ルギア、拾っちゃいました。2   作:じゅに

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第9話 好きこそ物の上手なれ。

 

 

 

 

 グズマと俺は数メートルの距離を置いて向かい合った。ほとんど同時に手持ちを喚びだす。

 

「行ってこいデンヂムシ、アメモースっ!」

「遊んでこいカブトプス(カブルー)アマルス(ゴーシェナイト)!」

 

 種族も姿形も様々なポケモンが4体、フィールドに降り立った。

 

「キルルルルルィッ!」

 

 空中を飛ぶアメモースが大振りな羽を震わせると、ゴーシェがたじろいだ。アメモースの羽には滲んだ楕円形の紋様があり、巨大な瞳のように見えることがある。この模様が、対峙する相手に本能的な恐怖を植え付けるのだ。

 

「り……!」

「ぎしゅ」

 

 怖じけるゴーシェの横で、カブルーが刃を構える。我が相棒はさすが場数を踏んでいるだけあって、ただの羽模様だと看破しており、こゆるぎもしなかった。

 そんな姿勢にゴーシェも勇気づけられたんだろう。「りう!」と凛々しい声をあげ、アメモースを睨みつける。

 

「ぢーぢー」

 

 デンヂムシは四角い体躯をうごうごと蠢かせ、カブルーを見つめている。

 カブルーもデンヂムシから目を離さなかった。

 どうやら、アメモースよりもこっちの芋虫くんの方が手強い相手らしい。

 

 たしかデンヂムシは電気・虫タイプのポケモンだったはず。水・岩タイプのカブルーは極めて不利だ。一撃でも喰らえば気絶しかねない。初手で決めるか躱し続けるほかないだろう。

 

 …………それにしても。

 

(虫が好きなんだな)

 

 俺は頬が綻ぶのを感じた。

 

 虫ポケモンといえば、大抵の駆けだしトレーナーが手を出す一方、育て続ける人間は少ないことで知られる種族だ。

 

 理由は明解、弱点があまりにも多いためである。

 

 飛行、炎、岩は言うに及ばず、複合属性によっては更に弱点が増える。そのくせ、虫技が抜群に通る相手は少ないと来た。総じて育て易いが勝ち難い、それが虫ポケモンなのである。

 

 しかしグズマが繰り出してきた2体は、ちょっと見ただけでも丹精に育てられたのが分かる個体だった。心から虫を愛し、その弱さとも向き合ってきたであろうことは、火を見るより明らかだ。

 

 カブト1体で戦い抜いた子供時代を思いだす。

 

 生意気そうな面構えだが、"好き"を徹すその生き様──嫌いじゃないぜ。

 

 物思いを断ち切り、指を突きつけた。

 

「先手必勝! アクアジェット!」

「迎え撃て! スパーク!」

 

 水を噴射し突進するカブルーと、電撃を纏ったデンヂムシが肉薄する。あわや激突しかけたその時、カブルーが片手の鎌を床に突き立て、くるりと身を翻した。デンヂムシの体当たりが虚しく行き過ぎる。その正面には、凍てつく息吹を口いっぱいに溜めたゴーシェが待っている! 

 

「ぢぢっ!?」

「凍える風!」

「させるか! 吹き飛ばせ!」

「キルルルルル!」

 

 アメモースが激しく羽ばたき、突風を生み出す。ゴーシェの冷風はみるみる吹き散らされた。

 デンヂムシは突風に乗り、思いかげない速さでゴーシェへ迫る! 

 

 ヂュバヂヂヂヂヂッ! 

 

「りううぅうっ」

 

 電撃(スパーク)が炸裂し、ゴーシェが苦悶の呻きをあげた。

 

「いいぞデンヂムシ! そのまま痺れさせちまえ!」

「おーおー威勢がいいねえ。いいのか? アメモースがピンチだぞ」

「なにっ!?」

 

 グズマが目を見開く。慌てて振り向く少年の視界に映ったのは、相棒の真上から音もなく降り注ぐ岩の雨だった。

 

「岩石封じ!」

「キルルーッ!?」

 

 カブルーが降らせた岩石でアメモースを岩の檻に閉じこめる。直撃こそ避けたようだが、岩の隙間はごく狭い。脱出はおろか羽を動かすことも出来ないだろう。

 

 これでもう、アメモースは戦闘不能だ。

 

 仲間を封じられてデンヂムシが動揺する。ほんの僅かに電撃が弱まったところを逃れたゴーシェが、怒りを冷気に変えて解き放った。

 

「りうううううっ!」

「ぢ、ぢぢぢっ!?」

 

 大気中の水分を凍らせて作った氷の礫が容赦なく貫いてき、デンヂムシはぐったりと伸びてしまった。

 

 グズマは呆然と突っ立っていたが、やがて悔しそうに目を背けた。

 

「くそ……っ。オレの負けだ」

 

 カブルーとゴーシェが、こつんと額を重ね合わせた。

 

 

⋈ ………………………………………… ⋈

 

 

 その後、俺は順当に勝ち進み、ゴミ箱を漁りまくってスイッチを見つけ、扉を片方開けたと思ったらまた閉めてしまい、再びゴミ箱を漁り、なんとかジムリーダーとの勝負も制した。オレンジバッジならぬだいだいバッジなるパチもんを授与されたのは笑ったが、親友へのいい話のタネが出来たと思い、ありがたく受けとっておく。

 

 建物を出、さてお次はどこに行こうかと大通りを歩きながら悩んでいると、後ろから声をかけられた。

 呼び止めたのは例の虫少年・グズマだった。

 

「なあアンタ、この後どーすんだ?」

「とくに決めてねえな」

 

 実際明確なプランは立っていなかった。

 本当なら一刻も早くアローラの守り神たるカプの元に参じ、協力を仰ぎたいところなのだが、肝心の神々の居場所を掴めていないのだ。

 

 研究室から借りてきた本《四柱の産土神》によれば、カプ神は己の管轄たる島々を飛び回り、奇蹟を授けて廻るという。実に微に入り細を穿つ記録が残されていたが、カプに拝謁するための場所や儀式、手順なんかは載っていなかった。そんなものはないのか、それとも余所者に伝えてはならないとでも言われているのかは定かでない。

 

 だからまずはそれを知っている人を見つけねばならないわけだが、さてどこの誰が知っているのか、とんと見当もつかなかった。

 

「なら…………ならよ。時間はあるよな?」

「まあ、な」

 

 グズマは掌を何度もシャツに擦りつけ、足を踏み変えながら、勢いに任せて叫んだ。

 

 

「ならよぉ! 俺を弟子にしてくれよ!」

 

 

「…………で、弟子……?」

 

 

 

 思いがけない申し出に、俺はたっぷり十秒間、身動ぎもせず驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 




というわけで9話。
グズマくん弟子入りをしたがるの巻。

アローラは魅力的な虫ポケが多くて最高だぜ。
早くあのポケモンを出したい……!

良ければ感想高評価おなしゃす!
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