体育の授業中。
「ご所望していたイタリアのジェラートです」
「まぁありがとう殺せんせー!!午後のティータイムに欲しかったの!!
・・・・それでね殺せんせー、お話があるの。
5時間目、倉庫まで来てくれない?」
イタリアから帰って来た殺せんせーに、再びビッチねえさんはしだれかかった。
ビッチねえさんのソレは明らかに演技だったが、気づいていないのか殺せんせーは鼻の下を伸ばした表情でデレデレしており、ビッチねえさんに促されるまま体育倉庫へと入っていった。
これからナニが始まってしまうのか。我々は体育倉庫の奥深くへとry
「ぎゃああああああああああ」
数秒するとビッチねえさんの悲鳴が体育倉庫の壁をぶち抜いてコッチまで飛んで来た。あんな悲鳴をあげるプレイって逆に気になるんだけど・・・。
そう思っていると、上下の体操服を着たビッチねえさんがヨロヨロしながら体育倉庫から出てきた。
状況から判断するに、殺せんせーとマッハで行為をした後なのだろうが、えぇ・・・。
まるで意味が分からんぞ!?
某遊戯王テンションに巻き込まれた一般人の反応をしていると、ビッチねえさんに続いて殺せんせーも体育倉庫から出てきた。
「せんせー、ヤったんですか?」
僕は左手の人差し指と親指でワッカを作り、右手の人差し指をそのワッカに出し入れしながら聞いた。すると先生は僕のスコスコしている手を触手で押さえつけ、言った。
「将来は提督に成るのでしたら、そういうことはいけませんよ」
いやソレよりも・・・・・・。
「はい分かりました。で?」
「・・・別に特別なことはしてませんよ。ただのリンパマッサージです」
「ただの、マッサージ?」
「ヌルフフフ・・・そこはご想像にお任せします」
「そ、そっすか・・・・・・」
多分、多分ヤってはいないのだいうのは何となく分かる。分かるが、ただ先生として口にしてはいけないこともしたのだということは僕でも分かった。
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最初はビッチねえさんの放り投げた授業を全部金剛さんが受け持っていたが、烏間先生には(海自の艦娘が優先されるのは無条件で気に入らない)陸自の意向やら何やらの圧がかかっているらしく、ビッチねえさんが授業をしなくとも教壇に立つことは決まっていた。
つまり僕達E組の、英語の時間の半分がただひたすらにイラついているビッチねえさんを見続ける時間となっていた。ビッチねえさんの悔しそうな顔は、あれだけドヤ顔だっただけに大変ザマァではあったのだが、その表情を50分眺めるというのは流石に飽きがくるというもので・・・。
「先生」
再び皆を代表して磯貝君がビッチねえさんに声をかけた。
「・・・何よ」
「授業してくれないなら殺せんせーと交代してくれませんか?一応俺等、今年受験生なんで・・・」
ビッチねえさんは磯貝君の至極真っ当な要求を鼻で嗤うと、八つ当たりのような何かを言い出した。
「はん!あの凶悪生物に教わりたいの?地球の危機と受験を比べられるなんて・・・ガキは平和でいいわね~。
それに聞けばあんた達E組って・・・この学校の落ちこぼれだそうじゃない。勉強なんて意味ないでしょ」
「「「・・・・・・・・・」」」
「そうだ!!じゃあこうしましょ。私が暗殺に成功したらひとり五百万分けてあげる!!あんたたちがこれから一生目にする事なんてない大金よ!!
無駄な勉強するより有益でしょ。だから黙って私に従い・・・」
世の中を舐め腐っているような表情で僕達を嗤い続けるビッチねえさんに、温厚篤実(自称)な僕も流石にキレてしまった。
「ビッチねえさんって凄くつまんない人だよね」
僕は椅子から立ち上がると、正面からビッチねえさんを睨み付けながら言い放った。
「地球の危機とか偉そうなこと言ってたけどさ、ビッチねえさんって何かを背負って戦ったことが無いでしょ?いつも賭けるのは自分の命だけだったんじゃないの?」
「はぁ?何を言ってるのよ・・・」
「不知火さんも金剛さんも・・・冬月さんも。この国のために日々命をかけて戦ってた。だからこそ武人として尊敬していたし、艦娘をバカにするクズ野郎は許せないんだけど・・・・・・ビッチねえさんの表情はずっとずっと艦娘以下だよね。ずっと自分の暗殺のことばかりで他を見ないで・・・ビッチねえさんって典型的なワンマンクソ野郎でしょ?もっと協調性を勉強しろとか誰かに言われなかった?」
説教臭くなったが、僕の言葉に呼応するかのようにしてE組の皆が思い思いに叫び始めた。
「そうだそうだ!!!」
「出てけくそビッチ!!」
「殺せんせーと代わってよ!!」
「なっ・・・なによあんた達、その態度っ、殺すわよ!?」
「上等だよ殺ってみろコラァ!!!」
「そーだそーだ!!巨乳なんていらない!!」
中にはビッチねえさんに向かって消しゴムを投げる人もいて、状況はまさに小学生の時に経験した学級崩壊のようだった。僕も何か投げようかなと机の上に視線を落とすと、不自然なくらい大量のパチンコ玉が散らばっていた。
妖精さん。流石にこれは投げれないよ・・・。
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「なんなのよあのガキ共!
こんな良い女と同じ空間にいられるのよ!?有り難いと思わないわけ!?」
教員室にて。イリーナ・イェラビッチは机を叩きながら不満を烏間にぶつけていた。
「有り難くないから軽く学級崩壊してるんだろうが。
いいから彼等にちゃんと謝って来い。このままここで暗殺を続けたいのならな」
烏間教諭の諭すような言葉は、しかしイリーナ教諭には届かなかった。
「なんで!?私は先生なんて経験無いのよ!?
暗殺にだけ集中させてよ!!」
イリーナ教諭に教師としての自覚すら無かったことを知った烏間は、少し重苦しい声で言った。
「・・・仕方ない。ついて来い」
烏間教諭について行ったイリーナ教諭は、殺せんせーがウッドデッキに寝転びながらテスト問題を作っている現場に遭遇した。
「何してるのよあいつ?」
烏間はこれを見せたかったのか足を止めると、そのまま殺せんせーの実況を始めた。
「テスト問題を作っている。どうやら水曜六時間目の恒例らしい」
殺せんせーはブドウジュースを口に含んだ状態でクシャミをし、テストにブドウジュースがぶちまけられた。
「作り直しだ」
しくしくと泣きながらテスト問題を丸めて放り捨てる殺せんせー。
「バカね。ぶどうジュースは高確率でシミになるのに」
そう言って、イリーナ教諭は違和感に気づいた。
「・・・なんだかやけに時間かけてるわね。マッハ20なんだから問題作りぐらいすぐに済むでしょうに」
「ひとりひとり問題が違うんだ」
「えっ・・・」
「生徒に見せてもらって驚いた。苦手教科や得意教科に合わせて・・・クラス全員の問題を作り分けている」
千葉君は空間図形の理解が早いですねぇ。ヌルフフフ。少し高度な引っかけ問題を出してみますか。そう呟く殺せんせーを見ながら烏間教諭は説明を続けた。
「高度な知能とスピードを持ち、地球を滅ぼす危険生物。そんな奴の教師としての仕事は完璧に近い」
続けて烏間教諭はグラウンドで遊ぶ生徒達を指でさした。
「生徒達も見てみろ。」
「・・・?遊んでるだけじゃないの?」
生徒達は木製のナイフを手にとり、縦横無尽にテニスコートで駆け回っていた。双方の陣地をボールが飛び交っていて、よく見ればナイフだけでボールを相手陣地へ返していた。
「俺が教えた『暗殺バトミントン』だ。
動く目標に正確にナイフを当てるためのトレーニングだ。
暗殺の経験など無い彼等だが、もちろん賞金目当てとはいえ勉強の合間に熱心に腕を磨いてくれる。
暗殺対象と教師、暗殺者と生徒。あの怪物のさいで生まれたこの奇妙な教室では・・・誰もが2つの立場を両立さている。
おまえはプロであることを強調するが、もし暗殺者と教師を両立できないならここではプロとして最も劣るということだ。
ここに留まって奴を狙うつもりから、見下した目で生徒を見るな。
生徒達がいなくなればこの暗殺教室は存続できない。だからこそ殺し屋としても対等に接しろ。
それができないなら、殺せるだけの殺し屋なんていくらでもいる。順番待ちの一番後ろに並び直してもらうぞ」
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学級崩壊後初めての英語の授業。
教室に入って来たビッチねえさんは思い詰めたような表情をしていて、無言で入って来るなり黒板に何かを書き出し始めた。
「You're incredible in bed!言って!」
「「「・・・」」」
「ホラ!!」
「・・・ユ、ユーアーインクレディブルンイベッド」
「アメリカでとあるVIPを暗殺したとき、まずそのボディーガードに色仕掛けで接近したわ。その時彼が私に言った言葉よ。意味は『ベッドでの君はスゴいよ・・・』」
「「「(中学生になんて文章読ませてんだよ!!)」」」
「外国語を短い時間で習得するにはその国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。
相手の気持ちをよく知りたいから必死で言葉を理解しようとするのよね。
私は仕事上必要な時・・・その方法で新たな言語を身につけてきた。だから私の授業では外国人の口説き方を教えてあげる。
プロの暗殺者となる直伝の仲良くなる会話のコツは、身につければ実際に外国人と会った時に必ず役立つわ。
受験に必要な勉強なんてあのタコに教わりなさい。私が教えられるのはあくまで実践的な会話術だけ。
もし・・・それでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出て行くわ。
・・・そ、それなら文句無いでしよ?
・・・・・・あと、悪かったわよ、いろいろ」
生徒側もバカじゃない。
長年の教師を見てきた経験から先生の機嫌や教歴や思想観念や宗教観がある程度分かるように、見てればビッチねえさんが教職なんて初めてのことで、手探り状態なことがよく伝わってきた。
昨日とは別人のように成っているビッチねえさんを見て、・・・・・・僕達は笑ってしまった。
「「「あははははは」」」
「何ビクビクしてんだよ。昨日まで殺すとか言ってたくせに」
「なんか普通の先生になっちゃったな」
「もうビッチねえさんなんて呼べないね」
「・・・!あんた達・・・分かってくれたのね」
「考えてみりゃ先生に向かって失礼な呼び方だったよね」
「うん。呼び方変えないとね」
「じゃ、ビッチ先生で」
「えっ・・・お、ねぇ君達。せっかくだかはビッチから離れてみない?ほら、気安くファーストネームで呼んでくれて構わないのよ」
「でもなぁ、もうすっかりビッチで固定されちゃったし」
「うん。イリーナ先生よりビッチ先生の方がしっくりくるよ」
「そんなわけでよろしく、ビッチ先生!!」
「授業始めようぜビッチ先生!!」
「キーッ!!やっぱりキライよあんた達!」
生徒がビッチ先生をイジり倒し、ビッチ先生がヤンヤヤンヤと言い返す。一瞬でクラスに馴染んでしまったビッチ先生を眺めながら、僕は小さな声で呟いた。
「うん。決めた」
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そして、遂にやって来た週末。
朝のHRで僕達はそれぞれ残って欲しい先生の名前を書いて投票した。
結果は・・・・・・ビッチ先生の勝利だった。
「が、ガーン・・・」
見るからに落ち込む金剛さんに、E組の皆はそれぞれ優しい声をかけた。
「いや、金剛さんにはどっちかというと日本を守って欲しいというか・・・」
「そうそう。艦娘って聞く限りだと凄く大変そうだし」
「まだビッチ先生の方が暇そうだよねー」
「誰よ今言ったの!」
ちなみに僕もビッチ先生に投票した。
理由は色々あるが、一番大きかったのは暗殺教室に来たのが榛名さんでも霧島さんでもなく金剛さんだったことだ。
「金剛さん。金剛さんは数少ない高速戦艦ですし、戦力的にもかなり上位に位置している艦娘だと思います。
だからこそ金剛さんには他の艦娘達を守って欲しいんです。・・・・・・冬月さんみたいなことが、もう起こらないために」
多分みんなが思っていることを僕が代表して言うと、金剛さんは驚いた表情でボソッと呟いた。
「Oh~、カイトが珍しく真面目なことを言ってるネ~」
「おいコラどういうことだ」
「カイト、昔は私達の後ろばかり歩いて、隙あらばスカートの中に頭を突っ込むような子だったのに・・・・・・成長したんデスね・・・」
「「「(えっ・・・・・・・・・?)」」」
「(えっスカートって言った?今)」
「(羨ましすぎだろ・・・)」
「(最低・・・・・・)」
「(隠れムッツリってヤツね)」
どうやら僕の学校生活は終焉を迎えたらしい。
「ち、違うから!あれは幼心にスカートの中が気になっただけだから!」
「榛名も心配してたデース。カイトは変な方向に成長するんじゃないかって」
「実際変な方向には進んでるけどね」
「カルマ君!?」
「普段から艦娘のケツはたまらんなーとか言ってる変態だもんな」
「前から思ってたけど、艦娘の写真眺めてニヤニヤしてるのは割とマジで止めた方が良いと思うぞ」
「え゛?」
「大真面目にAVのシチュエーションについて論評してた時は若干引いたな。艦娘に対する解像度が足りないとか何様のつもりだよ」
「え、アレって面白くなかったの!?」
「あと学校にディ○ドを持ってくるな」
「それを俺のカバンに入れるな」(by岡島)
「避妊具を人の体操服に入れんな。殺せんせーもビックリしてたぞ」
「あと棒状の物なら何でも振り回すクセを直せ」
「大人ぶってるけど十分ガキだよな」
「ちょっ、悪口大会みたいになってない!?」
「ヌルフフフ。大人気ですねぇ」
「金剛せんせー、カイトの面白エピソードってもう無いの?」
「色々ありますよ。あ、じゃあ今からカイトのトラウマを暴露しまーっす!」
「いや金剛さんは帰って!!早く鎮守府に戻って仕事してよ!」
僕のイジり大会は朝のHRが終わるまで続いたのだった。