たまに提督。たまに暗殺教室。   作:不知火勇翔

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後書きで説明します(全力土下座)

 

 

 どこにでもある路地裏で1人、叫ぶ。

「嫌だ!!!僕は提督なんてやらない!!!」

 中学2年生の夏。僕は提督に成ることを拒んだ。

「才能が何!?妖精さんに好かれたから何!?僕にそんな器なんて無いよ!僕は提督なんてガラじゃない!」

 全てが他人に決められていた。

 高校卒業とともに鎮守府に着任し、生涯この国と艦娘に尽くす所まで。

 僕には鎮守府が『墓場』に思えていた。

 だから拒絶した。

「みんな嫌い!大っ嫌い!!!」

 天才やら何やらともちはやされた時は嬉しかった。椚ヶ丘の英雄だと言われた時は嬉しかった。しかし本当は誰も僕を見ていなかった。

 影では艦娘とズッコンバッコンするだけのクズ野郎だとか、艦娘を虐待しても何も言われない特権階級だとか散々に言われていて、僕を褒めていた連中が全員『艦娘と近づくためだけ』のために話しかけてきたのだと知った時は失望した。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」

 こんな下らないことで駄々をこねる自分が嫌いになった。勇気の無い自分が嫌いになった。

「僕は、提督になるくらいなら死んでやる!自殺してやる!」

 自分が嫌いで、自分から逃げるようにオシャレを学んだ。

 そしたら周囲の目が少しだけ好意的になったと感じたから、オシャレに傾倒した。

 でも何も変わらなかった。

 周りの皆も。僕も。僕の立ち位置も。

「みんな『殺してやる』!全部破壊して、僕も死んでやる!消えて、無くなって・・・それで・・・」

 涙が止まらない。

 立っていられなくて座り込んだら、タイミングが悪く雨が降り始めた。

「辛いよぉ・・・・・分かんないよぉ・・・・・・・・誰か助けてよぉ・・・・・・・・」

 よく分からない不快感が全身を包んでいた。

 よく分からない衝動が常に背中を叩いてきた。

 緊張か、責任感か。自分1人では整理できない感情で僕は一杯一杯になっていた。

 ・・・・・・そんな時。

 

 

 

 

 

「ヌルフフフ・・・・・・初日から登校拒否とは。確かにアナタの心情ば分からなくもないですが、あまり褒められたものじゃありませんねぇ」

 

 

 

 

 気色悪い声で、背後から誰かが話しかけてきた。

「・・・・・・放っておいてよ」

 どうせ泣きながら叫んでいる異常者を心配したのだろう。心底余計なお世話だ。

「話しかけないで。キモイ。ウザい。クソみたいな・・・」

 最後まで言い切れなかった。

 話しかけてきた奴は純粋な善意で事情を聞いてきたんじゃないか。だったら今、ソイツは最悪の顔をしているんじゃないか。もしかしたらクソみたいな自分のせいで誰かが傷ついたんじゃないか。

 その可能性が頭をよぎった瞬間、声が出なくなった。

「失礼ながら話は聞かせてもらいました。随分と悩んでいるみたいですねぇ」

 声の主は僕の腕を掴むと、強引に引っ張ってきた。思わず振り向いて背後を見ると、ソコにいたのは黄色いタコがいた。

「・・・ふぇ?」

「アナタが思うほど世界は暗くありませんよ」

「た、タコ・・・?」

「未来に望みを持てないのなら尚更、私の授業に出るべきです。君には刺激が必要で、私の『暗殺教室』ならそれを叶えられる」

「???????」

「ヌルフフフ・・・どの生徒もたいへん教えがいがあって実に僥倖。どうやら退屈しない一年になりそうですねぇ」

 そのタコは僕の顔を見ながら、不気味な笑みを浮かべていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・きゅう」

「・・・・・・・・・・・・おや?」

 黄色いバケモノに絡みつかれれるという、あまりの超常現象に。泣き叫んだ疲れもあってか僕の意識はどこかへと飛んでいった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 昨日。

 僕は恋愛対象として好きだった『冬月』さんが轟沈したことを知った。

 『冬月』さんは僕にとって掛け替えのない恩人だった。

 小学生の頃、右も左も分からない状態で鎮守府にブチ込まれた時、『冬月』さんは忙しいにも関わらず僕に対して色々と気を回してくれた。鎮守府で一番話したのは『冬月』さんだったし、『冬月』さんのために鎮守府へ通って勉強していたまであった。

 しかし思春期に成ると決められたレールが嫌になって、『冬月』さんにも反抗して、・・・・・・会わなくなった頃に聞いた訃報で僕の情緒は崩壊した。

 何もかもが嫌になった。

 深海のクソどもも。社会も。学校も。

 飛び降りたら全部が楽になると思ったが飛び降りる勇気が無くて、そんな自分が嫌で僕はどうしようもなくなった。

 その辺の路地裏に入って放浪している内に歩く気力を失って、でも奇妙な衝動だけは変わらず襲いかかってきた。

 そしたら黄色いタコが現れて、それで・・・えっと。

「おや。もうお目覚めですか?」

 声が聞こえて、目を開けると視線の先には見知った天井があった。よく授業をサボって寝ていたのでよく覚えている。あの天井のシミや木目は保健室のものと瓜二つだ。

 どうやら僕は学校の保健室で寝ていたらしい。

「???」

 何故僕がココにいるのだろうか。気絶したところまでは覚えているのだけれど・・・・・・。

 上体を起こして周囲を見回すと、保健室には誰もいなかった。あれ?と首を傾げていると、いつぞやのタコが保健室に入って来た。

「ひっ」

 外見が普通にバケモノなので僕は逃げ出そうとしたが、タコは一瞬で近づくと変なことを言い出した。

「この『艦これ改』というゲーム、大変作り込まれていますが実際の提督もこのような業務をするのですか?」

 タコがその手、というか触手に持っていた家庭用ゲーム機を見せてきた。その画面には見知った『艦これ改』の画面が映っていた。

 『艦これ改』は携帯用として大本営が発売したシミュレーションゲームである。提督としての雰囲気を実際の艦娘(の立ち絵)を指揮しながら楽しむという結構売れたゲームで、僕も鎮守府で勉強していた頃に触ったことがあるのだが・・・・・・タコが見せてきた画面にはALL99レベの艦娘がこれ見よがしに並んでいた。

 ・・・コイツ、できる!!!

 しかも『大和改』『Iowa』『筑摩改二』『扶桑改』『長門改』『浦風改』って、・・・このタコの趣味が分かりそうで何か嫌だなぁ・・・。

「・・・・・・まぁ、そうなんじゃないの?海域の情報は国家機密だから当然別物だと思うけど」

 見た目はバケモノだけど敵意は感じないし、同じ艦これゲーマーのYOSHIMIとして(艦これゲーマーは全員仲間。これテストに出るよ)答えると、タコは神妙?な顔をして聞いてきた。

「では、轟沈も同じくらい悲しいのですか?」

「・・・・・・・・・・・・はぁ?」

 艦娘の轟沈とはつまり『死』であり、『艦これ改』の轟沈も同じく『死亡扱い』となっている。

 ゲーム内で轟沈させてしまったら一生そのキャラとは出会えず、心を埋めるために顔の同じ艦娘を再び入手する提督も少なくないが、それは同じ顔をした別人であることをこの『艦これ改』は教えてくれる。

 つまりリアルも『艦これ改』も同じと言えなくもない。

 自分の言葉で送り出して、帰って来ないことを聞かされる。安直に『進撃』のボタンを押し、目の前で消え行く艦娘を見届ける。

 どちらも艦娘の『死』であり、提督の失態である。

 ただまぁそう言えなくもないだけで、常識としてゲームとリアルを一緒にするなと言おうとして・・・・・・そしてタコの目から涙が流れていることに気づいた。

「・・・・・・先生は昔から何でもできました。勉強も音楽も芸能も演技も暗殺も。だから計算し尽くした先生は十分な安全マージンをとって、『轟沈しても問題無いと判断し』、艦娘達を信頼して大破進撃を選びました」

 ーーーーーーーーたかが1隻。されど1隻。

 それをこのタコは轟沈の直後に理解したらしい。

「沈んでゆく那珂ちゃんを眺めながら、先生は胸の中が張り裂ける思いをしました。

 ・・・アナタも、そうなんですよね?」

 言われて、僕の頭は一瞬にして沸騰した。

 僕は画面上ではなく実際に『冬月』さんと会い、話し、同じ時間を共有した。この手には冬月さんの手の感触が残っているし、冬月さんの良い匂いは延髄に保存されている。たかがゲームとリアルを同じに考えるな!

 そう言いたくなったが、僕はそれを言えなかった。

「・・・・・・先生と、同じなんですね」

 タコの表情には謎のリアルがあった。まるで本物の恋人を失ったような、そんな雰囲気がタコにはあった。

「・・・・・・・・・・」

 タコはおもむろに一枚の紙を取り出すと、差し出してきた。紙には見慣れた冬月さんの字が並んでおり、僕は『その可能性』に気づくと吐きそうになった。

「これは、彼女が轟沈した場合アナタに渡すようにと残してあった手紙です」

 つまりは遺書である。

 これを読んだら本当に冬月さんと会えなくなる気がして身体中が拒否反応を起こしたが、タコは僕の手にシッカリと握らせると淡々と呟いた。

「・・・・・・読みなさい。それは君の今であり、君の未来です」

 理性では読まなければいけないことが分かっているからか、涙が溢れてきた。

 冬月さんの死を告げられた時と同じくらいの悲しさが全身を包み込んできて、僕はもう何がなんだか分からなくなってきた。

 まともな思考もできないまま視線を落とすと手が震えてきて、それでも僕は手紙に書かれた文字に目の焦点を合わせた。

『・・・背景、時里 快人様。

 これをお前が読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのだろう。すまなかったな。約束を守れなくて。

 お前は私にとって唯一無二の親友だ。お前とこの国のために死ねたのなら本望だが、・・・そうだな。

 欲を言えば、もう一度お前とあの海を見たかったな。

 お前と見た夕日は今でも覚えているぞ。

 キラキラキラキラとしていて、本当に綺麗だった。

 ・・・私のことで気に病んでいるのなら気にするな。

 私は艦娘であり、お前は提督だ。こういうこともある。

 私はお前が笑っていてくれると嬉しい。』

「・・・うぁ」

 最低限の文字数で書かれたその文書によって、僕の情緒は再び破壊された。

「うわ、うわ、」

 すでに目玉が枯れるほど涙が出たハズなのだが、少ないながらも涙は溢れ続けた。

 提督見習いと成ったことで周りの目が変わったといっても、冬月さんを突き放して距離を作ったのは自分自身だ。その結果がこの手紙だ。

 冬月さんは自分のことで手一杯だった僕が忘れたような約束を覚えていて、気にしていたらしい。

 ほんとクソだ。自分自身が嫌になる。

 自分の爪を全部割れば贖罪になるだろうか。いや、ならない。なら死ぬ?・・・絶対にない。今度こそ冬月さんにキレられる。なら提督として死ぬ?いや・・・それよりも・・・・・・・・・。

 

 

「時里快人君」

 

 

 再び、タコが話しかけてきた。

「・・・時里快人君。艦娘のサルベージについては知っていますか?」

 聞こえてきた言葉に、最初僕は耳を疑った。

 サルベージという言葉は知っている。

 沈没した船を引き揚げる作業の事だ。

「・・・・・・ぇ」

「20年前の話です。

 その頃は深海の猛攻を海軍は抑え切れておらず、国家の滅亡は秒読みとなっていました。

 そんな時、1人の民間出身の提督が鎮守府に着任したことで戦況は一変しました。

 彼は先生から見ても天才と呼べる男でした。

 人柄も立派で作戦能力も判断力も勇気もある。常に迷わずどんな状況でも艦娘を励まし続け、常識外れな胆力で国家存亡の危機を押しのけ、その活躍は深海と休戦を取り付けるまでに至りました。

 そんな彼ですが・・・・・・噂では艦娘のサルベージもできたという話ですよ」

 20年前に艦娘の大ハーレムを作った提督については僕も聞いたことがある。確か艦娘だけじゃなく妖精さんにも大人気だったみたいで、100年分の戦果を1人で叩き出したとかいう伝説を作った凄い人だ。・・・そうか。サルベージできるなら、そりゃあ艦娘からも信頼されるわな。

 ってか、それが本当なら・・・。

「ヌルフフフ・・・アナタの進む道が見えたようですねぇ」

 タコは相変わらず気色悪い笑顔を浮かべていたが、この時だけはちょっとだけ感謝した。

「サルベージが本当にできるなら、うん。やるよ。絶対に冬月さんを助ける。絶対に、絶対に」

 僕はベッドから飛び上がると、宣言した。

「絶対に、冬月さんを取り戻す」




 1話を読み返したら本当に何だコレってかんじだったので解説を載せておきます。
 まず主人公は7歳の時点で両親が無くなり、提督としての圧倒的な適性を見込まれて横須賀鎮守府の提督(♀)に引き取られ、鎮守府で育ちました。
 そこで13歳まで生きて反抗期を迎えた主人公は鎮守府が『墓場』のように思え、他の将来も熱望して冬月さんにも強く当たるようになりました。そんな主人公の荒れっぷりに手を焼いた鎮守府は主人公を椚ヶ丘中等部の2年生に編入させます。
 主人公はそこで、艦娘に対する国民の認識を知ることとなります。最初はニコニコしていた主人公ですがやがて精神の方がヤられてしまい、自分から出て行ったのに戻りたくなるという(あるあるですね)チグハグな状態に陥りました。
 艦娘や提督に助けを求めることもできず、椚ヶ丘という狭い世界で赤羽カルマとヤンチャし、そして必死に自分を守ってきた主人公は、そこで冬月さんの訃報を知ることとなります。
 ・・・・はい。
 書いている時は本当に吐きそうな気分でした。

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