黒崎一護・護廷十三隊物語   作:hapi

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  一護が死後、尸魂界にやってきて真央霊術院に通う話。
 一護が現世演習に行く話。

 
※オリキャラ注意
※原作のネタバレあり
※捏造注意
※流血表現注意

 
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25.現世演習は鬼門だと誰かが言った3

 

 

 

 お前は貴族なのだから。

 そんなセリフを嫌というほど聞いてきた。

 そして同時に思うのだ。所詮ただの下位貴族ではないかと。

 

 山見家はたいした功績を残してもいないし、重要な役職についているわけでもないただの貴族だ。

 そこそこ優秀な死神を代々輩出している以外に誇れることもない。

 自分がその一族であることを誇ったことも本当は無い。ただ貴族だということにずっとしがみついている自覚はある。

 

 真央霊術院に入ったときも、自分のほかにも優秀な貴族がいることはわかっていた。

 それでも貴族だから、流魂街出身の平民には負けないという自負があった。

 なのに、優秀な者が集まるはずの学級に平民がいる。

 どいつもこいつも冴えない顔で、貧乏人の顔で、気品のかけらもないやつらばかり。なのに優秀な成績で入学した。

 特に気に入らないのが志波一護という生徒。

 流魂街に居を構える平民のふりをしたあの志波家の人間。貴族のくせに貴族の務めを果たさないあの一族を祖父も父も嫌っている。

 その一族の人間で、実際貴族らしからぬ奴で、なのに。

 実技を免除されている。斬魄刀も持っている。いろんな有名な方と知り合いで、いつだって特別扱い。

 同じ貴族だと思うことすら許せない没落した貴族の分際で、自分以上の待遇が許せなかった。

 

 同時に、うらやましくもあった。

 

 その自由な様が、うらやましかった。

 

 

 

 

 

 突然、何もない空間から巨大な虚が姿を現し、沖野心平を襲う。

 その瞬間山見の頭の中にあったのは恐怖だった。死が目の前で起きようとしている。その様を目の当たりにしてるという恐怖だ。

 けれど、沖野に死は訪れなかった。

 橙色の髪も、あのでかい斬魄刀も、気に入らないものばかりを集めたその男が、虚の攻撃を尽く弾いた。

 

 攻撃を弾かれた虚は大きく転び、背中を付けてその身を地に伏せる。土煙と轟音、なにか金属製の重いものがいくつも重なって落ちる音などがたて続けに響く。

 山見のすぐ隣に立って呆然としていた片倉雀が走り出した。

「沖野くん!」

 山見はつられるように後を追う。

 

 近くまで来て、山見は狼狽した。

 見間違いなどではなかった。

 尻もちをついている沖野心平を護るように立っていたのは、志波一護だった。

 志波家の人間で、あらゆる授業を免除されて特別扱いをされる。成績がそこそこいいだけで周りに優遇されている奴。

 けれど多くの人に慕われている。そんな奴。

 志波は走って近づいてくる片倉と山見を一瞥したが、すぐに視線を集合地点へと向けた。周りにある建物に比べれば背の低い建物の屋上に、生徒と教師が10人程度集まっている。

 志波は彼らのうちの数人が倒れているのを見て眉をひそめると、徐ろに斬魄刀を一閃する。

 強風が渦を巻いて、一瞬片倉も山見も足を止めてしまう。

 夜の闇を裂くように、発光する巨大な刃が飛翔して生徒たちに群がっている巨大虚の一体を真っ二つに切り裂いた。

 「なッ!?」

 驚愕するそれぞれが凝視する中、更に数度志波一護は斬魄刀を振るった。

 風を斬るような音をたてて巨大な刃が更に別の巨大虚の胴や手足を切り裂く。

 

 バラバラと躰が崩れていき塵となったのを見届けたのだろう、静かに斬魄刀をおろした志波一護は振り返った。そのまま巨大な斬魄刀を地面に突き刺す。

 いつだったか、地面に斬魄刀をなすりつけるなと言われたことを思い出した。そんな場合でもないのに、山見は「自分だって」と思う。

 一護は凪いだ目をしていた。

「大丈夫か、心平」

「お、おう」

「ならいいんだ――」

 そんな間の抜けたやり取りを片倉の叱咤するような声が遮った。

「悠長なこと言っている場合かッ!」

 片倉が沖野を立ち上がらせながら再び叫ぶ。

「逃げるぞ!」

 まだ巨大虚は2体いる。集合地点を囲んでいた一体と、沖野心平を襲った一体だ。

 しかし志波は「いや」と静かに言うと、そのまま視線を先程沖野を襲った巨大虚に向ける。いつの間にか起き上がっていたそいつは志波に狙いをさだめたようで、今まさに襲いかかろうと爪を構えていた。

「逃げろッ!」

 次はない。そんな声音で片倉が叫ぶ。山見も同じように思ったし、片倉と共に沖野の元にまで来てしまったことを後悔した。

 しかし次の瞬間再び驚愕の出来事を目にする。

 無造作に立っていた志波一護が地面に突き刺していた斬魄刀を握ると、軽々とその大刀を巨大虚に向かって一閃した。

 襲いかかろうとする巨大虚の頭部が縦にパカりと割れる。

 

 志波一護は、たったの数秒で3体の巨大虚を屠ってしまったのだ。

 呆然とする三人を前に、志波は肩慣らしをするように腕を回し、最後の一体に視線を向けた。

 こちらの巨大虚も仲間をやられてすでに志波を標的とさだめたようだ。複数の生徒も教師も無視して志波に躰を向けたあと、その大きな口をぐわっと開けてあの耳障りな叫び声を上げた。

 ぞわぞわと内臓を震わせるようなその轟音に身をすくめたのは山見だけではない。

 三人とも萎縮したように躰が動かなくなる。一方で、志波はなんでもないものを見るようにそれを睨む。

「三人とも、そのままじっとしててくれ」

 志波はタンッ! と小さな音をたてて屋上の床を蹴った。

 かろうじて目で確認できる速度で志波は虚の元へまっすぐに飛んでいく。斬りかかるのかと思ったが、次の瞬間にはすでにバラバラと巨大虚の躰が崩れていた。

 四体目も一瞬のことだった。

 

「どーなってんだ……」

 ようやく忘我に近い状態から脱した沖野が呆然と呟く。それに山見も片倉も言葉もなく頷いた。

 夜空を覆うように立っていた巨体がすべて消え去り、痛いほどだった恐ろしい霊圧も消えて、静寂を取り戻したその場所にただ三人は取り残された。そうなると、ただただ今見たものを疑うしかできなくなる。

「……あれで学生って……冗談だろ?」

 沖野がまるで化け物を見たような声で言う。

 そんな彼らしからぬ言動が仕方ないだろうと思う程度には、全員がその異常な光景に酷くうろたえていた。

 

 

 

 

 

 四体目の巨大虚は豚のような仮面をしていた。

 二足歩行で、腕が四本ある以外は人の形に近い。一護はそのすべての腕をほとんど同時に切り落とし、最後に霊圧を乗せた斬撃でその首を刈り取った。

 これは月牙天衝ではない。

 しかし剣圧と呼ぶには斬撃としての形状を保ちすぎている。

 ただ、刃の形をした霊圧。それを飛ばしただけ。斬月に霊圧を喰わせて増幅させたわけではないので、一応月牙天衝ではないのだ。

 威力は随分劣るが、現世で虚を倒す程度なら事足りる。

 それらを使って四体の巨大虚を倒した一護は、空から降りてきたかのように集合場所の建物の屋上に降り立った。

 恐怖と困惑に表情を引きつらせた生徒たちは目の前で重症になっている者たちよりも一護を呆然と見ている。その間を通って、倒れている教師と生徒のそばに膝をついた。

 どの生徒も大なり小なり怪我をしているが、大怪我をして動けないでいるのは四人。

 二人は生徒で、二人は教師。

 生徒のうち一人は腕を切断されたようだ。出血多量で朦朧としているが、意識はある。もう一人は頭から血を流している。仲間の一人が声をかけて必死に意識を戻そうとしていた。どちらも今すぐ処置をすればなんとかなるだろう。

 教師のうちの一人は腹をえぐられているが、こちらも意識がある。腰の側面の一部を削り取られているが、おそらく内臓にまで傷はいってない。そして、最後の一人。

 視線を向けて、くっ。と苦い声が漏れる。

 腹部から胸にかけて大量の出血。おそらく奴らの攻撃を食らって腹に風穴が空いている。肺にも傷つけられているのか、ひゅーひゅーと喉から音をたてていた。

 意識があるのかないのか、視線は虚ろで揺れている。

 たどり着くのが遅かったというのがありありとわかった。

 一護が普段から霊圧を探っていればこうはならなかった。自分にしては早く気づいたほうだが、それでも最初の襲撃が防げなかった時点で怪我人が出るのは当然。

 

 一護はパッと顔を上げて周囲を見渡す。

 いない。

 回道が得意な生徒は、まだ戻ってきていない。

 であるならば。

 一護は一瞬にして瞬歩を使ってその場を離れた。そうして、さきほど置いてきた少女の真横に降り立つ。

「え!? い、一護くん!?」

「来てくれ!」

 叫ぶように言って、彼女の腕を取ると瞬時に瞬歩で元の場所に戻った。

「え、あ………」

 唐突につれてこられたにも関わらず、一瞬で事態を把握した桜庭梅はすぐに最も重症な教師の元に跪(ひざまず)き、ふるえる手で回道を施し始めた。

 最近四番隊の花太郎からひそかに指導をうけているだけあって、動きが早い。

 しかし、彼女の表情は泣き出す一歩手前だった。絶望が顔ににじみ出ている。

 一護もこのような怪我をしたことは何度かある。その都度生還してきたが、それは一護の強すぎる霊力がそれを可能にしているのであって、誰にでもできることではないことは承知していた。

 溜息を飲み込んで斬月を背中に背負いなおす。

 

 周囲をみると、無事だった教師たちの手で他の負傷者の治療が進められていた。腕をなくした生徒も出血が止まったようで、なんとか持ち直したように見える。頭を怪我していた生徒もなんとか意識を取り戻していた。

 そのうち散らばってダミー虚を倒していた生徒たちが集まってきた。

 さきほどの巨大虚の姿を見たのだろう、何が起きたのかわからないという表情で戸惑っている。何人かは建物の上に足を伸ばし、そこに倒れている生徒や教師を見て青ざめていた。

 ダミー虚を倒して意気揚々と帰ってきたら仲間が血だらけで死にかけているとなれば、そりゃ呆然とするだろう。

 教師たちが声をかけて、回道の得意な生徒と教師がそろって重症者の側に膝をつき治療を始める。

 しかしやはり、芳しくない。

 一護も参加しようと負傷者に近づいた時、教師の一人に声をかけられた。

「志波くん」

 その教師は、特別扱いをされている一護を快く思っていなかったと記憶している。しかしさすがに今はそういった私情を持ち出すことはない。

 ただ困惑が勝っているらしく、呆然とした様子で一護の全身を見ていた。視線が斬月に向けられ、それから一護に戻される。

「君は、一体……」

 一護は目をそらした。

 あの状態で傍観するわけにはいかなかったので手を出したが、正体を積極的にバラすこともなかろうと月牙天衝を使わなかった。それでもやはり誰だって思う。

 こいつはなんなんだ。と。

 正直生前何度も言われたセリフなのだが、意図的に隠そうとしていたことはないから、それがバレたときの対応の仕方など想定していない。

 とはいえ、今はそれを話すような状況でもない。

 すでに教師たちが応援を呼んでいることは把握しているが、できる限り治療を手伝いたかった。

「先生、今は――――」

 

 

 

 言葉を切り、咄嗟に斬月を構える。そして、背後から飛んできたそれをほとんど反射的に跳ね返した。

「きゃああ!」

 攻撃の余波を食らって誰かが叫ぶがそれが誰の声かと確認する余裕はない。

 

 ――今のは、虚閃!?

 

 間違いなく、大虚たちが放つ攻撃、虚閃だ。

 斬月を振るって煙を払う。そうして上空を見上げた一護は目を見開いた。

 

 黒い空にぽつんと白い影が浮いている。

 その姿には、かすかに見覚えがあった。

 空中に仁王立ちする白い死覇装に似た姿の男。

 甲のような形の面にサラシを巻いた頭部。

 名前は覚えていない。

 しかし、空座町に最初にグリムジョーと一緒に来て、ルキアが倒した。

 破面。

 

「よぉ。ひさしぶりだな。覚えてるか? 俺を」

 

 そいつはニヤリと口を歪めて笑った。

 

「破面No16.ディ・ロイだ」

 

 ああ、そんな名前だったと、一護は驚愕に目を開きながら思った。

 

 

 

 

 

 

 





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 今回はちょっと短めです。すみません!
 ディ・ロイ。皆さん覚えてます? 
 まぁ彼を出した理由は追々。
 引き続き頑張ります!!!
 戦闘させるぜ!!!!!!かっこいい一護を書くぜ!
 
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