前回の期末テストの続きで、夜一さんが一角を連れてきちゃったところからです。
※オリキャラが喋ります
※原作のネタバレあり
※捏造注意
斬・拳・走・鬼。
死神の戦闘方法は主にこの4つに分けられる。
どれか一つに突出していても足りず、かといってただまんべんなくできればそれで良いというものでもない。
バランスよく全てにおいて優れた能力をもつことが、死神には求められる。
無論。副隊長、隊長ともなればそれは大前提となる。
それ故に、死神を志望する生徒たちの多くはすべてをバランスよく鍛えることを目標に掲げる。
一方で、護廷十三隊の隊長にはそれを無視した任命方法がある。それは隊員200人以上の立ち合いのもと、現隊長を決闘で打ち倒すというもの。
その任命方法によって隊長の座についた者はそう多くはないが、現在の十一番隊隊長がそうして今の座についたことから、その方法自体は広く周知されており、極稀にその方法を用いて隊長になろうとする者もいた。
現職の隊長たちはもちろんこの方法を推奨してはいない。けれども、やはり十一番隊隊長だけは嬉々として門戸を開いて歓迎の形を取っている。
これまでに何度か道場破りのようにこの方法をとった者がおり、その都度それを返り討ちにしてきた十一番隊隊長。
その人物こそ。
「あれが、十一番隊隊長斑目一角隊長か」
「誰が!?」
後方から聞こえた声に、一護は全力でツッコンだ。
◇ ◇ ◇
斬術の試験場となる道場はまだ最近建てられたばかりだという。と言っても尸魂界での最近というのは一護の感覚とズレているので実際どのくらい前に建ったのかはわからない。それでも確かに他の建物に比べれば真新しく見える。そんなやけに広い道場に集まった一回生たちを一護は眺めていた。
まだ試験官の準備が整わないため生徒たちは道場内で所在無げに突っ立っている。中には手に持った試験用の木刀を握りしめて緊張した様子の生徒もいるが、比較的緩やかな空気が流れてた。
生徒たちの初々しいとも言える様子はまるで生前に見た学校の剣道場に似ている。
そこに突然なんの前触れもなく道場の扉が開かれ、現れたのが夜一と斑目一角である。
夜一は昨日の試験に来ていた事が知られてはいるが、同じ演習場にいても実際にその姿を近くで目にできたのは一護と五回生たちだけなので、一回生たちはそれはそれ興奮した様子だった。
さらに斑目一角は十一番隊の現役の副隊長。皆の目が尊敬でキラキラと光っている。
やっぱり隊長格って人気なんだなぁと呑気に思っていた一護の耳に入ってきたのが、先の言葉。「あれが、十一番隊隊長斑目一角隊長か」である。
大きなツッコミにびっくりした様子の生徒たちを凝視して、一護は険しい顔で尋ねた。
「いま、なんて?」
「あ、いや、だから斑目一角十一番隊隊長……」
「だから誰が!?」
ふたたび盛大にツッコんだ。
十一番隊隊長は、殺しても死なない男更木剣八である。それはこの60年どころかかなり前から変わっておらず、聞いたところでは総隊長の次に長く隊長の座にいるらしいとかなんとか。それはちょっと意外であるが。
ともかく、その彼が隊長をやめたなどとは聞いていない。にもかかわらず隊長が一角とはどういうことか。
困惑する一護に一角は肩をすくめた。
「間違ってねーよ。俺は隊長じゃねー」
「お、おお。そうか」
――よかった。ちゃんと剣八が隊長だった。………………良かったのかわかんねーけど。
「じゃあなんで間違えられてんだよ」
問うと、一角は遠い目をしてあらぬ方向をみやった。
「隊長の代理」
「は?」
「何年か前から隊長の座を狙って道場破りみてーなことする奴がでてきてよ」
「すげー命知らず」
「そいつらが弱いもんでよ、隊長がブチギレんだ」
「……ああ、なるほど」
「んで、俺が先にヤッて強かったら隊長が闘うっていう流れができてよ」
「誰か通過したのかよ」
「するわきゃねーだろが」
「……剣八退屈してそうだな」
思わず同情する一護をみて、一角はニヤリと笑った。
「まぁ、おめーがこっち来てから楽しそうだけどな」
「それは聞きたくなかった」
「いつ乗り込むかってウキウキしてるぜ」
「マジで聞くんじゃなかった」
うわぁと顔を引き攣らせる。
わかっていたことなのだが剣八は一護と死合する気満々だ。
一護が老いてからは尸魂界に行くことすら減っていたので遭遇頻度が下がっていたが、別に落ち着いたというわけではない。というかそのヤル気は年々凶悪になっている気がする。最初から殺る気だが、今はもう殺る気がこじれてなんと表現したらいいかわからない何かになっているような……。まぁ、なんといってもそれを楽しみに生きているのが更木剣八という男なのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。
生前は基本的に一方的に勝負を仕掛けられ一護が逃げるという流れだった。剣八と一護が戦うことは瀞霊廷が破壊されるだけでは済まないという理由でほとんどの隊長格が一護の逃亡に手を貸してくれていたために大事になったことはないが。それでもかなり大変だった。
そうした事情は一護が死んでももちろん変わらないので、みんなの協力の元、少なくとも今のところは剣八とエンカウントせずにすんでいる。
「まぁともかく、隊長最近留守にしてること多いからよ、そのせいで勘違いされてるわけだ」
「あんまりよくねーんじゃねーの、それ」
「だからこういうときに訂正してんだよ。いいか! 俺は副隊長だから、間違えんじゃねーぞひよっこ共!」
様子を窺っていた他の生徒たちにキチンと説明をした一角は鼻息荒くやれやれとポーズを取った。
それから、いつの間にか用意していた木刀を一護の前に放り投げる。
「おわっ」
「アイサツはおわり! よしやるぞ」
「は?」
「試験だよ試験。オメーの相手は俺だ! せっかく来てやったんだ感謝しろ感謝!」
「呼んでねーって」
「テメーの試験の相手が務まるやつがいねーって言うからよ」
「だから呼んでねーよ。人の話聞けよ」
「そこで俺よ!」
ドドーン! と効果音でもついてそうな様子で自分自身を指す。
「胸を借りるつもりでかかってきやがれ」
「剣八といいなんで十一番隊って話きかねーやつばっかなんだよ」
人の話を聞かないのは死神共通のような気もするが。と己を棚上げしてることに気づかずに思いつつ、一護は手の中にある木刀を掴み直し手になじませる。
「オマエ俺とやるだけのために来たのかよ。暇かよ」
「おう。来てやった俺にその言いぐさはねーんじゃねーのか? あ?」
「だから何度もいわせんなよ呼んでねーって」
とはいうものの、一対一の模擬戦というのは実力差が開きすぎていると一瞬でケリがついてしまう。それでは試験の成績も付けにくいだろう。
さすがに一護も学生たちと互角にできると思うほど自信がないわけでもないので、相手になる生徒がかわいそうでもあるし、一角がいること自体は助かるといえば助かるのだ。
けれど、ここに一角が来るというのは流石に剣八も我慢ができないはずだ。一護がこっちにきてからウキウキしてるというくらいなのだし、周囲に止められても遊びに来てしまいそうで、一護はひどく不安になった。
「俺は今ものすごく不安だ」
「何弱気なこと言ってやがる」
「俺の立場になってみればわかるぜ一角……」
ここに剣八はいない。心配しても仕方ない。じゃあなんでいないんだって話になる。聞きたいけど聞くのが怖い。
「オマエが来た理由はわかったけどさ。そんなウキウキしてんのに、なんでこっちこねーんだ剣八は。…………来てほしいわけじゃねーけど」
「別の用事があるからな」
「用事って。そういや剣八留守にしてること多いんだっけか? 何してんだよ」
「戦いに決まってんだろ?」
誰とだよ。と一護は首をひねる。
いくらほかの隊長たちが止めていてもこんな機会があれば襲ってくるに違いないと思うのだが、そんな素振りは全く見えないので不思議だ。実際は別の誰かと戦っているというからさらに不思議だ。
剣八にとってそんなに面白い相手がいるのだろうか。
「その用事があるからこねーのか?」
「用事があって留守にしてっから、今日のことは知らせてねーんだ」
と聞くやいなや、一護は手に持った試験用の木刀を投げ捨てて勢い良くきびすを返した。
「まぁまてまて!」
「カバディしてる場合じゃねーんだよ! 用事終わって来たらどうすんだ! つーか絶対バレるだろ!」
「意味がわからねーが、試験どーすんだよ! 成績落ちるぞ」
「成績より俺の首のほうが大事なんだよ!」
「こねーから大丈夫だ! 多分!」
「根拠ねーだろ!」
一護が全力で叫んでいると、それまで沈黙を通していた夜一が一護の肩を叩いた。
「まぁ心配いらんじゃろ。少なくとも今はの」
首を傾げて意味を問うと夜一はニヤッと口を曲げて笑った。
「実はの、喜助と涅のやつが新しい訓練施設を虚圏に作ったんじゃ。今日はそこでグリムジョーと遊んでおるわ」
「は?」
そこは、かつて一護が斬月と卍解の修行をした場所に外見だけは似せた場所だという。
破面であるグリムジョー・ジャガージャックと契約した浦原がグリムジョーと一護が全力で戦える場所を用意しようと作り出した場所。
一護としてははた迷惑だが、大戦のおりに結ばれた契約により一護はグリムジョーとの戦いをほぼ義務化されていた。浦原の勝手な行動だったのでこればかりはちょっと恨んでいるが、ともかくそういう経緯で一護は生前何度もグリムジョーとほとんど全力の戦闘を虚圏で行っていたのである。しかし当時はそのまま虚圏で戦っていた。いつのまにそんな施設ができたのか。
「虚圏にもそれなりに弱い霊的なモノがおるじゃろ。最悪、それらがおぬしの力の余波で変な進化をする懸念があったのじゃ」
「そういえばあったな。そんな話」
一護が老いて、グリムジョーと戦わなくなったため忘れていたが、そういえばそんな懸念があるという話はあった。
一護が死んだことでグリムジョーが再び戦いを仕掛けてくる可能性が浮上し、ならばいっそのこと専用の場所を作ってしまおうとなったとのことだった。
そこに目を付けたのが総隊長京楽春水だ。
実は尸魂界がいかに広くとも、卍解を使える隊長格が周囲の損壊を無視して全力を出せる場所というのはあまりない。けれどもいつまた強敵が来るかもわからない状況で隊長たちに訓練をさせないわけにもいかない。
そこで、浦原が作ったその施設を隊長たちの訓練場としてあてられないか。という話が浦原に落ちてきた。
意外なことにこれにグリムジョーは喜んだらしい。
というのも、ノイトラを倒した剣八と、グリムジョーはずっと戦いたがっていたのだ。
「で、それができてからこっち、隊長はずっとそっちに行ってる」
「なるほどなぁ。そんであいつがいねーからテメェが代理なわけか」
「おう。あっちにいる以上は多分気づかれねーだろ」
「副隊長が隊長と勘違いされるほど留守にするのはどうなんだ」
「尸魂界で暴れられるよりはマシじゃろう」
「もはや天災か? まぁでもそうか。その間に来たってわけか」
「じゃなきゃ来れねーよ。隊長には秘密だ秘密!」
「帰ってきたらバレるんじゃね?」
「いつもすぐは帰ってこないから大丈夫だろ」
信用してよいのか不明である。
しかし、グリムジョーと闘うためにできた施設。今後は一護と剣八が闘うためにもつかうのだろうか。
逃げる理由がなくなった気がするので、全然嬉しくない一護だった。
「志波。そろそろ試験を始める。順番に並びなさい」
試験官の言葉に一護は我に返った。いつのまにか試験官は道場に来ていて、試験の準備も整ったらしかった。
慌てて木刀を手に生徒たちの列に入って、みんなに習って腰を降ろせばめちゃくちゃ視線が突き刺さる。
「一護くん」
横を見れば桜庭梅が眉根を寄せていた。
「どうした」
「……なんかもう、何を聞いていいかわからないよ」
「?」
うんうん。とうなずく周囲の生徒たちをみて、一護は首を捻った。
「なんか変か?」
「変……というか、えーっと、変?」
「だから何が」
説明できないよーと梅が嘆く。
「お二人と知り合いなんだね」
と小さな声で尋ねられて、そういえば夜一の昨日の言葉を一回生は聞いていなかったと思い出す。
どうせ噂としていずれ広がるだろうが、今のところは有名人と妙に親しい変な同級生枠なのだ。そりゃ変にも思うだろう。
「あー、まぁいつかわかるだろ」
いつか噂が耳に届くだろ。と思っていうが、はたからきくとただの意味深発言でしかないことに一護は気づかない。
そうこうしているうちに試験開始の合図とともに順番に二人ずつ呼ばれ、一護の眼の前で試験が始まった。
ちらりと一角と夜一の様子をみると、夜一は教師の一人とあーだこーだといいながら生徒の試合を見ている。臨時講師だと言っていたから、その仕事を全うしているのだろう。時々伝令神機でだれかと話しているのも仕事のうちだろうか。
一角はというと生徒たちと少し離れた場所に座ってじっと生徒の立ち回りに神経を注いでいた。
一角は斑目道場というところの師範代だ。副隊長ということで師範にはあえてついていないが、門下生はいつでも募集中とのことだった。きっとそのへんの勧誘も兼ねているのかもしれないと思い至る。
ちなみに斑目道場は流魂街にもあって、そっちは別の人が師範をしている。知り合いではないが親戚とのことで、斑目家のことはよくわからないが複雑らしいとのことだ。
友人である沖野心平の順番はすぐに回ってきた。
一護は授業が免除されているので、実際に心平が闘うところを見るのは初めてだが、走、鬼、に関してはかなり優秀なほうだと言うことは知っている。
重い足取りで相手が動いて試験開始だ。と思ったら心平の振り下ろした木刀の威力に相手の生徒が押し負ける。心平の追撃は手数は多くないがパワーがある。相手の生徒はすぐに膝をついてしまい、試験官のストップがかかった。
一度仕切り直して、今度は心平から向かっていき、右下から左上へ一気に木刀を振り上げた。相手は木刀を構えて受けようとしたが、あのパワーを知っててそれは悪手だ。叩きつけられた力に押されて相手の生徒の両腕が大きくはじかれ、同時に身体が上に伸びたところ、腰に向かって心平の木刀が降ろされて――。
当たる直前でストップがかかる。
おお! と生徒たちが反応を示す中、一護も「おお」と内心で小さな声を上げた。心平はどちらかというと器用な男なので器用な戦い方をするのかと思っていたが、実際はパワー押しだった。まだまだ足さばきが甘いが、そこは経験次第だ。
こういうのは一角も好きだろうとちらりと一角を見れば、やはり楽しそうに口元が笑っている。一角はなんだかんだ言って技術派だと思うのだが、性格的に力押しが結構好きなのだ。
試験は双方からの打ち合いから開始する。相手に木刀が当たる前に試験官がとめることもあるが、大体はそのまま相手が倒れたりするまで続くようだった。
先程のは心平のパワーを考えて、生徒の怪我が予想されたから止めたのだろうと推測された。
何組が進むと次は桜庭梅の番だ。
本人は斬術があまり得意ではないと言っていた。たしかに手数と速度で相手を上回って闘う戦法のようだから、今はまだ勝率も低いだろう。瞬歩がまだそれほど速くはないので、そこを鍛えれば実践でも使えそうだ。心平との相性は悪そうだが。
二人にはそれぞれアドバイスできることがありそうだ。と一護が思ったところで名前が呼ばれる。
一護の番だ。
立ち上がれば、同時に一角が立ち上がった。
一護は中央にでて、木刀を構える。
木刀はやけに小さく感じた。
一護の斬魄刀”斬月”は常時開放型で普通の斬魄刀とは明らかに形状が違い、大きいし重い。普通の木刀とはあまりにも形が離れている。卍解、昔の天鎖斬月は木刀と形状が近いだろうが、それもこの数十年触れていない形状だ。なので普通の木刀の形にはあまり馴染みがない。
「首かしげてんじゃねーぞ、一護」
一角に呼ばれて、一護は木刀を構え直した。
「たのしもうぜ!」
叫んですぐに、一角が飛び込んできた。
ガァン! と鈍い音がしてお互いの木刀が弾かれる。と同時に双方距離をとり、そしてすぐに木刀がぶつかり合う。
「いきなりかよ!」
「ぼーっとしてたら死ぬぜ!」
「いやこれ試験だからな!」
鍔迫り合いのような状況はそう長くはつづかない。
一護が弾いてもすぐに一角は攻撃を返してくる。一角の突きが頬をかすめたあたりで一護は速度を上げた。
一角の懐に飛び込み、左腕で一角の木刀をもった右手を弾き、がら空きの腹に木刀を打ち込むが、一角もそう簡単に隙をみせはしない。
腹を狙った一護の一撃を左腕の筋肉で見事に受けきった一角は木刀を一護の頭部に叩きつけた。
それを一護は左腕で一角の腕を掴んで阻止する。
肉薄した状態で両手を使った攻防が行われる中、試験官のストップがかかった。
反射的に互いの木刀で打ち合って、弾かれるにまかせて距離をとり叫ぶ。
「おいおい。なまってんじゃねーのか、一護ォ!」
「なまってねぇよ! テメェこそ動きが鈍いんじゃねぇか?」
死んでからこっち、一護はまだまともに斬月を振るっていない。つまり戦いがないのだが、それはそれで平和で良いとはいえど、少しなまってしまったのも事実。けれどそれを言い当てられるのもムカつくものである。
「ま、斑目副隊長、て、手加減を……」
二人のやり取りは実際かなり殺気立っている。試験ということをすっかり頭から抜け落ちているとしか思えない本気のやり取りに、教師が慌てて声をかけるが、一角は鼻で笑った。
「先生よ、一護相手に手加減てのは無茶な話だぜ!」
「手加減しやがったら泣かす!」
「ヤッてみろ!」
などと叫んで、試験官のスタートの合図も待たずに再び打ち合った。
「楽しいなぁ! 一護!」
「まぁ、な!」
――ああ、楽しい。これで手の中にあるのが、斬月だったら。
その姿も、性質も気配も、全てがとてつもなく恋しくなってくる。
闘うのは好きかと言われるとわからない。殺し合いは嫌いだが、ケンカは嫌いじゃない。
この打ち合い自体は喧嘩に近く、だから今はとても、とてもたのしい。
たのしい。と思ってしまったのが致命的だった。
一護が全力で木刀を振り下ろす。
同時に一護の抑えられていた霊圧が膨れて、そして一気に開放されてしまった。
一角も負けてはいない。霊圧がグググと上昇し、二人の霊圧がぶつかりあう。
そうして衝突した霊圧は渦を生み、そして――――。
見物していた生徒たちをことごとく吹き飛ばした。
「おー。派手じゃのう。一護のやつ、霊圧全開じゃな!」
と笑って霊圧の余波を受け流していた夜一は、そろそろかの。などとつぶやきながら周囲を見渡した。
ミシミシと音をたてる道場を眺めて、それから入り口を見遣る。
「うむ」
「四楓院様! 止めてくださいぃ!」
そんな泣きそうな声で試験官が夜一にすがりついた。
試験官からすればたかが学生のそれも一回生の試験に二人がやってきたことも、生徒の相手をすることも異常事態なのに、その生徒がココまでびっくりショーを披露するとは思いもしない。ここまでされると止めようにも止められないので、この事態を引き起こしたのが夜一なのだと察していても彼女にすがるしかない。引き起こしたのが彼女なら、止められるのも夜一しかいないので苦肉の方法である。
夜一は試験官をなだめるように肩をたたく。
「危ないのでな、下がれ下がれ」
と笑いながら、転がっている生徒たちをどかし「よしっ」と彼女が手を合わせた直後。
ドーン!!!
と音をたてて、道場の壁を何かが突き破った。
一瞬、何かが生徒たちの間を通り過ぎる。遅れて強風が発生し、再び生徒たちが転がった。
壁の崩壊によって舞い上がった砂塵が視界を遮り、何がおきたのかもわからないまま呆然とする教師と生徒。
再びドゴン!と音がして、それからシンと静まり返って数秒後、夜一の声が届く。
「やれやれ、一護の試験はおしまいじゃな。次の試験は……道場が壊れて無理そうじゃな」
のんきなその言葉に周囲の困惑が増していくなか、煙は徐々に晴れていった。
そして目に入ってきたのは、道場の壁にあいた2つの大穴。
一つは入り口だった場所だが、ただの穴になってしまっている。もう一つは入り口の正面にあった壁だがこちらも更に巨大な穴がぽっかりと空いていた。
そして、志波一護の姿はない。
「えーっと?」
思わず困惑の声を上げたのは心平だけではなかった。
なにがどうなった? という状況。
しかも志波一護はいないのに、斑目一角はぽつんと道場の中央に立っていた。
その顔はなんだか気の抜けた様子で、こちらも呆然としている。
「斑目、おぬしは無事じゃったか」
「夜一さん、今の……」
「先程喜助から連絡があってな。虚圏での戦いが一息ついたそうじゃ」
「……………………てことはさっきのってやっぱり」
一角は穴から穴を指すように指を動かす。
入り口だった穴から入ってきて、そして一護を捕まえてもう一つの穴を開けて去っていったもの。
その姿を一角は目の端に捉えてはいた。しかしそれはいま虚圏にいるはずの人で、ここに一角がきていることも知らないはずである。
「一護は霊圧をうまく抑えられるようになっておったからの。大丈夫かと思っていたんじゃが……」
一角との勝負ですっかり制御を失った一護の霊圧はそれはそれは見つけやすかっただろう。
斑目一角が尊敬してやまないあの男は、こんな楽しそうなことを見逃す人ではないのである。
一角は遠い目をして穴のほうを見遣る。その穴から飛び出していった先程まで手合わせをしていた一護を哀れに思いつつ、それが終わったらもしかして俺もただでは済まないのでは? と冷や汗をたらりと流した。
完全に状況が一変してしまった道場で、夜一が手をたたく。
「道場の修繕は十一番隊にまかせるとして」
「え」
一角、呆然と返す。
「試験はどこの道場で再開したらよいかの、先生」
「……え?」
試験官、こちらも呆然と返す。
「そういえば、斬術の後は白打の試験じゃったな」
一応同日にやる予定ではある。しかし。
「一護の試験は別日にするかの」
にかっと笑って言った夜一に、試験官の一人が泣きそうになりながら首を振った。
「それはもう免除でぇ!」
数分後、遠くで更木剣八の霊圧が爆発した。
瀞霊廷が大騒ぎになったのは言うまでもない。
こうして、途中退出を余儀なくされた一護であったが、特例として成績は鬼道以外オール”優”を獲得したのである。
「楽しもうぜ! 一護!!!」
「帰ってこないって言ったの誰だよ!!!」
結局来ちゃったけど、みんな何もわからないうちに通り過ぎていったので、万事オッケーです。台風のような男。それが更木剣八。
一護……。どんまい。
さて、どうやら戦ったりするシーンは書くのが苦手なようです。ちょっと地道に良くしていくので、読みづらかったらすみません。
うーん。夜一さんとのやりとりは楽しくかけたのに! 小説てむずかしい!
とりあえず試験編は終わりです。次は何を書くか……。
大まかな流れはあるのですが、まだもうちょっと一護には学生を満喫してほしいので、一護以外のキャラたちの話なんかも混ぜながら学院編を続けようと思います。
次回はちょっとした幕間の物語の予定です!
それでは!!