名乗ったらもう一護の独壇場だ!!! と思いきや。という話。
それにしても前回の皆さんの感想うれしすぎました。ありがとうございます!
※オリキャラが喋ります
※原作のネタバレあり
※捏造注意
「ちょっと騒動起こすから」
そう言われたのは、伝令神機越しの音声。
死神ではない一護にもあったほうが良かろうと渡された最新のそれをつかって、一護はルキアに連絡をとってきた。
珍しいこともあるものだと思ったルキアに一護が言ったのがその言葉。
思わず「なんだと?」と返したルキアに「じゃあそういうことだから」と特に事情を話さない一護をルキアは怒鳴りつけた。
相変わらず勝手にやる。事前に報告するだけ多少マシにはなったが。
詳細をきけば、桜庭梅の家に行くことにしたとのことで、しかしそのために斬魄刀の持ち出し許可を取るというのだから、ただ友人に会いに行くというわけでもない。
何をするつもりなのかと説教をしようとするルキアに一護が一言。
「なんかあったら、頼む」
その一言で目をつぶってしまうのだから、大概ルキアも一護に甘い。
やれやれと首を振って「できるだけ騒ぎは起こすなよ」と釘をさせば、「わかってる」と答えて連絡は切れた。
伝令神機を机において、ルキアは溜息をつく。
それから、フッと小さく笑った。
何がわかってるだ。
「あやつが大人しくしているものか」
ルキアは薄く笑いながら顔を上げた。
何が起きるやらと思う。
でも少しだけ、この騒がしさが懐かしくて笑ってしまうのだ。
さて、まずは京楽隊長に報告せねばと、ルキアは立ち上がった。
黒崎一護とは彼にとって畏怖であった。
かつてこの尸魂界を守った英雄であり、そして仕える中央四十六室が存在を危険視している存在。掟を犯す者。
その姿を当時見た。
橙色の髪。身の丈ほどの大刀。
しかし彼の頭にこびりついたのは外見ではない。おそろしい霊力の塊。化け物のようなナニか。見えていたのはそれだけ。そして記憶に強く残ったのもまた、ただ、黒崎一護は危険な存在だという直感だけ。
己の誇りに刃を向けかねないその力を恐れるのは、彼の中の真理。
その黒崎一護が尸魂界に来た時の彼の心情はもはや荒れ狂う嵐のごとく。
「黒崎一護が護廷十三隊に入った」という情報が入ったならば、彼を見つけ出さねばと躍起になった。
はやく見つけて、はやく主たちにその存在を伝えよう。
――そうだ。そうすればきっと主たちは我らを認めてくださる。
――我が価値をきっと理解し、信頼してくださる。
権力と恐怖に取り憑かれた男は薄ら笑いを浮かべて、未来に想いを馳せていた。
それが、無意味だと知る由もなく。
そして今、探していた存在を前に、男は、老人は目を見開く。
眼の前にいる存在は強大な力を有していた。
それが足を踏みだし、地を蹴るほどに空気がきしむ。
キリキリと
じりじりと後ずさり、ゴクリと唾を飲み込めば、息を吐くこともできずに藻掻く。
恐るべき霊圧に、老人はただただ声もない。
哀れなほどに矮小なその男を前に、黒崎一護は再び足を踏み出した。
一護は、薄暗い部屋の中を進み、しゃがみこむ友の横でピタリと止まる。
眼の前にいる己よりもいくらか背の低い老害を冷たく見下ろして、巨大な斬魄刀を肩に担いで、一護はひたすらに老人を威圧した。
老人の目には困惑と怒りと恐怖が渦巻いている。
一護には老人の動揺が見えていたが、それを冷静に分析できるほど一護は冷静ではなかった。
否、冷静ではある。
だが、心は目の前の蛮行に煮えたぎるような怒りを覚え、揺れている。
友を傷つけられた怒り。家族を虐げるというその行為に対する怒り。傷つき涙する友が感じた恐怖を顧みない愚かな老人への怒り。
そのどれもが一護の霊圧を揺らめかせる。
一護は己の霊圧が荒れ狂えば害をもたらすほどのものだと知っていた。それ故に抑えられていた霊圧がこの場に来て、その男を目の前にして渦を巻いて放出されていく。
霊圧の波動を受けて、一護を囲んでいた者どもが膝をついて震える。
桜庭の当主もまた膝を震わせて数歩後退りする。しかし、何が男を支えているからなのかわからないが倒れはしない。
それでいいと一護は思う。
こんなことで膝をついて許しを請うようでは生ぬるいとすら思ったからだ。
唸って霊圧に耐える男を、一護は侮蔑を込めて睨む。
さて、どうしてくれようか。
そう思った一護の耳に情けない声が届いた。
「ひぃいいい! 一護さぁん! なんてことしてるんですかぁ~!」
この場においては場違いなほどゆるい、まるで気が抜けそうな声。実際その声を聞いて一護は肩の力をわずかに抜いた。それから振り返る。
案の定そこに居た人物に、一護はため息と同時に小さく笑った。わずかに冷静さを取り戻して霊圧を抑える。
「なんだ、来たのかよ花太郎」
障子から顔をのぞかせて部屋の中の様子を窺う花太郎が、倒れている男たちに悲鳴をあげていた。
怖がっているくせに、一護と梅が心配で来てしまったのだろう。
ここまでの道のりでおそらく一護が倒した者どもが転がっていただろうが、それらはどうしたのか。花太郎にとっては敵とは言えないだろうから治療でもしてきたのか。と言っても一護は冷静に峰打ちと拳とで倒して来たので、骨折はいてもそれ以上の大怪我は居なかっただろうが。
花太郎は相変わらず障子にはりつき、縁側から部屋の中を覗いて、ひぃぃ、と悲鳴を上げる。
「だって、すぐ出てくるっていったのに出てこないから………やっぱりやってしまったんですね」
「残念なものを見るような顔すんな」
「そ、そんなぁ、だって僕こういう顔なんですよ!」
泣きそうに言われて「んなこたぁ知ってるよ」と雑に返した。
やがて部屋の暗さに目が慣れてきたのか、唐突に花太郎が悲鳴のような声を上げた。
「嗚呼! 梅さん! 怪我っ、怪我してるじゃないですか!」
花太郎は足元に転がっていた男たちをまたぎながら梅に駆け寄った。こういうところ微妙に肝が座っていると思う一護である。
一護がわずかに身体をずらして花太郎が梅の側に寄りやすいように空間をあけると、そこに花太郎が膝をついて座り、梅の頬に手をかざした。
「ああ、ひどい……今治療しますからねっ」
そうしてあたたかな霊圧が灯る。それでようやく梅が安心したように息をついた。
「山田三席……一護くん………」
安心すると余計泣けてくるもので、震える声で二人を呼んでからじわりと涙を瞳いっぱいにためて梅が一護を見上げた。
それを拭ってやろうかと思ったところに、硬い声が届く。
「黒崎、一護、だと?」
抑えられた霊圧によって、声を発する事ができたのだろう。
相変わらず真っ青な顔に血走った目で一護を凝視する。
両足を地にしっかりつけてたっているあたり大したものだが、一護にはどうしても小物にしか見えない。すくなくとも霊圧的な部分で言えば本当に微々たる力しか持っていなかった。
おそらく梅よりも霊圧は小さい。
こんな男が梅を殴っていたのかと、思い出せば再び腸が煮えくり返る。
一護は剣呑に男を睨みながら、低い声で問いに答えてやった。
「ああ」
「……馬鹿な」
すぐさま、男は否定した。
「馬鹿なじゃねーよ。馬鹿はてめーだ」
本物でなければ何だというのか。
名を騙る馬鹿か? 一護だって、望んでは居なかったが自分がそれなりに有名なのは知っている。その名を名乗るのがおそらく人々にとっては異常なことで、想像すらつかないことなのだと。
そんな愚かな真似をするような男に見えているというのだろうか。だとしたら不愉快極まりない。
「黒崎一護のはずがない」
と当主が言う。
一護は斬月を持った利き手とは反対の手で髪をガシガシとかいた。
「ホンモノだっつの。だから梅がガッコウ辞める意味もねーんだよ。同じクラスにいるんだから」
一護は縁側を歩いてこの部屋に入る直前に聞こえた会話を思い出す。
『黒崎一護がどこかの隊にいる。お前はそれを探し出し、監視し、そして偉大なるあの方々にそれをお伝えする役目を担うのだ』
やはり、今回のことには”黒崎一護”が関わっていた。”黒崎一護”を探す手数がほしかった。ただそれだけのことだが。全く以ってくだらない。
だってすぐそこにいるのだ。それも梅の側に。
それを知らずに見当違いなところを探させようというのだから、愚かと言って何が悪い。
ともかくこれで梅をやめさせる理由はなくなるはずだが、そううまくは行かないもので。
「本物な訳がない!」
と、当主は叫んだ。
本気で思っているというわけでなく、ただ否定したいだけのようにも見える。そんな様もまた小物感がすごい。
「ホントに馬鹿なのかよ。つかそもそもあんた俺の顔もしらねーのかよ。俺のこと探してたんだろ?」
そう言ってはみたが、当主が一護の顔を知らないのは想像できた。
なにせあれだけ側で監視していて、隣にいるのが黒崎一護だと気づかないのだから。少なくとも彼の部下たちは一護の特徴を何も知らないわけだ。そして普通探させるなら特徴くらい話しておくものだろう。それをしないということはこの爺もよく知らないのだろうとは想像ができる。
それでよく探すなどと言えたものだと思って呆れて言えば、桜庭家当主はニヤリと口元を歪めた。こうして会話することで、一護を得体の知れないなにかから、言葉を発する若造と認識したらしい。
「何を馬鹿なことを。黒崎一護は70代まで生きた。貴様のような若造のはずもない。貴様、梅の同級のものだったな? こんなことをしてただで済むと思っているのか小僧」
一応は貴族当主。それなりに人を使う立場故に権力者の顔を取り戻した男が一護に高圧的に言った。
一護はそれを鼻で笑って一蹴する。
「なんだ、そこからかよ。随分テキトーだな」
まさか一護が若返っていることも知らなかったとは。
仮に外見を知っていても、老人だろうと思い込んでいれば確かに見つけられないかもしれない。
だがそれはつまり、この男には中央四十六室から情報が降りていないということでもある。
やはりな。と一護は思った。
中央四十六室の命令で動いているにしては、やっていることが意味不明だと思ったのだ。
梅には悪いのだが、今回の件はそれほど大した話ではない。
ルキアの話からして、一護が霊術院に通うことは京楽から中央四十六室に伝えられている。そしてそれは許可された。
しかし貴族は一枚岩ではない。勝手に一護を取り込もうとする者たちは居て、それを牽制するために京楽は『護廷十三隊にすでに一護は入っている』という噂を流した。
要するにこの爺さんは、その噂に躍らされたのだろう。
そして、中央四十六室から命令もないまま、功績を上げたいがために一護を勝手に探し出そうとした。
まぁ、この爺さんが独断でやったか、命令でやったかなど一護には関係がない。ただ場合によっては話がこじれることもあるかと思っていた。しかし、これならば、それほど大事にはならないかもしれないなと思う。
しかしそうなると、この男に一護が本人だということを明確に伝える方法があるだろうか。
梅のほうはさらに半信半疑なのだろう。一護と花太郎を交互に見て、不安そうにしている。
「若返ったって言ったら理解できんのかよ」
「戯言を。もう少しマシなことを言えんのか、英雄の名を騙る不届き者めが」
余裕を取り戻した男の言葉によく言うよと呆れる。
さらに男が声を張り上げ、「侵入者だ! さっさと追い出せ!」と叫ぶので、耐えきれずため息をつく。
手下たちへの命令が響き、隠れていた複数の黒ずくめの者たちが現れて刀を抜き一護を囲み、そうして一護を侵入者として排除しようとする。それを一瞥してからやれやれと一護は目を閉じて、おもむろに斬月の切っ先を床に突き立てた。
同時に、霊圧が再び膨張し、ぶわりと風をまとって空気を震わせる。
当然、護衛たちは動きを止めた。正確には動けなくなった。冷や汗を流し、震える足では退くこともできず、ただ、そこに釘付けになる。
「っな、何をしている!!」
「無茶言うなって」
一護の体からあふれるそれに簡単に向かって来ることができるほど人間の本能は鈍くはない。むしろ逃げ出さないだけ褒めてやっても良いほどだ。
「だ、だれも、いないのか」
当主が周囲に助けを乞うように顔を巡らせるが、誰もここにはこない。
「無駄に決まってんだろ」
廊下にいた者共は一護を止めようとして返り討ちにあっているし、部屋周辺にいた者たちも侵入してきた一護を止めようとして吹き飛ばされたばかりだ。
「てめぇ一人だ」
老人はとうとう尻もちをついた。
さて、こんな状況でも意外なことにしっかりしている男が一人。
「だめですよ一護さん! 梅さんにも負担すごいんですからっ」
言われてハッとした一護が霊圧を抑えて振り返れば、青ざめた様子の梅がいた。
こちらは最初から座り込んでいるのだが、そろそろ本気で気絶しそうな顔をしている。
「わ、わりぃ」
あわてて膝をついて様子を窺う。
梅は真っ青になりながらコクコクとうなずいた。
こうして花太郎に止めてもらうのは本日2度目。地味に彼をつれてきてよかったと安心する一護である。
「それでその、この後どうするんですか?」
「どうっていってもなぁ」
花太郎の登場で怒りが落ち着いていなければ、さっさと殴りつけて終わりだったのだが、冷静になってしまうと梅のためにどうにか穏便におさめてやりたいという気持ちになる。いくら恐ろしかろうと、梅の祖父なのだ。今後一切梅がこの老人に関わらないというわけにもいかない以上、この爺さんには納得してもらわねばならないのだ。
もちろんこのクソジジイには多少痛い目をみせないと気がすまないのも事実だが。
「ばかな。そんなはずは。そんなはずは」
ぶつぶつ繰り返す当主を一護は見下ろした。その目は変わらず血走っている。どうやらまだ、一護が”黒崎一護”だと信じたくない様子。
黒崎一護であるわけではないと言いながらも、おそらく当主は理解しているはずだ。すくなくとも一護の霊圧を受けて青ざめているところを見る限り、敵わないことも、一護が膨大な力をもっていることも理解はしているだろう。
故に彼が否定したがっているのは現実。つまり現実逃避がしたいのだ。
本当にくだらない。
「もうわかったろ。あんたが信じたくなくても俺が黒崎一護なんだよ。わかったら梅のことはもう放っておいてやれよ」
一護が言うと、当主は慌てた様子で首を振った。
「梅は、あんたのもんじゃねーんだ」
「ちがう私は、私は孫のために……」
「あ?」
「孫の進路を、私は…………」
「…………それ、本気でいってんだったら斬るぞ」
一護は低い声で当主に圧をかけた。斬月の切っ先を目前に突きつければ、当主は限界まで身体を反らして逃げようとする。
それから今度は「ああ、私は、私は主のために」とつぶやき始める。
「今度は主のためかよ。言ってることめちゃくちゃだぞ」
果たしてこの男は正気なのだろうか。
脅かしておいてなんだが、そんな疑問すら湧きそうになる様に一護は困ったなぁと内心で眉を下げた。
恐怖で納得させて押し付けるのは一護の性格上好まないので、これ以上脅かすつもりはあまりない。あまり。
しかし会話でどうこうなる様子でもなく、時間を置いて話し合うというのも妙な話だ。
そもそも、突撃して一護本人が梅と一緒に学院に通っていると理解させて、それで一旦は話が収まるかと思ったがそうであるわけがない。考えてみれば今は納得してもまた一年後には同じ事が起こりそうなものではないか。己の詰めの甘さにあきれてしまう。
「こういう頭使うの苦手なんだよな」
結局今一護にできることはあまりなく、もしあるとすれば梅とこの爺さんがそれなりに対等に話せるように威圧してやるだけ……。
いや、それも対等と言えるのかどうか疑問だが。
さてどうするかと腕を組んで悩んでいると。
「なんとまぁ、をこがまし」
艶のある声が聞こえた。
一護は顔を上げて、部屋の隅を見る。
闇だと思っていたそれがゆるりと動いて、それからぼうっと白い面が浮かび上がる。
濡れたような黒髪に切れ長の瞳。唇には赤い紅。死覇装を見慣れた尸魂界で、まるで喪服のような印象を受ける黒衣の女がそこに立っていた。
女はうっすらと笑みを浮かべると、深々とお辞儀をする。
一護は「ああ」とその霊圧に覚えがあって声をあげた。
「ずっと見てたのは、あんたか」
ずっと梅を見ていた視線の中に紛れるようにこちらを見ていた者。
他の霊圧が消えようとも、決して消えなかったただ一人。
女は顔を上げると、一護の言葉を肯定するように優雅に笑った。
おはこんばんちは!
そして花太郎ナイス活躍!
前回皆さんの反応うれしぎてニヤついていた作者です。嬉しすぎて感想待ちしてしまいました。もうここで完結したほうが気持ちよく終われるんじゃね? と思うレベル。
いや、ほんとありがとうございます!
少し余韻を持たせて一日置いてから次話更新しようかなぁとも思ったのですが、一日あけると続きを書かなくなりそうだったので更新しましたw
でもいいよね。名のり。いいよね。死神代行。かっこい。かっこいいぜ主人公!
ただここで力技ですべて屈服させる訳にはいかない今回のお話。
そんな中現れた女は何者なのか……?
それでは次回お楽しみに!!!