今回は梅が楽しそうな一護を見ているだけの息抜き話です。
※原作のネタバレあり
※捏造注意
「だって、一護よ? 私は絶対こういうこと起きると思ってたわ」
「でもまさか貴族街で騒ぎ起こすとは思わねーっすよ」
「彼はあんまりそういうの気にしない性格みたいだから」
「今後はぜひ気にしてもらいたいところだがな」
和気あいあいと、会話に花を咲かせる数名。
花と言うならむしろ彼らこそ花のように艶やかで、その外見もさることながら、力はそばにいるだけで圧倒される。
豊満な胸を死覇装の下に納め切れないでいる茶髪の女性。
真っ赤な髪を後ろで三つ編みにした刺青の男性。
金の前髪が特徴的などこか生気のない痩身の男性。
それから顔に3本傷のある袖無しの死覇装の男性。
見覚えはない。
しかし知っている。
たとえば瀞霊廷通信で、あるいは噂で。存在は知っている。その外見の特徴も聞いているのだが、見たことはない。
そんなある意味雲の上の存在を前に桜庭梅は完全に萎縮していた。
家の事情に巻き込んでしまった友人が、実は英雄黒崎一護だったと知ってから数日。
梅はそれなりに忙しくしていた。
祖父が勝手に学院を辞めるという手紙を出してしまい、それの取り消しを父が行ったのだが、やはり直接謝罪したくて学院長に目通りをした。石和学院長は以前は護廷十三隊の五番隊に勤めていた方。温和というか寛大で懐の広い人、という印象を受けた。
その際、花太郎から勧められた見習いについて尋ねていた。
聞けたのはやはり学院長の雰囲気がよかったからなのだが。
そもそも死神見習い制度とは、大戦後に作られた臨時措置だ。死神の多くが殉職し人手不足となった護廷十三隊を早急に立て直すため、4回生以上の生徒が死神の仕事をしながら学院に通うという制度ができた。見習い期間を在学中に取ることでより早く1人前の死神になれるようにとの措置。
当初はかなり喜ばれた制度らしい。
刺激がない学院生活に刺激ができた! みたいな感じだったそうだ。
しかし年月がたって状況が落ち着いてきた今は、その制度を利用する自由が与えられながらも、その制度を利用する上で発生する責任にも注目が集まり、それを負いたくないために見習い制度を使わない者が増えた。
責任とは、つまり一度見習いになると簡単に死神をやめられないということ。梅にとっては祖父の干渉から逃れるために「あってよかった縛り」と認識している内容だが、進路に悩みながら霊力があるからというだけで霊術院に通っている者たちからすると、不安になる内容らしい。
覚悟のあるものだけが利用する制度となると、当然だが見習いから護廷十三隊へ確実入隊する確率は上がる。結果、見習い制度は一種の確約のように扱われる様になってしまった。
梅が「見習いになって四番隊入隊の確約取得作戦!」を使うことにしたのも、この現状が大きく利になっているからである。
しかし学院長はその状況の改善を目指しているらしく、ルールの緩和などを上に打診しているのだとか。うまく行けば再び全生徒の義務化が進むかもしれない。
その話を受けて、梅はかなり不安になった。
枠が広がれば見習いになれる可能性はあがる一方で、見習いになったところで進路が確定せず、護廷十三隊行きがなしになる可能性もあるわけだ。
それは困る。
となれば、今できることはより優秀になるしか無い。本当に確約がもらえる程に優秀に。
それから梅はこれまで以上に熱心に勉強を始めた。
その状況を見ていて心配したのは、事情を一番良く知る志波一護だった。
梅は元々勉強熱心なタイプではあるが、ここのところ昼休みも休日も返上して勉強をしていた。いまからそれでは保たないのではと危惧した彼は、休日に梅を外出に連れ出したのだ。
出かけようと言った彼の表情はぶっきらぼうながら心から心配してくれていた。最近、まるで子供か孫のように扱われている気がする。そこまで年齢は違わないと思うのだが、やはり肉体年齢の老化を経験すると人はそうなっていくのだろうか。
おじいさんになると自然と”儂”と使うようになるとか言うし。
そうして休日連れ出された梅は、一護の行きつけだという店に来ていた。よく休日は昼食を食べに来ているのだそうだ。
あの、黒崎一護の行きつけの店。
いったいどんなものかと覚悟を決めてきたのだが、意外なことに普通の定食屋だった。昼時以外はかき氷などを出しているらしく、苺ソースたっぷりのかき氷を梅は食べる。
価格もお手頃で、なかなかいい店だ。
そんなことを思って、いつもきているのかと尋ねたとき、不意に声がかけられた。
「あっらー、一護じゃないの」
店の入口の直ぐ側で食べていたからだろう。外からその姿が見えていたのか店の入口からひょっこりと姿をみせた人物に梅は一瞬息を止めた。
十番隊副隊長松本乱菊、その人である。
「めっずらしいわねぇ。お昼時でもないのにいるなんて」
「乱菊さんこそ。またさぼりかよ」
「人聞きが悪いわねー。隊長がでかけている間に休憩しにきたのよ」
「それをさぼりって言うんスよ。あんたの場合」
ポンポンと会話を飛ばしながら、断りなく乱菊は一護の横に腰をかけた。
「で? この子だあれ?」
気怠げに視線を向けられて、慌てて梅は匙を置いて背筋を伸ばした。
「さ、桜庭 梅と申します!」
「同級生っす」
一護が補足するように付け足す。
すると乱菊は「ああ!」と大きな声を上げた。
「あなたがそうなのね! 一護ったらやっるぅ!」
「なにがだよ!」
「織姫にちくっちゃおー」
「だからなんっでだよ!」
ニヤニヤと笑って乱菊が一護の頬をつつくと、照れたように赤くなって一護は乱菊から上半身を遠ざける。
正面で行われるそのやりとりに目を白黒させる梅を放置して、二人の会話が続く。
「しかも一緒にお茶しにくるなんて」
「なっ、ル、ルキアとだって来てるし!」
「朽木はいいのよ。結婚してるんだから。でもこの子は別でしょー!」
至極楽しそうに笑って立ち上がり、今度は梅の隣に座る。
「あ、あのっ」
「なんかされそうになったら逃げるのよ♡」
「しねーよ!!」
バン! と机を叩いて一護が声を荒げた。
知らなかったのだが、松本乱菊という人はかなりいたずら好きらしい。
あと先程の会話からしてサボり魔なのかもしれない。
梅は混乱しながらも一方でそんな冷静な分析をした。けれどそれができたのもそこまでだった。
「うるせーぞ。誰だ店で騒いでやがるのは」
ひょっこり店の入口からまた別の死神が顔をだした。
その人物は一護と乱菊を目にして驚いたように目をみはる。
赤い長い髪を背中で三つ編みにした、ふしぎな入れ墨を額にほどこしている男。
梅もまた目をみはった。
こちらも当然知っている。
六番隊副隊長、阿散井恋次である。
梅はふたたび硬直したが、そんな事お構いなくずかずかと店に入ってきた恋次は、三人が座っている席の前まで来て首をかしげた。
「なんだ、乱菊さんと一護か……。何してんすか二人で……三人?」
小柄な梅が乱菊の横にいるのに気づいて、恋次の言葉が止まる。あわてて、梅はなんとか自己紹介をした。
「あ、えっと、桜庭 梅と申します!」
「あ、あー! 例の!」
唐突に恋次が声をあげる。見事にきれいな「わかった!」という感じで手のひらに拳をトンと落とした。
それにしても、例のとはなんだろう。
そういえば先程も同じような反応を乱菊にされたが。
恋次はくるりと首だけを店の入口に向けて声を張る。
「なぁ檜佐木さん、さっき話してた件の当事者がいますよ!」
「なに?」
呼ばれて店に入ってきたのは顔に三本線の傷がついた男。食い気味に梅の顔を凝視するその頬には69の数字が彫られている。目つきがするどく、袖のない死覇装を着ていた。
九番隊副隊長、檜佐木修兵だ。
と、ここまでくると梅も流石に気が動転してしまう。視界がぐるぐると回る勢いで混乱してもはや名乗ることも覚束ない。
さらに。
「檜佐木さん、そんなに勢い付けたら怖がらせちゃいますよ。なんだかんだ言って顔怖いんですから」
「ひどい!」
檜佐木の後ろから金髪の男性が顔を出す。
痩身の優男風だが、鋭い目つきでなんとなく顔色の悪い彼は三番隊副隊長、吉良イヅルだ。
――あ、もう、むり。
半分失神しかける。
しかしすぐ隣から聞こえた「なぁによあんたたちこんな時間に!」という乱菊の溌剌とした声でハッと現実に戻ることになんとか成功した。
そうだ。今は休日とはいえ、護廷十三隊の副隊長が全員同時に休日を取るということはない。事実乱菊は仕事中に抜け出してきたと言うし。ではなんのために集まったのか。そんな好奇心が宿って意識を戻した梅は、しっかり視界に全員を収めようとして、しかしその絵面に、ひぃぃぃ! と声もなく叫ぶ。
――やっぱり畏れ多くて見てられないいいい!
これはすぐにでも逃げ出したい。そう思う梅の肩に乱菊が手を回すので、梅は再び心のなかで、ひぃぃぃ! と叫ぶ。
恋次が困ったように座っている乱菊を見下ろした。
「いや、それは乱菊さんもですけど……何してんですか」
「サボりよ」
「やっぱりサボりじゃねーか!」
一護がツッコむ。
「まぁ俺たちはちょっと休憩が重なってきただけっすよ」
「へぇ、最近仲いいわね、あんたたち」
「昼に集まるの半年ぶりっすけどね」
平然とツッコミをした恋次の横で、檜佐木が梅に近づく。
「名前、なんて言ったっけ?」
「ひぇ! さ、桜庭 梅です!」
「俺は檜佐木修兵だ。ちょっとインタビューしたいんだが……」
「だめですよ檜佐木さん。その件は瀞霊廷通信にのせたらだめだって言われてるでしょ」
「う、そうなんだが、いつか記事にするかもしれないし……」
吉良にたしなめられて、檜佐木は気まずそうに肩をあげる。
あの件、その件、例の、と、梅のしらないところで何事かの当事者にされたらしい。一護もなんのことかと思ったようで、それぞれの顔を眺めながら「なんの話だ?」と尋ねた。
途端に全員呆れた顔で一護をみる。こちらも何を言っているんだ。という顔だ。横の乱菊が先にため息を吐き、困ったように大げさに肩をすくめた。
「呆れた子ねー。ほんっとにいっつも自覚ないんだから」
同意するように今度は恋次が腕を組んで頷く。
「まぁ昔からそうっすよね」
「そういうところが、一護らしいんだけどねー」
かなり言いたい放題なのだが、きっとこの二人とは特に仲がいいのだろうな梅は思う。
一瞬何で? と思って、すぐにハッとした。そういえば一護は黒崎一護なのだ。実感がないというか、本人がこういう性格なのと眼の前の人たちへの驚きですっかり失念していたが、彼がこの副隊長たちと知り合いなのは、当然なのである。
なにせこの四人は、大戦前からその地位についている人たちでもある。入れ替わりが激しかったこの数十年を考えると一応古参なのかもしれないが、つまり彼らと一護は一緒に戦った仲間なのだ。
気安いのもそのはず……。
――あれ、しかも一護くんて四楓院夜一様と浦原喜助さんの弟子じゃなかった? え? あれって嘘? ほんと?
――なんだかやっぱり盛り過ぎじゃない? 設定。
「だから、例のとかなんとかって、いったいなんなんだよ」
一護が苛ついた様子で言うと、恋次は一瞬梅をみて、それからニヤリと口の端を曲げて笑う。
「暴れたんだろう?」
と檜佐木。
「随分モノも壊したそうだしね」
と吉良
「事の次第はルキアからきいてるからな」
と恋次。
「女の子のために貴族に喧嘩売るなんて、さっすが一護よねー!」
そして乱菊。
そこでようやく四人が言っていることに思い至って、一護と梅は顔を見合わせた。
先日梅を助けるために一護は桜庭家に殴り込みをした。つまりその件である。
「あ、あれは京楽さんが箝口令敷くって言ってたはずじゃ……」
何で知ってるんだ? と一護が焦ったように言う。が、そこじゃない。そこじゃなくて。と梅はぎょっとして一護を凝視した。
「か、箝口令!? きょ、京楽って、総隊長!?」
なぜ知っているかよりもそこまでの扱いをされていることのほうがびっくりだ。
梅の中ではどうしてもまだお家問題というか、家族問題である印象があるので、そこまでの話になっているとは思いもしなかったのである。
「ど、どういう事!?」
思わず問い詰めれば、応えたのは恋次だった。
「そりゃ、一護が間接的にも中央四十六室とやりあったんだ。さすがに総隊長も出てくるってもんだろ」
「えぇ……」
それって当然なの? と思って、そうだこの人英雄だった。と本日何度目かの感覚に陥る。
「い、いわれて、みれば?」
中央四十六室の中でもかなり上の立場の人の側近が来たくらいなのだ。たしかにオオゴトではある。のだが。
――どうしよう。どうしても一護くんが黒崎一護様と同一人物っていうのに慣れない。だっておじいちゃんじゃないし。私の知ってる黒崎一護様っておじいちゃんだもん!
「だから箝口令は当然なのよ。まぁ、ことを起こしたのは六番隊の管轄地でしょ。すくなくとも朽木隊長には話がいくんだから、恋次にだって行くわよ」
「た、たしかに」
絶句する梅の前で、一護ががっくりと項垂れる。
「だからってなんでみんな知ってるんだよ……」
「あったりまえでしょー。一護ってばちょっと霊圧出しちゃってさー」
「あ…」
梅は一護が霊圧を使って威圧したことを思い出す。あのときは真隣に居たせいで、かなり肉体的なショックを受けたのだ。花太郎が止めてくれなければ失神していたかもしれない。
「あれには流石に気づいたんじゃないかな、みんな。僕は辺境に居たから流石に分からなかったけど、瀞霊廷にいる人は察知していたみたいだよ」
と吉良が言う。
「更木隊長を止めようとした一角が怪我して四番隊に運び込まれたアレな」
と遠い目をして檜佐木が言った。
一護は二人を見て、そんなことが?という顔で苦笑いをする。
「さすがにちょっとした騒ぎになったんだもの。知らないわけ無いでしょ。しかも、隊長たちには総隊長から通達があったみたいだけど。あたしらには報告来ないんだもん。知ってそうなやつに聞きに行くに決まってるでしょ」
「え、じゃあ誰かが情報の発信源ってことかよ」
誰が? と一護の顔に疑問が浮かぶ。と同時に全員の目が恋次に向いた。
「まぁ俺は、隊長からじゃなくてルキアから聞いたんだけどな」
一瞬「あいつか!」という顔をする一護である。
「それをあたしが恋次から聞いて」
「で、乱菊さんが飲み屋で副隊長全員に暴露して」
「それで現在に至る」
と吉良が締める。
一護はバン! と机を叩いて嘆いた。
「ルキアと乱菊さんのせいじゃん!」
「副隊長の情報網もなめたら駄目よ♡」
「そんな情報網いつから……」
「いいことだろ? 昔はそこまで副隊長も繋がってなかったしな」
「黒崎が旅禍としてこっちに来てからか?」
恋次と檜佐木は顔を見合わせる。
「あのころはそんな感じだったわよねー。恋次なんて、うちの隊長のこと天才児って言って嫌ってたでしょ」
「き、嫌ってないですよ!」
「そーお? まぁあの頃はみんな隊長のこと子供扱いしてたけど!」
乱菊は両肘を机について頬杖をつくと、懐かしそうに言った。
「それにね、くわしく聞かなくても最初っから予想はしてたのよね」
と乱菊は言いながら店員を呼ぶ。
そうして恐る恐るやってきた店員にキャラメル味のかき氷を頼むと、「あんたも食べないと溶けちゃうわよ」と梅に食べるように促す。
梅は促されるままなんとか匙を持ち直したが、残念ながら食べられる気がしないのでかき氷はすでに半分ジュースだ。
そのまま空いている席に恋次と檜佐木と吉良が座った。
「予想してたってなにを」
一護が眉を潜めて問う。ろくな応えが返ってこないとわかっているのだろう。聞いたはいいが聞きたくはなさそうな顔だ。
乱菊は梅に肩を預けるように座る。
「だって、一護よ? 私は絶対こういうこと起きると思ってたわ」
乱菊はあっけらかんと言い放ったが、恋次は頭を抱えてため息をつく。
「でもまさか貴族街で騒ぎ起こすとは思わねーっすよ。隊長めちゃくちゃキレてたし」
ぎくりと一護が肩を震わせたが、それを気にせず吉良が頷く。そしてこちらも店員を呼び、何度もすみません。と謝罪しながら全員分の茶を頼んだ。
「あんまりそういうの気にしない性格みたいだから仕方ない気もするけどね」
「今後はぜひ気にしてもらいたいところだがな」
最後に檜佐木がしみじみと言って、みんなが同意するようにうなずいた。
一護は頬を引きつらせる。
「俺ってそんなトラブル体質かよ」
梅はそっとこれまでの学院生活を思い出して、無意識に頷く。
「ほらぁ、こんなに付き合い短くてもそう思うのよ? まちがいなくトラブル体質よ一護は。ねぇ」
しかし副隊長たちにもそう認識されているとはかなりのものだ。じっと梅が一護をみると、思いっきり目をそらされた。
気まずいからってそれはないだろうと、ちょっと切なくなる梅である。
「隊長も、やっぱりやりやがったって言ってたわよ」
「う……冬獅郎のやつ……」
「俺のとこの六車隊長も似たような反応だったな」
「拳西もかよ!」
二人の隊長の名前が出てきてぎょっとする梅の前で、更に隊長格の名前が飛び出す。
「大前田から聞いたけど、砕蜂隊長もキレてたらしいぞ。そして大前田はボコられた」
哀れなものを思い出すように檜佐木が言う。
「そりゃそうよ、警邏隊としては失態だもの。それ以前に一護が学院で夜一さんと遊んだって聞いて怒ってたみたいだし」
「遊んでねーよ!」
「てめぇが花太郎を巻き込んだせいで虎徹隊長も大変だったみたいだぜ」
「それはすげー申し訳ねーけど!」
「まぁオマエ、朽木隊長にめちゃくちゃ怒られたんだろ?」
と恋次が言ったとたん。一護はさっと顔色を悪くした。
恋次と乱菊はその顔をみて「おー」と感心したような声を出す。
「さすがの一護も朽木隊長に怒られたのは怖かったのねー」
「こえーっていうか……なんつーか……む、無言だった」
「無言?」
「無言で、延々と睨まれた……。ため息もすごかったし……。無意識に正座してたぜ俺………」
想像できるらしく、副隊長四人が苦笑する。
「で、その後ずっとくどくどと怒られて………。なんで相談しねーんだとか、勝手なことをするなとか、迷惑かけるなとか、考えなしすぎて逆に悲しい的な……」
一護はぶつぶつと言いながらうなだれる。
『黒崎一護。行動には責任が伴うものだ。兄の行動にはそれが欠如している。浅はかで愚かだ』
『兄にとっては些末なことであろうとも、掟とは秩序であり安寧のために必要不可欠なもの。浅慮な行動で無下にしてよいものではないと知れ。兄がこれから護廷に所属するなら尚の事。聞いているのか黒崎一護』
『此度のことならば私に助言を求めることもできたはずだ。兄はいつも思慮に欠けると何度も申しているはずだが』
『管轄を知らなかったなどと言い訳をするな。なぜ京楽にそれを尋ねようとせぬのか』
『黒崎一護、聞いているのか』
「だあああ! うるっせえ!」
うなだれていた一護は突然叫ぶと、運ばれて来ていた茶を一気飲みする。
そうとう嫌なお説教をされたらしい。
「そのあと京楽さんにも軽く叱られて、更にその後ルキアにぼこられて! 散々だ! さんざん!!!」
「おめーが悪い」
恋次の冷静な言葉に、ふたたび「うるせぇ!」と一護は叫んだ。
それにしてもなんだか学院にいるときよりかなり幼い印象を受ける。きっと彼らには心を開いているのだろうか。
「一護くん、学院と印象違う」
思わずこぼせば反応したのは副隊長たち。
「へぇ、どうちがうのよ」
「え、あ、えっと、なんかもっと大人っぽいです。いつもは」
正直に答えれば「ふぅうん」と乱菊が楽しそうに笑う。
「そうよねー。あんたにしてみたら生徒なんて子どもか孫かって感じかしら」
ニヤニヤしながら言われた一護はぶすっと唇を尖らせる。
「でも、私たちにしてみればねぇ。あんたはまだお子様だしねぇ」
「お子様じゃねぇ!」
「ムキになってかわいー」
おそらくわざとなのだろうが、乱菊と恋次にそれぞれがしがしと頭を撫でられて一護は鬱陶しそうにその手を払う。
もしかしたら、あの六番隊の朽木隊長ですら、彼を孫扱いしているのかも知れない。
関係性がとても近くて、なんだか面白くなってきた。
先程から隊長格の名前もポンポン出てくるし、本当に彼らと親しいのだろう。
同時に、なんだかすこし一護が遠い存在のようになってしまった気がしてすこしだけ寂しかった。
「一護くんて、本当に黒崎一護様だったんだね」
と梅がしみじみとつぶやく。
「あ」と一護がかすれた声をだす。
梅は目を瞬かせて「変なこと言った?」と首をかしげた。その瞬間。
ドッと笑いが起きた。
「え、え? なに?」
乱菊はひーひーといいながら机を叩き、恋次は腹を抱えて笑っている。
そんなに笑うようなことを言っただろうかと驚いて一護を見れば、がっしりと腕をくみ、気まずそうに顔を赤くしてあらぬ方を見ている。
どうしたのか。と聞こうとする前に、一護がカッとなったように怒鳴った。
「笑うんじゃねぇ!」
「ひー!!!」
まぁだいたい、笑っている人に笑われている当事者が何を言ったところで、笑いが増えるだけなのである。
乱菊はさらに机をたたき、目尻に涙をためて一護を見上げる。
「さ……さま……ぷっ、ふふふっ」
「わ、笑いすぎて腹が……!」
これはもしかして……。
「一護様?」
と梅が繰り返した瞬間。阿散井恋次が吹き出した。
「さ、様! 黒崎一護さま!!! おめーが様っていうナリかよ!」
「俺が一番びっくりしてるわ!」
「一護が様って! やだーもう!」
「乱菊さんも笑いすぎっ!……って吉良てめぇなにうずくまって笑ってやがる!」
「あ、孔にひびくっ」
「なぁ、これやっぱり瀞霊廷通信に載せていいか?」
「だめに決まってんだろ!」
爆笑が連鎖するように、何がおかしいのかも分からずに周囲の客までニヤニヤする中で、一護は机を叩いた。
「だから! 笑い過ぎなんだよ!」
梅はとりあえずとても楽しそうな全員を見渡して。
「人気者だね。一護様」
「うめ!?!?!?」
なんだかとっても楽しいひとときで、すっかり息抜きになった梅であった。
のだが、帰り道で梅は、二度と息抜きには一護といかないと心に決めた。
こんばんちは。
ちょっとお久しぶりです。
ワチャワチャがかきたい。という気持ちだけでスタートしたお話です。
乱菊さんだいすき。
息抜き話なので会話多めでお送りしております!
それでは!