黒崎一護・護廷十三隊物語   作:hapi

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 一護が死後、尸魂界にやってきて真央霊術院に通う話。
 学院生活を満喫する一護の元に流れてきた噂。それは黒崎一護が学院にいるというもの。
 いったいどこからその噂が流れたのか。たのしくなっちゃった梅が探し始めて発生するあれこれ。

※オリキャラ注意
※原作のネタバレあり
※捏造注意



18.ホンモノ?ニセモノ?どっちもどっち?1

 

 

 

 

 ”黒崎一護伝”をはじまりとして、尸魂界の英雄を描いた本は数しれず。

 子供向けの絵本から、大人向けの伝記まで。探せば啓発本や政治学本、兵法本にライフハック本まで、まぁどこにでも名前がある。

 ありすぎるってくらいある。

 ただ、その殆どは示し合わせたように同じことしか書いておらず、特に若い頃の外見に関してはほとんど記載がない。当時を生きる人々へのインタビューにすらそこだけすっぽりと抜けているので、一部では黒崎一護は虚構なのではないかとすら言われている。

 最初から神話みたいなレベルにやってることがすごいので、そういう考えは元々あったのだが。

 それでもその人気がすさまじいのは、ごく偶に聞こえてくる、”黒崎一護が昨日大虚を一撃で薙ぎ払ったらしい”とか”先週黒崎一護が生き残った破面3体を倒したらしい”などといった、リアルタイムな話題が入ってくるためであろう。

 

 しかし彼も寄る年波には勝てないのかもしれない。

 彼の功績が頻繁に尸魂界を駆け巡ったのも、およそ10年ほど前までの話。40年ほど前から頻度自体減ってはいたのだが、とうとう聞こえなくなってしまった。

 不謹慎ではあるのだが、それは近々彼がこちらにくるということの証明のようで、浮足立つ者もいたりした。

 

 そして、ほんの数ヶ月前のこと。

 英雄の死が密かに伝えられた。

 それは護廷十三隊の席官クラスしか知らないような情報だったのだが、人の口に戸は立てられぬということで、噂はすぐにあちこちに広まった。

 

 真央霊術院でも同様に噂はひろまったが、生徒にはあまり広く伝えられなかった。

 これは教師たちが口を閉ざしたからと言うのが大きい。理由は生徒たちにいらぬ動揺をあたえないため。あるいは黒崎一護の死でショックを受ける可能性を危惧して。

 なんといっても今の世代はみんな黒崎一護で育ったと言っても過言ではなく、刺激はしないほうが良いということだったのだ。

 しかしそれでも一部の者は家族や周囲からその噂を聞きつける。

 じわじわとその噂は生徒たちに広がる中で、こんな噂が流れた。

 

 教師たちが生徒に事実を教えないのは、黒崎一護が霊術院に入学しているからなのではないか。と。

 

 この噂をきっかけにそれらしい生徒をみつけようと新聞部が動いたりしたらしいのだが、結果的には見つからなかったのか、新聞部がインタビューをしていたという情報で止まっている。そもそも新聞部があったことすらみんな知らなかったが。

 ともかくそういった噂は広がっていき、そして。

 

 まさに学院にこっそり通っていた本人の耳に入ってしまった。

 それが一ヶ月ほど前のことである。

 

 

 

 

 

 

「結局、特に何もなかったけどな」

 と一護はひとりごちた。

 一ヶ月前、ちょうど一学期前半が終了し後半が始まった頃、そのような噂が一護の耳に入った。ただ、それ以来特に何もない。

 あのころは友人である梅の家に突撃したり、それが原因であちこちに怒られたり、話を聞いた学院長に呼び出されたりと忙しかったので具体的な対策をしていなかったのだが、前半の末に行われた試験であれこれ揉め事を起こしたせいで妙に注目されていたため、正体がバレるのも時間の問題という気がしていた。

 ”黒崎一護”が学院にいるという噂が耳に入ったときは「とうとう来たか」と思ったほどだ。

 

 けれども結局なにか特別に一護の正体を探ろうという動きがあったわけでもなく、一護は平穏に過ごしている。

 

 楽しいことに、最近クラスメイトとも会話を良くするようになった。

 志波ということで遠巻きにしていた生徒や、一護が授業を免除されていることに対してやっかみをむけていた生徒も、最近は普通に会話するようになっている。相変わらず桜庭梅と沖野心平と一緒にいる事が多いのだが、彼らと行動することも増えた。なんだかんだ言って、学院生活としては充実していた。

 

 ちなみに心平は、梅が学院を辞めるかもしれないと言う話の後長らく放置されていたため、一時期とっても不貞腐れていた。

 しかも一護だけが事の顛末を知っていたことにも不満があったらしい。機嫌をとるのに苦労した。主に梅が。

 なお、結局梅が祖父を説得したことになっている。

 

「あ、志波くんそこ間違ってるよ」

「マジか。どこ」

 

 最近親しくなった中のひとり、片倉雀が一護の手元を覗き込む。広げられたのは尸魂界の地図で、一護はそこに筆で地名を書き込んでいた。要するに地理の宿題である。

 読み方が難しすぎたり、あるいは当て字だったりでなかなか地名が覚えられないため、一護はかなり地理に苦戦していた。

 瀞霊廷内ですらもわからないのに、流魂街となるとちんぷんかんぷんだ。

 梅も心平もクラスではトップの成績で、一護とてかなり頑張っているのでいい勝負をしているのだが、やはりどうあっても元々の知識量に差がある。そこで首席合格である片倉にあれこれ教えてもらっているのである。

 

 片倉は怜悧な印象をうける顔立ちの男だ。その外見ゆえにか、当初クラスにあまり馴染めていなかった。偶然班活動で一緒にならなければ、一護も親しくなるタイプではなかっただろう。

 ちなみに当初彼は山見ガリ勉が集めた貴族グループの中にいたらしい。

 ただ、あくまでも成績優秀者と行動をともにしていただけで、本人は貴族だ平民だなどというのに興味がないらしく、それで馬が合わなかったようだ。

 一護たちと会話するようになったことをきっかけに、山見たちが距離を置いたというのもあって、今では行動のほとんどが一緒だったりする。

 

「一護くん、そろそろ昼休憩終わるよ」

 席をたっていた梅が戻ってきて、一護は時計を仰ぎ見た。

「やべ、ホントだ」

「宿題忘れてた志波くんが悪いんだけどね」

 片倉の言葉に一護は眉間に皺を寄せる。それからまだまだ途中の宿題を見下ろしてわずかにうなだれた。

 宿題が出されたのは一昨日。その一昨日の夜は死神連中に呼び出されており、昨日の夜は斬月と対話して夜更かしをした。それで今日になってしまったわけである。などと言い訳しても仕方ないので、一護は残り時間で少しでも進めようと筆を走らせる。

 なお、この筆字もかなり下手くそなので、練習が必要だ。どうしようもなくなったら朽木白哉に指導をたのむか。いや、流石にちょっと面倒だ。

 

「あれ、一護まだ宿題してなかったのか?」

 ひょっこりと梅の後ろから心平が顔を出した。

「おかえり心平くん」

 心平は教師に呼ばれて次の授業の準備をしに行っていた。最近ギャグキャラな印象が強くなってきている彼だが、さすが優秀なだけあって教師の覚えもいいのである。

 ともかく彼が戻ってきたということはそろそろ教師も来る頃だろう。

 正面に座っていた片倉も荷物から教科書を取り出し始め、心平と梅も一護を挟んで席に座る。

 もうそろそろ諦めたほうがいいかも知れない。と、一護も筆をしまった。硯に残った墨を拭い後で洗おうと決めてこちらも荷物にしまう。

 

「さっきさー、六回生の教室の前通ってきたんだけど」

 唐突に心平が言った。

 筆箱や手帳を出しながらなので、それほど重要な話でもないのだろう。そう判断して一護も適当に相槌を打つ。

「心平くんそんなところに行ってたの? 教員室ってそこ通るっけ?」

「地理の資料保管庫が六回生の教室の廊下にあるんだよ」

「あ、そっか。私六回生の教室のそばには行ったこと無いなぁ」

「俺も初めて行ったよ」

 心平と梅が一護を挟んで会話をしている。それをなんとなく聞き流しながら、ようやく一護は授業の準備を整え終わった。

 宿題が終わってないのは怒られるだろうなと少し落ち込みながらようやく顔をあげると、片倉も上半身を捻って後ろの二人の会話に参加していた。

「僕もあまりあの階は通らないな。すこし行きにくいよね。気持ち的に」

「そうなんだよ。でも滅多にない機会だと思ってさ、ちょっとゆっくり通ってみたんだ」

「度胸あるな、沖野くん」

「したらさー、面白い話が聞けたんだよ」

 と言ってから、心平は身を乗り出して声を潜めた。

 

「実はさ、六回生に黒崎一護様がいるらしいんだ」

 

 一護、梅、片倉は、それぞれ驚いて「は?」と声を上げた。

 

 

 

 

 宿題を終わらせていなかった。

 普通の生徒と違って、勉学に時間をさけるはずの一護がそれをするのはすこし教師からの印象が悪い。

 特に座学の教師は一護が実技を免除されている理由までは知らないので、あたりが強い傾向にある。きっと他の生徒なら小言で済んだのだろうが、一護は教員室に呼び出されかなり説教を食らった。

 それを見ていた眉墨先生に教員室を出てから軽く謝罪をされて、教師が宿題忘れた生徒に怒るのは当然だろ。と笑って返しながらも、若干苛ついて教室への廊下をのそのそと歩く。

 むかしからどうにも教師とは折り合いが悪い。

 こっちにきてもそうなのは、なんだか納得がいかない。

 あの赤髪のおもしろ眉毛はどうなんだ。あの派手なあれは。

 ため息をついて、一護は窓の向こうを見た。

 中庭を挟んで向こう側にも校舎があるのだが、ちょうど同じ階が六回生の教室だ。

「六回生に、なぁ」

 一護は目を細めて呟いた。

 一回生に黒崎一護がいる。というならば焦るが、そうでないならただただ不思議なだけだ。

 心平たちが言ってたように一護も六回生とはまったく接点が無いので想像するしか無いが、火のない所に煙は立たぬ。噂にはなにかしらの元ネタがある。ということを考えると六回生にそういう噂が流れるきっかけがあるはず。

 周りが神格化する”黒崎一護”に匹敵する実力者なのか。それとも名乗っているだけか。はたまた幽霊騒ぎ的ななにかか。

 なんだか面倒な気配がする。

 梅には正体を明かしたが、やはり隠しておくのが一番良いはずだ。なるべく”黒崎一護”に関わる話題にちょっかいを出すのはやめよう。

 そう決意して、一護は教室に戻った。

 

 

 

 翌日の昼休み。一護は六回生の教室エリアに来ていた。

 

 頬を引きつらせて一護は廊下に突っ立っている。

 右隣には桜庭梅。左隣には沖野心平。斜め後ろに片倉雀。

 なんとなく囲まれる形でここにやってきたのには訳がある。

 

「昨日の噂って結局なんだったんだろうね」と悪気なくその話題を梅が出したのが今朝のこと。

「本当にいるなら見てみたい」と言い出したのが心平。

 一護は咄嗟に「ホンモノのわけねーだろ」と応え、それが事実だと知っている梅が「それはそうだけど」と応えた。そうなると、なぜそう断言できるのかという話になる。

 予想通り「なんで断言できるんだ。見てみないとわからない」だの、「いやいや絶対ホンモノじゃない」とか「別に噂が事実でなくても気になる」だとか、「外見はどうなのだろうか」とか、まぁそういう話になり、「それならちょっと見に行ってみるかい?」と呑気に片倉が提案。

 その流れになった時点で、一護は全力で拒否した。

 だって昨日関わらないって決めたばかりなのだ。

 

 心平と片倉はそんな一護をみて諦める。ということもなく、むしろ全力で拒否する一護に対抗するかのように絶対連れて行くという姿勢をとった。そしてそれに梅も同調し、三対一の不利な状況に。

 昼休みまでに忘れてくれればよかったのだがそんなわけもなく、一護は三人に連れ出された。

 いくら嫌だとしても、全力で振り払うのは難しい。何と言っても抵抗する力加減が分からないのだ。本気で振り払ってふっとばしたら目も当てられない。 

 

 ということで、結局ここまで来てしまったのである。

 

「俺が噂を聞いたのは特進学級前の廊下だったんだ」

 と心平が言って歩きだすので、一護は「いやいやいや」と内心で首を横に振って抵抗する。

「六回生の廊下には来にくいんじゃなかったのかよ!」

「用事もなく来るところではないね」

「だな。よほどのことがないとさぁ」

「よほどのことか? これよほどのことか?」

 思わず叫ぶ一護の背中を片倉がぐいぐいと押す。

「なんでそんなに嫌なんだよ」

 と心平は何度か一護に尋ねたが、一護は必死で濁した。

 

  ――関わりたくねーんだよ! 俺に! 俺が! つーか何ワクワクしてんだ梅!

 

 一人ニコニコ笑っている梅を一護は睨む。

 ここ最近神妙にしていた梅ではあるが、初対面で「合格してないのに学院に来ちゃったの?」と真顔で言ってのけたのを忘れてはならない。

 一護のまわり、ろくでもない奴らばかりである。

 

 

 六回生の一組の教室は、なんだかんだ言ってすぐそこだった。

 三人は串団子のようになって中を覗く。その隙に逃げ出そうとした一護だったが、心平の手がにゅっと伸びてきて引っ張り込まれてしまい、結果一番下に押し込められた。一番身長があるはずなのに。おかげでほとんど座っている状態にされてしまい、身動きも取れない。

 本気で逃げられなくなってしまったので、一護はしぶしぶ教室の中を一緒に覗いた。

 

 六回生の生徒の年齢もやはり幅広かった。何歳からという規定がないので当然ではあるが、一見して一回生と大差はない。中学や高校のように見た目に体が大きいとかもないので、すれ違ってもどの学年がわからないのかもしれないと実感する。

 実際、六回生の廊下に一回生が居るのに、あまり注目はされていなかった。

 

 見た目としては変わらない。では能力はどうか。

 さすがに霊圧は多少大きいような気もするのだが、あいにく一護はその手の探知は得意ではなかった。

 逆にそれが得意な片倉は「霊圧がちがうんだね」と呑気に分析しているが、しかしすぐに首をかしげる。

「噂になるくらいだから、さぞすごい人がいるんだと思ったけど、突出している人がいる感じはしないかな。むしろ志波くんのほうが霊圧高い気がするよ」

 その言葉に梅と心平も頷く。

「もしかしたら一護みたいに抑えてるのかも」

 今度は心平がそう言うと、片倉と梅が再び同調するようにうなずいた。

 霊圧を抑えるバングルがあるのもそうだが、一護自身も力を抑え込んでいる。試験などでぶっ放しているから、クラスメイトには一護が普段抑え込んでいることはなんとなくバレているので、その可能性は三人とも考えているようだ。

 一護と同じことをしていたら探しても簡単には見つからないだろうから、こうしていてもあまり意味はないが。

「そもそもその噂ってどういうもんなんだよ」

「どうって”黒崎一護様と同じクラスで光栄だ”みたいな話をしてたんだよ」

「まんまだな、おい」

 たしかに、それでは黒崎一護がいると言っているようなものだ。

「だからいると思ったんだけどなぁ」

 残念そうに心平がため息をつく。まぁ噂なんてそんなものだ。

 

「なぁ。居なかったんだし、いいだろ。もう帰ろうぜ」

 一護は下から上にいる三人に退くように促した。

 本当に見たかったのだろう。一番こだわっていた心平は「えー」と言って渋ったが、梅の「そろそろ重たいよぉ」という声に渋々体を起こした。続いて梅と片倉も一緒に教室の扉から距離をとり、一護の上にかかっていた重さが消える。

 はぁ。とため息をついて立ち上がり、膝のホコリを振り払ったとき、一護は不意に大きめの霊圧を感知した。

 ふっと顔をあげる。

 こちらに近づいてくる霊圧。それなりに大きい。すくなくとも生徒の中ではかなりだ。教師だろうか。しかし教師はなんだかんだ霊圧を抑えるのに優れている者が多いので、こう垂れ流しだと違うかも知れない。

 不思議に思って一護が霊圧の方に目を向けるのと、梅が一護の袖をひっぱって「ねぇ」と声をかけたのは同時だった。

 梅と一護の視線の先で、廊下にいた生徒たちがスッと割れる。

 まるでモーセだ。と一護が感心する中、中央を一人の生徒が歩いてきた。その姿に一護は目を瞠る。

 

「そこ、どいてくれるかな」

 

 柔和に笑ったその生徒は、鮮やかなオレンジ色の髪をしていた。

 

 

 

 





 +++++++++


【挿絵表示】


 どうもどうも。

 いつも感想ありがとうございます。
 
 一護さん学院生活を満喫中ですが、騒ぎが起きないなんてことがあるはずもない。
 ということでちょっとした騒動が発生しております。


 それでは~

 
 
 
 
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