黒崎一護・護廷十三隊物語   作:hapi

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 一護が死後、尸魂界にやってきて真央霊術院に通う話。
 時系列的には試験の後。物語はちょっとシリアスに突入。

 正直オリキャラが出張るのってどうかなぁと思うので、心配ですけど、まぁ一護が面白ければオッケーでしょ!ぐらいのテンション

※オリキャラが喋ります
※原作のネタバレあり
※捏造注意


11.Stop the tear of the rainy season・2《挿絵有》

 

 

 

 

 

 

 隠れることも

 逃げることも

 立ち向かうことも許されない

 目をそらす事ができないかぎりは

 

 

 

 

 

 

 たらりと、汗が顎を伝った。

 それを拭うこともせず、じっと手元に集中する。

 ぼんやりとあたたかい霊圧がゆらゆらと動いて、まるで若草のように光を帯びた。

 

「できた……」

 呟いたのは桜庭梅だった。

 それに、一護は小さくうなずく。

 一護は汗のにじむ両手をそっと梅の背中に添えてひたすらに霊圧を込めていた。他者を害するためではなく、守り癒やすために。

 

 しばらくして一護は「ほぅ」と息を吐いた。同時に手を降ろすと梅がゆっくり振り返る。

「回道、できてるよ、一護くん」

 嬉しそうに言う梅に、一護も目元を和らげた。 

 

 

 ”回復鬼道”というものがある。

 通称”回道”と呼ばれるそれは、鬼道ではあるが鬼道とは根本的に違う技術。誰もが使えるということもなく、素質と才能にかなり依存するその技術は、真央霊術院でも授業の単位に含まれている。

 

 一学期後半の最初の鬼道の授業は回道。

 前半が破道中心であったのに対していきなりのシフトチェンジのようにも思えたが、早い段階で素質の有り無しを回道は判断する必要があるので、軽く鬼道ができるようになったこのタイミングが最適なのだと教師は言った。

 回道の素養がある。それはすなわち、四番隊に所属できる可能性があるということだ。

 

 昔、四番隊は護廷十三隊の中では比較的軽視されていた。少なくとも一護が最初に旅禍として瀞霊廷に来たころは確かにそうだった。戦えないお荷物部隊だと言われていた。

 しかしそれから二年後には四番隊の彼らが管理する総合救護詰所は、瀞霊廷の大きな要所と目されるようになった。滅却師の襲撃より犠牲者が多く出た中で、四番隊がいたからこそ助かった命が多くあったのだ。

 そしてそれをきっかけとして真央霊術院は回道に力を注ぎ始めたのである。

 率先して素養のある者を育て、四番隊の能力の底上げを図る。死神見習いという制度は四番隊にも当然適用され、そこで実際の治療を経験することで有事の際には回復に学生を動員できるようにという基盤が作られていった。

 

 この話を聞いた一護は、とてもすばらしいことだと柄にも無く思った。

 かつてあの大戦では一護の妻である織姫も治療に回った。

 より重症な者ほど彼女が治療したが、それはそれだけ酷い有様の患者を何人も見たということで、それは彼女に大きな影を落とした。

 一護は医者の息子だ。死神となる前から大怪我をした人が運ばれてきた場に遭遇したことが何度かある。目もそむけたくなるような傷もみた。けれど実際に治療をしたわけではないから、そんな人々の生き死にに関わったことはなかった。

 でも織姫はソレに関わった。戦場の傷を治して回り、人の生死に関わることは酷く恐ろしいことだっただろう。

 そしてなによりも、彼女の力でかなりの重症者が救われた一方で救えない者もいて、その度に彼女が傷ついたのも知っている。

 

 医者でない者が命を救う。医者の手助けをする。それは素晴らしいことだが、しかし同時に医者の人手不足を痛感させられることでもあった。

 別に織姫がする必要がなかったとかそういう話ではない。一護自身がそうであるように、彼女はできることをしただけだ。そしてあの時、四番隊にもっと頑張れなどと言う者も、思う者もいなかったし、一護だって思ってもいない。

 それでも、やはりあれは四番隊の仕事のはずだったのだ。もし、もっと人員がいれば。もし、もっと優秀な隊員が多くいれば、もっと救えたのではないか。

 

 なによりも、それを痛感し、苦しんでいたのは四番隊自身だっただろう。

 

 だから一護は、回道を学ぶことに対しては破道・縛道とはちがうベクトルで興味を持っていた。

 

 

 回道は、ときに”針の穴に糸を通すような”と表現されるほどの精緻な霊圧コントロールが必要だというのだが、これが一護は大の苦手だ。

 そんな細かいことはしたことがない。

 かつて回道のスペシャリストだった卯ノ花烈が、一護の霊圧を”生来雑”と言ったとおり、一護はそれはそれは細かいコントロールができないのである。

 雑というのはなかなかに、かなり、とっても納得いかないのだが、ルキアに言わせると「今更」であるらしい。やはり納得いかないが。

 そういう評価が下っているので、正直言うと回道の素質はないだろうと思っていたのだが。

 

 そうでもなかったらしい。

 

「よかったねぇ。全然できないって言ってたのに」

 

 梅の言葉に一護はうなずく。

 授業の始まりでは、うんともすんとも言わなかったのだが、実際実演として梅の霊圧回復に入った途端、わずかながら成功したのである。

 気持ちの問題。というのは違うかもしれないが、やはりイメージの問題かもしれない。

 治すことは、倒すこととは違うのだ。

 霊圧が文字通り圧力であるならば、それは優しい風のようなもの。そんなイメージの元に込められた霊圧は梅のわずかに消費した霊圧を完全に元に戻した。

 

「傷を治すって段階じゃねーけど」

 回道といっても、まだ霊圧を流し回復させてやることしかできていない。

 もちろん授業なので怪我人が居ない。そのためそもそも霊圧の回復だけならこうして教えられるが、それ以外は授業で教えるのはむずかしいのだ。

 いずれは虚退治などに同行したりするようになるらしいが、それができるのはある程度霊圧の回復ができるようになってかららしい。さらにいうと医学的な知識も必要なため、つれていけるのはかなり高学年になってからなのだとか。

 目に見えて回復しているものがないぶん、一護はいまいちピンとこない。

「いいんだよ。回道は霊圧を回復させるのが先なんだから」

「そだな」

 

 それにしても。と一護は未だ半分背中を向けた状態の梅を見た。

「オマエすげーな。アドバイス的確だった」

「そう? えへへ」

 梅の後ろから回道をかけているあいだ、梅はずっとこまかな指示を一護に出していた。

 わかりやすく、的確。もともと鬼道も彼女は得意だが、回道は更に得意のようだ。一回生でこれだけできるものもそうはいまい。

 そのおかげで一護は回道を使えたのかもしれないとさえ思う。

「教師とか、むいてるかもな」

 一護がなんとなくそういうと梅は首を振った。

「先生もいいんだけど、わたしやっぱり護廷十三隊に入りたいなぁ」

「へぇ」

 

 大体の生徒はそういうつもりでいるので別に意外でもないのだが、梅から将来の話というのを聞いたのは初めてだ。

「どっか入りたい隊とかあんの?」

「うん」

 どこか恥ずかしそうにうつむくと、梅は照れたように「まだ全然だけど」と前置きをして答えた。

「私ね、四番隊に入りたいの。席官になって、たくさんの人を助けたい」

 やっぱり。と一護が反応しようとして、すぐに梅は両手を振って顔を隠した。

「一回生でこんなこというのはずかしいよっ。まだまだ遠い話なのに。それに行きたいところに入れるとも限らないし!」

 

 護廷十三隊に入る。それは普通のことのようでそうでもないらしいというのは、この二ヶ月ほどで実感していた。生徒のみんなが護廷十三隊にはいれるならば、もっと死神は多いはずなのだ。そうではないということは入隊は就職と同じくそれなりの大山なのだろう。

 そこに入る! と豪語している者もいれば、だいそれた夢かもしれない。などという者もいる。席官などはさらに夢のまた夢だと思っていたりする。

 けれど一護はそういう夢を語る人が嫌いではないので、梅がそうして願っていることはいいことだと思うし、そのために回道を練習したのだろうなと思うと、謙遜する必要もないと思うのだ。

「いいんじゃねーの」

「え?」

「いけるよ。きっと。オマエすげー努力家だし」

 一護が笑っていうと、梅はそれはそれは嬉しそうに微笑んだ。

 

 回道ができなかった者、できた者、それぞれの結果がでたところで教師は演習をやめるように言う。

 そこから立場を交換して、今度は一護が梅に背中を向けた。そうして梅が背中に手をあてたときだ。

 一護は再び視線のように刺さる霊圧を感知した。

 

 時と場所を選ばないそれに一護はため息をつく。それから胡乱な目で周りを見れば、その様子に気づいた梅が再びさっと青ざめた。

 彼女はこの霊圧と視線に気づけないのだが、一護の反応を見て察してしまうのだ。

「わりぃ」

 一護が反応しなければこうはならない。

 なので基本的には反応しないように心がけているのだが、人がリラックスしてるときや緊張しているときなど、どうにもタイミングがいつも悪いので一護もついつい反応してしまう。

 そうして最近は頻繁に梅を怖がらせてしまっていた。

「だいじょうぶ」

 明確に梅が見られているのだと本人に伝えたことはないが、二人きりのときにも一護が反応するので心平は関係ないことを梅は察している。つまり自分が見られていると察しているのだ。

 どうにかしてやりてぇなぁ。と一護は口を曲げる。

 すでに気配は消えているが、本気で探そうと思えば見つけられるかもしれない。

 その場合は瞬歩で一気に間合いを詰めるべきだろう。次は本気で見つけにいこうと決めて梅をみると、どこか落ち込んだ様子だった。

「ほんとに大丈夫か」

「平気だよ!」

 とあわてて空元気をみせてくる。

 初めて会ったとき、その外見に妹の遊子の子供の頃を思い出したりしたが、こういうところもどことなく妹の遊子に似ていて、それでやはりどうにも放っておけず一緒に行動することが最近増えていた。

 心平には最近よく一緒にいるな。などとからかわれるのだが、一護としては妹を守っている感覚に近い。と何度が説明したこともあるのだが、下手に否定するとうるさいので、もう何も言わないでる。

 結局学生というのは人の恋バナに飢えているのだろう。

 俺には織姫がいる。

 と大きな声でいうのはさすがに恥ずかしい一護だが、そもそも言っても年齢的に大丈夫なのだろうか。一応外見は未成年だが、そういう法律のようなものが尸魂界にあるのかもよくしらない。というか、成長が人それぞれ過ぎて、尸魂界での感覚が全くつかめない。

 一護がそんなことを考えながら一喜一憂していると、梅がそっと背中に手をあてて回道を始めた。

 

「……ほんとに、夢のまた夢なんだ」

 梅がつぶやく。

 一瞬何の話か理解できず首をかしげる。それからすぐに四番隊に入りたいという話の続きであることに気づき、一護は軽く首をまわして振り返った。

「四番隊に入れるかどうかって?」

「……うん」

 一護は明るく笑ってみせた。

「まだ一回生だし、わからねーだろ」

 だってまだあと5年以上あるのだから。

 すると梅は困ったように笑った。

「そうだね」

 その返事は”そんなことはない”と答えたように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かに見られている? 貴様また何かやらかしたか?」

「ちげーよ。俺の話じゃねーつってんだろ」

 

 趣ある甘味屋であんみつをつついていたルキアの呆れきった声に、一護は口をへの字に曲げて文句を返した。

 客がかなり入っている人気のその店は朽木家が管理する老舗の甘味屋だ。

 見た目は小さくとも中はかなり高級志向で、太く立派な古びた梁が堂々と天井近くを横断しながらも、繊細な細工の行灯が吊るされて暖かな光を放つ。

 ルキアのお気に入りの店で、一護は彼女に連れられて生前も含めて何度か来たことがあった。

 

 一護は定期報告のようなものをルキアに行っており、今日はそのためにこの店に来ていた。

 この報告会は、「色々とあると思うから報告がてら聞かせてね」と京楽から軽い調子で言われた際、同席していたルキアが「ならば自分がその報告を聞いてやろう」と言い出したのがきっかけだ。そこまで本格的な報告義務があるわけでもなく、日にちが決まっているわけでもない。ただルキアが暇なときにこうして甘味屋などで世間話をする。その程度のことだ。

 日によって場所も集まる人も違う。ときには複数の副隊長がついてくることもあり、暇なのかと一護はずっと思っている。

 この副隊長たちによって面白おかしく噂が広まり、一護の学院生活を娯楽にしている者が一部いることを、一護はまだしらない。

 

「知人の話なんだけど。というやつか? それはつまり本人の話なのだと言ってるようなものだぞ」

「たしかにそれはあるあるだけどな! 俺がそんな相談すると思ってんのか」

「偽物を疑うな」

「そのレベルかよ」

 

 ぱくりと白玉を口に入れルキアは「貴様が相談などまともにする男か」と文句を言う。

 一護が相談をすることはそうないというか、むしろどうして自己完結してしまうのかと生前は散々文句を言われてきた。歳をとってそれなりに人に頼ることも覚えたつもりなので、なんだか微妙にムカつく一護である。

 ルキアはバニラアイスと餡子を口に入れ、それから考え込むように眉を寄せた。

 

「しかしなんだ、視線か……。お主をみているわけではないということは、霊術院の学友の話か?」

「おう。なんかそいつと一緒にいると視線を感じるんだよな。俺が一緒じゃねー時のことはわからねぇけど」

 すくなくとも連休があけてからのこの一週間はずっとだ。なんだか監視するかのようなその視線が気味が悪いのだが、悪意があるかと言われるとそうでもなく、結局モヤモヤするだけで放置している。放置すると決めれば一護としてはたいした問題ではないのだが、このところ梅の様子はずっとおかしかった。

 見られているという意識があるだけで随分精神的にすり減っているように見えた。

 

「ほう。……男か、女か」

 ルキアが興味深そうに身を乗り出す。

「あ? 女だけど」

「つまり浮気の報告か? 織姫が泣くぞ!」

「なんっでだよ!?」

 バン! と机を叩いて抗議すれば、すぐさまルキアの手が額を思い切り弾いた。

「うるさいぞ! たわけ!」

「おめーもだろ!」

 ヒートアップして声が大きくなるのはいつものことで、二人がくると店の奥にある半個室に通されるようになった。ルキアには立場があるため最初から特別だったようだが、他の副隊長などを連れてくるようになってから、どちらかというと困った客として扱われているような気もする。

 顔見知りの店主は笑って許してはくれているが。

 

「どいつもこいつも……。そういう話すきすぎんだろ。暇人か」

「貴様の恋愛の話などききたくもないがな」

「俺もだよ!」

 一護はため息をついて、それから声を潜めた。

「多分違うとは思うけど、俺に監視とかついてないよな」

「私は知らぬが……上がどう考えているかは」

「上って、京楽さん?」

 苦虫を潰したような顔で”上”と表現するので、不思議に思って一護は首をかしげる。するとルキアは小さく首を振った。

「中央四十六室だ。……実は、貴様がこっちに来てすぐ、即刻護廷に入れるように通達があったそうだ」

「それってあれか。いつものやつか」

「貴様の力を管理したいのだろうな」

 ああ。と一護は小さくうなずく。そういうことは今までにもあったことだ。

 生前も一護を管理したいがゆえに、定期的に瀞霊廷に呼び出すように指示が下ったこともあった。

 

「京楽隊長が霊術院入学の件を伝え、それに納得してくださったとのことだが、実際のところはわからん。もし誰かが監視をしているとしたらそこからの可能性はある」

 四十六室がそう簡単に納得するわけがない。というのは一護もわかる。

 じわじわとだが関係改善が進んでいるようなのだが、どうにもやはり立場の違いというのは大きい。四十六室全体が自己よりも他を考え感情に則って動くのもまた問題であることも事実。

 尸魂界の長い歴史がこの数十年で大きく変動していても、そうした状況を変えるのは至難ということだろう。

 

「他にそういうことをしでかしそうな者たちも居なくはないがな。貴族の中には護廷に所属させずに貴族の護衛に使おうという話もあるし」

「なんだそりゃ」

 思わず嫌な顔をすると、ルキアが小さく笑った。

「そういう顔をすると思っていた。今のところは京楽隊長がうまくやってくださっているから安心しろ」

「うまく?」

 

「貴様は今、護廷十三隊にすでに入隊したことになっている」

「は?」

「すでに護廷十三隊に入っていれば、手を出せぬだろうということだ。詳細をしらぬ貴族たちは、貴様がどの隊に所属しているか探し回っているそうだぞ」

 知らないところで物事が動いていることに唖然とする一護だが、そういう裏のやり取りというのは得意ではないので、任せたほうがいいということもわかって複雑な気持ちになる。

「あーたく。めんどくせぇ。貴族に関しては俺はわかんねーな」

「……だろうな。だが、今後もそうというわけには行かぬぞ。貴様は護廷十三隊に入るのだからな」

「……まぁな」

 結局一護も組織の人間になるのだ。それはもう関係ないとは言えないかもしれない。今までは京楽などが助けてくれていたが、果たしてこれからはどこまで彼の手助けが得られるか。

 彼は助けようとするだろうが、それがどこまで通用するか。一護もいずれは権力と相対することになるということなのだろう。

 

 

「まぁ今のところは変な感じはしねぇけどな」

 特に妙な視線や霊圧に監視されているということもない。一護自身は。

「もし見られているというのなら京楽隊長に報告しておくべきかもしれないが……貴様ではないのだろう? 見られているのは」

「ああ」

「なにかしでかしそうな娘なのか?」

 あるいは誰かに狙われるようなことがあるのか。監視されるような理由があるのか。

 一護は梅の人となりを思い出しながら、少なくとも恨みを買うような人間ではないと判断する。トラブルを自分から起こすようなタイプでもなし。

「いや、そういうのはねぇと思う」

 かぶりを振って、一護は頬杖をついた。

 もしかしたらトラブルに巻き込まれやすいタイプという可能性はあるが。と、トラブルを起こし、トラブルに愛され、トラブルを引き寄せて側にいるものを巻き込む天才とも呼べる自分自身を棚にあげてそんなふうに考える。

「いいやつだぜ。回道が得意でさ、四番隊に入りたいんだと」

「ほう。それはすばらしいな!」

 ルキアも四番隊の大切さは知っている。友である山田花太郎のことを思い出すとなおさらだ。

 かつてルキアを背負って戦ったころを思い出せばルキアも回道は使えるのはたしかだ。とはいえ特別得意ということもないらしく、そういうこともあって四番隊を尊敬しているのだそう。

 一護は自分が回道ができるようになったことは、まだ秘密にしておこうと考えていた。できると言っても技術といっていいほど昇華したわけでもなく、実践で使えるということもない。みせてみろなどと言われるのも嫌で、完全にモノにするまでは黙っていこうと思っている。

 

「回道の授業の時も霊圧を感じたな。時と場合を選ばねーからうぜぇんだよな」

「霊圧はその娘も感じているのか?」

「いや、わかんねーみてーだ」

「ならばそれが唯一の救いだな。……しかし、見ている奴が霊術院の中の者か外の者かでことは変わるぞ。外の者ならば不法侵入だ」

「それって問題になるのかよ」

「罪になるかというとそうではないが、姿を隠して生徒を見ている外部からの侵入者。と考えれば十分不審だ」

 なるほど。たしかにルキアの言う通りそれではまるでストーカーだ。

 そう考えるともっと梅の側に居てやったほうがいいかもしれない。なんだったら教師などに報告すべきだろうか。

 

「私ができることなどそうないが、霊術院の周辺警備も隠密機動の警邏隊の役目だ。大前田副隊長に話してみよう」

「大前田? なんで?」

「彼は隠密機動警邏隊の責任者だからな」

「……信用していいのかわかんねーな」

 たいがい失礼なことを考える一護である。

「まぁよい。で、その娘、名はなんというのだ?」

「ああ、桜庭 梅っていうんだ」

 

 言うと、ぴたり、と白玉を食べようとしていたルキアが止まる。

 そのまま匙を降ろすと訝しげに一護を見た。

 

「桜庭?」

「知ってんのか?」

「……桃色の髪の?」

「ああ」

 

 不穏な様子に一護も眉をひそめる。

 ルキアはしばし考えるようにうつむいたあと「いや」と小さく否定した。

 

「詳しくは知らぬ。だが、桜庭家の名は聞いたことがある」

「ああ、そういや貴族って言ってたな。そのつながりか?」

「それもそうなのだが。……そういえば、その娘四番隊に入りたいのだったか?」

 一護がうなずくと、ルキアは不思議そうに首をかしげる。

「なんかへんか?」

「変、というか、桜庭家は代々護廷十三隊には入らぬというので驚いたのだ」

「そうなのか?」

 

 一護が目を丸くすると、ルキアは逡巡した様子で視線を泳がせた。

「ルキア?」

「あの家は、元々は隠密機動の家なのだ」

 隠密機動。まさに今話していた警邏隊がある組織であり、二番隊の砕蜂が統括を務める裏の部隊。一護は忍者のようなものと認識しているが、それ以外にも罪人の処罰や尸魂界内の警備、伝達も務める重要な組織だ。

 そこを排出する家というのはいくつもあって、砕蜂も夜一も一族でその役割についている。

「元々は、ってことは今は違うのか?」

「ああ。今は別の機関が管理統括する組織を担っている」

「機関?」

 首をかしげた一護に、ルキアは神妙な顔でうなずいた。

 

 

 

「桜庭家は、四十六室の直下部隊、衛視隊を輩出する一家なのだ」

 

 

 

 四番隊に入りたい。

 そういって笑った梅の表情が一瞬よぎって消えた。

 

 

 

 

 

 






 

【挿絵表示】

 
 どうもこんにちは!
 前回あんまり面白おかしくかけなかったことが切なくて反省中の作者ですが、どんどん暗くなるw
 シリアスになるとこれだから。
 でもシリアスも嫌いじゃない。ちょっとおどろおどろしいくらいがBLEACHっぽい気もする。
 
 でも暗いのはきっと一護がツッコミしてないからだ!!
 助けてボケキャラたち!!!!!
 
 と思いながらルキアをだしました。
 イラストもルキア初めて描きましたが、一護のほうが10倍くらい描くのむずかしいですね……

 それでは引き続きちょっとダークモード続きます!
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