かみながしじま〜輪廻を断つ者〜   作:空白零無

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岳見・エレイン・紗良

 

「名乗らせていただきます。岳見・エレイン・紗良。陸上自衛隊所属の自衛官です」

「如月六花です。探偵をやってます。どうぞよろしく」

 

 洞窟に案内して、適当な場所に座ってもらう。私はダンボールからコートを取り出して着込んだ。

 

「何故コートを着るんです? この時期ならまだ暑いと思うのですが」

「まあ、なんというか。あまり肌を見られるのが好きじゃないんで」

 

 一人だからコートを脱いでいたが、人が一緒にいるなら脱がない。着ているのは長袖の白シャツだが、何かのトラブルで傷跡が見られるのは避けたい。

 

「それで? 私に何か聞きたいことがあるんでしたよね?」

「はい。この島について何か知っていることはありますか?」

 

 岳見隊員曰く。所属する部隊で自分だけがこの島を認識することができ、単独での潜入調査を計画していたところ。気がつけば浜辺に倒れていたらしい。

 なんとなく島に閉じ込められたと感じ、独自で調査しているのだとか。調査を初めて半日ほど経った頃。イノシシと交戦する私を発見した。それからの今だそうだ。

 

「ここが私の調べようとした(場所)であるという確たる証拠はありませんが。おそらく、あの島であると考えています」

 

 私が目覚めたのは昨日の夕方ごろ。一日経ったか経っていないかぐらいの時間をここで過ごしている。軽く探索はしているが、周辺の様子ぐらいしかわからない。

 

「なるほど……。ん? この島は外から観測できるの?」

「おそらく。ですが、霧が濃くて様子は探れないかと思われます」

 

 通信機器は何故か使えなくなっており、外への連絡は出来ない。狼煙をあげようにも近くに可燃物が少なく、材料探していると私と出会ったらしい。

 

「その日本刀は何故お持ちに?」

「ああ、これは食糧を探していたら見つけました」

 

「そこにあるダンボールに入ってたんですよ」と、私がLINKのダンボールを引き寄せて、岳見隊員の前に置く。

 なんの変哲もない強化ダンボール。凹みに強く、外部からの衝撃や重圧にも普通のダンボールよりは耐えてくれるだろう。予定では椅子か、テーブルにでもするつもりだ。

 

「狼煙の材料に良さそうですね。使ってもよろしいですか?」

「ああ、どうぞ」

 

《ダンボールは狼煙の材料になった!》。さらばダンボール。テーブルになってくれると嬉しかったよ。

 

 まあ、狼煙で外部との連絡が取れるようになるのであれば救助を求めることも可能になるだろう。無駄にはならないはずだ。

 

「後は開けた場所。私の目覚めた砂浜で狼煙の準備をして、船や航空機が通ったタイミングで狼煙をあげて助けを求めましょう」

 

 岳見隊員が何か話しているが、空腹で話が頭に入ってこない。

 

 ぐきゅうぅぅうう。

 

 私のお腹が鳴った。どうやら限界らしい。

 

「お腹空いているのですか?」

「……お恥ずかしながら、昨日から何も食べてないので」

 

 燃費の悪い体であることの自覚はある。だが、昔からなんだ。昔から。幼少期から燃費は悪かった。

 親から食事を得られることは少なかったが、かなりの大食らいな自覚はある。

 一時期断食を強いられた時があったが、二日ほどで身体機能に異常をきたし始め、基本寝たきりな(身動きを取れない)生活をしていた。どこにそんな栄養を回しているのか不思議だ。

 

「私のでレーションでよければ食べますか?」

「……いただきます」

 

 岳見隊員の携帯していたレーション。カロリーメイトを一つ貰い、少しずつ食べる。時間をかけて食べれば、脳に満腹状態であると誤認させることが出来る。ここは騙されて欲しいモノだ。

 

「明日、私の目覚めた砂浜で何か食糧を探しましょう。まだいくつかありますが、救助がいつ来るかわからない環境でこの数は心許ないので」

 

 大体二日分ぐらいはあるらしいが、他の生存者。私のような境遇の人を見つけた場合足りなくなってしまう。

 取り敢えず、明日は浜辺で食糧探しをすることになった。食べられる生き物が居るとありがたい。

 

「明日。早朝から浜辺に向かいましょう。ここから歩いて三時間ほどの場所にあるので、早めの休眠が大事ですよ」

 

 岳見隊員がアサルトライフルを肩に立て掛け、洞窟の壁にもたれかかるように座る。

 

「私はもう少し起きてますので先に寝てください」

「寝ずの番ですか? 交互に起きて見張りをした方が良いと思いますよ」

 

 どうせ私は眠れなくなる。目を閉じて休む時間ぐらい彼女には必要なはずだ。

 

「では、2時間ほど経ったら起こしますね」

 

 岳見隊員に起こされるまで目を閉じて体を休めよう。明日からはかなり忙しくなる予定だから。

 

 

 

 

 ───────────────────────────────────

 

 

 

 

 

「起きてください。もう日が昇りますよ」

 

 岳見隊員を呼ぶと、すぐに目を開けて私を見ている。何か顔に付いてるのだろうか? 

 

「おはようございます。如月さん。夜の間に異常はありませんでしたか?」

「特に何もありませんでしたよ」

 

 朝になるまで特に何もなかった。獣がこちらにくることはなく、嫌な気配を感じることはしばしばあったが疲労のせいだろう。

 

 洞窟の外は霧が少し出ている。視界はあまりよろしくないので、辺りを警戒する必要がありそうだ。

 

「如月さん。かなり歩くことになりますが体力に自信は?」

「これでも武道をやってますし、張り込んだり。普段から仕事で動物を探し回ったりやってますので自信はありますよ」

 

 ただ、空腹で動けるかどうかは別だが。

 

「朝食として、こちらを差し上げますので食べてください」

「ありがとうございます」

 

 礼を言って、もらったレーションを食べる。少し水が欲しいが、私の使っている水は洞窟内にあった湖だ。飲めなくはないだろうが、飲み過ぎて何かしらの病気にかかるのはごめんだ。

 日本刀をベルトに固定し、コートに柄が隠れないように手を添えておく。準備はできた。

 

「道中、昨日のようなイノシシがいるかもしれません。周囲の警戒を怠らないようにしましょう」

 

 刀をいつでも抜けるように柄に手を添わせながら先に洞窟を出て安全を確認する。特に動物は見当たらない。

 

「先導、よろしくお願いします」

 

 私達は洞窟から浜辺へ歩き始めた。

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