提督の適性が椚ヶ丘の教育方針と真逆にあるので、椚ヶ丘では提督のことを艦娘の男娼としか教えません。誰にでも『替え』がきく、艦娘にへりくだって媚びを売る醜い男には憧れるなと教えられます。
そんな教育を受けた人達が暁ちゃんの写真を見せてこう言ってくるんです。
「コイツとヤったの?」って。
・・・・はい。誰でもぶん殴りますよね。
絶壁と関西弁でお馴染み、RJこと艦娘『龍驤(りゅうじょう)』はとある会議室でとある生徒に暗殺教室についての説明をしていた。
「規模が規模やからな、当然やけど秘密の口外は絶対に禁止やで。もし漏らしたのなら・・・まぁ怖いお兄さん達のご厄介になるやろな」
「こっわw」
RJの脅しを受けてもニヤついた表情を崩さず、背もたれに体重を預けながら肩をすくめる余裕すらある少年は、手元にあったナイフを弄びながら不敵に言い放った。
「・・・・・・・まっ、人間じゃなくても別にいーか。
1回さぁ、先生って生き物を殺してみたかったんだよね」
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「晴れた午後の運動場に響くかけ声。今日も平和ですねぇ」
「「「いっちに~さーんし ごーろーくしっちはっち」」」
「生徒のエモノさえ無ければですが」
「八方向からナイフを正しく振れるように!!どんな体勢でもバランスを崩さない!!」
提督に成ると決め、正式に3年E組(暗殺教室)の一員と成った僕は、今日も今日とて朝からナイフを振る練習に参加させられていた。
「お、あれカルマじゃねぇか?」
ひととおり訓練が終わった後、休憩していた『寺坂』君が声を上げた。
彼の視線の先には、赤髪の少年が1人。
「よー寺坂君、久しぶり」
少年の名前は『赤羽 業(カルマ)』。キザで中二病でムダにイケメンで、そして僕と同レベルの問題児である。
「あ、久し振り」
手を振りながら声をかけると、カルマ君は不敵に笑った。
「へぇ、カイトも復学したんだ。元気だった?」
「うん」
中学2年生の時の僕は荒れていた。
不条理があれば相手が先生だろうが理事長だろうが面と向かって発言し、イジメがあれば率先してイジメている方を殴った。悪口を言う奴がいればソイツらの人格否定を大声で叫び、勉強はしたくなかったのでE組でもないのに毎日E組の教室に通った。昼休みには本気でマフティーダンスを踊って学校の運営側に抗議したりもしたし、無許可で流しそうめんをして怒られたこともあった。
そんな時に知り合ったのがカルマ君で、カルマ君は僕にとって喧嘩友達みたいなものである。
「腕は、鈍ってないよね?」
ドヤ顔しながら聞くと、カルマ君は「当然」と言って自信ありげに笑った。そしてスタスタと歩き、黄色いタコ(生徒命名:殺せんせー)の前まで来ると手を差し出した。
「俺、赤羽業(カルマ)って言います。よろしく、先生」
「こちらそこ。楽しい1年にして行きましょう」
かなり礼儀を気にする『殺せんせー』が快くカルマ君の手を(触手で)握ると、殺せんせーの触手が一瞬で崩れた。
「「「!?」」」
僕達が驚いて固まる中、カルマ君は袖からナイフを取り出すと間髪入れずに殺せんせーに襲いかかった。
「ッシャア!」
対する殺せんせーは難しい顔をしたが、しかし余裕をもったバックステップでカルマ君から『かなりの距離』をとった。
「・・・・」
「・・・・」
見方によっては情けなくも見える飛び退きに、心底バカにした笑みを浮かべたカルマ君は昔と変わらない煽りを殺せんせーにもブッ放した。
「・・・へー、本当に速いし本当に効くんだ、対先生ナイフ。細かくして(手の平に)貼っつけてみたんだけど、これでもかなりの効果があるみたいだね。
・・・けどさぁ先生。こんな単純な『手』に引っかかるとか・・・。
しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビりすぎじゃね?
殺せないから『殺せんせー』って聞いたけど、
あッれェ、せんせーひょっとしてチョロイひと?」
・・・・このド派手な登場が吉と出るか凶と出るか。
その結果を僕達は早い段階で知ることとなった。
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「そっ、それは昨日先生がイタリア行って買ったやつ!!」
「あごめーん。職員室で冷やしてあったからさ」
「ごめんじゃ済みません!!溶けないように苦労して寒い成層圏を飛んで来たのに!!」
最初は良かった。
しかしカルマ君が先生を煽るごとに。
「赤蛙はまた失敗して戻って来た。私はそろそろ退屈し始めてした。私は道路からいくつかの石を拾ってきて・・・(※島木健作『赤蛙』より」
先生を殺す難易度は跳ね上がっていった。
「へぇ。じゃあ作り直したら?一回捨ててさ」
カルマ君が熱々の鍋を殺せんせーに向かって蹴り倒すと、カルマ君はいつの間にかハートのエプロンを着せられていて、殺せんせーは飛び散ったスープを全てスポイトで吸って鍋に戻すと何事も無かったかのように授業を再開した。
その後もカルマ君は殺せんせーに挑んだがことごとくが失敗し、・・・カルマ君がかなり思い詰めた表情をし始めていたので僕は声をかけた。
「カルマ君、ちょっと息抜きしない?」
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放課後。
椚ヶ丘近辺の路地裏を歩けば3割ぐらいの確率で出くわすイジメの現場を激写した僕とカルマ君は、その写真をネットに上げて晒された生徒をゲラゲラ笑っていた。
・・・・・・同級生の未来?知らんな。どうせ理事長パワーで揉み消されるのだろうから容赦はしない。
イジメを撮られた同級生は顔面を蒼白にさせたが、僕達がE組だと分かると途端に威張り散らし始めた。
E組は自信が無いから世論に頼るのだとか弱者同士が助け合う姿は情けないだとか。
何の自信があって威張っているのか分からなかったが、まぁコレは見慣れた椚ヶ丘クオリティ(いつもの事)なのでテキトーに聞き流し、ガンガンに拡散してからイジメられていた子を逃がした。
すると同級生が親を呼んで自分の無実の証明をとるだとか言い出してきたので、白けてしまった僕とカルマ君は同級生をその場に放置し、近くの高台で椚ヶ丘の街を眺めることにした。
カルマ君には気晴らしをしてもらいたかったのだが、失敗したなぁ・・・・と思っていると。
「暴力沙汰を避けたのは立派ですが、イジメの現場を撮影してネットに拡散するのはあまり良い趣味とは言えませんねぇ」
殺せんせーが背後から話しかけてきた。
「へぇ。先生はネットの写真で子供の人生が終わる社会に反対なクチ?」
カルマ君が聞くと、殺せんせーは至って真面目な顔をして言った。
「教師とは生徒の心と身体を第一に考える生き物です。私の受け持つ生徒はE組だけですが、本校の生徒でもそれは同じですよ」
「・・・そっか」
この言葉に、去年先生に裏切られているカルマ君は眉をひそめた。
「確認したいんだけど、殺せんせーって先生だよね?」
「?はい」
「先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」
「もちろん。先生ですから」
カルマ君はおもむろに対先生用のモデルガンを取り出すと・・・。
「そっか。良かった。なら殺せるよ。
・・・確実に」
高台からその身を投げ出した。
唖然とする殺せんせーを置いて、カルマ君は自由落下を始める。
このまま殺せんせーが何もしなければ、カルマ君は挽き肉に変わる。(ひき肉です!!!)しかし殺せんせーが助けに入れば確実にカルマ君はそこを狙う。
そして短い付き合いだが、先生は絶対に助けに入る。
これは、殺ったか・・・・・・・そう思った瞬間、殺せんせーは触手を蜘蛛の巣のように変形させて落下するカルマ君をキャッチした。
「えっ・・・!?」
しかも触手に粘着性があるのかカルマ君は思うように身動きがとれないらしく、銃も向けられないようで・・・・・・・・・・カルマ君の暗殺は殺せんせーに完封させられていた。
「カルマ君。自らを使った計算ずくの暗殺、お見事です。
音速で助ければ君の肉体は耐えられない。かといってゆっくりと助ければその間に撃たれる。そこで、先生ちょっとネバネバしてみました」
「(・・・くっそ、何でもアリかよこの触手!!)」
「これでは撃てませんねぇヌルフフフフフフ」
また人を舐め腐った顔で笑った殺せんせーは、スンと素の表情になると優しく語り始めた。
「・・・ああちなみに、
見捨てるという選択肢は先生には無い。
いつでも信じて飛び降りて下さい」
・・・・・・・・僕は思った。
殺せんせーが美人でバルンバルンだったら多分カルマ君は落ちてただろうな、と。
受け取ったカルマ君はというと、ちょっとだけ笑っているように見えた。
「・・・はっ」
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翌日。『しばらくは大人しくして計画の練り直しかな』と言っていたカルマ君は、先生のスイーツを盗んで先生と鬼ごっこをしていた。
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「・・・はい。はい。・・・艦娘を教師にですか?・・・はい。・・・分かりました。・・・はい。彼は上手くやっております。・・・了解です。・・・では」