ちなみに、主人公にとって初めての秘書艦カッコカリがお冬さんです。
『体育教師』兼『生徒の技術指導員』兼『殺せんせーの監視役』でありながら『現場監督』という上からも下からも、なんなら『同僚(殺せんせー)』からも厄介事が飛んで来る立場で、そのうち胃が爆発するんじゃないかというぐらい気苦労が耐えない立場に立っている『烏間』先生が、朝のHRで2人の美女を連れてきた。
「・・・今日から来た外国語の臨時講師を2人紹介する。1人目は・・・・」
「『イリーナ・イェラビッチ』と申します!皆さんよろしく!!」
1人はイリーナ・いらな・・・・イリなんたら先生というらしい。
爆発的な巨乳をより際立たせるためなのか胸元は大きく開かれて谷間が見え隠れ(というかモロ見え)しており、タイトなスカートから覗く太ももはビックリするほど白く、一切の乱れが無い頭髪と自信ありげな目元や唇の鮮やかさなど・・・・・・説明し始めたらキリが無いほど(外見は)完璧な人だった。
ただ何となく胡散臭かったので、僕はすぐに『イリなんたら』から視線を外して問題の方に目を向けた。
「それから、横須賀鎮守府から英語教諭として配属された『金剛』さんだ」
烏間先生が紹介すると、『金剛さん』は手をブンブンと振りながら派手な挨拶をかました。
「ハーイ!超弩級戦艦として建造技術導入を兼ねて英国ヴィッカース社で建造された『金剛』デース!
みなさーん!よろしくお願いしまぁーっす!」
言わずと知れた金剛型の一番艦。茶髪のロングで変な髪飾りと変な和服が特徴的。
(史実ではなく艦娘として)建造されたのがかなり昔な古参艦娘のため実戦経験も豊富で、金剛さんが轟沈したら多くの艦娘の志気が著しく低減してしまうぐらい今のこの国にとって本当に無くてはならない大人物である。
そんな人が何故こんな所に?何故教師に?
単純な好奇心で金剛さんを眺めていると、金剛さんと目が合ってしまった。
「ヘーイカイト!久しぶりネー!!!」
気がついた時には、金剛さんが飛んでいた。
何を言っているか分からないと思うが、僕にも何が何だか分からない。
金剛さんと目が合った。そしてとびきりの笑顔をしたかと思えば、バッタのように飛び上がった。金剛さんが僕の頭上まで飛んで来ると、やがて自由落下を始めた。
頭上から降ってくる金剛さん。絶句するあまり反応が遅れる僕。
金剛さんは椅子を引いていた僕の膝にドカッと落ちると、両手で僕を抱き締めてきた。
「カイトぉ!会いたかったデース!元気にしてた?」
「あ、はい」
「比叡も榛名も霧島も心配してたんだから!私達のいない所で体調を崩したりしたらノー!なんだからね!!!」
鎮守府にいた頃から金剛さんが人に飛びつくのは知っていけど、その、胸部装甲がゼロ距離射撃というか、その・・・・・・・。
パシャッ。
シャッター音がしたので後ろを振り返ると、カルマ君がニヤニヤしながらスマホのカメラをコッチに向けていた。
「カルマ君!?!?撮らないでよ!!」
「えーいいじゃん。減るもんじゃないし」
「減るよ!!!主に僕のメンタルが!!!」
「だって授業中にそんなことしてる方が悪くない?」
「そ れ は そ う だけど!!!これは金剛さんが昔からそうというか・・・・とにかく撮らないで!!!連写すんな!!!金とるぞコラ!!!」
もう色々と一杯一杯になりながら叫んでいると・・・。
「テメェ、カイト!!!授業中にイチャイチャしてんじゃねぇよ!!!」
今度はこのクラス随一の不良、『寺坂』君が至極もっともなことを言ってきた。
「ヌルフフフ・・・提督が妬まれるワケですねぇ」
殺せんせーの言葉(追撃)でハッとして周りを見回すと、僕に対するクラスの皆の目がかなり冷え込んでいるのに気づいた。
しかも金剛さんは変わらずバーニングしているだけのため状況が更に悪化していっており、今すぐにでもこの場から消えたい気持ちになった。
涙目になりながら烏間先生を見ると、烏間先生は頃合いを探っていたのか咳払いをした後に話を続けた。
「何故英語の教師が二人かだが、・・・色々あるがザックリ言うと海自からの要請でな。
素性も分からない殺し屋に提督候補の授業を任せるくらいなら艦娘に授業をさせるとアッチ(海上自衛隊)が言い出してウチ(陸上自衛隊)とかなりの喧嘩になったんだが、・・・・・・・そこは生徒に決めてもらおうということになってな。
つまりお前達は一週間後、どちらの英語教師を残すか投票で決めてもらうことになっている」
要するに英語教諭のコンペということらしい。
殺せんせーがいる時点で特殊な教室だとは思っていたが、それは先生の赴任に関しても当てはまるみたいだ。
膝上に座っている金剛さんの顔を見ると、金剛さんはニッコリと笑った。
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「イタリアのジェラートが食べたいの!」
朝のHR終わりの休み時間。
僕達E組には移動教室など無いため本来はフリータイムとなる時間なワケだが、今日は新たにこの暗殺教室に参加した先生を交えた雑談会(暗殺関連の摺り合わせ)が行われることとなった。
生徒はグラウンドに出て各々が新しい英語教諭を囲んだが、金剛さんじゃない方の英語教諭はその輪からスッと距離をとると殺せんせーにしだれかかった。
そして放たれたさっきの発言。
要求が完全にパシリに対するソレだったが、殺せんせーは気を良くしたのか特に反抗することも無くイタリアまで飛んで行ってしまった。
すると残されたイリーなんたら先生は、今度は僕達の方を向くと、殺せんせーに見せていた態度を一変させて高圧的に言い放った。
「さて・・・・・・ガキども、奴の情報を全て吐きなさい」
二重人格かと疑うくらいの豹変ぶりに僕は絶句し、僕と一緒にバッタを追っていた金剛さんも動きを止めて「オー、なかなかに尖ってるみたいデース・・・」と呟いていた。
「早くしてちょうだい。暗殺対象はいつ帰ってくるか分からないのよ?」
するとキーンコーンカーンコーンと本校のチャイムが聞こえてきた。あのチャイムは1限目開始の合図なのだが、イリーなんたら先生は一切気にすること無く質問を続けた。
「この中で奴に一番詳しいのは誰なの?
あと、奴には仲間とかいるの?
機能は触手だけ?武器は使うの?
あらゆる弱点になりそうな部分についても教えて欲しいんだけど」
明らかに授業をする雰囲気が感じられないイリなんたら先生に、クラスの皆を代表して委員長の磯貝君が手を挙げてイリーなんたら先生に発言すると・・・。
「・・・あの、イリーナ先生。一時間目は英語の授業なんですけど、・・・」
どっかのドラマでこういうシーン見たなぁ・・・、と思っていると、イリーなんたら先生は案の定『磯貝君』の要望を切って捨てた。
「は?授業なんてするワケないじゃない。まさか本当に私が英語教諭だとか思ってるワケ?とんだアマチャンみたいね。
それと、常識として初対面の私にファーストネームで気安く呼ばないでくれる?
いい?
私は大人であり暗殺者。そしてアナタ達は子供であり学生。
今度からは『イェラビッチ先生』と呼びなさい」
長尺のセリフに皆が黙る中、カルマ君が色々と乗り越えた発言で場を和ませた。
「・・・で、どうすんの?ビッチねえさん」
「略すな!!」
「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスター。ビッチねえさん1人で殺れんの?」
カルマ君の舐め腐った態度を見て頭が冷えたのか、ビッチねえさんはカッコイい顔をすると言った。
「・・・ガキが。大人にはね、大人の殺り方があるのよ」
ビッチねえさんがそう言うと、山の茂みの中からイカツイ男3人が現れた。何というか、竿や・・・・これ以上は止めておこう。
「あぁ、そうだ。
ガキども、少しでも私の暗殺の邪魔したら容赦なく全員殺すから。邪魔するのなら覚悟してなさい」
・・・・・・こいつ、どうしようもないな。という沈黙がクラスの中に下りた。
先生の周りある『死』が『壁』というか『距離』のようなものになっているというか。平和な日本にはそぐわないから勝手にやってろ、みたいに思ったがゆえの沈黙だったのだと思う。
先生の方も僕達に歩み寄る気なんてサラサラ無いみたいなので当然といえば当然だが、なんだかなぁーとは思った。
こういう時の切り替えが早い女子達は、今度は金剛さんを囲った。
「じゃ、じゃあ金剛さんが授業するんですか?その、もう1人の先生はアレみたいですし・・・」
艦娘に対する人間の反応は様々だ。忌避する人もいれば劣情を抱く人もいて、本当に色々いるため金剛さんが来た時は大丈夫かな?と思ったが、女子生徒の反応を見る限りだと大丈夫そうだ。・・・ただし岡島、お前はダメだ。
「むむ!?私の出番ねぇ!ふぉろみー!みなさーん!ついて来て下さいネー!」
目をキランとさせた金剛さんは、生徒を引き連れて教室へと行進を始めた。
☆☆
☆☆☆☆
☆☆☆☆☆☆
「オーイェス!正解ネー!」
「あ、どうも・・・」
「それじゃあこのニュー!フェーイス!の意味が分かるひとー!」
「は、はい!」
「はいソコー!」
僕達はこの日、自分自身の認識の甘さに気づかされた。
「「「(イロモノすぎて聞きづらい・・・)」」」