一護が現世演習に行く話。
※オリキャラ注意
※原作のネタバレあり
※捏造注意
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真央霊術院の授業には色々あって、斬・拳・走・鬼はまず基本の授業である。
刀を恐れず振るえるようになれば、斬の一歩。
体術のみで模擬用義骸に勝てるようになれば、拳の一歩。
瞬歩で指定の時間での移動が可能になり、空中に霊子の足場を作れるようになったら、走の一歩。
さだめられたいくつかの鬼道をこなすことが出来るようになれば、鬼の一歩。
それらすべてができるようになって初めて、実践授業への参加が認められる。
魂葬の授業は現世へ行く。
ダミー虚との戦いは尸魂界と現世両方で。
穿界門を通る実習や虚を探知する実習は現世で。
学年があがると実際の虚との戦いを経験することもある。
数年に一度、それで犠牲者がでることもある。そんな危険な授業である。
「って、最初は説明されたけど、今までずっとなんもなかったよな」
カツ丼を食べながら心平が言った。
ここは真央霊術院の食堂。
霊力のあるものは腹が空くので、ここにはしっかりとした食堂が備え付けられている。そこで食事を摂ることもあれば売店で買うこともあるのだが、今日はめずらしく全員食堂に集まっていた。
全員とは、志波一護、桜庭梅、沖野心平、片倉雀の四人である。
それぞれ好みのものを食べながら、机を囲んでいた。
「こないだはどこだっけ? 流魂街?」
一護が尋ねると梅が口の中のものを飲み込んで頷く。
「うん。そう。まだ現世の戦闘演習ってしたことないんだ」
「へぇ」
一護以外の三人は、全員実戦演習を何度か経験している。同じ学年、同じクラスで経験した授業が違うのは一護が授業を免除されているからではなく、一護が長く鬼道を使えなかったからだ。
要するに達成していなければならないレベルに達していなかったために、実戦演習に連れて行ってもらえなかったのである。
しかし、10月の半ば。二学期が始まってからちょうど二ヶ月目のころ、ようやく一護は鬼道で”優”を獲得した。
つまり入学してすでに半年以上たって、一護は初めての実戦演習に行く機会を得たのだ。
その間大きな問題もなく。一応なく、なんとかここまできた一護は自分を褒めてやりたい心境だった。実は内心手をあげて喜んでいるのは秘密だ。
ともかく同期と並ぶことができたのはとても嬉しいことだし、実戦に行けることもまぁ嬉しい。
それで今までの様子をきいてみているわけである。
「危険だから気をつけろって散々いわれたけどな」
一護がいうと、片倉がうなずいた。
「それは事実だね。僕も詳しくは知らないけれど、毎年怪我人が出るし、死人がでたこともあるそうだよ」
「それもさっき教師が言ってたな」
一護はさきほど注意事項を教師から聞かされており、梅たちにすこし遅れて食堂に来ていた。
みんながすでに半分食べ終わっている状態で一護も目の前の定食に箸を伸ばす。
「でも模擬戦闘なんだろ? なんかダミー虚だっけ? それでなんで死人まででるんだよ」
「ダミー虚じゃなく、本物の虚に襲われることがあるんだそうだよ」
何で? と聞こうとして、そういえばそんな話を以前聞いたことがあると思い出す。
たしか、恋次から聞いたのだ。
彼が学生だったころ、藍染の策略で現世演習中に巨大虚に襲われた。それで先輩が何人も亡くなったと。
でもそれは藍染のせいだし。などと考えながら一護は味噌汁を飲む。
「結界を張ってその中でダミー虚と闘うんだが、その結界をはっている死神の霊力を求めて虚が来ることがあるんだ。それで結界役が死んだりするのさ」
とよくあることのように片倉は言う。
「結界役って誰がやるんだ?」
「引率の先生か、引率の六回生よ」
一護は顔をしかめた。
六回生には良い思い出がない。ニセモノ騒動のせいで。
一護たちが特進学級なので引率もそうだろうか。そうなるとあの騒動の大元である逢咲一輝と一緒になることもあるかもしれない。なんとなく気乗りがしない。また会ったら変ないちゃもんを付けられるのではないだろうか。
渋い顔をしていたのだろう、心平が「心配いらないぜ」と軽く言う。
「あの逢咲って先輩、あの後一回生との接触禁止言い渡されたって噂だから」
「え! そうなの?」
梅が驚いたような声を上げる。片倉も驚いているので、この情報は心平しか知らなかったらしい。
「こないだ教員室でその話してるの聞いたんだ。なんか上からの指示とかなんとかって。だから学院長が指示したのかなって俺は思ったけど……」
ああ、なるほど。と一護は納得した。
おそらく上というのは学院長ではない。もっと上、例えば総隊長だとか、そういうところだろう。それは学院長も突っぱねられない。
あの件は護廷に普通に報告が上がり、すべてが終わった後に一護は呼び出されることになった。怒られはしなかったがかなり事情を詳しく聞かれたのだ。といっても一護が話せることは少なかったが。
ただ思った以上に深刻な話なのかなと思っている。すくなくともその話をしたときの京楽たちが一瞬浮かべた表情は、ただのニセモノ騒動に困っているという感じではなかったから。
正直とても気になる。しかし彼らが何も言ってこないということは、今のところ一護が首をツッコむべきことではないのだろうとも思う。
死神代行として尸魂界と関わる中で、当事者意識というか、すぐ首をツッコむ癖というかを少し直さねばならなかった。それで何度も報告を待て、知らせがないうちに首をツッコむなと言われたものだ。
もちろん悠長に待っていられないこともあったが、勝手に動くと困るという理屈もわかった。だから何度も何度も注意されながら我慢する努力をして、言われないうちは彼らの判断を尊重しよう。そう思うようになっていた。
もしかしたら今までとは逆に、護廷に入るならばその考えを変えないといけないかも知れないのだが。
今回のことも言わないということはまだ動くなということなのだろう。
その上で、一護が困らないように接触禁止としてくれた。
京楽には本当に頭が上がらない。
「まぁでも、いないならいいか」
「そもそも次の演習は五回生が引率だったはずだよ」
片倉が手帳を見ながら言う。
「五回生? なんでだよ」
「五回生の結界の授業を兼ねているらしい。だから教師も引率するみたいだね」
「へぇ」
意外と柔軟に授業をするらしい。
一護にとっては初めての実戦授業だ。楽しみなのだが、しかし、問題が無いわけではない。
「加減できるかなぁ」
一護は卵焼きを口に突っ込んでうなった。
「加減?」
魚の骨をとっていた梅が一護に尋ねる。
「いや、まぁな」
教師から、斬魄刀の使用はもちろん許可された。でなければ虚を倒せないからだ。けれどはたして斬月を開放して大丈夫なのだろうか。
斬月を戦闘で使ったのは梅の件だけ。あのあと何度も対話をしたし、休日に護廷の鍛錬に参加したりはしたが、結局戦意をもって使ったのは殆どない。そもそもすべてが死神相手だ。だから手加減はできていた。
では虚相手だとどうだろうか。一護は手加減をできるだろうか。
加減をせずにぶっ放したら、みんなに見られたらまずいのではないか。
一護は腕にはめた霊圧制御装置を見下ろす。これを付けてからまともに霊圧を開放したことはあまりないからどうなるかわからないが、不安が残る。
梅は一護の歯切れの悪い言葉に意図を理解したらしく頷くが、心平と片倉はそうもいかないので、加減なんていらないと笑われた。
これがいるんだなー。と一護は思うが口には出さない。
もう一つの懸念は、この演習がチーム行動ということだ。
正直ちょっと良くわからない。だって、一体の普通の虚相手に複数人で立ち回る方法とはなんだろうか。そんなもん一刀のもとに両断してしまえばいいではないか。いや、それができないから学生なのだろうか。だとしたら一護はどう立ち回ればいいのだろう。
大群と闘うならわかる。
一護の虚退治で一緒に行動したことがあるのは、織姫、チャド、石田。彼らの能力も彼らの性格も知っているし、基本的には一護が先頭に立っていたので、それを前提とした行動を全員がしていた。
その上で大群相手であれば、分担したり、攻守を分けたりしたのだ。
そのときの応用で戦えば、大群相手ならなんとかなりそう。な気もする。
いや、いつものように「じゃああっちの虚は任せた!」はだめかも知れない。
ともかく大群ならまだ集団戦の経験があるが、一体の虚相手に数人がかりで挑むのはなかなか経験がない。メノスクラスならともかく。
全く想像できないのだ。
一護は溜息をつく。
自分の基準がおかしいことはわかっている。
生徒たちを無意識に弱いものと決めつけてしまっていることも事実だ。
でも事実そうなのだから困ってしまう。
うまく立ち回れるか。
今の一護の心配はただそれだけだった。
ざわりと空気が動く。
生徒たちの目が一気に一人の生徒に向けられた。
正確には、彼が背負った斬魄刀にだ。
実技演習の当日。
その日は授業が午後から夜間にかけて行われる。夜間とはつまり、現世での実戦である。
昼休みの時間に学院にきた一護は、最初の斬術の授業以来はじめて斬月をもって校舎に入っていた。
背中にかついだ重みはとても落ち着く。
しかし周りはそうでもない、明らかにおかしい霊圧を放つ巨大なそれを背負った一護は、廊下を歩くだけで周囲の目を引き付ける。
途中ですれちがった眉墨などは、目をきらきらさせていた。
サインとか言い出しそうだったので、全力で断った。学院長と岩田先生にも知らせないととか言っていたのは聞こえなかったふりだ。
教室に入れば、クラスメイトの視線が突き刺さる。
適度にバラバラに話をしていた生徒たちが同時に反応を示したので、流石に空気が揺れる。
一護は目立つことを覚悟してきていたが、やはり居心地は悪かった。
「めだってるね、それ」
声をかけてきたのはやはりいつものメンツの一人。片倉だ。後ろには心平と梅も居た。それぞれ背中に刀袋を背負っている。
「でかいからな」
一護が答えると片倉がおかしそうに笑う。
「最初に見たときも驚いたけど、本当に大きい。それに霊圧もね。君がすごいというのは斬魄刀を見てもわかることだ」
「片倉はさぁ、いっつも一護を褒めるよな。俺も褒めろよ」
「どこを?」
「即答しないで探してくれよ!」
とこれまたいつものコントを見ながら、一護は斬月をそっと床におろした。
授業中は置く場所がないのだ。でかいから。
それを見ながら梅が感慨深そうに頷く。
「いつみてもすごいねぇ。一護くんてこの斬魄刀を振り回してるんでしょ? 重たそう」
「まぁ、重いけど、最初からデカかったからな」
始解を習得する前から、一護の斬魄刀は大きかった。あの頃から振り回しているので慣れたものだし、そもそもそこまで重いと思ったことはない。
重さがないわけじゃない。軽いわけでもない。だがやはり斬魄刀は一護と最も繋がりが深い存在だ。軽く感じるのはなにか不思議な理由があるのかも知れない。
一護は斬月を一撫でして椅子に腰掛ける。
「鞘は無いのかい?」
「あー。鞘の形はしてないんだが、一応鞘はある」
「意味がよく……」
「俺も説明できねぇんだよな」
斬月は今柄の長い一振りの刀で、柄に巻いてある布を刀身に巻いて鞘のかわりにしている。
普段はこの形がベースなのだが、以前やってみたところ二刀にすることもできた。零番隊の二枚屋王悦 によると、そのうち一本は鞘なのだという。つまり一角とおなじように二刀流ではなく、鞘と刀の二本使いなのだ。
斬月が説明してくれないので一護はうまく解釈しきれていないのだが、結局このベースの形が一護の死神の力なのだ。
俺の力で闘う。ある意味それを体現している形だ。
とはいえ、もちろんこれはしっかりと斬月なのだが。
その斬月とは昨日の夜に寮の部屋で刃禅を組んで心の中で対話、という名の戦いをしてきた。いや本当に、相変わらず好戦的なやつである。
そこで今日の演習の話もして、下手に力を出しすぎないようにするという話もした。
別に斬月は一護が力を引き出そうとしなければ勝手に暴れて霊圧を跳ね上げるというわけではないのだが、彼の気持ちの問題で能力が変わるのも事実なのでご機嫌取りは必至だ。
「一護はさ、始解出来るってことは斬魄刀と対話できるんだよな」
「あ? まぁな」
「俺はさぁ。全然駄目」
「私も」
「僕もだよ。聞いた話では六回生になっても対話が成功しないこともあるそうだ」
へぇ。と一護は意外な事実に驚く。
がしかし、一護もたいして変わらないかもしれない。
一護の中には滅却師の力である斬月のおっさんが居て、彼が死神の力でもある斬月本体との対話を防いでいた。
そしてその斬月本体は虚の力故に一護を飲み込もうという言動をしていた。
仮の状態で会話が成立してはいたものの、しっかりと対話できたのはそれこそあの戦争のときだ。なんだかんだ言って数年かかっている。まぁその殆どは死神の力を失っていたのだが。
今までの一護の状況はきっと特殊なので何も比べられない。
じゃあ周りはどうかと言うと、剣八のように始解ができない例があるのもわかっているが、それはかなり稀な例だ。他の知り合いはみんな始解が普通にできるし、基本的にみんな出来ると思っていたのだ。
「始解って難しいんだな」
思わずそんな言葉がでると、片倉が怪訝そうに一護をみる。
「そもそも始解なんてそう簡単にはできないことだろう? 対話できたとしても始解ができるわけじゃないし」
マジで?
「あ、まって俺色々としらないわ」
勝手に対話するイコール名前を知るイコール始解だと思っていたが、そうでもないらしい。
自分の例を思い出そうとするが、やはり思い出したところでそれはなんにも参考にならない。
どれだけ自分がおかしな流れの上にいるのかを実感するばかりで、普通のことが分からなすぎた。
「一護くんていろいろ特別なんだねぇ」
と呑気に言う梅。それは擁護しているのか何なのか。偶に梅が一護の正体を知っていることを忘れそうだ。
今日の実習、本当に大丈夫かなぁ、と不安になるばかりであった。
「隊長」
「……何かネ」
じっとモニターを見つめていた男は、振り返ることなく答えた。
男のそういった態度はいつものことなので、特別気にすることもない。男の補佐を務める副隊長阿近は、手元の資料を見ながら続けた。
「先程、大霊書回廊の司書から連絡がありまして、勝手に資料を持ち出してはいないかときかれたんですが」
「さてネ。私が知るはずないだろう」
大霊書回廊とは尸魂界で起きたあらゆる事象、事柄が集められる場所だ。そこには秘匿された情報や物事も記録されている。
技術開発局にとってその場所は2つ目の資料庫だ。そのためかなりの頻度で局員が足を運ぶのだが、基本的には資料の持ち出しは禁じられている。
それを阿近の上司であるこの男が知らない訳はもちろん無いが、その一方で資料を勝手に持ち出すことは日常茶飯事の人だった。とはいえ、いままで一度もそれが気づかれたことはない。彼は用意周到にコピーを取るから、本体がなくなることがないのだ。
大霊書回廊から持ち出していないか。などと聞かれるなどまずありえない。
のだが、バレないだけでやってていることはやっていることなので、渋々確認をしに来たのである。
全く予想通りの反応であった。
「そうですよね。ただちょっと内容が内容だったんで」
阿近が上司にわざわざ聞きに来たのにはもう一つ理由がある。
男はようやく阿近を振り返った。
「なんの資料だネ、それは」
奇抜な虫を思わせる格好は彼のトレードマーク。ころころと変わるそれはファッションのようなものなのだが、先日また新しくなってまだ見慣れない。
阿近は男から視線を逸らすように資料に目を落とす。
「虚圏から回収した”ザエルアポロの保管庫内の資料”です」
男がわずかに目を見開く。
それはかつて虚圏で男が回収してきた資料。その一部。
特別大切でもない部分は、男の判断で技術開発局に通常通りに保管された後、いつものように強制的に大霊書回廊にも保管された。それを誰かが持ち出した。
わざわざ持ち出すということは、まずもって技術開発局ではない。なぜならその情報は同じものがもっと詳しくこちらにあるのだから。
それでも阿近が男にそれを伝えたのは、その情報を欲するということ自体に問題があるから。
ザエルアポロの研究資料。
それは虚と破面研究に役立つもの。
一体技術開発局の者以外の誰が興味をもつというのか。
何かが起きようとしているのか、あるいはすでに起きているのか、どちらにしてもこの事態がなにかの前兆であることは感覚的に間違いないだろう。
男もまた阿近と同じように感じたらしい。
長い爪で机を軽く叩く。
「おもしろいネ」
そう言って、涅マユリは口元を歪めた。
ということで、現世演習に行くお話。
梅ちゃん編につづく新しい中編の始まり。のつもりです。
いろいろ書きたい事があるのですが、僕の実力でどこまでかけるか・・・・・・
最近面白おかしくかけてない気もするし、がんばりたいところです。
マユリ様がでてくるとなんか起きそうな感じするよね。
あとゆっくり書き溜めしながら出したいのに、書くとすぐ出してしまうので永遠に書き溜めできない!
それでは!!!