抜き足差し足忍び足………抜き足差し足忍び足………」
五条「大丈夫だって。この時間、皆、鍛錬してる時間だし」
筒彦「ここまでやってて何だけど、女子の服盗んでる時点で大罪だから──ッッ!?」
真希「犯人は現場に戻って来るって噂、マジだったんだな(游雲ブンブン)」
釘崎「真茅せんぱーい、焼死?溺死?感電死?好きなの選んでいいぞ、このクソ野郎(ハンマーブンブン)」
筒彦「こ、これは元々、五条先生が提案して………って居ねぇ!?」
この後、めちゃくちゃ簀巻きにされた。
(同じく簀巻きにされたパンダと狗巻の隣で)