黒崎一護・護廷十三隊物語   作:hapi

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一護が死後、尸魂界にやってきて真央霊術院に入学した後の話
前回の期末テストの続きで、夜一さんが出てきました。
 


※オリキャラが喋ります
※原作のネタバレあり
※捏造注意


7.挑め真央霊術院期末試験3!!(挿絵有)

 

 

 

 

「黒崎さんが亡くなりました」

 浦原喜助からその話を聞いたとき、夜一はただ「そうか」と返すことしかできなかった。

 いずれはと思っていたことだったからそれほどショックということでもない。けれど、いつまでも小僧だと思いこんでいた彼の死は、夜一にわずかばかりの動揺を与えた。

 食事中だった夜一はその手に持っていた箸をぽとりと落としたのである。

 

 寿命だった。

 無茶をしすぎたせいか。

 霊圧にたえられなかったのか。

 いろんな考えが浮かんだが、結局どれも一護が抱えた重すぎる宿命を決定づけるものでしかない。

 生前に味わうはずのない苦痛を彼は受けてきたように思う。哀れみはない。自らの意思でそれを掴み取ってきたゆえのことだと知っているから。けれど本来なら夜一たちがやるべきことを彼になすりつけてしまったという考えは拭えない。

 結局、彼は恨みごとを言わなかったし、思っても居ないのだろうが。

 せめて死後の彼が緩やかに幸福に暮らせると良いと思う。

 

 などと、その時は思っていたが、まぁ当たり前だが一護が大人しくしているわけもない。

 真央霊術院にいるということを浦原から聞いた夜一は「あやつは休むということを知らんのか!」と箸を浦原に投げつけた。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりじゃな! 一護!」

 真央霊術院の数ある演習場の一つ。そこで一回生と五回生が歩法の試験を受ける中現れたのは、瞬神という異名をもつ四楓院夜一。

 漆黒の長い髪も、神秘的とも言える金色の瞳も一護はすっかり見慣れてしまったが、夜一はかなりキレイな女性だ。その立ち振舞も含めて周囲も見惚れるような容姿の持ち主なのだが、言動で第一印象をことごとく覆される。初見で全裸で会話をし始めたことを思い出すとなかなかに妙な人なのだ。一護は彼女の見た目に騙される者たちにいつも同情していた。

 けれども実力は確かだ。浦原喜助と共に何度も窮地を救ってもらっている。

 強くて、面倒見も良いが、あまり細かいことを考えない。

 そんな人物の登場に一護は一瞬沈黙し、それからだらだらと冷や汗を流して大慌てで駆け寄った。

 

「夜一さん!」

「おお、元気そうじゃな一護、おぬしがこっちに来たと聞いたときは驚いたが、まさか霊術院に通うとは、まったく規格外の男じゃの!」

「ちょぉおっとまったー!」

 慌てて彼女の口を塞ごうとして、ひらりと逃げられる。

「って逃げんなよ!」

「うるさいのぉ、おぬしそんなことでは目立たずなどやっていけんぞ」

 再び口を塞ごうとして失敗し、ほとんどその場から動かないとはいえ瞬歩を交えた鬼ごっこが始まる。

「あんたのせいで目立ってんだよ!」

 正面から掴みかかり、背後に周り、あっちへこっちへひらひらと逃げる夜一を追いかける。

「わしのせいにするでないわ」

 段々と距離を取り始め、遠くに逃げていく夜一を一護は必死で追いかけた。

 

「いやいやいやいや!」

「儂を捕まえられるなどと思うなよ! 小僧!」

「なに楽しんでんだよ!? そういうことじゃねーだろ!」

「なんじゃ、捕まえられぬのか?」

「だーかーらー!」

 イライラし地団駄を踏みそうな顔をして一護は夜一を追いかける。そんな一護の負けず嫌いの面が出始めたことに夜一が楽しそうに笑った。もちろん一護はそれどころではないので「あーもう!」と怒りの声をあげる。

 一護は一瞬で速度を上げ、緩急を付けた動きで遠く上空に離れた夜一に飛びつく。

 

「おお! つかまったわ!」

 などと嬉しそうに夜一は笑う。

 一護は夜一のことを、いい勝負はできてもそうそうすぐに捕まえられる相手ではないと思っている。実際夜一は全力で逃げていたというわけではないので、捕まえさせてくれたという形に近い。さすが瞬神と呼ばれた人物だ。

 

 などと一護が分析しているのを夜一はなんとなく気づいて小さく笑った。

 一護の速度が普通よりはるかに速く、油断すれば簡単に捕まえられてしまうのも事実。それが夜一としては面白くないようで、面白い。

 教え子の成長とでもいうのか、まだ瞬歩もろくに使えなかった小僧を思い出すとそれなりに感慨深いものがあった。

 瞬歩で消えた夜一をきょろきょろと探していた最初の一護が懐かしい。

 

 一護に掴まれて夜一は地上に降りる。すると一護は夜一にしゃがむように合図をし、内緒話をするポーズを取った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「夜一さん、俺今正体隠してるから!」

「そうなのか?」

「志波一護って事になってるんだよ」

「ほう。空鶴がよく許可したものじゃな」

「あ、それは今度お礼言いに行くけど」

「よいよい。あやつどうせ喜んでおるわ」

「とにかくそういうことだから、目立つわけにはいかないんだよ!」

「もう無理じゃと思うが……」

 夜一はついと人差指で何かを指した。それを視線で追って一護は硬直する。

 夜一と行われた盛大な鬼ごっこ。当然だが周囲にいた生徒も教師も目を白黒させていた。

 

 普段から日常的に、それこそ歩くのと同じように使っている瞬歩。使うという認識すら遠く、使うなと言われる方が難しいのだが、それはあくまでも一護や夜一のように使い慣れた者の感覚だ。生徒たちは当然そうではない。

 一護は文字通り唖然となっている彼らと目があってしまい、非常にいたたまれない気持ちになった。

 

 沈黙。

 もはやだれも何も言えない中で、一護だけがダラダラと冷や汗を垂れ流す。

 

 ――俺ってほんとにさぁ!

 

 と頭を抱える一護の横で、空気が読めない人がただ一人。

 

「おお、蜂家の小僧ではないか。なんじゃ、一護と試験をしておったのか?」

 軽快な動きでたちあがった夜一が、一人の生徒に近づく。

 彼は一護が試験で鬼ごっこをするはずだった。というかすでにした五回生の蜂 宇航(フォン ユーハン)だった。

 声をかけられた蜂先輩はぴしりと背筋をのばす。

「し、四楓院っ、よ、夜一様」

「夜一で良いと言っておるのに、まったくおぬしも頭が硬いやつよな」

 

 夜一と対面した蜂先輩は緊張をあらわにしつつ、それ以上に息が荒く肩も激しく上下していた。 

「ところでどうした。呼吸が乱れておるが」

「も、申し訳ありませぬ。はぁ、はぁ、ちょっ、ちょっと……」

 

 そういえば、先程一護と試験をして彼は鬼役だった。

 その時一護は考え事をしながら、例のごとくいつものように瞬歩で逃げていた。彼の瞬歩をことごとくすり抜けて。

 ということを思い出して、一護はさらに青ざめる。

 目立つとまずいから試験を中止にしようなどと思っていたはずなのに。気づけば先輩を軽くいなし、瞬神と瞬歩で鬼ごっこを披露して、その上夜一と親しいことまでバレてしまい、もはや目立ちたくないとか言ってる場合ではない。むしろこれは早急に言い訳を考えなければならない状況だ。

 

「ははーん。さては一護のせいじゃな」

 言って夜一はいまだ硬直している一護を振り返った。

「夜一さん待った!」

「あやつは速かろう」

「あー! あー!」

「追いつけぬのも無理はない」

「夜一さん!」

「なにせ儂が教えたからの」

「だから待てって言ってるのに!」

 

 もはや悲鳴である。

 卍解の取得訓練のとき、瞬歩については夜一からの指導があった。それを教えたといっていいのかは分からないが、たしかに夜一は一応瞬歩の師だった。だからとて、それをバラしてどうするというのだ。

 半泣きで夜一の言葉をとめようとして、しかしまた鬼ごっこが始まっては困ると一護は彼女の手前でピタッと停止する。

「くっ」

 ニヤニヤと笑う夜一。

 止めたいのに止められず宙に浮いた一護の両手。

 すでに夜一がそうとう雲の上の人だったことは知っている。その人と親しい理由など、志波家のつながりでちょっとした知り合いというのが妥当だろうと思っていたのに、そんな言い訳もできない雰囲気だ。

「お、教わったっていうかなんつーか。あれはえーっと」

 しどろもどろになる一護だが、意外なことに蜂先輩は「なるほど」と納得がいった様子だった。とても悔しそうでもあるが。

 

「四楓院様がおっしゃっていた弟子というのは彼のことでしたか」

 そう言って話に入ってきたのは五回生の試験官。

 キョトンとする一護に夜一は苦笑する。

「なんだ、知らんかったのか? 儂が今ここで臨時講師をしていること」

「え!?」

 曰く、大戦のおり多くの教員も犠牲になり、人手不足の解消のために所属のない夜一が月一度の臨時講師になっていたのだという。それから頻繁にではないものの、偶にこうして講師をしにきているのだとか。その際に、弟子が一人いるというような話をしたのだそうだ。

「じゃから、こうしてここにおるんじゃ。何も冷やかしにきたわけじゃないぞ」

 

 ――冷やかしにきたのかと。

 

 しかし、だからといって弟子とバラしていい正当な理由にはまったくなっていない。弟子を取っていたのは周知として、それが一護だとバラす意味がどこに?

「なんじゃなんじゃ、夜一先生と呼んでも良いのじゃぞ」

「よ、呼びませんけどぉ……」

「気持ち悪い口調で喋るな。似合わぬ」

「どうしろって言うんだよ!」

 

 唐突に襟を掴まれ一護はつんのめった。

 といっても避ける事はできたのだが、そこは我慢だ。見れば蜂先輩がものすごい形相で一護を睨んでいた。

「えっと?」

「君! 弟子とはいえ、よ、夜一さん。だなんて気安いぞ! そもそもその口のきき方は何だ!」

 一護は口を閉じる。

 だから彼女は雲の上の人なのだと、わかっていたのにこの体たらく。冷や汗が引く時間すらない。一護がちらりと夜一をみると、にやにやと笑っているではないか。

 ――く、このっ。

 内心ものすごく喰ってかかりたい。もう今すぐにでも夜一さんを連れてこの場を逃げたい。でもできない。

 ――最近、こんな状態になってばっかり!

 

「まぁそう言うな。なんだったらおぬしも気安く”夜一さん”と呼んでも良いのじゃぞ」

「そんな! めっそうもない!」

「……そういうとこ、本当に砕蜂にそっくりじゃの」

 

 やはり蜂先輩は二番隊隊長の砕蜂の縁者だったらしい。

「あれ? でも砕蜂て名前じゃねーの? 名字?」

「あれは号じゃ。元は蜂 梢綾(フォン シャオリン)という名での。まぁそんなことはどうでも良いじゃろ。おぬし砕蜂に嫌われておるからの」

「嫌われてねーよ! 普通だよ普通! あの人誰にでもああじゃねーか! つか嫌われてたとしたら絶対浦原さんのせいだろ!」

 砕蜂は浦原喜助が大嫌いなので。それもこれも元は夜一のせいなのだが。

 

「し、志波くん! それこそ気安いぞ! 砕蜂様は二番隊隊長! 隠密機動総司令官及び同第一分隊「刑軍」総括軍団長の……」

「ええ、長い。そんな肩書あるんすか、あの人」

「し、しかも浦原さんだなんて……」

「浦原さんを他にどう呼べば……?」

 ぱくぱくと口を開閉して唖然となってしまった蜂先輩の横で、夜一がわはははと笑い始める。

 

「さて、もう一護の試験は不要じゃと思うが?」

 一護の試験をみるために来ていた一回生の試験官に夜一と一護が視線を向ければ、コクコクと小刻みにうなずいていた。

「成績は”優”でよかろう。そもそも学院の規格にいれようというのが無理な話じゃ」

「夜一さん!」

「事実じゃろうが。こういうのはコソコソ隠さぬ方がよいと決まっておる」

 まぁたしかに、無駄な心労が貯まるばかりなのだが。だとしてもここで黒崎一護とバラすのはどうかと思う。そわそわとする一護の前で仁王立ちをした夜一は一護を指して言った。

「こやつの歩法の師は儂で、戦いの師は浦原喜助じゃ。ぶっつけ本番で隊長格と戦わせたこともあるから経験も豊富じゃしな。そういうことで他の隊長格とも知り合いというわけじゃ。ガキのころから相手の立場も知らずにいたから、気安いのはそのせいじゃ。今後も変な言動をすると思うが、だいたい常識知らずなせいなのでな。まぁきにするな」

 

 いや、気にするわ! 

 と声が聞こえた気がしたが、一護は聞こえなかったふりをして脱力した。

 名前はバレてない。嘘も言ってない。しかしながらこれでいいのか疑問ではある。まぁ毎回このようなことがある度に言い訳を考えるよりはマシ。なのか?

 

 隊長格たちと知り合いであることがどれほど注目されることなのかはわからない。言葉では雲の上の人だと何度説明されても、一護からすればただの仲間であり知り合いであり友である。友達がどこの誰であれ、例えばどっかの会社の社長だとしてもそんなことは一護には関係ないのだ。

 とはいえ、その組織の一員となる以上は関係ないとは言ってられない。すくなくとも仕事の上では上司として扱わなければならないだろう。

 ならば学院の間はどうなのだろう。

 後に自分が就職するところにいる友人兼上司。そしておそらくすぐに同僚になる。

 うーん。と一護は腕を組んだ。

 残念ながら一護は生前自営業だったので、上司がいるという経験がまったくない。なんだか今後やっていけるのか不安になる一護だった。

 

「そういえば、白打と斬術はどうするんじゃ?」

 あっと思ったのは一護以外の者たちだ。

 今の話のとおりなら、一護は浦原喜助の弟子でもあるわけで、そんな男が試験を受ける必要がはたしてあるのか。

「そっちも受けることになってるけど」

 そんな周囲の気持ちなど考えもしない一護が答えると、教師たちが困ったように顔を見合わせた。

 

「そこは免除したほうがいいのでは」

「いや、授業も免除されているから」

「しかし生徒の相手をさせるのは少し怖いぞ」

「教師が相手をするとか」

「誰がしたがるんだそれ」

 

 こそこそと話をする一回生の教師と五回生の教師たち。

 一回生のテストは生徒同士の模擬戦なのだろうか。

 このまま免除の方向に行けばいいのに。と一護が思っていると、一護の思いを裏切るように夜一が口を挟んだ。

「それなら儂が相手を呼んできてやろうか」

「結構です!」

 思わず叫んだ一護である。

 

 

 結局試験が終わっていないという理由で一護の翌日の斬術と白打の試験に関しては、話が延期になった。その後どのような結論がでたのか。

 試験を終えて帰宅した一護は知るわけもなく。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、一護は嫌な予感を抱えて通学し、試験用の道場にいる楽しそうな夜一と斑目一角に思いっきり顔をそらした。

 

 

「よう! 一護! 呼ばれて来てやったぜ!」

「呼んでねーよ!!!」

「儂が呼んだぞ」

「ほんっとに余計なことしかしねーな!?」

 

 爆笑する二人を前に全く笑えない一護であった。

 

 

 

 

 

 





 続いてしまった!!

 やはり見知った既存キャラを出したくて(^_^;)
 次回は斑目一角の登場です。

 相も変わらずポンコツ披露の一護は果たしてまともに試験を通過できるのか。

挿絵の挿しどころ(笑)も文中にしてみました。どっちかいいかは内容次第かなあと思っております。

あ、それと誤字多くてすみません。勢いで書いてるところあるので(^_^;)今後気をつけます

 それでは次回をお楽しみに! 
 
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