たまに提督。たまに暗殺教室。   作:不知火勇翔

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 いいですか?落ち着いて聞いてください。
 これは暗殺教室の二次創作です。


ハイエースしてダンケダンケ(in 長崎)[修学旅行編]

 

 妖精さんが再び見えるようになり、提督としての仕事がある程度カタがついたので僕はE組の修学旅行に参加した。

 

 

 

 

 やたら多い殺せんせーの荷物に皆でツッコミを入れたり新幹線にハシャいだりしてクラスの皆と盛大にハッチャケ、長崎に着いてからは岡島と長崎のエロ本を調査したり肉饅頭を食べたり出島ねーじゃんと叫んだりして、

 思い思いに羽を伸ばし、提督としてのアレコレを忘れて今を楽しむ・・・・・・・・ハズだったのだが。

「いや何してるんすかアンタ!!!」

「んー?あぁ、まぁ、中学生誘拐?」

「いや本当に何してるんすか!?!?」

 

 

 

 僕は今、ハイエースおじさん(イケメン)に誘拐されていた。

 

 

 

「まーそうカッカすんなって。肉饅頭食べるか?」

「いらないっすよ・・・・。ってかアンタ何なんすか?提督に対する恨みがある系の人とかですか?」

 ハイエースに男が2人。

 ハイエースおじさん(イケメン)はあろうことか僕をハイエースの後部座席に乗せるだけで拘束などは何もしなかった。

 

 

 ただ僕を後部座席に押し込み、自分は運転席に座って車を発進しただけ。

 

 

 僕が逃げようと思えばいくらでも逃げれるのに、まるで僕が逃げないと確信しているかのような表情でおじさんは運転を続けていた。

 (・・・・ちなみに、ハイエースおじさん(イケメン)はボサボサの髪+サングラス+ダサい茶色のコートという世捨て人のような格好をしている。)

「あー俺?まーこーいう者だけど」

 そう言ってハイエースおじさん(イケメン)は『提督の免許証』を運転しながら差し出してきた。

「・・・・は?」

 偽造・・・・?・・・・え?本当に提督?コイツが?完全にアレでしょ、世捨て人かニートかギャンブラーのどれかでしょコイツ・・・・。

「今失礼なこと考えたでしょ?」

「何故バレたし・・・・」

「一応提督だからねー」

「一応って何すか一応って・・・・」

 何だろう。コイツは今まで会った提督の中で一番提督らしくないというか・・・・・・・・提督としてのまだ見ぬ可能性を見せられているような・・・・そんな不思議な感じがした。

「ちなみにこの車はどこへ向かってる感じですか?」

 聞くと、ハイエースおじさん(イケメン)は素直に答えてきた。

「んー?佐世保鎮守府だよ」

「佐世保かぁ・・・・・・」

 ・・・・・・・・えぇ。

 佐世保って確か鎮守府の中でも5本の指に入る所じゃなかったっけ?え?逃げて良いかな?

「逃げちゃダメだよ。せっかく誘拐してきたんだから」

「何故バレたし・・・・(2回目)」

「誘拐した理由も気になってるでしょ?」

「だから・・・・」

 

 

「カイト君は『佐世保鎮守府が艦娘の心労を考えないブラック鎮守府なのかもしれない』っていう噂を聞いたことはない?」

 

 

「っ・・・・・・・・」

 ブラック鎮守府。それはブラック企業の鎮守府版と言えば一番分かりやすいと思うが、まぁ有り体に言えば艦娘を殺すぐらいの勢いで働かせる鎮守府のことである。

「佐世保鎮守府が、ですか?あの佐世保鎮守府ですよね?」

「うん。あの佐世保鎮守が、だよ。ちなみに僕はクロだと思ってる」

「理由は?」

「妖精さんがソワソワしていたから、かな?まぁ勘が8割だけど」

「はぁ・・・・勘ですか」

「・・・・それでなんだけどさ」

 ハイエースおじさん(イケメン)は佐世保鎮守府の近くの路肩に車を停めると、両手を合わせて頭下げてきた。

「今ちょっと俺の方が立て込んでるから、査察は超生物に脅されたからってことにしてくんねーかなーって」

「・・・・」

 それは、まぁ、・・・・・・・・。

「妖精さん。いる?」

 

 

 

「おう」

 

 

 

 僕が妖精さんを呼ぶと、いつの間にか頭上にいた妖精さんが返事を返してきた。

「ちょっとソコの鎮守府へ調査に行ってきてくれる?報酬は、僕の今日のおやつってことで」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

「ドーモ。提督=サン。身分証の提示をお願いします」

「ほい」

「どうぞ・・・・」

 憲兵さんに提督の免許証と用向き(査察)を伝え、鎮守府に入ると中には誰もいなかった。

 

 

 ビックリするぐらい誰もいなかった。

 

 

 佐世保鎮守府はかなり大所帯のハズなのだが、建物の外をグルッと見回ったが艦娘はおろか妖精さんすら1人も見かけることはなく。

 ジレたハイエースおじさん(イケメン)がズンズンと建物の中へと入って行き、提督の執務室まで来ても誰も見かけることはなかった。

「変だね」

「変ですね」

 執務室の机の上には書類どころか万年筆の一本すら置かれておらず、執務室の引き出しを開けてみたが中は空だった。床下収納とかも特に無し。

「コッチの建物は普段から使ってないとかですかね」

 提督の椅子に座り、棚を漁るハイエースおじさんに聞くと、ハイエースおじさんは難しい顔をしながら頷いた。

「・・・・・・・・うん。そうみたいだね。多分艦娘の女子寮にいるんじゃないかな」

「うわぁ・・・・」

 艦娘の女子寮という所は、提督でも尋ねるのを渋る聖域であり艦娘にとっての避難所のハズなのだが。

「行ってみようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女子寮に到着し、扉を開けて中に入ると・・・・。

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

 中では死んだ魚の目をした艦娘達が、黙々と書類を書いたりハンコを押したり運んだりしていた。

「「・・・・」」

 女子寮は完全に仕事場と化しており、動き回る艦娘もデスクに向かい合って書類整理をする艦娘も全員が無言。

 静寂の中で作業音と足音だけが部屋の中を反響していた。

「・・・・えっと、コレどういう状況?」

 ハイエースおじさんが手近にいたセーラー服の駆逐艦に話しかけると、駆逐艦(多分吹雪型)は今存在に気づいたかのような反応を見せ、そして怯えた表情をして悲鳴をあげた。

「ひっ、ひぁああああああああ!!!」

 すると駆逐艦の叫びでその場にいた全員が僕達のことに気づき、各々が恐怖の表情を浮かべながら艦装を展開し始めた。

「え、あ、ちょっと待って!!俺は提督!提督だから!!!」

 ハイエースおじさんが慌てながら提督の免許証を出すが、艦娘達はそれを無視して銃口を突きつけた。

 

 

 そして発砲。

 

 

「!?」

 当たり前だが銃弾に反応して避けるみたいなことはできず、銃声の瞬間に死を覚悟した僕は、・・・・しかし脳髄を撒き散らしながら爆散することはなく、ハイエースおじさんと一緒に不思議なバリアに守られて無事だった。

 ・・・・・・・・これが『お守り』の効果とやらなのだろうか。

 ポケットに入れているお守りを触ると、少しだけ発熱していた。

 

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

 

 銃声によって辺りが静まり返り、艦娘達の表情は更に凍りついた。恐らく何故死なないのかと驚いているのだろうが、それよりもまず・・・・。

「妖精さん」

「まかせろ。みんないくぞ!!!!」

 頭上に乗っかっている妖精さんが笛を吹くと、隠れていた妖精さんが津波のように現れ、艦娘を次々と拘束していった。

「・・・・ほぉ」

 ハイエースおじさんが変な呟きをしていたが今は無視。妖精さんに纏わりつかれ、拘束された艦娘に歩み寄ると。

「こ、来ないで!!!いや、嫌ぁあああ!!!」

 疲れからなのか心労からなのかは知らないが、正常な判断力を失っているらしい艦娘が泣き叫び始め、場は地獄と化した。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 6時間。

 シッカリと僕とハイエースおじさんの立場を説明し、理解してもらうまでにかかった時間である。

「つまり、お二人は正式な『提督』であり、今日は査察として来られたということですか?」

 この場を代表して駆逐艦『吹雪』さんが発言すると、彼女の周りにいた駆逐艦は一層表情を強めた。

「でしたらお帰りください。皆さん元気でやっておりますし、鎮守府の運営も円滑で支障はありません」

 

 

「だったら提督はどこにいるの?」

 

 

 僕が聞くと、駆逐艦の子達は一斉に視線を逸らした。

「提督の仕事も艦娘がやっているように見えたけど、違う?」

「いえ。提督の仕事はちゃんと提督にやってもらっています」

「例えば?」

「「「・・・・・・・・」」」

 艦娘というのは嘘が吐けない素直な子達が多い。特に駆逐艦の子達はその傾向が強く、『明確な嘘を誘うと黙り込む傾向にある』。

 ・・・・・・・・確定だ。

「ハイエースおじさん」

「・・・それは俺のことかな?」

「こういう場合ってどこに報告・・・・」

 

 

「ま、待ってください!!!」

 

 

 駆逐艦『五月雨』が、信じられないほどの大声で叫んだ。

「待ってください!!!提督は、提督は悪い人じゃないんです!!!提督は、・・・・提督は疲れているだけなんです!!!」

「・・・・・・・・どういうこと?」

「提督は稲木ちゃんの轟沈を乗り越えられなかったんです!!!それだけ、それだけ提督は優しい人なんです!!!だから今はソッとしておいてください!!!提督はいつか、元の提督に戻りますから!!!!」

 顔が下を向くほどの絶叫は、部屋の全てを揺らすのではないかというぐらい室内に響き渡った。

 ・・・・・・・・正直、五月雨さんの言う『いつか』とやらを待つのもまた選択なんだろうなとは思ったが、しかし現状を鑑みるとそれは難しい気がする。

「それでいいの?」

「良いんです!!!五月雨は提督のものですから!!!」

「他の皆も?」

 他の駆逐艦を見ると、それぞれが視線を逸らした。

「こりゃ決まりだな」

 ハイエースおじさんが呟く。これに五月雨さんは顔を青くすると、さっきよりも激しく叫び始めた。

「待ってください!!!

 提督は私のドジも許してくれる優しい人なんです!!

 お茶をぶっかけても書類を水浸しにしても、転んで頭突きしても、間違えて足を踏んでも、何をしても許してくれる優しい人なんです!!!

 あの人じゃないと私は私じゃなくなるんです!!!

 私から提督を取らないでください!!!」

 

 

 

 

「うぇ~い、やってるか~ぁ?」

 

 

 

 最悪のタイミングで、ココの提督が登場した。

「て、提督!?!?」

 一升瓶を握り締め、昼間から飲んでいたのか酒臭く、目も虚ろで足元も覚束ない中年男性。誰がどう見ても酒に溺れた飲んだくれだったが、彼の着ている衣服は提督のソレだった。

「・・・・アナタがココの提督ですか?」

 流し目で睨みながら尋ねると、飲んだくれは僕とハイエースおじさんの存在に気づいたのかハッとした表情をして、そして膝から崩れ落ちた。

「提督!」

 五月雨が駆け寄ると、飲んだくれは五月雨が近づくのを手で制した。そしてさっきとは見違えるような凛々しい目つきをしながら立ち上がり、聞いてきた。

「・・・・・・・・ココに入れるということは、お二人とも余所の提督さんなのですかな?」

 その声は、飲んだくれのものではなかった。

 その声は、歴戦の提督を思わせる厚みを纏っていた。

「どうも。お邪魔してます」

「お邪魔してます・・・・」

「では、私の事を大本営に報告するのですか?」

「ええ。まぁ・・・・」

「そうですか。

 

 

 ・・・・ぜひ、報告してください」

 

 

「提督!?」

 五月雨さんが驚愕して固まったが、飲んだくれは構わず自分の言葉を続けた。

「私はもう戦えんのです。今日のことで諦めがつきました」

「て、いとく!!!ていとく!!!私が頑張るから!私が、、、全部やるから!、」

「五月雨。今までありがとう」

「でいとく・・・・!でいどぐ!!!」

 五月雨さんがボロボロと涙を流しながら叫ぶが、覚悟が決まっているのか飲んだくれは五月雨の頭を優しく撫でるだけだった。

「提督さん方。五月雨達を頼みます」

「・・・・」

 僕は提督の中では下の方なのでハイエースおじさんに判断を仰ぐと、ハイエースおじさんは僕の頭に手を乗せてこう言った。

「お前は、こうは成るなよ」

「・・・・・・・・」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 佐世保鎮守府は一旦解体されるらしく、(憲兵さんを振り切って飲んだくれ提督について行った五月雨さん以外の)所属していた艦娘は各鎮守府に分散して配属されることとなった。

「陽炎型駆逐艦十二番艦『磯風』だ。

 戦歴ならあの雪風にも遅れはとらぬ。数々の海戦、決戦に参加し、戦い抜いたんだ。大和、武蔵、金剛、大鳳・・・彼女達の最期もこの目に焼き付いている。今度こそ・・・護り抜くさ」

「Yorktown級航空母艦3番艦、USS『Hornet』よ。

 ミッドウェー、そしてサンタ・クルーズ諸島沖で全盛期の日本機動部隊と真正面から対決したわ。飛龍、そして翔鶴瑞鶴も強かった。シャングリラ伝説も私よ?覚えておきなさい」

「香取型練習巡洋艦二番艦、妹の『鹿島』です。

 平和な海で次代の艦隊を育てるために建造されました。その本来の役目を果たせる時間はあまり長くありませんでしたが、艦隊旗艦や船団護衛、精一杯頑張りました。戦いが終わった後も、未来のために、私、頑張りました! 鹿島のこと、覚えていてくださいね」

「あ、・・・・・・・・はい」

 

 




 五月雨と飲んだくれ提督に幸あれ。
 ・・・・多分これで良かったと思う。
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