※オリキャラが喋ります。かなり出張ります。
※俺最強系ですw
※捏造注意
黒崎一護が死んだ。
あの疫病神が。
なんて反応を示した一部の死神たちが、自分たちの隊に彼をいれるのはやめてくれ。と嘆願書を上に出し大目玉を食らって歯噛みしているころ、その当事者である黒崎一護は何も知らないまま真央霊術院にやってきていた。
そう。おそらく死神界最強の一人である黒崎一護は、死後真央霊術院に通うことになったらしい。
「いやそれはちょっと無茶だろうよ」とは、それをきいた阿散井恋次のセリフである。
あ、いや、斑目一角だったかもしれない。
ともかくそういう反応をされてしまったのだが、一護としては別におかしなことを言ったつもりはない。
実のところ、一護は尸魂界についてよく知らない。
護廷十三隊も13個隊があって隊長と副隊長と席官がいる。という程度しかわからない。どんな仕事をしているのかもよく知らない。
霊王だとかそういうどっちかというと特殊な事情ばかり知ってしまったが、本来の死神が知っていることを半分も知らないのだと思っている。それから鬼道も使えない。というかこれが一番一護の気にしていることだったりする。
剣術や体術は生前道場なんかで学んでいてそれなりだし、実戦経験もかなりある方だが、鬼道はからっきしのまま死んでしまった。まぁ必要もなかったのだが、今後同じ死神と共闘するにあたりできたほうがいいだろう。そもそも隊を作って一緒に虚退治などしたこともないのだが。
そういう理由があったのと、正規の流れはそうなんだろ、じゃあそれでいいじゃん。という軽い気持ちで提案してみたことだったので、ルキアや恋次に言って驚かれたときはやっぱり無理か、と簡単に諦めた。しかしその後総隊長京楽に話をしてみたところあっさり「行ってみる?」と言われたのである。
総隊長が言うんだからいいだろ? ということで、一護は複数の知り合いに渋い顔をされながらこの日真央霊術院に通うことになったのである。
新品の真央霊術院の制服に袖を通し、クラス分けらしき掲示板を眺めること数分。一護はさっそく首をかしげた。
名前がないのである。
「っかしいなー。ちゃんと入学手続きはしてあるって言ってたんだけど……」
何度も見直すが、やはりない。
はて、あの京楽が間違えたことを伝えたとは思えないのだが。
今回一護は《黒崎一護》としては入学をしていない。黒崎ではなく志波。親父の姓であり、世話になった空鶴や岩鷲の姓を今は名乗っている。それは単純に《黒崎一護》という名前が有名になりすぎたせいだ。今や知らぬ者などいない。いやむしろそれに憧れて死神になるやつまで大勢いると聞いて顔をひきつらせたのは記憶に新しい。
それ故に名字を変えるということで話が進み、志波一護として入学試験を合格した。ということになっている。そこは特権をつかって合格したことにしてくれたらしい。
ちゃんと受けても良かったのだが、試験会場で手に負えないと判断されて返されるのが目に見えているので却下。とのことだった。
そんなわけで黒崎という名字を無視して志波を探しているのだが、探せど探せどである。
「どうしたの?」
困っている一護に声をかけてくれたのは小柄な少女だった。一護の今の姿が高校3年生くらいだとしたら、彼女は中学生くらいに見える。一護とは異なるがそれなりに目立つピンク色の髪をゆるりとお団子にしていて、素直そうな表情はどことなく妹の遊子の子供の頃を思い出させた。
「あー、名前探してんだけどさ」
「見つからないの? 名前なんていうの?」
「志波」
「え、志波?」
少女は驚いたように目を瞬かせた。なぜそんな驚くのだろうかと首をかしげると、少女はハッとした様子で取り繕うように笑うと「一緒に探すよ」と言って掲示板に目を向けた。
各クラスそれぞれを見てまわり「ないね」と少女が言う。
「だよなぁ。無いってことあるのか?」
「合格してないのに来ちゃったとか」
少女は真顔でちょっと痛いことを言ってくる。実は一護もその可能性を考えていた。
「……それありえんのか」
「無いと思うけど」
と少女は即答する。それからしばらく考えて、もしかしてと呟いた。そのまま一護の袖を引くと掲示板に集まる人だかりを抜けていく。
「おい、どこ行くんだよ」
「志波くんクラス分けの連絡最初に来てなかった? 封筒とかで」
「……いや」
京楽に渡された教科書などの一式がつまった紙袋はよく見てきたつもりだ。封筒は一応ありはしたが袋には入学許可証としか書いてなかったように思う。
「そっかぁ」とこれまた呟いて、少女は一護を少し離れたところにあった小さな掲示板のもとに連れてきた。
先程まで見ていた大きなクラス分けの掲示板とは異なる小さなその掲示板は、サイズの割に随分しっかり作られている。そこには大きな文字で《特進学級》と書かれていた。
「あ、ほら、志波くんあったよ」
と少女が指差すところには、たしかに見慣れない《志波一護》の文字があった。
「ほんとだ、あった。けど、なんでココ離れてんだ?」
「志波くんあんまり学校の説明書類読んでないでしょ。これは特進学級の掲示板だよ」
「なにそれ」
「試験の結果で優秀だった人はこのクラスに配属されるの。このクラスの卒業生はほとんど護廷十三隊へ入隊してて、席官になった人もいるんだよ。多分入学許可証と一緒に特進学級の案内来てたと思うんだけど」
そうだっけ。と一護は苦笑する。そういえば何枚か入ってた気もする。
「私も同じクラスなの。梅っていうの、よろしくね」
そう言って少女は掲示板を指さした。華奢な人差指が指す名前は彼女の見た目によく似合う《桜庭 梅》の文字。
「サンキュー。俺、志波一護。よろしく」
案内板に従って早速一護は特進学級の教室にやってきた。教室の扉の前にあるのは《一組》の文字。
正直不安しか無い。
成績優秀なやつが入る学級と言われても、一護は入学試験を受けていない。剣術はいい。それは全く心配してないが、鬼道やら勉学やらは別の話だ。現世の知識どこまで通じるんだろうと思わずにいられない。
真央霊術院の教室はまるで大学の講義室のようなものだった。座る場所は決まっていないようで、各々好きな場所に座っている。一護が窓際の後ろの席に座ると、さも当然という顔で隣に梅が座る。
「志波くん背が高いから前の方いると邪魔になるもんね」
「そういうお前は前じゃなくていいのかよ」
「あ、もう、小さいの気にしてるんだから言わないで!」
梅がぷっくりと頬をふくらませるので、やはり妹に似ている気がして笑ってしまう。小さいとはいえどルキアよりは背が高いしあまり気にすることもないと思うのだが、女の子も身長は気になるんだろうなぁと適当な感想を抱いた。
「志波くん結構意地悪な感じがする」
「志波じゃなくて一護でいいぜ、呼ばれ慣れてないし」
「……そうなんだ」
他に知り合いもいないので結局二人で話し込んでいると、不意に目の前に人が立ったのがわかった。見上げれば眼鏡のガリ勉そうな男。前髪は七三で神経質そうな見た目。どっかの石田と同じ特徴を述べる事ができるが、残念ながら彼より明らかに容姿は恵まれていなさそうだ。割れ顎がちょっと気になる、そんなところである。
「もしかして、桜庭家の人?」
ガリ勉は一護を一瞥すらせずに梅に尋ねた。一瞬梅はいやそうに眉を顰め、けれどすぐに顔を繕ってニコリと笑う。
「そうだけど、君は?」
「僕は山見家の者だけど」
ガリ勉はメガネをくいっと持ち上げると、自分の背後にいる集団を指さした。
「外では派閥もあるけれど、僕たちは同じ貴族。助け合ったらどうかと思うんだ。流魂街出身者と一緒にいるよりいいと思うんだけど、一緒に座らないか?」
えー。と一護は呆れて男を見上げた。
別におかしなことは言ってはいないのかもしれないが、それってつまり一護のことを見下しているわけである。これでケンカを売ってるわけじゃないのだとしたらそうとう平和な頭だ。まぁ反撃されない自信があるのだろうが。
一護にとっては貴族というと朽木家の兄妹だとか、夜一だとかである。
ああそういえば、京楽さんも浮竹さんも貴族なんだっけか。それから大前田さんと……。それらの人々の顔を思い浮かべながら貴族っていろいろいるんだなぁとしみじみ思う一護である。
「ごめんなさい。お友達と一緒に座りたいから」
とは梅の返事だ。
先程出会ったばかりだがお友達といわれればお友達だろう。ほらフラレたんだからさっさとどっかいけ。山見ガリ勉くんを睨めば山見ガリ勉くんは一護を見て鼻で笑った。
「君、名前は?」
「志波」
高圧的な問いに一護はめんどくさいなーと思いながら答える。昔は、つまり生前は喧嘩売ってんのか?ってなることもあったが、この年になるとそこまでの元気はない。体は元気だが。
なので適当に答えると、山見ガリ勉はぎょっとした様子で顔をこわばらせた。
「しば……志波って元五大貴族の?」
「あーまぁ」
確か親父がいなくなったあたりで没落して下級貴族になったそうだが、昔はそれなりにすごい家系だったらしい。
没落貴族が、とか罵られるやつかなぁと思えば、山見ガリ勉は青ざめていた。
「あ、いや、いいさ、うん」
歯切れ悪くそんなことを言いながら、山見ガリ勉は悔しそうに自分の席に戻っていく。
「…………なんだあれ」
「志波家の人ってそういうの全然気にしないって聞いてたけど、本当なんだね」
「何が?」
梅が不思議そうに一護を見るので一護も同じような顔をして見返せば、今度は困ったように梅は笑った。
「実はね、何十年か前に志波家が復権するって噂があって、貴族たちの間で志波家に対する対応について揉めてた時期があるの。今のご当主がそのつもりがないからって今も流魂街に住んでるけど、五大貴族のときからそうだったみたいだからそのまま上位貴族に戻るのもあり得るんじゃないかって。そしたら今まで下級貴族だって馬鹿にしてた貴族たちが揃って青ざめちゃってね」
「あー」
「うん。ここ30年くらい、志波家の人とは関わらないようにしようねって暗黙の了解というか」
「梅はいいのかよ」
純粋に気になって聞けば、梅は気にした様子もなく「うん」と答えた。
「桜庭の人はみんなこんな髪色だから目立っちゃうけど、私三女だから全然平気」
「ふうん」
貴族世界のことは一護には良く分からないので、結局そんな興味のなさそうな返事しか出てこなかった。ただ、ちょっとめんどくさいんだなと思っただけだ。
今回あえて志波の名を名乗ることになったのは、今後の特別待遇のための事前準備のようなものであった。
というのも実は、一護はこの真央霊術院を1年で卒業するようにと言われている。最悪無理でも中退でもなんでもして護廷十三隊に入れというのが、諸隊長方のご意向だったのだ。
京楽もそうそう長く一護を通わせる気はなかったので「1年頑張って」と言われておしまいである。
さてそうなるといくつかの問題がある。
まず、単純な時間の問題。
本来の目的は一護に勉学をさせることなので、実技などの無駄なことに時間を割いて卒業が延びるのはいただけない。となるとそういう実技を免除する理由が必要になる。
次に、斬魄刀の問題。
真央霊術院に入れば誰もが最初に配られる浅打。しかしこれは例えばすでに卍解レベルの斬魄刀を持っている者に渡すのは少々問題がある。何が問題かというと、多くの場合拗ねるのだ。斬魄刀が。一護もそれは嫌だったので浅打を渡されずに済む理由が必要だった。
最後に、途中卒業のいいわけである。
要するに、コネで卒業させる理由が必要だったのだ。これは以前朽木ルキアがそのような待遇であったことを鑑みて、前例があるとして可能ではないかということになった。そのルキアは「コネ言うな!」とたいそうご立腹だったが。
これらはすべて黒崎一護として入学すれば済む話であるし、卒業したら黒崎一護と名を改めて護廷十三隊入りするのだから、名を偽る必要はないという意見もあったが、それではやはり入学が断られてしまうだろうという事で黒崎の名前は一旦封じられる事になったのである。
一度は朽木家の名を名乗るのも良いのではという意見が一部の隊長からあげられたのだが、京楽はそれを一蹴し志波家の現当主に話を持っていった。
注目はされてしまうだろうが一護のために一肌脱いではもらえないか。との言葉に、志波家当主志波空鶴は「ああ、いいぜ」と二つ返事だったという。
いつか感謝を伝えに行こう。
と一護は思っている。
志波を名乗ることで以前から斬魄刀を持っていたと言ってもそれなりに話が通りやすかったり、それが理由で実技をパスできたりするので非常に便利な名前をお借りできた。と一護は思っていたが、貴族の面倒なあれこれに巻き込まれることもあるのだ。こればかりは仕方ないが思ったより面倒かもしれないと一護はため息を付いた。
この予感とも言える思考が間違っていなかったと知るのは、それから一週間のことであった。
「え、一護くん実技免除なの?」
梅の言葉に反応したのは、呼びかけられた一護だけではなかった。教室中の視線が集まったことに一護は気づかないふりをする。内心めんどくせー!と叫びながら素知らぬ顔をしていると、授業免除を伝えに来た教師が一護の代わりに頷いた。
「その間にやる教材を渡すから、自習室にいってきなさい」
「はーい」
教材らしいプリントを受け取って一護は立ち上がる。
「そんなことあるんだ………」
「あー、入学前からいろいろやってたから」
実際ここにいる学生たちと比べたら60年くらいは経験の差がある。などとは当然言えないので、志波の家で昔から訓練しているということになっている。
「浅打貰わないといけないから、1回目の授業は受けたほうがいいんじゃないかなぁ」
「………俺斬魄刀持ってる」
「え」
決して悪いことをしてるわけではないのだが、あちこちから「まじか………」などの声が聞こえると居た堪れない。こういうときだいたい志波家だからである程度流されてしまうのだが、家の威光を振りかざしているようで気分は良くなかった。
さっさとこの場をさろうと荷物を急いでまとめていると突然教師が「ああ、そうだな」と頷いた。
「志波、最初の一回目の授業は出なさい」
「え」
まじで?
「嫌なのか?」
と教師が一護を睨む。その嫌なものを見るような視線ちょっとなつかしい。
一護は昔からこの見た目のせいで教師からの印象が良かった試しがない。見た目通り不良だったので仕方ないのかもしれないが、喧嘩など起こす前から睨まれていたせいで不良になった気もしないでもない。
大学ではそれもなかったが社会に出るとやはりそのレッテルがついて回った。
尸魂界では大丈夫だろうかと思っていたのだが――。
どうもこちらもそれほど大差ないらしい。なんとも意外な話である。
へんなの。と一護は眉を寄せた。
少なくとも一護が知っている護廷十三隊の死神は、結構見た目も派手だし素行も悪そうだ。あれらに比べたら自分など可愛いものだと思うのだが。
もしかしたら一護があまりに特殊な条件で入学していることに原因があるのかもしれないが、それも別に一護の責任ではない。
名前すら覚えていない教師にこのように煙たがられるのはいわれはないのである。
「嫌じゃないですけど」
「なら出なさい。その教材は宿題でいい」
そう言い置いて、教師は教室を出ていってしまう。
「……なんかごめんね、一護くん」
「いや」
教師の雰囲気の悪さに密かに渋面を作っていた梅だ。彼女が謝罪することなど何もない。
仕方なく、一護は最初の授業《浅打との対話》に参加することとなった。
演習場で担当の教師に事の次第を伝え、みんなの後ろにそっと立った一護は生徒たちが浅打を渡される様子をじっと見ていた。
腰にさした状態で後々授与式があると梅から聞いていたので、結構雑に配られてるのを見ても何も思わない。
じっと見ているがどの斬魄刀からも特別な力は感じない。なんにでもなれる最強の斬魄刀とのことなのでこの中からものすごい卍解を見せてくれる斬魄刀も生まれるのかもしれないが、今はそれもわからない。
みんなに斬魄刀が配り終わった頃。教師が一護の元にやってきた。
生徒たちの目が一気に一護に向けられる。
「志波、君はたしか斬魄刀を持っていたな」
「はい」
「君も斬魄刀と対話しなさい。斬魄刀は?」
言外に持ってきていないのか? と尋ねられて一護はちらりと演習場の入り口を見やった。
いつもはあやまり倒して寮に置いてきているのだが、今日この授業では何があるかわからないからと、こっそり授業前に瞬歩で取りに戻り、こっそりおいてある。が、何事もなければ隠したままにしたかった。
斬月は常時解放型の斬魄刀だ。
現状見た目に鞘はなく、以前のように布を鞘代わりにしているので見た目は普通の斬魄刀とは全く違う。しかもものすごくでかい。
一護の意思で二刀に戻せば一方は小型だが、その一方だけ持って「これが斬月だ」と見せるのは本意ではないし、二刀流と思われるとそれはそれで大騒ぎだ。
その大きさ故に学院内ではとてつもなく目立つので持ち込まないほうが良いだろうとわざわざルキアたちに言われいるので、それをここで披露してよいものかわからない。
しばらく悩んで、一護は結局持ってきてます。と言って斬月を取りに行った。
戻った一護を見て、どよっとざわめきが起こる。
その大きさ、その姿。見たこともないそれに唖然となる生徒たち。教師などは顔色を変えて一護と斬魄刀を交互に見ている。
ほらー! と思いながらも、真顔で斬月をもってストンと座った。
斬魄刀との対話は内な世界での対話だ。残念ながら斬月の場合おとなしくおしゃべりするような性格ではない。一護の色味を反転したかのようなアイツは、内なる世界のビル群に一護が訪れる度に喧嘩を仕掛けてくる。
対話はあまり穏やかには行われないので、立ちっぱなしは危険だ。
教師が生徒たちに座って目を閉じるように伝えているのが聞こえたが、それもゆっくりと遠のいていく。
死後何度か対話を試みているが、斬月の反応はいまいちだ。対話ができないとかではないのだがあまり機嫌がよくない。最近は寮に置き去りにしているのでそれもあって不貞腐れている感じがする。なので対話はできるだけたくさんしようと思っていた。これも良い機会だと心の中へと意識を落とす。
もう少しで内なる世界で目を覚ますというところで一護はふっと目を開けた。
「一護くん」
梅と、それから入学してすぐに親しくなったもう一人の友人、沖野心平が一護の前に背中を向けて仁王立ちしている。
「え、何してんの?」
二人の正面には入学初日に文句をつけてきた山見ガリ勉くん。すでに下の名前を忘れてしまった彼が立って、鞘に入ったままの浅打を地面につきさし、酷く不快そうに二人を、そして一護を睨みつけていた。
志波家に関らないんじゃなかったのか思いつつ、もしかしたら志波家復権話を空鶴が全く受ける気がないことをようやく知ったのかもしれない。
貴族の実家に帰ってそういう話をしたのだろうか。
ガリっ! と音をたてて、山見ガリ勉が再度浅打を地面に突き立てる。
「僕を無視するとはいい度胸だ」
「一護くんは対話中だから話しかけても無駄だよって言ったじゃない」
「そうだぜ。だいたいそういうのは授業中にやるなよな」
心平の言う「そういうの」とは一護にいちゃもんを付けることだ。生前よく授業中他校のやつに邪魔されたことを思えば可愛いものだが。
一護が斬月と対話を試みている間に何度か話しかけてきていたのだろう。周りから見れば一護が無視していたように見えたかもしれない。
「……聞いてなかった。で、何か用?」
お前は浅打と対話しないのかよと思って周囲を見るとだれも対話しようとはしておらず、視線がこちらに刺さるように向けられていた。
更に向こうでは担当の教師が赤くなったり青くなったりと顔色をせわしなく変えながら一護を見ている。一通り眺めて再びガリ勉くんを見ればイライラとしているのがありありと分かる顔をしていた。
「志波の縁者だから斬術の授業は免除、実践演習も免除、しかも斬魄刀も持ってるって? 随分特別扱いされてるじゃないか」
「まぁな」
志波の名前はあくまでも言い訳用の小道具なので、正直それが理由ではないのだが。と思いながら一護が曖昧にうなずく。ついでに斬月を持って立ち上がる。意外なことに山見ガリ勉は一護より身長が高かった。
「僕も貴族として斬魄刀とは馴染みがあるが、そんな出刃包丁みたいな斬魄刀みたことない。本当に斬魄刀なのかあやしいな。見栄を張って浅打を要らないなんて言ったのなら、今のうちに嘘を謝罪したほうが良いんじゃないかな。それに斬術の授業は受けたほうがいいと思うけど、もしかして死神になる予定はないとかかい? 君が隠密機動や鬼道衆に入れるほど器用な男には見えないけど? まぁ僕は鬼道衆への将来が約束されてるけどね。おっと、これは秘密だった。聞かなかったことにしてくれたまえ」
つらつらとよくわからないことを喋る山見ガリ勉を一護はあまり見ていなかった。視線が向かっているのは彼が先程から遠慮なく地面にずりずりと押し付けている斬魄刀の方だ。
一護は相手の言葉の一切を無視することにして「どうでもいいけど」と話をぶった斬る。
「斬魄刀は大事にしたほうがいいぜ。今日会ったばっかでいきなりそんな土にぶっ刺されたらかわいそうだろ」
間違いなく斬月なら嫌がるだろうと思って善意で言ったのだが、山見ガリ勉には伝わらなかったらしい。
この浅打との対話の授業はそれを行う必要性をざっくり教わるだけ。実際対話できるようになるにはとてつもない時間が必要なのだそうだ。それこそ6年経っても対話ができない者もいる。
更木剣八が長いこと始解できなかったことを考えると、それもおかしな話ではない。
「自分のものをどう扱おうが勝手だろう」
「そりゃそうだけど……」
「一護くんの言う通りよ。斬魄刀と一緒に過ごして対話していくことで強くなれるって、さっき先生も言ってたじゃない」
梅のセリフにうんうんと一護はうなずいた。
実はその先生の言っていたことは聞いてなかったのだが、まぁそのとおりだと思う。
モノではあるが意思がある刀だ。どういう扱われ方をするかで相棒との距離感も決まるだろう。きっとこの男は当分浅打とは対話できない。やれやれと肩をすくめてから、一護は斬月を逆手に持ちずいっと目の前に突き出した。
「斬魄刀にも意思があるんだ。大切にしてくれるやつの方がいいに決まってる。そういえば俺のこいつが斬魄刀じゃないだろって言ったっけ?」
「言ったよ。それは斬魄刀じゃない。図体だけがでかい、なまくら包丁ってとこかな」
何を持ってそう断言するのかは分からないが、バカにしたように斬月を見るその目は気に入らない。
思えば今まで斬月をこのようにコケにされたことはない。こいつは絶対死神になれないと断言できる。
「試してみるか? なぁ、”斬月”」
一護が名を呼ぶと同時に、ミシッとなにかが音を立ててきしむ音がした。
次いで、パキッと軽い音をたてて屋根からパラパラと木くずが落ちた。
砂が舞う様と反対に、空気はズシっと重くなる。
生徒たちが喘ぐように口を開け、ガクリと膝をつき、目をかすませて倒れる。その直前――。
「そこまでだ! 志波!」
教師の声に、パッと空気が軽くなった。
反動でかろうじて立っていた生徒たちが膝をつく。
気づけば先程まで遠くで見ていた教師が、やはり青ざめた様子で一護と山見ガリ勉の間に立っていた。一護は一瞬で霊圧を抑え込み肩をすくめる。
「……志波くん、ちょっと霊圧抑えて……」
「さーせん」
周りを見れば特進学級の生徒たちが呆然と一護を見上げている。横を見ればおなじく梅と心平が尻もちをついていた。
「わり。大丈夫か」
手を差し伸べ二人を立たせる。カクカクと膝を震わせた心平が「おいおい」とか細い声を出して笑うので、一護もつられるように苦笑いを返した。
「ほんのちょっと出したつもりだったんだけど……結構でかかったかな、霊圧」
本当に一護はほんの少し霊圧を開放したつもりだったのだが、一護が抑えている霊圧の量を考えればちょっともちょっとではなくなる。
生前ほとんど霊圧を抑えることを知らなかった一護だが、60代後半の頃にその必要性に迫られた。
一つは死神としての衰えを感じたこと。もう一つは病院に通うようになったこと。
死神として動けないのに垂れ流しの霊力のせいで虚がどんどん寄ってくるのは申し訳ないとか、身体の弱い病人たちが一護の力に当てられ体調を悪化させるのは申し訳ないとか、そういう理由である。浦原喜助に相談しようやく霊圧コントロールを身に着けた一護だったが、それは水の流れ続けるホースの先を縛ったような状態に近く、すこしでも緩めればドバっと出てくるのだ。
それに当てられた生徒たちは、もはや子鹿のようになるしかなかった。
流石に申し訳ない。
ちらりと山見ガリ勉を見れば、真正面から一護の霊圧を当てられて腰が抜けてしまっていた。むしろ失神寸前状態だ。
教師は乱暴に山見の背中を撫でて落ち着かせながら「山見……ケンカを売る相手はもう少し見極めたほうがいいぞ」としみじみと言った。
「まぁ暇じゃないからさ。喧嘩するなら1年後でよろしく」
この一護の発言の意味が理解できるものは居なかったが、若かりし頃に身の丈ほどの大刀を背負ったかの英雄の後ろ姿を見ていた教師は思っていた。
いや、黒崎一護には二度と喧嘩を売るな。と。
そしてこうも思うのだ。
なんでこの人ここにいるの? と。
隊長各が視察にやってきて、一護が実は死神代行だったのだ!
という流れ大好きなのですが、あえてその流れは今回は書きませんでした。多分次と次の話でやる。
今回はラノベ主人公みたいに友達と知り合ったり授業で力示したりするのが書きたくて、
って思ったら完全に俺ツエーになってしまったので、
一個目と同じく後悔するまでは公開します。 ギャグじゃないです。
小説全然かいてなかったし読んでなかったしで、酷い文章になってるのがほんっっっとうに気になってるんですが、どうか生暖かい目で見てくだされば嬉しいです。