オリキャラ友達の梅ちゃんが頑張る。そして一護も動く。
※オリキャラが喋ります
※原作のネタバレあり
※捏造注意
「誇りとは、執着だ。
故に、捨てることは容易ではない。
それを”誇り”なのだと、認識した時点で」
暗い。暗い。
奥の奥。
誰も立ち入らない無の間(はざま)で、男は嗤う。
外の世界のすべてを、まるで見ているかのように。
「だが、こんなものは絶望には程遠い。そうだろう? 黒崎一護」
男はずっと見ている。
いずれ己が外に出た時の、退屈しのぎの土産話になるように。
尸魂界を支配する貴族たち。その中から集められた四十人の賢者と六人の裁判官。それらによって構成された最高司法機関。
それが、中央四十六室である。
すべての決定権はそこにあり、護廷十三隊もまた彼らの命令の元に動く。それ故に逆らうことはできず、異を唱えることすら許されない。
尸魂界の偉大な力。その直下で命を受けて生きることは、その一族の誇りだった。
他の何を失っても、何を犠牲にしても、それさえあれば良いのだと思うほどに。
だが、時代の流れはその意思を永遠に保ち続ける手助けはしない。血が薄まり、生と死を繰り返すうちに、やがて子孫はその誇りを忘れていく。
それが許せぬと思うほどに、誇りは歪み、やがて子孫に牙を剥く。なぜ、誇りを守らぬのだと。
時代はそれを古き者の固執とみるが、一方で、より多くの歴史を識る者に逆らえぬのもまた事実。
老輩と若輩は、そうして対立する。
桜庭家は中級貴族だ。
しかし一部では下級貴族とされることもあり、その立場は安定しない。ただ、屋敷はその階級の中では大きい方で使用人も一見多く見える。けれども、そのほとんどが中央四十六室の護衛隊である衛視隊の隊士たち。
ゆえに屋敷は殺伐とした、あるいは陰鬱とした空気が常に流れていた。
梅は普段離れに住んでいる。そこは唯一そうした闇から離れられる場所。
闇を厭う父が望み、祖父が許して建てられたそこに、梅が生まれた頃からずっと住んでいる。そこから梅は出るつもりはないし、本宅に住むなど考えたこともない。何かしらの理由がなければ本宅に脚を踏み入れることすらしたことはなかった。
父と同様に屋敷の空気を嫌ったというのもあるが、なによりも恐れたのは祖父の存在だ。
普段はそこまで恐ろしい人ではない。そもそも干渉すらしてこない。しかし仕事のこととなると酷く恐ろしかった。
ヒステリックに嵐のような暴力を繰り返されるわけでも、大きな声で怒鳴りつけられるわけでもない。ただじっと威圧的に睨みつけられる。そして不意に平手打ちが飛んでくるのだ。その後はただただ命令じみた言葉が降り掛かってくる。それに反論しようとすれば、また祖父は手をあげる。
ただ一発。大きな平手。その一撃が梅はひたすらに怖かった。
幼い頃、虚に襲われて泣いていた梅に「泣くな」「見苦しい」と言って手を上げた。その時から祖父はずっと梅の言葉を聞いてはくれない。
梅は祖父が恐ろしい。
連休で家に帰った梅を呼び出した祖父が、いつになく機嫌がよかったあのときも、梅はひたすらに恐ろしかった。
その薄い笑顔から出る言葉を聞く度に身体が震えるほどだった。
学院をやめろ。
衛視隊に入れ。
口答えするな。
それだけ言って、後は何もきいてくれなかったあのときも、自らの意思で声を発することができなかった。
理由を問わない梅を気にした様子もなく淡々と理由を告げられて、泣き出しそうになっていた梅を見もしなかった。
それでも梅が反発しようとしていることがわかったのだろう。それから監視が付けられた。
それすらも、祖父に常に睨まれているようでひたすらに恐ろしかったのだ。
それでも――。
梅は離れから出ると、本宅に向かった。
父はそんな梅の後ろをおろおろとついてくる。
心強いかと言われるとそうではないが、一人よりは少しだけマシだ。
それよりも、一護と、花太郎の存在が心の支えになっていた。
正直言えば、何をしたところで梅は祖父には敵わないだろう。
祖父の意思を覆すこともできないはずだ。もしかしたら怪我をするだけで終わるかもしれない。それでも抵抗すると決めたのだ。
怖いけれど、それでも「私は嫌だ」と伝えたい。
そしてもし、奇跡が起きるなら、祖父に認めてほしかった。
重い足取りで祖父の部屋へと向かう。
庭に面した祖父の部屋はこの屋敷で一番広い部屋。なのに進めば進むほどに暗くなっていくようで息が詰まった。
途中何人かの使用人とすれ違う。彼らもまた衛視隊の者たち。梅が祖父に、当主に近づくのを警戒している。もしかしたらこの中に梅を監視していた者もいるのだろう。味方がいないのだと、そればかりを思い知らされた。
「梅……」
部屋の前で、父が呼んだ。
やめろ。と言いたいのだとわかる。何を言わずとも、梅が抵抗しようとしていることを察しているのだ。
でも父がいくらやめろと言っても、梅は諦める気はもうなかった。
「お祖父様」
静かに呼ぶ。
「梅です」
声が震えていた。
しばらくじっと応えを待っていると、そっと障子が開かれた。内側にいた祖父の側仕えが開けたのだ。
部屋の中は暗かった。
闇だ。
べったりとした嫌な闇だ。
その中に入ることを身体が酷く拒絶している。
「何用じゃ」
闇の中からかすれた声が梅に問うた。
ああ。もう後戻りはできない。
そう感じながら、梅は脚を踏み入れた。
すたすたと一護は歩いていた。
行き先は地図をもらっているのでわかっている。
迷いなく歩くその背中には巨大な斬魄刀があった。
「一護さんっ」
その背中に花太郎が声をかけたか。
「なんだよ。ついてこなくていいって」
後ろをついてくる花太郎に相変わらず一護はそっけない。
「だ、だめですよ。貴族街に斬魄刀持って入ったら」
「なんだよ、桜庭家は貴族街の外れにあるからバレないって言ったのオマエじゃねーか」
一護は、桜庭の屋敷に向かっていた。
貴族たちの邸宅や高級料亭、その他貴族に関する施設などは基本的に貴族街というところにある。ルキアとたまにくる老舗の店も一応この貴族街の外れにあった。
上級貴族がいるのはその中の中央区画であり、そこへは本来許可がなくては立ち入ることもできないが、中級貴族である桜庭家はその場所より離れた場所に邸宅を建てていたため、一護はすんなりと付近に脚を踏み入れていた。
しかし、斬魄刀の持ち込みというと少し話は異なる。
一護が最初に尸魂界にきたとき戦時特例というものが発令され、それによって初めて席官以上の者は斬魄刀を帯刀することが許された。
その後度重なる攻撃から色々見直され、基本的に常時帯刀が許可されるようになったのだ、それでも許可されない特別な区域というのがあった。貴族街もそれに当たる。
それ故に、一護が斬月を持って入ってはいけないのだ。
たとえ貴族街の外れであっても。
そしてたとえ一護が学生でも。
けれども外れであることは警備がゆるいということでもある。例えば警邏隊に見つからなければ、つまり最悪バレなければなんとかなるのだ。
と、花太郎が言った。そう言ってしまったのである。
花太郎、最大の失言である。
「い、言いましたけど、最悪の場合の話ですってば」
「だいたい、許可取りに行ったんじゃないのかよ」
「だからそれは無理ですって言ったじゃないですか! 許可降りませんよそんなの。僕が取れたのは生徒が斬魄刀を持って出歩く許可だけですよぉ」
昨日一護が花太郎に頼んだのは3つ。一つは一護が斬魄刀を持ち歩く許可だ。
本来は生徒の要望では許可が降りないのだが、例えば席官などが生徒を見学に誘った際などは許可が降りることがある。そこで一護は花太郎にその許可をとってほしいとお願いしていたのだ。
花太郎はそんなことを申請したことがないためびっくりしてしまった。しかも見学などと言っても実際はそれをするつもりなど無いのだから、嘘の申請をしたことになってしまう。これは流石に花太郎も渋っていたのだ、結局梅のことが気になったらしく、なんとか緊急でもぎ取ってきたからすごいことだ。
もう一つは貴族街への帯刀許可。
しかしこれは降りるわけがないと花太郎から断られている。
最後の一つは桜庭邸への案内だが、これは花太郎が事前準備で地図を持ってきたため事なきを得た。
なので一応現在花太郎が一緒に来る必要はないのだが、なぜか付いてきている。
「一護さん、あ、暴れないでくださいよ」
「暴れるの前提に言うなって」
「だって一護さんだから……」
花太郎は情けない声を上げながらしっかり後ろをついてくる。それに笑いながら一護は花太郎を揶揄う。
「暴れると思ってあんな悲鳴あげてたのかよ」
「あ、あげてませんよ」
「聞こえねーだけで顔は叫んでたけどな」
「だ、だって乗り込むって言うから」
「乗り込むんじゃねーよ、オハナシしに行くんだよ」
「絶対嘘ですよね」
「微妙にヒドイ事言うよな。つか、ホントにそういうつもりじゃねーから」
「でも斬魄刀もってるじゃないですかぁ」
「これは保険」
「なんのですか……」
「そりゃオマエ、あれだよ。あれ」
「説明諦めないでくださいよ!」
そんなやり取りをしながら歩くこと数分。一護は一つの門扉の前で足を止めた。
門の横には”桜庭”の文字。
「ここだな」
「そ、そうですけど……どうするつもりですか?」
「やることは一つだろ」
言うやいなや、一護は手を口元に掲げると
「たのもー!」
「そこはごめんくださいですよ多分!」
いきなりの蛮行に恐ろしくなって縮こまる花太郎。
しかしいくら待っても返事がない。
「あれ?」
花太郎は首をかしげた。
「なんだよ。インターフォンとかねーのか」
「いんたー……呼び鈴ですか? ないみたいですけど、その場合は使用人の方がいるはずなんですが……」
「誰もこねーじゃんか」
不満そうに一護は唇を尖らせる。
それから一瞬迷ったふうに腕を組んで、次の瞬間には扉を無言で押し開けていた。
「い、一護さん!」
「誰も居ねーんだからしょうがねーだろ。キンキュージタイだよ」
「全然なにも緊急じゃないですよ!」
「つーか、鍵かかってねーんだけど」
「え? そんなはず、あ、ほんとですね」
まるで入ってこいとでも言わんばかりの状況に眉をひそめる。誘い込まれているのだろうか。
とはいえ、それが止まる理由にはならない。
一護は迷い無く屋敷の敷地に足を踏み入れた。
するとじわりと霊圧を感知する。
梅を監視していたあの霊圧だ。
複数あったあれらをあちこちから感じる。そして、最後まで残って監視していた者の霊圧もだ。
それから、梅の霊圧。
ゆらゆらと揺らめいて、荒れている。
一護は玄関に向かうと、再び声をかけた。
「たのもー」
「ごめんくださいですってば!」
「わかったわかった。花太郎はちょっと外で待ってろ、な」
「ええ。そんなぁ」
「だめだったらすぐ出てくるって」
しばらく悩んでいた花太郎だが、扉が開かれたタイミングで渋々というように一護から離れた。
一護はするりと玄関に入る。
扉を開けたのは小柄な男。口元まで布で覆っていて、まるで忍者だ。男は鋭い眼差しで一護をみていた。その突き刺さる視線を無視して一護はたずねる。
「桜庭梅さんの学友ですけど、梅さんいますか?」
「おられません」
ぴしゃりと言葉が返ってきた。
一護は目を細める。
「……あんた。梅を見てたやつだよな」
敬語を捨てて問う。しかし男は「なんのことやら」と返した。
なるほど知らないふりをするらしい。霊圧は明らかに見ていたやつの一人だというのに。
「友達が来てるのに、通せない理由でも?」
「梅様はおられません」
「霊圧を感じるんだけどな」
「おられません」
まるで話す気がないらしい。一護が諦めるまで続けるつもりなのだろうか。
面倒に思ってため息をついたときだった。
感じていた梅の霊圧が大きく揺らいだ。
思わず目を見開く。
嫌な予感がして一護は強引に屋敷に足を踏み入れた。
応対していた男が慌てた様子で一護をとめる。
「梅様はおられません!」
「いるのはわかってんだ。邪魔すんなよ」
貴族の邸宅に強引に入ることがどれほどのことなのか一護にはわからないが、それで躊躇はしてられないと一護は強引に入り込む。すると即座に周囲を刀が囲んだ。
複数の覆面の男たちが、それぞれ斬魄刀をもって
一護を取り囲んでいる。
「どけよ」
低くうなった。
その間もまた、梅の霊圧が揺らぐ。
「梅様はおられません。お引き取りを」
マニュアルのような言葉を返してくるのが不気味で仕方ない。一護は眉を寄せて周りの連中を睨みつけた。
まるで揺らめく梅の霊圧が助けを求めているようで、一護は焦燥感を強める。
「何事もなけりゃいいんだ。けど、そうじゃなかったら、このまま帰ったら後悔するんだよ俺は」
昨日梅は《黒崎一護がいなければ事はもっと簡単だった》と言った。
それは、一護の存在が梅が学院を去ることの理由に影響しているということだ。たとえば、学院に一護がいることを知っていて、そこから離したいとか。
つまり梅の祖父が四十六室に背いてあえて一護が学院にいるのを知りながら、梅を一護から離そうとしたパターンが。その場合は梅の祖父と話をする価値はある。
しかしそれでは微妙に筋が通らない。
もしそうならば、梅の祖父の行動は梅を思ってということになるが、そんな印象はないし、それならば梅が学院をやめるからと言って一護と梅への監視をやめる理由にはならない。少なくとも梅が学院を去るまでは監視、否、見守るべきだ。
けれどそうしない。
ならば考えられる可能性はもう一つ。四十六室の指示。
しかしそれならばむしろ一護の正体を梅に教えて監視させるのではないだろうか。なのに、学院をやめさせて遠ざける意味とはなんだろうか。
そうなると、別の可能性だが、もし、一護が考えているとおりならば、一護は呆れてものも言えないだろう。
どちらにしても一護が関わっているならば、梅の祖父と一護が話すことには意味がある。
例え、梅に正体がバレてしまっても。
一護はゆったりとした動作で背中の斬月の柄を掴んだ。
「勘違いだったらあとで謝るよ。じゃあ、通してもらうぜ」
男たちが構える。
一護は斬月を抜き放った。
思いっきり頬を叩かれて、梅は畳に身体を打ち付けた。
「父上!」
悲鳴のように父が叫ぶ。それを黙殺して、祖父は梅をじっと見下ろした。
「もう一度言うてみい」
梅は痛みに耐えながら顔を上げる。
「わたしっ、四番隊に入りたいんです。だからっ」
ひくりと喉がなる。
強く睨みつけられて身体がすくんだ。
「もう一度、言うてみい」
ゆっくりと祖父が言葉を繰り返す。
「わ、たし……はっ」
言えない。
怖くて、言えない。
祖父に正直に話をした。
辞めたくないと。頑張りたいと。頑張らせてほしいと。祖父は無言でいたけれど、やがて立ち上がり梅の目の前に立つと、前触れもなく梅の頬を張った。
それが数度。
身体を床に打ち付けてもなお、言い募る梅の頬を祖父は容赦なく叩く。
父が間にはいれば、祖父は父の頬を張った。
祖父の目が怖い。
まるで狂気に満ちたその目が。
「お前は、衛視隊に入るのだ」
「い、や」
「何度も言わせるな。お前は衛視隊に入る。役目があるのだ」
そんなもの、梅はいらない。
「黒崎一護がどこかの隊にいる。お前はそれを探し出し、監視し、そして偉大なるあの方々にそれをお伝えする役目を担うのだ」
それが、祖父の願い。
梅は首を振った。
そんなことのために夢を諦めるなんて嫌だった。
「上の二人は見つけられないでいる。人手がいる。もっと手足がいるのだ」
「わたしは、手足じゃ……」
口を開き抗議して、次の瞬間祖父の大きな手が梅の左頬を叩いた。
ぐしゃりと身体が頽れて、畳に這いつくばる。
まるで惨めな自分の姿に梅は涙を浮かべた。
そんな、ことのために。
黒崎一護をみつけだすため。
たったそれだけのために学院を辞めさせられると最初に聞いたときから、梅は心のどこかで黒崎一護を恨んでいた。
でもそれはお門違いだ。
恨むべきは英雄ではない。
他の一族を引きずりおろして、中央四十六室により近づき、取り入りたい。それだけのために黒崎一護もまた利用されているだけだ。
本当に、本当に祖父は、梅を手足としか思っていないのだ。
その理不尽が頭にくるのに、立ち向かいたいのに、勝てない。
やはり頑張っても打ち勝てない。
「お前がなんと言おうと決まったことだ。さきほど、霊術院には中退の旨の手紙を出した」
びくりと梅は震えた。
驚いて、祖父を見上げる。
口元の髭をなでて、祖父はニヤリと笑った。
それがおぞましくて、吐き気がする。
「そんな……」
頑張ろうと思ったのに。
立ち向かおうと思ったのに。
無駄だった。
ただ怖い思いをしただけだ。
もうだめだ。
『一緒に戦いましょう』
声が頭の中で聞こえた。
『できること全部やったのかよ』
――ああ、どうして。
――どうして思い出すの?
――どうして、こんなに悔しいの?
怖いのに。
もう無理なのに。
わかっているのに。
梅は祖父である男を睨んだ。
「わたしは、諦めたくない! わたしは! あなたの道具じゃない!」
叩かれてもいい。
殴られてもいい。
わたし。がんばるって、きめたんだ。
祖父の手が振り上げられる。
父の制止する声が聞こえる。
痛みを覚悟して、梅は目を強く閉じた。
突然、背後から大きな物音がした。同時に梅の横を障子と何かが掠めて梅は目を見開く。
吹き飛んできたそれは再び大きな音と同時に壁にぶつかり、ずるずると崩れた。
それは人だ。
衛視隊の、人。
咄嗟に振り返って、眩しさに梅の眦から涙がこぼれた。
逆光でもわかる。オレンジ色の髪。
志波一護が、そこにいた。
「いち、ご…くん」
呆然と振り返る梅が一護を呼んだ。
呼ばれたから、一護は柔らかく笑う。
部屋の中には数人の人間。
倒れ伏した男と梅と、手をふり上げた老人。その周りに数人の男たち。
周囲の男たちは口元を隠した服装で、この部屋に来るまでにさんざん相手をした連中と同じ格好をしていた。武器を構えているが、気配は弱い。
倒れた男は梅と同じ桃色の髪で、顔立ちも少し似ている気がする。頬を赤くしているところを見るに殴られたらしい。唇の端から血がたれていた。
手を上げている老人もまた桃色の髪。ただし色はうすく、白髪混じりだ。口髭と顎髭はもっと白い。血走った目で呆然と一護を見ている。
すべての者の視線が一護に向けられていた。
けれど、一護にとってはそれらはどうでも良いことで、一通り観察してあとは意識の外に押しだす。
梅は、頬を真っ赤に腫らしていた。濃いブラウンの瞳からは涙が溢れ、腫れた頬を濡らしている。
一護は笑みを作ったまま1歩前に踏み出した。
ゆらゆらと揺れるのは梅の霊圧と、それから一護の霊圧。
梅の霊圧は安堵を、一護の霊圧は怒りを帯びて揺らめいた。
数人の男が一護に飛びかかった。
それを、斬月をひと振りすることで吹き飛ばす。
霊圧と剣圧にあてられて、男たちは襖を倒し隣の部屋の壁に激突したが、それを一瞥すらせずに一護は再び前に足を踏み出した。
「大丈夫か、梅」
沈黙のあとに、梅は呆然と頷く。
大丈夫には見えないが、それでも大丈夫と頷くのを見て少しだけ安堵した。
「…………なにものだ」
老人がかすれた声でいった。
一護は再び老人に目を向ける。
冷や汗を流しているようだが、そんなことは知ったことではない。
一護は再び前に出ると、斬月を肩に担ぐ。
「何者だ! 貴様!」
今度は更にはっきりと老人――梅の祖父――桜庭家当主が叫んだ。
一護は唇を歪めて笑う。
この言葉をまた言うことになるとはと、思いながら。
「黒崎一護」
「死神代行だ」
多くは語らん。
ここがかきたかった。ただそれだけ。
可哀想な梅。やたら怖い爺さん。つまるところ爺さんは勘違い横暴爺さんです。
そしてそれを上回る怖さの一護でした。
千年血戦編で白哉に「守ってくれ」て言われた時と、ユーハバッハと最初に対面した時の怒り具合がめっちゃ好きすぎる作者です。まぁ今回はそこまでは怖くないですが。
ともかくラストの書きたいところがかけて満足です。
あとここまで色々書いてきた内容回収できてほくほく。
まだいくつか未回収あるので、それは次回です。
では、感想いただけたら嬉しいです。
続きをお楽しみに!!