かみながしじま〜輪廻を断つ者〜   作:空白零無

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セーフゾーン

 

 セーフゾーン。

 私と岳見さんで市街地エリア周辺を探索しているときに発見した金網と有刺鉄線で囲まれたエリア。電気が流れている可能性を考慮し、ダンボール片を投げつけた。バチッ! と音と共にダンボールが焼けこげ、2人揃って肝を冷やした場所。

 今は電気を切ってあるため感電することはないが、念のため確認のためダンボール片を投げつけて反応を見る。

 特に何も起こらなかった。

 

「セーフゾーンに到着しました。一応安全確認をしてきますので少しお待ちください」

 

 そう言って中に入って行く岳見さんを見送り、私は今いるメンツを確認する。

 

(天音みこ。十七歳の学生。実家が神社で巫女をしている。今別府ほむら。十七歳の学生。オタク気質な少女。南愛美。三十歳、養護教諭。天音みこと、今別府ほむらの通う学校の養護教諭。網野光。二十四歳。私の後輩でスキャンダルや闇暴き系のネタ集めが得意)

 

 道中に聞けたことを頭の中で整理するが、やはり共通点は見えない。深めに聞き込みをすれば何かしらあるかもしれないが人の闇に首を突っ込みたくはない。

 

「光。君は何か共通の物に何か心当たりはあるか?」

「今のところは全くね」

 

 思い当たるものはやはりないようだ。

 

「あの、良いですか?」

「ん? なんでしょうか。南愛美さん」

「この施設は一体……」

 

 白衣系養護教諭。南愛美が私に尋ねる。生徒がいる故に不安があるのも無理はない。来て日は浅い(しばらく経つ)が、わかっていることと言えばここがかなり危険な場所であるということだ。

 ん? 今、余計な思考が……

 

「安全確認終了しました。中に案内します」

 

 少し考え事をしていたら岳見さんが帰ってきた。安全確認は済み、室内で休憩させよう。

 壁と屋根があるだけ。それだけで人間はある程度の安心感を得ることができる。

 

 光達を岳見さんにお願いして中に連れて行ってもらい。外の見回りをしてくる。電流はもう流れていないため外敵が来ても自動的に撃退ができるわけではない。

 だがまあ、市街地エリアで遭遇した未知の存在。『ヒトガタ』は瞬殺してしまったため、電気で怯むかどうかはわからない。刀で切った感覚的には、当たった時に怯んだ感じも避けて軌道がズラされる感じもなかった。

 

(厄介ではあるが比較的倒しやすいのかもな。少なくとも、オオカミやイノシシより肉質は柔らかかった。人間より斬りやすかった)

 

 切った感覚触は丸めたゴザ以上人間未満ぐらいだろうか? まあ、ゴザを切ったことがないからわからないが。そのぐらいだろう。たぶん湿ったおしぼりよりは切りにくいハズだ。

 

 この辺は野生動物が何故か近づかない。一日ほど岳見さんとここで過ごしていたが特に野生動物からの襲撃はなかった。不穏な気配はたまにするが、セーフゾーン外よりはマシだ。

 

「特に異常は見られず、だな」

 

 一通り確認したが、金網にも有刺鉄線にも異常は見られない。そもそも人もあまり近づかないのであろう。

 セーフゾーンの中にある小さな建物の床下には少量ではあるが食糧の備蓄があり、干し肉らしきモノがいくつか置いてあった。ここで六人が生活するには足りないが、三、四人で三日は凌げるだろう。余談だが、私一人だと一日持つか怪しいところだ。自分の燃費の悪さにため息が出る。

 

「味覚が無くなっても食欲だけは衰えない。全く、嫌な身体だ」

 

 最近。あの巨人に襲われてから何を食べても味を感じない。水は不可思議な液体。パンは柔らかいスポンジと言った感じだろうか。味を感じられないが空腹で何か食べる。しかし、食べている時の感覚に嫌悪感を感じてしまっている。

 そろそろストレスでパニック発作あたりが起きそうだ。戦闘中や逃走中に起きないことを願おう。

 

「……一応、あそこも確認しとくか」

 

 ここに来た時に真っ先に私のトラウマを刺激した場所。

 

 金網のすぐ側にある小さな小屋。木の板を柱に打ち付けて作ったような簡素な作りだが、私の記憶を呼び起こして精神を疲弊せるには十分過ぎるものだ。

 出来れば確認もしたくないし、見に行きたくもない。だが、あの中を見て精神的にまだ耐えられるのも私ぐらいだろう。

 

 小屋の扉に手を伸ばす。キィキィなる立て付けの悪い扉は押せば簡単に開いてしまう。

 中には小屋を埋め尽くすほどの人形が捨て置かれている。

 四肢を投げ出すようにだらりと垂らし、開かれている虚ろな目が此方を見ている様な気配。まるで人の死体の様な先ほどまでは生物だった様な不気味さに吐き気を覚える。

 

 ただの人形だ。生きているはずもなく、生きていた事もないただの人形の筈だ。だが、作りが精巧なせいかそれが生きていたものに見えて仕方がない。見た事ある様な顔の人形もいくつか見られるが、それは気のせいだろう。

 この人形を見て客観的にわかる事と言えば、この人形を作った職人はかなりの腕を持っていること。そして、かなり悪趣味な人間だと言う事だ。

 

「……生きていないとわかっていても。触れたくはないものだな」

 

 小屋の扉を閉めて額に手をやる。

 少し様子を見ただけでかなりの汗をかいていたらしい。服が肌に張り付いて不快だ。着替えたい。と言うか体を洗いたい。最近トラウマを刺激されて汗をかきっぱなしだ。そろそろシャワーで体を流したい。

 

「そろそろ光達の元へ向かわないとな」

 

 心配をかけてはいけない。私はあの人の様な頼れる人でありたいから。

 

(私は、子供達を返すために⬛︎⬛︎を殺せるだろうか)

「何を考えているんだ。私は……」

 

 殺せるわけがない。アイツは⬛︎⬛︎だ。神に成り上がったヤツを殺せるなどと思わない。

 人は神を倒す力を与えられてはいない。それも概念的な神を討つなど神話の神だけだろう。

 

 何もないことを祈っておこう。祈る神はいないが、気の向いた時に何処ぞの神が聞いてくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「────―い。ごめん、な、さい」

 

 セーフゾーンだと案内された場所に到着した夜。パンと水でお腹を満たして寝ることになった。私とほむらちゃんは一応まだ未成年だからと言うことで、南先生、網野さん、岳見さん、如月さんの4人で夜番をすると言っていた。

 ここだとヒトガタも見たことないし、獣も少なく。金網のおかげか入ってくることはないと言う。

 

(誰かいるの?)

 

 部屋の外から誰かの声が聞こえる。隣で寝ているほむらちゃんと先生、網野さんはまだ寝てるみたい。

 

(なら今は岳見さんか如月さんが番をしているはず……)

 

 扉をそっと開けて様子を伺った。

 

「……もう、疲れたんだ。誰か…………、誰か終わらせて……」

 

 寝言の主は涙を流していた。

 

(如月さん。何かあったのかな……)

 

 聞くべき事ではないんだろう。おそらく、如月さんの触れられたくないものの話の筈だ。

 もう一度寝なおそう。私やほむらちゃんは大人達に助けられている。助けてもらったなら相手に嫌な感情を抱かせるのは違うと思う。

 

 私は簡素な布団に入り直して眠りについた。

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